企業が成長を続けると、スプレッドシートで業務に対応できない段階に到達します。そこで、エンタープライズ・リソース・プランニング・ソフトウェアの出番となります。ERPシステムは主要なビジネス情報を収集して整理し、組織が拡大しても無駄なく効率的に業務を遂行できるようにします。
ERPという用語を聞いたことはあっても、ERPがどのように役立つかは正確にご存じない方もいるでしょう。ここでは、ERPの概要、仕組み、ビジネスへの利点、適切なソリューションを選択する方法などについて詳しく説明します。
ERPに関して多くの方が抱く疑問に対する答えを是非お確かめください。
エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)とは
根本的には、ERPはビジネス・プロセスを自動化し、洞察と内部統制を提供するアプリケーションであり、会計、製造、サプライ・チェーン管理、営業、マーケティング、人事(HR)などの部門からの入力を収集する中央データベースを利用します。
その中央データベースに蓄積された情報から、部門を超えた可視性を獲得して様々なシナリオを分析し、プロセスの改善を発見し、大幅な効率化を実現できます。その結果、従業員が必要なデータを探すために費やす時間が短縮されることで、コストが削減され、生産性が向上します。
ERPソフトウェアは個々のビジネスのニーズを満たすように調整することで大きな利益をもたらすため、様々な業界のあらゆる規模の企業にとって重要なツールとなっています。世界で最も有名で最も成功している企業の多くは、過去四半世紀にわたってERPを利用してきました。現在、このソフトウェアは、あらゆる規模の企業のニーズに合った構成と価格設定が可能です。
簡潔に言うと、ERPとは、組織全体にわたる人とコア・ビジネス・プロセスと技術の統合をサポートするものです。
ビデオ: ERPとは(英語)
要点のまとめ
- ERPは、共通データベース内の様々な部門から情報を収集し、部門長が現実に即した単一のビジョンで会社の実際の状況を監視できるようにする、重要なビジネス・ソフトウェアです。
- ERPは、財務、製造、在庫および注文管理、顧客コミュニケーション、販売、マーケティング、プロジェクト管理、人事管理などの重要なビジネス機能を統合します。主な機能として、各部門の詳細な分析とレポート機能があります。
- ERPによって組織全体に対する可視性がもたらされることで、非効率な手動プロセスを発見し、成長の機会を明らかにし、時間と資金を大幅に節約できます。
- ERPソフトウェアには、オンプレミス、クラウド、ハイブリッドなど、いくつかの導入モデルがあります。クラウドERPは近年非常に一般的になりましたが、最適なアプローチは企業のニーズによって異なります。
- 企業は、発注先を選ぶ前に、最終候補の仕入先の機能、実装モデル、統合要件および総所有コストを理解している必要があります。
ERPの説明
エンタープライズ・リソース・プランニング(1990年に調査会社のGartner社によって作成された名前)は、混乱を招くことがある概念です。これは、ERPがスタンドアロン・アプリケーションではないためです。ERPはビジネス・ソフトウェアのカテゴリですが、ERPシステムはそれぞれが特定のビジネス要件に対応する様々なモジュールで構成されています。たとえば、製造業の企業では、通常、会計、在庫および注文管理、顧客関係管理(CRM)のモジュールと、製品の製造または組立を行う場合は製造のモジュールを利用することがあります。サービス業の企業は、会計、プロジェクト管理、プロフェッショナル・サービス・オートメーションおよびCRMのモジュールを利用する場合が多いです。
各モジュールは、ERPシステムの主要コンポーネントである統合データベースから情報を取得し、処理結果を統合データベースに情報を戻します。この共通のデータ・リポジトリはすべての部門の可視性を提供するため、リーダー(社長や部門長)は様々な分野のビジネス・パフォーマンスを評価および比較し、意思決定の全体的な影響を把握できます。このデータ・リポジトリはプロセスの自動化、内部統制の改善、よりスマートなビジネス・インテリジェンスなど、他のERPの利点も強化します。
ERPがビジネスにとって重要な理由
ERPは、リソースの有効活用を目指す企業にとって最低限必要なものとなっています。これらは、組織の長が人材と財務資本を再配分したり、品質やパフォーマンスを犠牲にすることなくコストを削減したりする、より効率的なコア・ビジネス・プロセスを構築するために役立ちます。
ERPは、計画と調整についても有用です。従業員は、現在利用可能な在庫と顧客の注文を詳細に確認し、仕入先の発注書と予測される将来の需要を比較できます。かつ、必要に応じて問題を回避するために調整できます。また、ERPを使用すると、作業者が他の部門の状況を確認して意思決定の指針にできるため、コミュニケーションとコラボレーションも改善します。
そして、包括的なデータのソースとして、ERPシステムは、ビジネスの差別化要因となる可能性のある多数のレポートと分析も提供します。膨大な量の情報を、チャートやグラフで傾向を明確に示し、想定される結果をモデル化して管理職に新たな気づきをもたらします。
ERPはビジネスをどのように改善または支援できるか
ERPにより、企業は改善の余地や拡大の機会があるビジネスの領域を特定できます。従業員にいかに活用させるかが重要です。利用できる従業員が多ければ多いほど、特定の製品の需要の急増、仕入先からの出荷の遅れ、キャッシュ・フローの危機的状況の切迫などの問題を発見する可能性が高くなります。これにより、従業員が問題をできるだけ軽減するように対応できます。
管理職は、通常、成果に焦点を当てています。情報を使用して、効率の向上、コストの削減、変化する顧客ニーズや市場状況への対応などの目標を達成します。
ビジネス・ユニットの場合、ERPソフトウェアは、勘定照合、顧客請求、注文処理など、エラーが発生しやすい多くのタスクを自動化して、より効率的に業務を行うために必要な情報を提供できます。
ERPの本当に優れた点は、データの保存と整理のみでなく、パターンの特定と調査が必要なエラーに対するフラグ付けによって、会社の状態の詳細分析と特定のプロセスまたはKPIに対する詳細な洞察の両方を提供できることです。スプレッドシートでこのようなことができるでしょうか。
その他のビジネス上の利点:
どこからでもデータにアクセス
従業員は、机の上に散乱する紙やファイルをあちこちに動かす必要がなくなります。クラウドベースのERPでは、倉庫管理者は製造現場にいるときにモバイル・デバイスから利用でき、営業担当者は顧客先にいるときに在庫を確認できます。
情報は常に最新
