顧客生涯価値(CLV)は、ビジネスが平均的な顧客との関係を通じてどれだけの収入を得ることができるかを測定するビジネス指標です。製品、コスト、購入頻度、購入量の違いにより、顧客生涯価値の計算は複雑になることがあります。しかし、適切なツールを使用することで、わずか数クリックで顧客生涯価値を調べることができます。
CLVを理解することによリ、より適切で十分な情報に基づくマーケティングや営業の意思決定が可能になります。このガイドでは、顧客生涯価値に関するインサイト、この指標の計算方法、およびビジネス・オーナーと経営者が知っておくべきCLVに関するさらに役立つ情報を提供します。
顧客生涯価値(CLV)とは
顧客生涯価値(CLV)とは、ビジネス上の一般的な顧客から、その個人またはアカウントが自社との取引を続けている期間に期待される総収入の尺度です。
CLVを測定する際には、顧客によって生み出された総平均収益と総平均利益を確認することが最適です。それぞれから、顧客によるビジネスとのやりとりの方法とマーケティング計画全体が期待通りに機能しているかについての重要な洞察を得ることができます。
さらに詳しく見るには、企業のCLVを四分位値やその他のセグメンテーションごとに顧客を分類することもできます。こうすることで、価値の高い顧客に対して何がうまくいっているのかについてより深く理解することができ、顧客基盤全体にわたりその成功事例をレプリケーションできるようになります。
注:CLVには、収益だけを見る基本的な計算から、売上総利益率とCOGS、出荷、配送などの運用経費を考慮したより複雑な計算といった複数の定義があります。マーケティング費用も含めることができますが、変動が大きすぎる場合は除外されることもあります。ここでは説明の簡略化の観点から、収益を使用します。
主なポイント
- 顧客生涯価値(CLV)とは、企業との関係全体を通じて生成される平均的な顧客の収益の尺度です。
- CLVと顧客獲得コストを比較することは、顧客の収益性とビジネスの長期的な成長可能性を迅速に推定する方法です。
- ビジネスには、CLVの長期的な改善を支援するマーケティング・ツールが複数あります。
- カスタマー・セグメントごとにCLVを見ることで、組織にとって何がうまくいっていて、何がうまくいっていないかについての幅広い洞察がもたらされる可能性があります。
顧客生涯価値(CLV)についての説明
顧客生涯価値は1つの数値に集約されますが、重要なニュアンスが存在する場合があります。CLVのさまざまな部分を理解することで、さまざまな戦略をテストし、顧客に最適なものを見出すことができます。CLVはそのシンプルさゆえに、スモール・ビジネスにとって重要な財務指標になる可能性があります。
たとえば、ある食料品チェーンがCLVをどう見る可能性があるかを検証してみましょう。この企業のERPシステムのデータに基づけば、一般的な顧客は1回の来店につき50ドルを支払い、7年間の関係で平均2週間に1回(年間26回)来店することがわかります。この食料品店は、50×26×7という3つの数字を掛け合わせることで、9,100ドルという値のCLVを求めることができます。しかし、この数字が重要な理由は何でしょうか。その詳細については次のセクションでご説明します。
顧客生涯価値がビジネスにとって重要な理由とその重要性
上記の例では、食料品店の顧客の平均生涯価値を算出しました。しかし、ビジネスがCLVを気にする理由とは何でしょうか。CLVを追跡および使用する主な理由は次のとおりです。
測定しないものを改善することはできない:
顧客生涯価値の測定を開始し、さまざまな要素を分類すると、継続的なコスト削減と利益増加を目標に、価格設定、販売、広告、顧客維持に関する具体的な戦略をとることができます。
顧客獲得コストに関するより適切な意思決定:
一般的な顧客から得られるものがわかっている場合は、支出を増加または減少させて、収益性を最大化し、継続的に適切なタイプの顧客を惹きつけることができます。
予測精度の改善:
CLV予測は、在庫、人員配置、生産容量、その他のコストに関する将来を見据えた意思決定を支援します。予測がなければ、気づかずに過剰出費をして無駄遣いをしたり、過小出費をして需要に追いつくことに苦労する事態に陥る可能性があります。
顧客生涯価値の利点
カスタマーリテンション率の向上:
