ERPシステムの導入を検討し始めたところであれば、最初の疑問は、このソフトウェアには自社にどんなメリットをもたらすだろうかということでしょう。ERPシステムは全社の中央データベースとして機能し、有用なレポート機能と全社の生産性を高め、コストを削減するための多数の機能を備えています。

これはERPに投資する主な理由のほんの一部です。本書ではこのテクノロジがビジネスにもたらすメリットを紹介します。このシステムによって、企業は新たにどのようなことができるようになるでしょうか。テクノロジによってどのようにコストが削減され、成長が促進されるのでしょうか。ここでは、ERPがビジネスにもたらす優位性を15に分けて、詳しく説明します。

ERPの15のメリットと優位性

ERPシステムの背後にある概念は、すべての部門とその情報を単一システムで統合するという単純明快なものですが、そのメリットは多岐にわたります。ここでは、ERPシステムがもたらす最も重要なメリットを15個紹介します。

  1. データ・セキュリティ

    データは最適な意思決定を行う上で重要なので、企業にとってかけがえのない資産となっています。ERPソフトウェアはその資産であるデータを保護できるよう支援します。すべてのデータが1箇所にまとめられ、セキュリティのレベルが異なる複数のシステムに分散されないため、保護のレベルが上がります。従業員のデスクトップに保存され、電子メールで受け渡しされるスプレッドシートなどの文書の代わりとなります。クラウドERPシステムでは、冗長性を確保し、単一障害点から保護するために、情報が複数のリモート・サーバーに分散されており、セキュリティがさらに高められています。これは、顧客の機密データを多数扱う企業では特に重要です。

    ERPシステムではデータを表示および編集できるユーザーを制限することでもデータ・セキュリティを高めることができます。ほとんどのシステムには管理が容易な権限が備えられ、それを使用して、従業員が必要な情報のみを表示できるように制限し、不正行為やその他の悪意のある行為が行われないようにします。

  2. 標準化/一元化されたデータ

    ERPの価値の多くは、様々な部門の情報すべてが1箇所に保存されることによってもたらされます。そのようなシステムがなければ、データの多くが組織全体の様々なアプリケーションやスプレッドシートに分散されるため、従業員が必要なデータを探すことが難しくなります。また、一貫しない形式でデータが重複することにもつながり、さらに課題が発生します。

    ERPシステムでは重要なデータがすべて標準化されるため、このような状況の解決にも役立ちます。すべてのデータが1つのシステムに、同じ形式で保管されるため、レポートや分析を実行する際に問題が発生しません。情報の標準化によって、より充実した情報に基づく意思決定に必要な洞察をすべて取得できるため、企業は時間と費用を最大限節約できます。

  3. コンプライアンス

    正確で最新の記録が簡単に常に検索できるようになれば、企業が遵守すべき規制への対応に必要な作業量を大幅に削減できます。また、ソフトウェアに付属のカスタマイズ可能なレポート・ツールによって、非常に簡単にコンプライアンスを追跡し、必要に応じて調整できます。監査人が確認する必要がある情報もすべて簡単にアクセスできるため、監査に対する準備も整います。

    ERPシステムによっては、GAAPなどの特定の財務基準や、サーベンス・オクスリー法(SOX)などの法令に対応しているものもあります。優れたソリューションでは、法令の変更を反映するようにアップデートが行われ、常に法令に準拠できるようになっています。特に規制の厳しい業界では、コンプライアンスを確保し続けることが急激に困難になることがありますが、ERPによって対応が大幅に容易になります。

  4. 生産性の向上

    ERPシステムを活用して生産性を高める方法は無数にあります。その1つは、多数の定型タスクを自動化して、組織により多くの価値をもたらす他のプロジェクトに従業員が注力できるようにすることです。プロセスを簡素化し、必要な情報を探すのにかかる時間を短縮して、様々なタスクを迅速に完了できるようにもします。全社の情報が可視化されるため、従業員は目的のデータ・セットやプロセスの実施方法を探し回る必要がありません。