ERPシステムは様々な部門からリアルタイムに情報を受信しているため、在庫の引き落としや、支払の転記、顧客への連絡などの情報がただちに反映されます。意思決定者は最新のデータに基づいて選択を行うため、このことは大きな利点となります。
同じデータに基づくビジネス上の意思決定
共通データベースにより、すべての意思決定者が共通の認識を持つことができます。重複した情報源や競合する情報源はなく、企業は動的レポートを自動的にスケジュールして配布できます。さらに詳細が必要な場合はどうでしょうか。レポートをクリックするだけで、基礎となるデータにアクセスできます。
ERPの12の利点
今日のERPには、ビジネスに無数の利点をもたらす一連の豊富な機能があります。個々の企業がERPの最大の価値とみなすものは様々ですが、ERPが提供する普遍的な利点として主に次のものがあげられます。
1. コストの削減:
ERPシステムの最大の価値提案は、様々な方法で組織のコストを削減できることです。多くの単純な反復タスクを自動化することで、エラー、およびビジネスの成長と同じ速度で従業員を追加する必要性が最小化されます。会社間の可視性により、コストを押し上げる非効率性を簡単に見つけることができ、労務から在庫、設備に至るすべてのリソースの最適化が可能になります。クラウドERPを使用すると、企業は支出額に加えて、ソフトウェアによってもたらされる価値をすぐに確認できます。
2. ワークフローの可視性:
すべてのワークフローと情報を1箇所にまとめることで、システムにアクセスできる従業員は、プロジェクトの状況と、自分の仕事に関連する様々な部門のパフォーマンスを確認できます。この可視性は、マネージャーとリーダーにとって特に価値があり、適切な文書を探したり、常に同僚に更新を依頼するよりもはるかに速く、簡単です。
3. レポート/分析:
データは、企業が分析および理解できてこそ有用であり、ERPがそれを支援します。主要なソリューションには、ユーザーがKPIを追跡できるのみでなく、考えられるあらゆる指標や比較を表示できる優れたレポートと分析ツールが含まれています。ある部門のプロセスの変更や問題が他の部門にどのように影響するかを企業が理解するために役立ちます。
4. ビジネスの洞察/インテリジェンス:
ERPは全体のリアルタイム・データにアクセスできるため、データの傾向を明らかにし、克明なビジネスの洞察を提供できます。これにより、組織の意思決定者は関連するすべてのデータに簡単にアクセスできるようになり、意思決定までの時間と精度が向上します。
5. 規制コンプライアンスおよびデータ・セキュリティ:
財務報告基準と政府および業界固有のデータ・セキュリティ規制は頻繁に変更されますが、ERPは企業の安全とコンプライアンスの維持に役立ちます。ERPは、必要な承認ワークフローの順守を含む、各トランザクションのライフサイクルを追跡することにより、監査証跡を提供します。企業は、自動化によってエラーおよび関連するコンプライアンス違反の可能性を減らすこともできます。ERPソフトウェアは、業界標準と規制に準拠した財務レポートを提供し、SaaSアプリケーションには、PCI-DSSへのコンプライアンスに関して企業を支援する充実した機能が備えられています。
6. リスク管理:
ERPテクノロジは複数の方法でリスクを軽減します。きめ細かいアクセス制御と柔軟に定義できる承認ワークフローにより財務管理(新しいタブで開きます)を強化し、不正を減らすことができます。正確なデータは、売上の損失や罰金につながる可能性のある間違いを防ぎます。
最後に、業務全体の状況を確認する機能により、従業員はビジネスの混乱によってもたらされるリスクに迅速に対処できます。
7. データ・セキュリティ:
ERPを提供する企業は、システムに重要な機密データが格納されていることを理解し、安全を確保するために必要な措置を講じています。サイバー攻撃の量と範囲が拡大していることに伴い、この継続的な改善努力はこれまで以上に重要になっています。特にクラウドERPソフトウェア(新しいタブで開きます)は、最先端のセキュリティ・プロトコルを使用して、企業が攻撃の犠牲になって損害を受けることを防ぎます。
8. コラボレーション:
従業員は、周囲と連携しながら働くことで、生み出す価値が大きくなります。ERPソリューションを使用すると、発注書、契約、カスタマー・サポートの記録などの情報を部門間で簡単に共有できます。従業員に関連ビジネス機能のリアルタイム・データへの適切なアクセス権を提供することによって、部門間の壁を打ち破ります。
9. 拡張性:
適切なERPシステムとは、現在および予測可能な将来の企業の要望を満たすのに十分な拡張性と柔軟性を備えたものです。特にクラウド・システムは、組織が収集するデータの量とアクセスの需要が増加しても、問題なく適応します。
10. 柔軟性:
ERPは、企業がベスト・プラクティスを適用するために役立つのと同時に、独自のプロセスと目的を支援する柔軟性も備えています。このシステムにより、管理者は会社固有のワークフローを構築し、様々な部門や役員層にとって重要な自動レポートを作成できます。ERPは、組織のイノベーションと創造性を強化します。
11. カスタマイズ性:
ほとんどの企業は、最新のERPによって追加設定なしで利用できますが、場合によっては、機能を追加することが必要になる場合があります。特殊なプロセスが多数ある場合は、導入パートナーやIT部門が必要な機能を追加開発できる、または自社開発ソリューションやレガシー・ソリューションと統合できる拡張可能なシステムを探してください。ただし、カスタム・ルートに進む前に、プロセスをよく確認してください。最新のERPソリューションがサポートする事前構築済の機能と構成は、数千の企業から収集されたベスト・プラクティスに基づいています。カスタマイズを最小限に抑えることを目指しましょう。
12. 顧客およびパートナー管理:
ERPは、企業のパートナーおよび顧客関係を強化できます。仕入先、配送業者、サービス業者に関する洞察が提供され、クラウドによる、より優れた、より便利な情報交換が可能になります。顧客に関しては、ソリューションは調査の回答、サポート・チケット、返品などを追跡できるため、組織は顧客満足度の実際の状況を正確に把握できます。
ERPを誰が使用するか
多様なビジネス・モデルを持つあらゆる業界の企業が、ERPに伴う利点を実現しています。広範な機能を備えた柔軟なソリューションは、様々な組織と要件に対応できます。
ERPを利用して事業を運営している業界は次のとおりです。
- 広告およびデジタル・メディア
- アパレル、履物および服飾品(新しいタブで開きます)
- 大学の購買(新しいタブで開きます)
- コンサルティング
- 教育
- エネルギ
- 金融サービス
- 食品および飲料
- 健康および美容(新しいタブで開きます)