CLVに取り組む最大の要因のひとつに、カスタマーリテンション率の向上と顧客離れの回避があります。正確なセグメンテーションでこれらの詳細を追跡することで、最適な顧客の特定と、うまくいっていることの判断を支援することができます。
リピート販売の推進:
小売業者、テクノロジー企業、レストラン・チェーン、その他のビジネスの中には、何度も利用を繰り返すロイヤルティの高い顧客基盤を持つものがあります。CLVを用いて年間平均訪問回数や顧客生涯訪問回数を追跡し、そのデータを利用してリピート顧客を増やすための戦略を立案することができます。
より高額な販売の促進:
Netflixは、値上げによってCLVを向上させたものの、コストを過度に急増させることで(新しいタブで開きます)、長年の顧客が離れる可能性があることを数年前に学んだビジネスの例となっています。適切なバランスが成功のカギです。
収益性の向上:
全体として、CLVの向上は利益の拡大につながることになるでしょう。顧客を長く維持し、より多くの購入を推奨するビジネスを構築することで、最終損益にその利益が現れることが期待されます。
顧客生涯価値の課題
測定が難しい場合がある:
高品質な追跡システムを導入していない場合、CLVの算出は困難な場合があります。エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)や顧客関係管理(CRM)システムは、KPIを追跡する自動ダッシュボードでこの情報を簡単に利用可能にします。
大まかな結果が誤解を招く可能性:
ビジネスの合計CLVの確認は役立つデータポイントになることがありますが、特定のカスタマー・セグメントの問題を覆い隠す場合もあります。顧客の規模、所在地、その他のセグメント別にデータを分類することで、より役立つデータが得られる可能性があります。
顧客生涯価値の測定方法
ERPシステムを備えたビジネスは、CLVに関わる計算に悩む必要はありません。計算はすべてシステムが行います。なお、顧客生涯価値を手動で測定することをご検討の場合は、以下のステップと計算式をご利用いただけます。
顧客生涯価値を測定する4つのステップ

平均注文金額の決定:
まず、平均販売額を確認します。このデータを長期間追跡していない場合は、通年の代わりに1ヶ月または3ヶ月の期間で確認することをご検討ください。
期間あたりの平均取引件数の計算:
顧客はコーヒー・ショップのように週に何度も利用するのでしょうか、それともカー・ディーラーのように数年に1度しか利用しないのでしょうか。利用頻度はCLVの主要なドライバーです。
顧客維持率の測定:
最後に、平均的な顧客がどれくらいの期間ブランドを愛用するかを把握する必要があります。一部のブランドは、テクノロジーや自動車ブランドのように、生涯にわたるロイヤルティを抱かせます。また、ガソリンスタンドや小売業者のように、ロイヤルティの高い顧客が少ない場合もあります。
顧客生涯価値の計算:
これで情報が揃いました。では、以下の式に従って、3つの数値を掛け合わせてCLVを計算します。
顧客生涯価値の算式
顧客生涯価値の算式は次のとおりです。
CLV = 平均トランザクション・サイズxトランザクションの数×保持期間
これらのデータはそれぞれ、CLVの成長のために活用できるレバーの役割を果たします。しかし、ビジネスの一挙手一投足が、CLVに影響を及ぼす意図しない結果をもたらす可能性があります。たとえば、値上げは平均取引規模を向上させることがありますが、それにより顧客が買い物の頻度を減らしたり、より低コストの代替品を探すことになる可能性があります。
マーケティングの4つのP(製品、場所、価格、プロモーション)に精通した経験豊富なマーケティング担当者は、マーケティングの取り組みが顧客生涯価値に直接どのような影響を与えるかをよく理解しています。
顧客生涯価値の例
CLVを理解する最適な方法は、例を用いることです。顧客生涯価値が企業にどう影響する可能性があるかをより分かりやすく示すために、以下に大きく異なる3つの業界の例をご紹介します。
コーヒー・ショップ
コーヒーショップは、幅広いビジネス知識がなくても理解しやすいため、CLVの最初の例として最適です。3つの拠点を持つ地元のコーヒーチェーン店の平均売上が4ドルだとします。一般的な顧客は、週2回、年間50週、平均5年間来店する近所で働く人たちです。
CLV = 400円(平均売上)× 100(年間来店数)×5(年) = 200,000円
自動車ディーラー