    生産性が向上すれば、ERPプラットフォームがない場合に比べて、追加の人員が少なくて済みます。業務量が大幅に削減されれば、従業員は新しいタスクに取り組み、自分が持つ真のスキルと専門知識を活用するプロジェクトに集中できるようになります。

  5. 可視性

    可視性はもう1つの広範かつ基本的なERPのメリットです。従業員全員がビジネスの様々な情報を可視化できるのは強みとなります。管理職層が意思決定に必要なコンテキストすべてを把握できるため、迅速かつ的確な意思決定が可能になります。たとえば、まだ倉庫に到着していない、輸送中の発注書のステータスを購買部門が確認できると、過剰在庫や不足在庫を回避するために発行前の発注にそれを反映できます。

    他の部門が管理するプロセスやデータのステータスが可視化されれば、すべての部門と個人が職務をより適切に実行できるようになります。また、この情報を探すためにのみ費やされる時間と労力も削減されます。

  6. 拡張性

    最新のERPシステムの優れた点は、現在必要な機能を使用しながら、後から機能を追加できる余地も残せることです。つまり、システムをビジネスの成長と進化にあわせてスケーリングできます。チームの拡大に伴って新しいユーザーを追加することもできます。既存のシステムを導入した後でビジネスが大きく変化したからといって、新しいERPソリューションを導入する必要はありません。

    ビジネスを急速に成長させる計画がある場合、クラウドERPシステムが持つ非常に高い拡張性が大いに役立ちます。クラウド・システムはリモート・サーバーで運用されるため、ソリューションを円滑に実行し続けるためにリソースを追加することが、自社で処理する場合と比較してはるかに簡単です。このためIT部門の作業が減り、専門職を雇う必要がなくなります。

  7. モバイル性

    コンピュータではなく、スマートフォンやタブレットを使用して多くのタスクを実行することに慣れている従業員が増えています。今日のERPシステムはその傾向を反映し、モバイル対応になっています。ユーザーはWebを介してクラウド・システムにアクセスするため、モバイル・ブラウザでダッシュボード、レポートおよびその他の必要な情報すべてを表示できます。多くのベンダーはモバイル・アプリも用意しています。アプリでは、小さな画面でもより良いユーザー体験を提供できるようになっています。

    企業によっては、モバイル性はあれば便利なものではなく、必須の機能です。現場の作業員や頻繁に出張する従業員を抱え、コンピュータ以外のデバイスからビジネスの最新状況を確認できる必要がある場合などです。モバイル対応のERPソリューションがあれば、承認やキャッシュ・フロー(売掛金および買掛金)のモニタリングといった重要なタスクにも対応できます。

  8. コスト削減

    事業主や管理職層にとって、ERPシステムを購入する最も説得力のある理由は、総コストを大幅に削減できるということです。先に説明した自動化で、多数の管理コストや運用コストを削減あるいは完全になくすことができます。たとえば、多数の文書による記録が必要な手動のデータ入力や処理の多くは、このソフトウェアの導入によって一掃されます。

    このソフトウェアから得られるすべてのインサイトによって、他の様々なコスト節約の機会も生まれます。組織の動向を一元的にモニターできることから、多額の費用の発生源を迅速に特定できるため、コスト削減が容易になります。また、ERPシステムでは計画も改善されるため、コスト増大の原因となる緊急注文や過剰生産、過剰注文も防ぐことができます。ERPシステムでコストを削減する方法は無数にあるため、そのソリューションによって、多くの場合、短期間でROIが達成されます。

  9. 整理されたワークフロー

    ERPの実装を進める際には、自社システムに関する専門家と協力してプロセスを評価し、新しいシステムでタスクを遂行するもっと優れた方法があるかどうか判断することをお薦めします。それが最適だからではなく、長年そうしてきたからという理由で業務が特定の方法で行われていることがよくあります。この点でもERPが役立ちます。ステップを削減し、改善を加えて、業務をより迅速かつ簡単に行えるようにします。

    ERPはデータを標準化するのと同様に、ワークフローも標準化します。同じプロセスの処理方法が、部門によって異なる場合があります。買掛金管理部門の2人の従業員の間で支払の手順が異なることすらあります。ERPシステムは、そのような不一致をなくし、全員が同じベスト・プラクティスに従うようにします。