- 医療およびライフ・サイエンス
- ITサービス
- 製造業
- メディアおよび出版
- 非営利団体
- プロフェッショナル・サービス
- レストランおよび接客(新しいタブで開きます)
- 小売業
- ソフトウェアおよびテクノロジ
- 輸送業およびロジスティクス
- 卸売販売業
役割およびユーザー
これらの組織内では、次のような多くの部門、及び職種がERPのメリットを得ています。
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財務/会計: 多くの場合、会計部門が最初に導入します。このグループは、買掛金(AP)、売掛金(AR)、給与など、システム内のすべての取引とその他の財務情報を追跡し、報告します。ERPを使用すると、財務計画および分析(FP&A)のエキスパートは、個別の役割か会計部門の一部かに関係なく、包括的な財務データを収益、費用およびキャッシュ・フローに関する予測とレポートに変えることができます。
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サプライ・チェーン: 業務に集中する従業員、つまり、購入担当、在庫計画者、倉庫管理者および購買部門長を含むグループは、ERPを利用して、仕入先から顧客への円滑かつ継続的な物品のフローを確保します。システムによって提供される正確で詳細な情報を利用して、在庫水準の最適化、注文の優先順位付け、期日出荷の最大化、サプライ・チェーンの中断の回避、非効率なプロセスまたは手動プロセスの特定を行います。
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営業およびマーケティング: ERPソリューションは、リード管理を自動化し、潜在顧客と会社とのやり取りをモニターすることで、営業部門の生産性を高め、より好ましい結果をもたらすことができます。担当者は、ディスカッションを文書化し、潜在顧客が販売ファネルを移動することに伴ってステータスを変更できます。これらの同じレコードを使用して、マーケティングは、電子メールからディスプレイ広告、ソーシャル・メディアまで、すべてのチャネルにわたるアウトリーチを自動化および管理し、それらのメッセージとチャネルの効果を測定して、予算をより適切に割り当てることができます。
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人事: HR部門は、すべての従業員情報とより広範な労働力の傾向をERPで追跡します。各従業員の連絡先情報、報酬と福利厚生の詳細およびその他の文書をすばやく見つけることができます。HRでは、部門別の人材確保、役職別の平均賃金、昇進率などの指標とその他の指標をモニターして、自社の職員をより適切に割り当て、事業部門のマネージャーを支援することもできます。
ERPが必要な場合
ERPは当初、その名前が示すように企業向けに設計されましたが、今日のクラウドベースのサービスとしてのソフトウェア(SaaS) ERP(新しいタブで開きます)製品は、導入の障壁を下げ、数多くの新興企業と中規模企業が効率、可視性および収益性を向上させるために役立っています。
では、ERPが自分のケースに適しているかどうかはどのように判断すればよいでしょうか。
すべての企業は現在のテクノロジを定期的に確認し、テクノロジが役立っているか、それとも妨げとなっているかを検討する必要があります。時代遅れのシステムや不適切なシステムが非効率をもたらしたり、データを混乱させたり、ビジネスに必要な変更をサポートできないなら、新しいソリューションを探す必要があります。
変革のときを示す他の兆候: 不正確なデータ、システム間の統合の欠如、エラー率の高さ、電子メールおよびスプレッドシートへの過度の依存。ERPソフトウェアの購入とデプロイにはコストが伴いますが、多くの場合、投資に対する収益率が迅速に得られます。また、ビジネス・ケースの構築を検討している企業(新しいタブで開きます)が利用できる支援もあります。
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ERPシステムの6つのデメリット
ERPは大きな価値をもたらしますが、それでも、企業が直面する可能性のある課題があります。これらの多くは、準備を整え、適切な仕入先・パートナーを選択することで回避できます。
1. システム・コスト: 初期のERPシステムは、購入、実装および保守が高額であったため、大企業のみが利用できました。しかし、この20年以上の状況は異なります。ERPには依然として時間と資金の投資が必要ですが、固定料金を請求するSaaSシステムと、市場に参入する中小規模の企業向けに設計されたソリューションの両方により、このテクノロジははるかに手頃になりました。ツールを使用して、たとえば1年後と3年後の推定節約額を計算し(新しいタブで開きます)、収益がコストを超える時期を確認できます。
2. トレーニングの必要性: 他の新しいテクノロジと同様に、ERPには学習曲線があります。ソフトウェアを使用する人(理想的にはほとんどまたはすべての従業員)には、ある程度のトレーニングが必要です。最初は抵抗があるかもしれませんが、このシステムの有用性が周知されるとともに、次第になくなります。頻繁に更新される新しいシステムは、より直感的で使いやすく、トレーニング要件が軽減され、定着しやすくなっています。
3. データ変換コスト: 新しいERPに移行する場合、一部のデータを新しいプラットフォームと互換性のある形式に変換する必要がある場合があります。これにより、予期しないコストと遅延が発生する可能性があるため、データベースを確認し、IT部門または導入パートナーと協力して、潜在的なデータ互換性の問題を早期に特定します。その後、変換の取り組みをERP実装計画に組み込むことができます。
4. 複雑さ: ERPシステムは機能が多く、そのことに従業員が圧倒される可能性があります。しかし、ソフトウェアベンダーはユーザー体験の向上に力を注いでいるため、今日利用できるソフトウェアは従来よりもはるかに使いやすくなっています。さらに、従業員が利用する必要がある機能は自分の仕事に必要なモジュールとダッシュボードのみであるため、操作がより簡単になります。十分にトレーニングすることで、複雑さに関する懸念は和らぎます。
5. 保守: これまで、保守に多額の費用がかかることが、収益の低い企業がERPを導入する妨げとなっていました。企業は、パッチ、セキュリティおよび必要なシステム・アップグレードを処理するIT部門が必要であるのみでなく、多くの場合、ソフトウェアベンダーまたは外部の業者にその専門知識に対して対価を支払う必要がありました。