自動車ディーラーは、より少ない購入回数で、平均売上額ははるかに高くなります。この例では、5年ごとに3万ドルの新車を購入する人がいると仮定します。顧客はこのブランドにロイヤルティが高く、このブランドで15年間購入し続ける傾向があります。
CLV = 300万円(平均売上)× 0.2(年間購入回数)×15(年) = 900万円
Software as a Service(SaaS)サブスクリプション
最後の例として、複数の料金プランがあるものの、平均的な顧客の支出額は月額17ドルというオンライン動画ストリーミングサービスを想定してみます。顧客は通常3年半登録し、毎月の自動支払いを利用します。
CLV = 1,700円(平均売上)×12(年間購入回数)×3.5(年) = 71,400円
CLVを改善する14の方法
企業がCLVを向上させるために導入できる戦略には、さまざまなものがあります。一般的な顧客からより多くの収益を得ようとする場合に考慮すべき14のアイデアは次のとおりです。
カスタマー・ロイヤルティ・プログラムまたはリワード・プログラム
カスタマー・ロイヤルティ・プログラムは、顧客のエンゲージメントの高さを維持し、頻繁な購入に対するリワードを提供します。航空会社のマイレージ・プログラムとレストランのパンチ・カードが一般的な例です。顧客に再購入を促すインセンティブを与えることで、購入頻度とブランドからの購入回数を増やすことができます。
カスタマー・エクスペリエンス:
ウェブサイト、店頭、コールセンター、その他のタッチポイントはすべてカスタマー・エクスペリエンスの一部です。カスタマー・エクスペリエンスがスムーズでストレスの少ないものであれば、顧客がリピート顧客になる可能性は高まります。
顧客オンボーディングの改善
顧客の中には、ビジネスから製品やサービスを購入した後、次はどうするかを決めていない人もいます。成功するビジネスでは、長期にわたる顧客との関係のあり方をグラフで示しています。1回限りの顧客を経常収益のソースにしていくことは、多くの業界における成長に重要です。
カスタマー・エンゲージメント
企業と顧客とのすべてのやりとりを積極的にモニターしている企業は、カスタマー・エクスペリエンスとカスタマー・ロイヤルティを向上させる方法を特定することができます。これは、広告、カスタマーサポート、営業といったチャネルにまたがるものである必要があります。
カスタマーサービスの向上
カスタマーサービスが不十分だと、顧客は競合他社に流出するため、CLVは迅速に低下します。カスタマーサービスとのあらゆるやりとりを有意義なものに注力することで、カスタマー・ロイヤルティはさらに向上します。CRMシステムとカスタマーサービスCRMシステムとカ専用のカスタマー・サービス・プラットフォームは、これらのやりとりを1か所で集中管理し、効率的な管理を実現します。
顧客関係管理
ビジネスは、営業、カスタマーサービス、マーケティングにわたる、顧客との関係およびコミュニケーション履歴を把握する必要があります。ERPとCRMシステムは、リードから商談、注文書、配送、契約更新、アップセル、サポートに至るまで、カスタマー・ライフサイクル全体にわたるシームレスな情報の流れを構築することで、これらの関係を長期にわたって追跡および強化することを支援します。
顧客フィードバック・ループ
顧客がカスタマー・エクスペリエンスに不満を抱いた場合、それを未対応のまま放置することは禁物です。カスタマーサービスによる問題解決だけでなく、ビジネスではカスタマー・エクスペリエンスを向上させるために、顧客からのフィードバックを継続的に求める必要があります。製品やサービスの定期的な反復と修正により、問題箇所を解決し、顧客満足度の向上を支援します。
テクノロジーとソフトウェアへの投資
テクノロジは、プロセスを自動化し、ビジネス・データの多くを追跡および一元化できます。Eメール、スプレッドシート、連絡先データベースなどの基本的なツールを使用してこれらの情報を管理している企業もありますが、実績のあるパッケージ化されたソフトウェア・スイートを使用する方がはるかに簡単です。顧客はその違いに気づくでしょう。
アップセルとクロスセル
新規顧客を獲得するよりも、既存顧客にリエンゲージメントしたり、アップセルするほうが簡単なことがよくあります。アップセルとクロスセルは、顧客に、より低コストなオプションではなく、より高価格あるいは複数の製品やサービスを一度に購入するよう推奨することを目的とした戦略です。
