カスタマーリテンション(顧客維持)は、ビジネスの成功と持続可能性において重要な役割を果たします。これを適切に行えば、企業の利益も増加します。

リテンション率を高めるには、まず顧客離れの原因を突き止める必要があります。次に、より高額な商品をより頻繁に購入してくれるロイヤルカスタマーを生み出すための戦略を導入します。ロイヤルカスタマーを喜ばせ、購入を促すには何が必要かを特定し、それを再現しましょう。

カスタマーリテンションとは?

カスタマーリテンションとは、既存顧客を維持し、その顧客から継続的に収益を生み出すための企業の能力を指します。企業は、初回購入者をリピート顧客に変えるために、さまざまな戦術を用います。つまり、企業はカスタマーリテンションを強化することで、既存顧客の収益性を高め、顧客生涯価値(LTV)を最大化することができます。

カスタマーリテンションの詳細

カスタマーリテンションとは、企業が既存顧客に自社の製品やサービスを継続的に購入してもらうためのプロセスであると考えることができます。顧客はすでに購入済みであるため、製品やサービスを購入しそうな企業や個人の連絡先情報を収集するための活動である、リードジェネレーションとは異なります。

カスタマーリテンションでは、既存顧客に焦点が当てられます。その目的は、優れたカスタマーサービス、製品価値、類似製品やサービスと比較した際の明らかな優位性などを通じて、カスタマー・ロイヤルティを構築し、リピート購入を増やすことです。

カスタマーリテンションが重要な理由

顧客ベースからリピート購入を獲得し、継続的に価値を引き出すためには、カスタマーリテンションが不可欠となります。新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの5倍もかかると一般的に言われています。リテンション率を向上させる上で最も重要な要素の2つは、顧客満足度、そしてロイヤルティを理解することです。同時に、企業は、カスタマーサービスの質の悪さや遅れ、あるいは製品の欠陥など、潜在顧客や既存顧客の損失につながる要因についても理解する必要があります。

顧客獲得とカスタマーリテンションの違い

顧客獲得とは、企業が新規顧客を獲得するための活動やプロセスを指します。これには、リードの発掘や見込顧客を顧客に変えるためのあらゆる取り組みが含まれます。

一方、カスタマーリテンションは顧客を獲得した後の活動を指します。購入後は、ブランドに対するロイヤルティを醸成し、リピート顧客になってもらうよう働きかけます。

顧客離れの原因とは

顧客は、カスタマーサービスの質の悪さ、購入プロセスの煩雑さ、期待する価値が得られないなど、さまざまな理由から他社へ乗り換える傾向があります。だからこそ、顧客の動向を把握し、問題点を突き止めることが重要です。また、顧客からのフィードバックに耳を傾け、それを企業レベルの計画に組み込むことも重要です。

カスタマーリテンションに注力すべきタイミング

カスタマーリテンションにいつ注力すべきかどうかは、ビジネスの成熟度によって決まります。例えば、会社を立ち上げたばかりであれば、既存顧客を維持する必要がないため、顧客獲得のほうに注力すべきでしょう。この段階にある企業は、最初の顧客基盤を育成するための戦略を開発することが重要となります。売上も顧客も獲得していない段階にある企業は、カスタマーリテンションについて考える必要はありません。有効な戦略としては、共同ブランド・コンテンツの作成、貴社と非競合企業で作成したコンテンツの利用、有料広告キャンペーンの実施などが考えられます。

しかし、種を蒔くだけで良いというわけではありません。消費者との関わりを深め、購入プロセスをできるだけスムーズなものにすることは、ビジネスの推進力ともなります。また、このような取り組みの中で、何が効果的かを判断するためのデータが増え、カスタマーリテンションメールキャンペーンやアンケート調査などの戦術を開始することもできるでしょう。これにより、既存顧客や過去の顧客に追加購入を促すことができます。

事業が軌道に乗り、より安定した売上を上げられるようになれば、顧客獲得よりもカスタマーリテンションを優先した戦略を導入することができます。そして売上が着実に伸び、顧客基盤が一定規模に達したら、カスタマーリテンションの取り組みにより多くの時間と注意を割くことができます。この段階にある企業は、すでに安定した(そして理想的にはロイヤルティの高い)顧客基盤を確保できているため、ロイヤルティ・プログラムや紹介プログラムなどを活用することが理にかなっています。