SaaSシステムではこのような懸念は軽減されます。サービス・プロバイダがすべての保守を行い、すべての顧客を定期的に最新バージョンに移行し、すべてがサブスクリプション価格に組み込まれているためです。保守に関心のある企業は、候補のサービスを十分に精査して、真のベンダー管理SaaSシステムを提供していることを確認する必要があります。
6. プロセスとポリシーの問題を解決しない: エラーが発生しやすいプロセスや非効率なプロセスがある場合、ERPは精度を高める可能性はあっても、必ずしもそれらを修正するとは限りません。ただし、業務の問題を明らかにし、ビジネスを行うより適切な方法を見直すために役立ちます。組織の障害となっているポリシーについても同様です。独自にポリシーを調整してから、ビジネスを行うための適切な方法をサポートするようにシステムを構成します。
ERPシステムの5つの主な機能
ERPシステムには、ERPシステムを他のタイプのソフトウェアと区別する、固有の基本的な機能がいくつかあります。それらは次のとおりです。
1. 共通データベース: ERPの利点の多くは、組織が多数の部門の情報を一元化できる共通データベースによってもたらされます。この単一のリアルタイム・データのソースにより、細々としたデータを手動で統合する必要がなくなります。共通データベースにより、会社の一貫した部門横断的なビューが可能になります。
2. 一貫したUX/UI: 部門や役割を超えて、ERPでは全員が同じユーザー・インタフェース(UI)を使用し、同様のユーザー・エクスペリエンス(UX)を提供されます。在庫管理、HRおよび財務のモジュールはすべて同じ見た目と共有機能を備えています。これにより、ソフトウェアの定着率が高まり、スタッフが部門間を移動しやすくなります。一貫したUXとUIにより、ユーザーはビジネスのあらゆる場所から情報をすばやく見つけて理解できるため、効率も向上します。
3. ビジネス・プロセスの統合: ERPは、会計、サプライ・チェーン管理またはマーケティングのいずれに関連する場合でも、ビジネスを成功させるプロセスをサポートし、統合できる必要があります。適切なプラットフォームには、様々な一連のプロセスを統合する機能があります。会社の成功に重要な役割を果たすワークフローを接続すると、生産性と可視性が向上し、コストの削減につながります。
4. 自動化: ERPソフトウェアのもう1つの基本機能は、請求、注文処理、レポートなどの反復タスクを自動化する機能です。これにより、場合によっては重複するデータ入力が減り、時間が節約され、エラーが最小化されます。自動化により、スタッフは特別な知識とスキルを活用する付加価値のある作業に集中できるようになります。
5. データ分析: ERPの最も価値のある側面の1つは、情報サイロを分解することです。ビジネスのほぼすべての部分のデータを組み合せて洞察に満ちたレポートにまとめることができると、非常に優れたパフォーマンスを示している領域と期待を満たしていない領域を明らかにできます。組織リーダーは問題を分析し、すぐに解決に取り掛かることができます。
ERPシステムの仕組み
ERPシステムは、定義された標準のデータ構造を使用して機能します。1つの部門で入力された情報は、企業全体の承認されたユーザーがすぐに利用できます。この仕組みは、全員が共通認識を持つために役立ちます。たとえば、地方の食品流通チェーンには、在庫と人員を共有することが多い複数の店舗があるとします。これらの現場の品質、売上および人員データはERPに送られるため、どの店舗から送られたかを示すように整理されます。
次に、リアルタイム・データが部門間のビジネス・プロセスとワークフローに組み込まれます。リーダーは、ある店舗がいくつか離れた町の姉妹店よりも廃棄を大幅に減らしていることを確認し、理由の解明に取り組むことができます。一方、運用部門は、人材配分のレベルが混雑状況に合っていることを確認できます。財務は、売上と賃貸料を比較して、統合するかどうかに関する役員レベルの意思決定を支援できます。
ERPシステムは、企業の主要なビジネス機能それぞれに対するモジュールがある場合に最大の価値を提供し、タイムリーかつ正確にデータ入力が行われるようにします。より多くの関係者がアクセスできるほど、よりよい結果になります。
企業が複数のベンダーのビジネス・システムを使用する場合、通常、統合によって、ERPにデータを自動的に流し込むことができます。このリアルタイム・データは、ERPインスタンス全体で使用して、プロセスやワークフローに役立てることができます。
ERPデプロイメント・モデルのタイプ
様々なERPデプロイメント・モデルが、様々な組織のニーズに対応します。それぞれの仕組みと主な違いについて説明します。
オンプレミスERP: オンプレミス・システムでは、企業は所有するサーバーでソフトウェアを実行し、セキュリティ、保守、アップグレードおよびその他の修正を行います。通常、維持には、必要な専門知識を持つ社内のIT部門が必要です。長年、オンプレミスERPが唯一の選択肢でしたが、この導入モデルは近年急速に減少しており(新しいタブで開きます)、市場調査会社のIDCは継続的な減少を予測しています(下のグラフを参照)。
クラウドベースERP: クラウドベースERPは、サードパーティが管理するリモート・サーバーで実行されます。ユーザーは通常、Webブラウザを介してクラウドERPにアクセスするため、柔軟性が高くなります。インターネット接続があれば、どこからでも情報やレポートを詳しく調べることができます。クラウドERPには、シングルテナントやマルチテナントなど、複数のデプロイメント・オプションがあります。
シングルテナント・ソリューションは、サーバー領域を共有しない1つの会社のみが使用するERPの個別のインスタンスです。この設定により、クライアントはソフトウェアをより詳細に制御でき、より多くのカスタマイズが可能になりますが、業務により多くの作業が発生します。マルチテナント・ソリューションでは、多数の組織が同じソフトウェア・インスタンスとハードウェアを使用します。ほとんどのSaaS ERPソリューションはマルチテナントであり、ソフトウェア・ベンダーがすべての更新とアップグレードを処理し、定期的に顧客を最新バージョンに移行します。これにより、社内のIT部門の必要性が減り、会社は常に最新の安全なソフトウェア・インスタンスを使用できます。
IDCは、クラウドベースERPの使用は2019年から2024年の間に2倍以上になると予測しています。