値上げ
正しく行えば、値上げは直接的にCLVを向上させることができます。ただ、大幅な値上げで顧客に去られることがないように注意が必要です。また、自社の価格を決定する際には、競合他社の価格を考慮しましょう。価値を重視し、顧客が他では手に入らないものを提供することで、顧客を失うことなく値上げできる可能性があります。
ソーシャルメディア
顧客の注目度を高める最適な方法のひとつは、顧客がすでに時間を費やしている場所でアプローチすることです。Facebook、Instagram、Twitter、TikTokのようなソーシャルメディア・プラットフォームは、広告と顧客とのやりとりの両方に有意義なチャネルです。
シンプルな購入エクスペリエンス
カート放棄率とは、オンライン・ビジネスで使用される指標で、どれだけの顧客が買い物を始めたものの、チェックアウト・プロセスを完了する前に離脱したかを追跡するものです。これは、過剰なオプションやパッケージが顧客を遠ざけてしまう、対面での購入エクスペリエンスにも当てはまります。シンプルな購入エクスペリエンスを構築することは、可能な限りすべての販売を獲得することを支援します。先見の明のあるビジネスは、A/Bテストのような戦略を用いて、最適なものを見極めます。
返品を容易に
顧客が製品やサービスに満足していない場合、返品および交換を困難にすることは、顧客を永久に失うことになりかねません。手間のかからない返品プロセスは、顧客が再び製品やサービスを試しに購入する可能性を高めます。
ターゲットを絞ったコンテンツ
コンテンツ・マーケティングとは、ターゲット顧客に教育や楽しみを提供するために用いられる戦略で、通常、ブランドの信頼とロイヤリティを構築することを目的としています。ブログ投稿、eBook動画、ポッドキャスト、その他のメディアは、オーディエンスの特定のセグメントに語りかけることができる、ターゲットを絞ったコンテンツによく使われる形式です。
NetSuiteによる顧客の生涯価値の追跡、測定、改善
NetSuiteのようなビジネス・ソフトウェア・スイートは、さまざまな価値計算を行える高度な分析機能を備えているため、スプレッドシートを使って手作業で指標をまとめる必要がなくなります。NetSuite は CLVをすぐに計算するためのダッシュボードとツールを提供し、セグメントごとにデータを細分化するオプションもあります。
また、NetSuiteは、マルチチャネル・ビジネスがCLVを計算し、時間の経過とともに変化する様子を理解するために必要なすべてのデータを追跡できるCRMとeコマース・システムを提供しています。これらのシステムはすべて、サードパーティの統合を必要とすることなく、組織全体の一元的な情報ソースを提供する統合プラットフォームの一部です。これにより、ビジネスのパフォーマンスを理解することを支援するKPIを見つけることがはるかに容易になります。
顧客生涯価値は、どの組織にとっても無視できないほど重要です。適切なツールを備え、CLVを上昇させる方法を理解し、見つけることに時間を費やせば、ビジネスの前進とともに、より大きな成長と成功を享受するでしょう。
優れた
eコマース・
ソフトウェア
顧客生涯価値(CLV)に関するよくある質
顧客生涯価値の意味を教えてください。
顧客生涯価値とは、ビジネスが平均的な顧客との関係期間を通じて、その顧客から得る総額を指します。
顧客生涯価値とは何か、例を挙げて説明してください。
顧客生涯価値とは、顧客がビジネスとの関係全体を通じて生み出す総収益を示します。たとえば、一般的なレストランの顧客は月に1回来店し、1回あたり1,700円を平均10年間の期間に支出するとします。その顧客生涯価値は、1,700円×12×10=204,000円という計算になります
顧客生涯価値の計算方法を教えてください。
顧客生涯価値を計算するには、1訪問あたりの平均収益または利益に1年間の訪問回数を掛け、一般的な顧客関係の平均年数を掛けます。顧客生涯価値の算式は次の通りです。
CLV = 平均トランザクション・サイズxトランザクションの数×保持期間
顧客生涯価値の定義と、それが重要な理由を教えてください。
顧客生涯価値とは、ビジネスとの関係期間中に顧客から得られる総収益を示します。これは、企業による収益性の予測、顧客獲得予算の設定、成長と改善のための目標の決定を支援します。