カスタマーリテンションのメリット

カスタマーリテンションの一番のメリットは、各顧客から最大限の収益を得られることです。そしてさらに、以下のようなメリットもあります。

  • 利益の増加: 多くの企業は既存顧客から収益の大半を上げており、BIA/Kelseyのレポートでも中小企業の61%(opens in a new tab)がこの点に同意しています。つまり、既存顧客の維持に重点的に取り組むことが優先事項だということです。これにより、企業は、収益の増加だけでなく 利益率の増加も見込むことができます。
  • コスト削減: Bain & Companyによると(opens in a new tab)、既存顧客の維持コストは新規顧客の獲得コストの5分の1から25分の1程度であるため、長期的にはより費用対効果の高い戦略となります。
  • 平均注文額(AOV)の増加: リピート顧客は、時間の経過とともにより多くのお金を費やす傾向があり、平均注文額も増加します。このため、Bain & Companyによると、維持率がわずか5%増加すると、利益は25%から95%増加する可能性があります。また、Gallupの調査によると(opens in a new tab)、ロイヤルカスタマーはそうでない顧客と比較して、再び購入する可能性が23%以上高いとのことです。
  • ブランド・アンバサダーの起用: 口コミは、ビジネスを自然に成長させるための最善の方法のひとつです。顧客のロイヤルティが高ければ高いほど、彼らはポジティブな体験を共有し、貴社を他の人に勧める可能性が高くなります。

カスタマーリテンションに関する統計

カスタマーリテンションに重点的に取り組むことがビジネスにとって不可欠であることを示す統計をいくつかご紹介します。

リテンション率と主要評価指標の測定

カスタマーリテンション戦略には、販売数以外のデータも使用し、取り組みの有効性を定量化する必要があります。リテンション率を決定するために使用できる主要評価指標をいくつか見てみましょう。

顧客離反率の計算式

顧客離反率とは、特定の期間内に企業が失った顧客数を既存顧客ベースと比較したものです。顧客離反率を計算するには、特定の期間の終わりまでに失った顧客数を、その期間の開始時点の顧客総数で割ります。

例えば、四半期の開始時に2,000人、終了時に1,300人の顧客がいた場合、上記の計算式に当てはめると以下のようになります。

700(失った顧客数)/2,000(四半期の開始時点の顧客総数)= 0.35

つまり、その四半期に離反した顧客の割合(離反率)は35%だということです。

リテンション率の計算式

リテンション率を計算するには、まず、特定の期間に獲得した顧客数を特定します。そして、その数字を、その期間の終了時点での総顧客数から引きます。次に、この数字をその期間の開始時点での顧客数で割ります。

リテンション率
(期末の総顧客数 新規顧客数)/ 期首の顧客数 * 100

例えば、四半期当初に2,000人に顧客がいて、さらに400人の顧客を獲得したものの、期末には1,300人の顧客しか残っていないという場合には、次のようになります。

リテンション率
(1,300 400)/ 2,000 = .45

つまり、過去3ヶ月で45%の顧客を維持したことになります。

リピート率

リピート率は、既存顧客が複数回購入する可能性を測定するものです。

リピート率を計算するには、2回以上購入した顧客の数を累計新規顧客数で割ります。

例えば、1か月間に複数回購入した顧客が4,000人、累計新規顧客数が7,500人だった場合、計算式は次のようになります。

4,000 / 7,500 = 0.53

つまり、リピート率は53%となります。

購入頻度

購入頻度の計算式はリピート率に関連しており、各顧客の平均注文数を表します。リピート率の算出に使用した期間(1か月または四半期など)と同じ期間の、総注文数を累計新規顧客数で割ります。

例えば、貴社の1か月の注文数が30,000件で、累計新規顧客数が7,500人だったとします。この場合、次の計算式を使用します。

30,000 / 7,500 = 4

つまり、平均的な顧客は4回購入したことになります。

平均注文額(AOV)

AOVは、1回の購入あたりの平均金額を示します。リピート購入率と同じ期間を使用し、年間総収益を処理した注文数で割ります。

例えば、昨年、10万件の注文で100万ドルの収益を上げた場合、計算式は次のようになります。

$1,000,000 / 100,000 = 10

各注文の平均額は10ドルとなります。

クラウドCRMで
No.1の実績

お問い合わせ

カスタマーリテンションの例

もちろん、顧客からのフィードバックをしっかりと受け止め、パーソナライズされたEメールキャンペーンを送り、迅速なレスポンスを心がけることには大きな意味があります。しかし、顧客を惹きつけ、維持する最善の方法のひとつは、顧客にブランドの一員であると感じてもらうことです。その一例として、新製品ラインや既存の製品の新機能の導入に十分な時間をかけ、盛り上げることが挙げられます。

例えば、顧客からのフィードバックを参考にして、ユーザー・エクスペリエンスを大幅に改善するための新機能をいくつか導入したとします。その場合、新機能が顧客もたらすメリットや利便性について詳しく説明したメールや、その他のマーケティング・メッセージを送信します。その中で、最新のリリースについて宣伝し、同時に既存顧客に新し機能について紹介することで、話題を喚起することができます。これを行うことの目的は、顧客が再び製品やサービスを購入したり、他者に推奨したりする時間を十分に確保することです。