ハイブリッドERP: ハイブリッドERPは、オンプレミス・デプロイメントとクラウド・デプロイメントの要素を組み合せたものです。ハイブリッド・アプローチ(新しいタブで開きます)の1つは2層ERPです。この場合、企業はオンプレミスERPを本社に置いたまま、子会社または特定の地域オフィスにクラウド・システムを採用します。これらのクラウド・ソリューションはオンプレミス・システムと統合されます。企業によっては、他の機能のためにオンプレミス・システムを使用し続けながら、特定のビジネス・ニーズのためにクラウド・ソリューションを利用することがあります。いずれの方法でも、情報の安定したフローを確保するために、クラウド・システムをオンプレミス・プラットフォームにリンクする必要があります。これは多くの場合、実行は容易ではありません。
オープンソースERP: 他のオープンソース・アプリケーションと同様にオープンソースERPは安価で、場合によっては無料であり、一部の企業に適した選択肢です。多くのオープンソースERPプロバイダは、企業がソフトウェアを無料でダウンロードすることを許可し、顧客がクラウド・アクセスを希望する場合にのみ、低額な年会費を請求します。これらのソリューションは改善され、最新のWebベースのインタフェースを備え、モジュールの数が増えていますが、企業はオープンソースERPで行っていることを理解する必要があります。プロバイダからのサポートは最小限に抑えられ、構成とシステムの改善はクライアントの責任となる傾向があります。つまり、ソフトウェアの開発と構成の方法について深い知識を持つ技術スタッフが必要です。
事業規模別のERPシステム
収益や従業員数は、ERP要件(新しいタブで開きます)を形成する単なる要素にすぎません。小規模、中規模、大規模の企業にそれぞれ最適な単一のシステムはありません。ただし、これらのセグメントに固有の機能と、推奨されるデプロイメント・モデルがあります。
小規模企業ERP: 小規模企業は、必要以上の機能を備えたソフトウェアを避けるために、探し始める前に要件を明確に決定する必要があります。これにより、コストを抑え、従業員に必要なトレーニングを減らすことができます。ただし、システムには、時間の経過とともにスケールアップして新たな取り組みをサポートする機能と、簡潔な導入プロセスが必要です。そのため、クラウドERPは一般的に小規模企業に最適なオプションです。オンプレミスまたはハイブリッドのオプションと比較して初期費用が低く、設定のタイムラインが速く、技術リソースの必要性が少なくなります。クラウドにはビジネスの成長に伴うニーズを満たす拡張性があり、適切なプロバイダが必要に応じてモジュールと機能を提供できます。
中規模企業のERP: 中規模企業では、専用のモジュールですべてのビジネス機能をサポートできるプラットフォームが要求され、小規模企業と同様に、将来のニーズを満たすために拡張できるベンダーを選択する必要があります。
多くの中規模組織には大規模なIT部門がないため、クラウドERPソフトウェアはこのセグメントでも非常に人気があります。初期費用の低さに加えて、主要なSaaSソリューションは、技術的な専門知識が限られている企業にとってより使いやすい可能性があります。ただし、多数のカスタマイズが必要な中規模企業や、クラウドに情報を保存することを禁止する規制ポリシーに従う必要がある中規模企業は、オンプレミス・デプロイメントまたはハイブリッド・アプローチを選択する場合があります。このグループは、小規模企業よりもこのモデルをサポートするための財務資本と人材を備えている可能性が高くなっています。
エンタープライズERP: 企業は、ビジネスのすべてのコンポーネントをサポートできるソフトウェアを選択する必要があります。これにより、候補の数が急速に絞られる可能性があります。企業には、膨大な量のデータを取得、処理、解釈し、多くのビジネス・ユニットの要求を処理できるシステムが必要です。
オンプレミスERPおよびクラウドとオンプレミスのソリューションを組み合せたハイブリッドERPは企業で最も一般的ですが、それは単に、純粋なクラウド・システムが利用可能になる前にERPを導入していたためです。大規模なERPをクラウドに移行することは、時間とリソースを大量に消費する作業になる可能性がありますが、世界最大の企業の多くはメリットを認識し、将来の成長に向けて優位に立つためにその一歩を踏み出しています。一部の企業は、ビジネスの一部にSaaSソリューションを使用し、プライマリ・オンプレミスERPと統合する2層ERPも導入しています。
ERPモジュール
ERPは、多数の異なるモジュール、つまり、バックオフィスとフロントオフィスの役割など、ビジネスの様々な側面に応じて調整された機能のバンドルで構成されます。最も広く使用されているERPモジュールの簡単な内訳は次のとおりです。
財務: ほぼすべてのERPシステムの基盤である財務モジュールは、総勘定元帳とすべての財務データを管理します。買掛金(AP)と売掛金(AR)を含むすべてのトランザクションを追跡し、照合と財務レポートを処理します。
調達: 調達モジュールは、原材料か完成品かに関係なく、購入を管理します。見積と発注書の要求を自動化し、需要計画にリンクすると、過剰購入および過少購入を最小限に抑えることができます。
製造: 製造(新しいタブで開きます)は複雑になる場合があり、このモジュールは、企業が製品の製造に入るすべてのステップを調整するのに役立ちます。このモジュールは、需要に応じて生産されていることを確認し、進行中のアイテムと完成したアイテムの数をモニターできます。
在庫管理: 在庫管理(新しいタブで開きます)モジュールは現在の在庫水準をSKUレベルまで表示し、それらの数値をリアルタイムで更新します。主要な在庫関連の指標も測定します。製品ベースの企業は、現在の需要と予測される需要に基づいて手持在庫を最適化するためにこのモジュールを必要とします。
注文管理: このアプリケーションは、すべてのチャネルから入る顧客の注文をモニターして優先順位付けし、納入までの進捗状況を追跡します。注文管理モジュールは配送と配送時間を高速化し、顧客体験を向上させることができます。
倉庫管理: 倉庫管理モジュール(新しいタブで開きます)は、受領、ピッキング、梱包、出荷などの倉庫活動を管理します。これらのタスクを実行するより効率的な方法を特定することによって、倉庫で時間とコストを節約できます。
顧客関係管理(CRM): CRMは、幅広い業界の企業に人気のあるモジュールです。クライアントとのすべての通信を追跡し、リード管理を支援し、顧客サービスを強化して売上を伸ばすことができます。
プロフェッショナル・サービス・オートメーション(PSA): サービス・ビジネスでは、多くの場合、プロフェッショナル・サービス・オートメーション(PSA)モジュールを使用して、プロジェクトに費やされる時間とリソースを含め、プロジェクトを計画および追跡します。クライアントへの請求を簡素化し、プロジェクトに取り組んでいるスタッフ間のコラボレーションを促進できます。