  10. リアルタイム・レポート

    レポートは、ERPシステムから最もすぐに得られる、最大のメリットの1つです。財務、在庫、受注、調達、営業、マーケティング、人事など、思いつくあらゆる機能にわたってレポートをカスタマイズできるため、可能性は無限です。測定対象や会社にとって最も重要なKPIが何であれ、ERPソリューションによって計算できます。ビジネスの様々なコンポーネントのパフォーマンスを追跡できるのみでなく、部門を比較して、事業を推進している要因と阻害している要因を理解できます。

    レポートには最新のデータが反映されていることが不可欠です。それが、リアルタイムであることが重要な理由です。前四半期の収益の数値の取得に2週間かかるとなれば、情報がすでに古くなって関連性がなくなっている可能性があるため、有用性が低くなります。一方、売上が発生するたびに総収益がリアルタイムで更新されれば、その情報をすぐに意思決定に使用できます。このことは、今日のペースの速い、競争の激しい環境で重要になっています。

  11. 業務効率

    ERPソリューションは、ビジネスのあらゆる部分に関係するため、全社の効率を高めます。リクルーターから倉庫管理者、役員に至る誰もが、自動化が進み、情報を入手できるようになることで改善を実感できます。プロセスに時間がかからなくなるため、しばしば会社のみならず、顧客にもメリットが生まれます。これは運用コストを大幅に削減し、収益を向上させます。

    例として、10個の製品を製造し、平均利益率が20%のメーカーを考えてみましょう。ERPシステムがあれば、最も利益率の低い製品を簡単に特定できます。さらにデータを詳しく調べ、利益率が最も低い2つの製品は労務費が大幅に高いことを突き止めます。従業員に対する聞取りの結果、これらの製品の製造に関わる作業のほとんどが手作業で時間がかかっていることがわかりました。そのため会社は、これらの製品の製造を自動化する機械を購入しました。すると、平均利益率は25%に向上しました。そのようにして、ERPソフトウェアは企業の費用を年に何十万ドル(何千万円)も節約しました。

  12. カスタマー・サービスの向上

    ほぼすべての企業は、他の企業と同じ顧客をめぐって競い合っています。そのため顧客体験は非常に重要です。顧客体験の大半は、企業が提供するカスタマー・サービスのレベルによって決まります。ERPは、連絡先詳細、注文履歴、サポート案件などから取得したすべての顧客情報を1箇所で管理して、企業のカスタマー・サービス改善を支援します。このため、顧客がヘルプを必要としているときに、より迅速なソリューションと、よりパーソナライズされた体験を容易にします。

    ERPシステムによってサービスの質が向上する理由は他にもあります。在庫と注文情報の精度が高まるため、顧客がほぼ確実に、注文した正しい商品を期日どおりに受け取るようになります。これらの問題が発生しにくくすることで、顧客満足度が高まり、リピート購入者になる可能性が高まります。

  13. コラボレーション

    ここまでに紹介したメリットの多くが、コラボレーションを促進します。他の部門の業務の進め方と参照している情報が可視化される結果、業務の連携が大幅に容易になり、従業員は同僚を支援する機会を捉え、先回りして手助けを申し出ることができます。部門が孤立することはなくなり、その部門のみがアクセスでき、他のバックエンド・システムと統合されていないアプリケーションも使用されなくなります。

    従業員間のコミュニケーションが増え、協力するようになれば、会社全体の利益となります。従業員は協力して、排除できる重複作業を発見し、日常業務を改善する方法を考えることができます。コミュニケーションの欠如や、他の従業員の業務内容を認識できないことに起因する問題を回避するためにERPソリューションが役立ちます。

  14. 柔軟性

    ERPプラットフォームはあらゆる業態および規模の企業で機能するように設計されています。それが、大手プロバイダがシステムに大幅な柔軟性を持たせている理由です。この柔軟性があることで、ユーザーは独特なプロセスや一般的でない指標などの特定の要件にあわせてシステムを調整できます。独自の要件に適格に対応する機能のためにERPシステムは複雑になっていますが、複雑化することなしに、柔軟性は実現できません。