教育も顧客との関係を深める素晴らしい方法です。例えば、顧客が購入した後に、複雑な製品やサービスについて順を追って説明する一連のメールを送るといった方法があります。あるいは、顧客がオンラインで予約できるような機会を提供するのもよいでしょう。その後、貴社のチームの担当者は詳細なコンサルティングを行い、顧客の質問に答えることができます。また、オンラインコースを作成して、新顧客に製品に関するトレーニングを提供するといった、より間接的なアプローチでも、大きな効果を上げることができます。

業界別のリテンション率

リテンション率は業界によって大きく異なります。企業は自社の維持率を評価するにあたり、自社の業界で何が一般的であるかを理解することが重要です。CustomerGaugeが発行した2018版NPS® & CX Benchmarks レポート(opens in a new tab) によると、平均的な維持率が最も高いのはメディア業界と専門サービス業界で、84%となっています。次に高いのは自動車/運輸業界と保険業界で83%、そしてITサービス業界が81%となっています。

小売業とホスピタリティ、旅行業とレストラン業はそれぞれ63%、55%と最低の数値となっています。ホテルや航空会社、外食、消費財の購入などに関しては顧客に多くの選択肢があるため、これらの業界では数値が低くなっていることが考えられます。しかし、このレポートでは、ほぼすべてのカテゴリーでリテンション率が50%未満の企業と95%以上の企業が存在していることが指摘されており、多くの組織がリテンション率を向上させるチャンスがあることを示しています。

カスタマーリテンションを改善するための5つの戦略

リテンション率を向上させるための実践的なアイデアをいくつかご紹介します。

  1. 顧客とのエンゲージメント: 貴社のマーケティング・チャネルを見直し、顧客とエンゲージメントを図るための最適な方法を特定しましょう。ソーシャルメディア、Eメールマーケティング、オンラインイベントなど、一番反応が良いのはどのチャネルでしょうか?また、顧客がブランドの一員であると感じられるよう、顧客に今後の製品やサービスについて意見を求めましょう。
  2. 購入プロセスをよりスムーズに: 顧客が製品やサービスを購入する際に直面する障害や課題の数を減らしましょう。 eコマース(opens in a new tab)では、ページをもっと早くロードできるよう設計したり、チェックアウト手順を簡素化したりすることも有効です。店舗では、顧客の購入の準備が整ったらすぐにスタッフが対応できるようにすることで、摩擦を減らすことができます。
  3. カスタマーサポートの向上: サポートに連絡するための複数の方法を顧客に提供します。これには、Webサイト上でのライブチャット、専用電話番号、電子メール、ソーシャルメディア、オンラインのFAQ ページなどがあります。らに、迅速な対応を確保することも重要です。スタッフを十分にトレーニングし、ベンチマークを使用してパフォーマンスを測定することで、顧客が期待するコミュニケーションを提供することができます。
  4. コミュニティの構築: 貴社の担当者と顧客が交流できる特別な会員性プログラムやフォーラムを設けることで、ブランドに対するロイヤルティと話題性を高めることができます。その他のアイデアとしては、常連客に割引コードを提供したり、既存顧客にインセンティブを提供する紹介プログラムを作成したりすることが挙げられます。
  5. ロイヤルティ・プログラムの導入: ロイヤリティ・プログラムを導入することで、既存顧客の購買意欲を高め、より頻繁な追加購入を促進することができます。ロイヤルティ・プロ
    customer retention
    グラムでは、無料製品や大幅な割引など、既存顧客が好むような特典を用意しましょう。

CRMシステムはカスタマーリテンションにどのように役立つのでしょうか?

顧客関係管理(CRM)システムは、連絡先情報、注文履歴、過去のコミュニケーション、さまざまなマーケティング・キャンペーンやプロモーションに対する反応など、顧客に関する情報を一元的に把握できるようにします。CRMシステムは、顧客の行動に関する貴重なインサイトと、顧客にアプローチするための最も効果的な方法を提供します。これにより、貴社は、それぞれの顧客にマッチしたオファーを提供できるようになります。CRMシステムはまた、顧客獲得やカスタマーリテンションの取り組みにおいて、顧客がどの段階で離反する傾向にあるのかを特定するのにも役立ちます。

適切なCRMソリューションの選択

業界をリードするCRMソフトウェアは、リードスコアリングや分析などの機能が備わっています。これらは、コンバージョン率や顧客生涯価値を高めるためのより良い意思決定に役立ちます。さらに、これらの情報をすべて1か所に集約することで、カスタマーサービスが改善され、その結果、1回限りの購入者をリピート顧客に昇華させられる可能性が固まります。

どのようなビジネスも、カスタマーリテンションに注力すべきですし、継続的な改善に努めるべきです。特に、組織が成長するにつれて、その重要性は高まります優れた製品やサービスを提供することは、カスタマーリテンションの第一歩です。そしてそれが実現できたら、顧客基盤の中でロイヤルティを高め、新たな販売機会を特定する方法を模索する必要があります。