eコマース: eコマースモジュールにより、小売業者およびブランドはオンライン・ストアのバックエンドとフロントエンドを管理できます。このアプリケーションを使用して、サイトのルック・アンド・フィールを変更したり、製品ページを追加および更新したりできます。
マーケティング・オートメーション: このモジュールは、すべてのデジタル・チャネル(電子メール、Web、ソーシャル)にわたるマーケティング活動を管理し、組織がメッセージングを最適化およびパーソナライズできるようにします。マーケティング・オートメーション・ツールは、リード、販売および顧客ロイヤルティを高めることができます。
ERPのベスト・プラクティス
ほとんどのERPソフトウェアは、確立されたベスト・プラクティスに基づいて構築されています。ソフトウェア・プロバイダは、数百または数千の顧客との作業経験に基づいてワークフローと機能を設計し、それをできるだけ生かすように推奨しますが、多くの場合、プロセスを調整する柔軟性もあります。
業界標準のベスト・プラクティスに準拠することには、ビジネス上の大きな利点があります。通常、企業はプロセスを改善および最新化して業務の効率を最大化し、競合他社に後れをとらないようにしています。ベスト・プラクティスに従うことも、企業が主要な財務基準に準拠するために役立ちます。主要なERPベンダーは、各セクターに最適なビジネス手法を組み込んだ対象業種固有のソフトウェア・バージョンを提供しています。
ERP実装
ERPの実装は重要なプロジェクトであり、適切な準備を行わないと、多くの時間と費用がかかる可能性があります。このプロジェクトにかかる正確な時間と費用は、デプロイメント・モデル、実装戦略(新しいタブで開きます)、システムの複雑さ、会社の規模、プロジェクト専用のリソースなど、多くの要素によって異なります。
このERP実装チェックリストは、ガイドとして役立ちます。
実装の7つの段階
他のイニシアチブと同様に、企業は時間をかけて詳細な実装計画(新しいタブで開きます)を作成することによって、大きな課題(新しいタブで開きます)を回避できます。準備することで確実に成果を上げることができます。
ERP実装の7つの主要段階は次のとおりです。
1. 発見と計画: まず、職務の枠を超えたチーム(新しいタブで開きます)をまとめて、会社がERPシステムから正確に何を必要としているかを判断します。この検討チームは、非効率なプロセスや、その他のビジネスの成長に対する障害を特定する必要があります。
2. 評価と選択: 要件のドキュメントを入手したら、次は主要なオファリングを評価し、既存の問題を最も的確に解決する、すべての部門のニーズを満たし会社の成長を促進するプラットフォームを選択します。
3. 設計: この段階で、実装チームは、システムが既存のワークフローをサポートできるかどうか、およびどのプロセスを変更する必要があるかを把握します。この時点で、必要なカスタマイズも特定します。
4. 開発: 社内外の技術専門家が、定義されたニーズを満たすようにソフトウェアを構成し、新しいソリューションに会社のデータを移行(新しいタブで開きます)し始めます。この時点で、システムで従業員をトレーニングする方法を決定し、セッションのスケジュール設定および必要なトレーニング資料の作成または準備を開始します。
5. テスト: これは省略してはならないステップです。すべてが期待どおりに機能することを確認し、予想外の問題を修正することがきわめて重要です。プラットフォームをテストするときは、会社全体のユーザーを含めます。
6. デプロイメント: 稼働を開始します。早期段階では細かい問題が発生することが多いため、企業は変化に対する抵抗を軽減するために従業員トレーニングを優先する必要があります。段階的稼働を選択する企業もあれば、すべてのモジュールを一度に稼働させる企業もあります。
7. サポート: ユーザーが新しいシステムを利用するために必要なものがすべて揃っていることを確認します。これは継続的なプロセスであり、多くの場合ベンダーや専門家の支援を得て追加の構成が含まれる可能性があります。
実装のベスト・プラクティス
プロジェクトを開始する際は、次の実装のベスト・プラクティス(新しいタブで開きます)を検討してください。
- エグゼクティブ・スポンサーを確保する: このような広範囲にわたる重要なプロジェクトには、経営幹部、理想的には異なる会社を代表する複数の経営層からのサポートが必要です。
- 計画を早期に開始する: ERP要件を計画し、タスクに優先順位を付け、改善するプロセスを特定し、複数のベンダーを評価するために十分な時間を残します。
- コミュニケーションとコラボレーション: 発見から開発、稼働、さらにその後も、プロジェクト全体でコミュニケーションが不可欠です。組織全体の従業員から意見を求め、ソフトウェアがすべての従業員の日常業務に役立つことを確認します。
- 合理的な予測を立てる: プロジェクトの各段階の明確なタイムラインを設定し、特定の従業員に必要な予想されるコストと時間を決定します。利害関係者が途中で異動があることを理解していることを確認します。
- 最適なKPIを選択する: 部門長レベルの多様な部門と協力して、システムが追跡する必要のある、企業にとって最も価値のあるKPIを選択します。組織の大局的な目標を念頭に置きます。
ERP統合
ERPの実装を検討しているほとんどすべての組織には、検討中のERPのモジュールに置き換えることができるシステムが導入されています。そのため、ERPシステムの導入の一環として、既存のどのシステムを置き換え、どのシステムを統合する必要があり、どのシステムを独立させておくかを決定する必要があります。
ERPに送られる情報が多いほど、投資効果が高くなるため、ERPとは別にシステムを残すことは避けましょう。
既存のシステムをERPと統合する時期と、それらのシステムをERPベンダーのモジュールに置き換える時期を決定するには、次の3つの考慮事項があります。
まず、「既存のシステムは必要な役割を果たしていますか?」。そうでない場合は、ERPベンダーが提供する関連モジュールを使用する十分な理由があります。
次に、「既存のシステムが置き換え不可である場合、ERPと既存のシステムの間でデータが流れるようにするためのコネクタが、ERPベンダー、既存のシステム・ベンダーまたはサードパーティから提供されていますか?」。「その場合、それはどの程度有用ですか?」。データ移行は複雑です。これらのコネクタは、様々なベンダーのシステムを統合する適切な役割を果たすことができても、品質と更新への取り組みは異なる場合があります。ERPまたはスタンドアロン・システムにアップグレードすると、コネクタが破損したり、再処理が必要になったりする場合があることに注意してください。最悪の場合、新しいコネクタがないために、アップグレード計画が完全に失敗する可能性があります。