    この柔軟性は、時間が経過してビジネスが進化した際に、特に重要になります。時間の経過とともに最も効率的なワークフローとKPIが変化しても、このような柔軟性により、システムは引き続き有効に機能し、置き換える必要がありません。

  15. 正確な予測

    何が起こるのかがわかっていなければ、会社がそれに備えることはできません。そこで予測を利用します。幅広い過去のデータや、時には他の情報も利用して、将来の需要、収益、費用などの数値を予測します。ERPシステムが稼働すると、すべてのデータが1箇所に集められ、より正確で包括的な情報に基づいて予測できるようになるため、予測の精度が高まります。

    正確な予測があれば、起こる可能性が高いことに的確に備えることができます。売上が30%上昇すると予測された場合は、戦略的に在庫の購入量を増やせます。サービス業の場合は、需要が高まると予測されるスキルを持つ従業員を増やします。売上よりもコストのほうが増加率が高いと予測される場合は、費用を削減する方法の検討に着手できます。つまり、予測を改善すると、組織が(必要なリソースすべてを準備することで)収益を高め、(間違った部分に過度に支出しないようにすることで)コストを削減するという両面で役立ちます。

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ERPシステムの選択

会社にとって適切なERPシステムとは、これまでに説明したメリットすべてを実現するための機能を少なくとも提供するものです。様々なプロバイダのソリューションを評価する際には、調査や質問を通じて、自社に対して具体的にどのようなメリットがあるのかを見極めてください。

もちろん、最適なERPプラットフォームは、会社の規模、業種、ビジネス・モデル、将来の目標といった詳細によって異なります。現時点で最大の効果を上げているERPモジュールはどれで、今後追加する必要があると思われるモジュールはどれですか。システムが現在のニーズに対応できるのみでなく、会社の成長と優先事項の変化をサポートできる拡張性と柔軟性を備えていることを確認してください。

それを踏まえて考えると、クラウドERPシステムは多数の企業にとって最適なオプションです。半数以上の企業がオンプレミス・システムではなく、クラウドERPソフトウェアを選択しており、導入数は増え続けています。クラウド・システムでは、システムを実行するハードウェアの購入や保守が不要なため、企業の作業負荷が大幅に削減されます。SaaS ERPの場合は、ベンダーがソリューションのホストに加え、システムの保守やアップグレードすべてに対応するため、さらに多くのメリットがあります。

NetSuiteはSaaS ERPの主要ベンダーの1つであり、全世界にを超える顧客がいます。NetSuite ERPを利用すれば、企業は単一のプラットフォームでビジネス全体を管理できます。NetSuiteには、会計、在庫管理、受注管理、生産、サプライ・チェーン、コマースなどのソリューションが用意されており、組織全体でベスト・プラクティスを活用できます。NetSuite ERPは、すべてのコア・ビジネス機能のデータとプロセスを統一し、全社的な可視性、大幅な効率化、拡張性、モバイル性、データ・セキュリティおよびコンプライアンスといった、本書で取り上げたすべてのメリットを提供します。またこれはクラウドに基づくシステムであるため、ユーザーは世界中のどこにいても、インターネットに接続されたあらゆるデバイスから重要な情報にアクセスできます。さらに、NetSuiteはビジネスの成長とともに簡単に拡張することができ、必要に応じて新しい機能を追加できるように設計されています。

初めてのERPシステムへの移行や既存システムのアップグレードは大規模なプロジェクトになりますが、このシステムがもたらすメリットはその労力に十分値します。このテクノロジは、全員の認識を揃え、強力なインサイトを提供すると同時にコストや障害を削減することで、ビジネスの発展を支援します。

あらゆる規模や業種の多くの企業が、自社ビジネスの全体像をリアルタイムで把握できることの価値に気付いています。ERPソリューションを使用しなければ、競争上不利な立場に置かれかねません。ERPシステムのもたらす莫大なメリットを認識することが早ければ早いほど、大きな成果を実現できます。今こそ検討と実装計画に着手してください。