3番目に、「コネクタが存在する場合、それはリアルタイムで動作し、必要なすべてのデータが継続的に各システム間でやり取りされますか?」。リアルタイムで動作するコネクタもあれば、日次または週次でシステムを同期するコネクタもあります。システム間で限られたデータのセットのみを移動するものもあれば、たとえば、在庫管理システムからERPなど、一方向にのみ移動するものもあります。チームが広範なカスタム構成を行った場合、一部のデータ・タイプはコネクタに認識されない可能性があります。
最善の組合せのシステムを維持し、選択したERPと統合する場合は、コネクタが正しく機能していることの確認がすべてのアップグレード・サイクルの一部になり、大規模なカスタマイズによって問題が発生する可能性があることに留意してください。バックオフィス機能を自動化することを目標としている場合、リアルタイムの双方向操作が重要です。データのフローを維持するための専門知識を社内またはパートナーや仕入先から得られることを確認してください。
ERPのコスト
ERPプロジェクトのコストは、ベンダー、モジュールおよびデプロイメント・モデルによって大きく異なります。一般的に、総費用は年間10,000ドル未満(日本円で約130万円未満)から、年間数百万ドル(日本円で数億円)の範囲に及ぶ可能性があります。ERPシステムは対象企業のニーズを考慮して価格設定されるため、新興企業や高成長企業向けに構築されるシステムは、フォーチュン500の企業が使用するシステムよりも手頃な価格になります。
クラウドベースERP、特にマルチテナントSaaSオプションは、ハードウェアを購入したり、システムの専門家を採用したりする必要がないため、通常オンプレミス・ソフトウェアよりも初期費用が低くなります。SaaSソリューションでは、ベンダーが維持管理を行い、多くの場合、ユーザーごとに顧客に年間料金を請求します。
ERPの価格は、必要なモジュールによっても異なります。ソリューションには、財務および基本的な在庫/注文管理のコア機能が付属している場合がありますが、モジュールを追加すると追加料金が発生します。
オンプレミス・ソフトウェアでは、企業はより高額な永続的ライセンスを購入しますが、これは1回限りの費用です。SaaSと同様に、このソフトウェアの価格は必要なモジュールのタイプと数によって異なります。しかし、オンプレミス・システムを選択した場合は、ソフトウェアをホストするサーバーやその他のインフラにも費用がかかり、保守料金が発生することが多く、IT部門の強化が必要になる場合もあります。ハイブリッド・モデルは、クラウド・アプリケーションのサブスクリプション料金に加えて、オンプレミスERPをサポートするための多くのリソースが必要となるため、さらに高額になる可能性があります。
最後に、ERPのコストはライセンスだけに留まらないことに注意してください。様々なERPソリューションのTCOを計算する際は、カスタマイズ、保守、トレーニング、アップグレードおよびサポートに関連する実装と運営費用を考慮します。これらのコストはプロバイダごとに異なります。そのため、デュー・デリジェンスを行い、多くの質問をして、設備投資と運営費用の両方の合計支出額を明確に見積もることができます。
ERPの歴史
現在ERPと呼ばれているものは、1960年代に資材所要量計画(MRP)(新しいタブで開きます)システムの考案から始まりました。製造業者はMRPソフトウェアを使用して生産スケジュールを計画し、生産の実行に必要なすべての供給品があることを確認し、完成品在庫を追跡しました。20年後、テクノロジ・プロバイダは製造リソース・プランニング(MRP II)システムを開発しました。MRP IIソフトウェアも製造業者を対象としていましたが、生産計画を改善するための新機能が提供されました。
1990年代になって初めて、ERPは統合型業務管理プラットフォーム(新しいタブで開きます)としての現在のアイデンティティを獲得しました。この革新的なテクノロジにより、会計から製品開発、製造、注文配送、HRに至るまで、ビジネス全体が共通のデータベースにまとめられました。これらの初期のERPソリューションには、莫大な資本的支出と運営費用が必要でした。企業はサーバーを購入し、適切な専門知識を持つIT部門を雇用し、ライセンスと実装の費用を支払う必要がありました。その後も、保守とアップグレードに多額の費用がかかりました。
クラウドERPが登場する前は、アプリケーション・サービス・プロバイダからホスト型ERPソリューションを利用できましたが、これらのシステムは高価で複雑になる傾向がありました。
その後、1998年にNetSuiteが最初のクラウドERPを立ち上げました。クラウド運用モデルは先行投資を大幅に削減し、運用コストを予測可能にしたため、この分野に大きな変革をもたらしました。ベンダーがインフラを管理し、アップグレードを自動的にプッシュしたため、サーバーを購入したり新しくIT部門を増強する必要が減りました。
これにより、ERPは小規模な企業に手の届くものとなり、成長と収益性に拍車がかかったのです。
それ以来、クラウドERPは、過去20年間に見られた多くのイノベーションを生み出し、推進してきました。このコンピューティング・モデルにより、企業は社内の部門間および社外パートナーとのコラボレーションを向上させ、ビジネスの時間とコストを節約して推進する新しい洞察を生み出すことができました。
ERPの未来
ERPに伴う多大なメリットを理解した企業は、このシステムを強化する方法を模索しています。人工知能(AI)、ブロックチェーン、拡張現実(AR)、モノのインターネット(IoT)などのテクノロジが、今日のERPのトレンド(新しいタブで開きます)を形成しています。これらのテクノロジの多くは、業界をリードするERPソリューションにすでに組み込まれています。
たとえば、AIと機械学習は、勘定照合を自動化し、詳細な調査を必要とする取引にフラグを設定できます。これにより、会計チームの時間が節約され、最も面倒なタスクの負荷が軽減されます。機械学習テクノロジは、より多くの取引を処理するにつれて向上し、より正確に予測を立てることができるようになります。
ブロックチェーンはデータを安全な形式でパッケージ化し、サプライ・チェーン内の企業間の透明性を高めることができます。具体的には、特定の製品のステータスを詳細に表示し、原材料から完成品までのアイテムの行程の詳細な監査証跡を作成できます。これは、ERPが洞察を引き出すことができる情報にもなります。
拡張現実は小売業で基盤を築き、消費者はリビング・ルームに敷物や家具の3D画像を仮想的に配置して、購入する前にどのように見えるかを把握できるようになりました。ARを機能させるために必要なすべてのデータ・ポイントと画像をERPに保存できます。
最後に、ERPに情報をフィードバックできるセンサー、スキャナ、カメラなどのIoTデバイスの価値を認識する企業が増えています。たとえば、倉庫の自動化装置のパフォーマンスをモニターするセンサーから、装置の動作が遅くなったときに管理者に警告を発信できます。これは装置の修理が必要な兆候である可能性があり、装置が破損して業務が中断する前に業務に介入することができます。配送トラックのIoTトラッカを搭載すれば、ドライバが非効率なルートを通っていることを示し、常にGPSを使用するように提案できます。
適切なERPシステムの選択
ERPは、各企業の運営方法と調和する必要がある重要なビジネス・システムであるため、1つの最良のプラットフォームがあるわけではありません。必要な機能、推奨されるデプロイメント・モデルおよび会社の規模はすべて、ERPシステムを購入する際の決断に影響します。貴社の業種の企業と連携して成功した実績のある確立されたベンダーに目を向けてください。常に事例顧客について尋ね、成功事例をチェックするのも大切です。
企業は、IoTやブロックチェーンなどの新しいテクノロジに関するソフトウェア・プロバイダのロードマップも考慮する必要があります。
ビジネスの基盤となるモジュールから始めて、そこから構築します。多くの場合、企業は財務モジュールから始めて、基本的な会計タスクを自動化し、組織のリーダーが利用可能な現金と組織に出入りする資金の流れを簡単に確認できるようにします。製品ベースの企業では通常、在庫と注文管理をすぐにデジタル化することが求められます。これは、調達、保管および出荷に関して迅速かつ大幅な節約をもたらすことができるためです。ERPに追加するeコマース・アプリケーションは、この販売チャネルを利用する販売者にとって優先すべき事項です。一方、サービス組織は、PSA (プロフェッショナル・サービス・オートメーション)アプリケーションから始めて、従業員の時間とリソースの追跡およびプロジェクトの請求を簡素化できます。
その後、顧客とのコミュニケーションを改善できることからCRMモジュールが適切な投資となりますが、製造、調達および倉庫管理用のサプライ・チェーン管理モジュールは、購入と生産を需要に応じて調整できます。他に追加する妥当なものとしては、創造的な技術を通じて顧客を獲得および維持するためにERPに統合されるマーケティング・オートメーション・ソリューション(MA)が考えられます。
貴社にとって適切なERPシステムは、現在のニーズをサポートし、かつビジネスとともに成長する十分な拡張性があり、コスト削減を促進し、機会を活用するために役立つモジュールと機能を備えたものになります。
これは大きな決断であるため、時間をかけてすべての選択肢を十分に評価してください。
ERPプラットフォームの購入と実装は、かつて、恐れを抱かせるほど負担が大きい作業でした。しかし、今日利用可能なソリューションでは、企業は段階的に実装を進め、必要なときに必要な機能を追加できます。このソフトウェアはこれまでになく多くの組織に手の届くものとなり、組織のリーダーはこれを活用する必要があります。ERPは、競争を勝ち抜くための可視性と洞察力を求める企業にとって最低限必要なものとなっています。
ERPのFAQ
ERPは何の略ですか。
ERPは、エンタープライズ・リソース・プランニングの略で、企業が使用し始めたビジネス管理プラットフォームを指すために1990年に調査会社のGartner社が作成した用語です。
簡単に言うとERPとは何ですか。
ERPは、企業が日常業務のビジネス・パフォーマンスを実行およびモニターするために利用するソフトウェアです。財務からサプライ・チェーン、人事まで、会社全体のデータを中央リポジトリに格納し、そのすべての情報を分析してレポートできます。
ERPはどのように機能しますか。
ERPは、企業内の様々な部門から情報を受け取る中央データベースを利用するアプリケーションです。ERPには、会計、在庫管理、CRMなどの機能専用の統合モジュールが含まれています。ERPは、データを保存、表示、管理および解釈するための単一の場所を企業に提供します。
ERPシステムとは何ですか。
ERPシステムは、会計、製造、CRMなどの特定のビジネス・プロセスに焦点を当てたモジュールで構成されています。これらのモジュールは中央データベースを使用して機能し、リアルタイム・データへのアクセスを可能にし、データの重複を最小限に抑えながら、これらの部門全体のビジネス・パフォーマンスを可視化します。完全なERPシステムは、企業が予算編成、計画および財務結果の報告を行うのに役立ちます。
ERPが使用されるのはなぜですか。
企業はERPシステムを使用して、一元化されたシステム内の複数のビジネス機能からのデータを接続し、同じデータを使用した単一の正しい情報源を維持します。これにより、様々な部門が同じ結果で運用できるようになります。また、企業は手動プロセスを自動化し、エラーの機会を減らすことで時間と費用を節約します。
ERPは財務と会計専用ですか。
財務管理と会計は重要なERP機能ですが、機能はこの部門を超える広範囲にわたります。購入、在庫および注文管理、製造プロジェクト管理、ワークフォース管理、販売およびマーケティングなどに関連するタスクを自動化し、より適切に管理できます。
企業はなぜERPを使用するのですか。
ERPソフトウェアは時間とコストを大幅に節約できるため、企業にとって非常に重要なツールとなっています。ERPは、タスクの自動化に加えて、全社レベルの可視性とレポートを提供し、チームが時間と注意をどこに集中する必要があるかを役員や管理職層に伝えます。これは、差し迫った問題に対処すべきことを意味する場合があります。
ERPとMRPの違いは何ですか。
MRP (資材リソース計画)システムは、製造業者が生産実行の準備を改善するために使用するERPの前身でした。調達や在庫追跡など、MRPシステムが処理する製造関連のタスクは、今日のERPシステムのコンポーネントの1つにすぎません。
2層ERPとは何ですか。
2層ERPは、子会社、個別のビジネス・ユニットまたは地域オフィスを持つ大企業の間で注目を集めているアプローチです。これらのビジネス・ユニットやオフィスにレガシーERPの使用を強制するかわりに、層1システムと統合されたリソース消費量の少ないERP (多くの場合SaaSソリューション)で実行します。
クラウドベースERPの利点は何ですか。
クラウドERPの利点の多くは、コストの削減と難解な問題の減少です。クラウド・ソリューションは通常、実装がより安価で高速であり、ベンダーがすべての保守とアップグレードを行うため、実装後の費用を抑えることができます。また、ベンダーがすべてのハードウェアを管理するため、クラウドベースのシステムもシームレスに成長をサポートできます。