会計は、組織の財務活動の現状に焦点を当てた幅広い業務です。しかし、今日の会計担当者は、戦略的な事業計画よりもスプレッドシートに慣れている「数字に強い人」というステレオタイプとは大きく異なります。実際、会計担当者や財務部門が提供する洞察は、ビジネスのあらゆる分野の戦略を方向づけ、形成する重要な役割を果たしています。

会計担当者は、経営陣、投資家、取締役会、人事、IT、営業、マーケティング部門などの利害関係者と緊密に連携し、企業と政府機関、税務当局、規制当局との連絡役も務めています。

スタートアップ企業や非営利団体、小規模企業などでは、パートタイムや契約ベースで働く経験豊富なCFOや会計パートナーと協力することがありますが、内部であれ外部委託であれ、会計機能は成功にとって欠かせない要素です。

会計とは

会計とは、企業の取引を記録し分類し、それらの活動を要約、分析、報告するプロセスです。その結果得られる情報(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、予測、その他のレポート)は、ビジネスリーダーが以下のような判断を行う際に役立ちます。

  • 在庫水準の調整または評価
  • 新規ビジネス機会の調査
  • 収益性の最大化
  • キャッシュフローの管理
  • 企業の財務状況の分析

会計担当者が作成するレポートやその他の情報は、企業外でも、融資者や投資家、監査人、そして公開企業の場合は投資家によって使用されます。

要点のまとめ

  • 会計は、基本的な簿記から、企業の財務状況の分析、売上予測、税務処理、法的コンプライアンスの確保まで、幅広い活動を含みます。
  • 企業では、管理会計、原価会計、プロジェクト会計、税務会計、財務会計の5つの主要な会計が使用されています。
  • 日本の上場企業は、日本基準(J-GAAP)、国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(US-GAAP)のいずれかの会計基準を採用しています。

会計の仕組み

すべてのビジネスには会計機能が必要です。小規模なビジネスでは、1人の担当者がすべての会計業務をこなし、CFO(最高財務責任者)としての役割を兼ねる場合もあります。一方で、特に税務の観点から外部税理士や会計士を雇うのが合理的な場合もあります。多くの小規模ビジネスでは、収入や支出を管理するためにソフトウェアを使用し、そのデータを外部の税理士や会計士に送ってレビューを依頼します。

企業が外部の会計パートナーを利用するか、社内の従業員を雇うかにかかわらず、会計業務には、財務活動の記録、分類、分析、報告が含まれます。内部向けのレポートは、マネージャーが資金を割り当てたり、製品の価格を決めたりといったビジネス上の意思決定を支援します。また、その他のレポートは、法令遵守、税務、投資家の誘致、リース申請などに使用されます。

会計業務の種類

会計には多くの専門分野があります。企業では、管理会計、原価会計、プロジェクト会計、税務会計、財務会計の5つの主要な会計が使用されています。

管理会計

管理会計は、意思決定者がビジネス戦略を策定・改善するために必要な財務データのレポート、分析、解釈を提供します。管理会計担当者はCVP分析(損益分岐点分析)を実施して計画をサポートし、組織構造について意見を述べ、差異分析を行います。

製造業会計

製造業会計は製品を作るためにかかる費用、原材料や人件費、供給コストに焦点を当てています。原価計算から得られた情報は、在庫の評価、製品販売価格の設定、類似プロジェクトの予算作成といった業務を最適化するために使用されます。

税務会計

税務会計は所得税や法人税、消費税の税務申告書の作成や税金の支払いに関わる業務を行います。会計担当者は、企業が複雑かつ変化し続ける法律に遵守していることを確認します。

プロジェクト会計

プロジェクト会計は、プロジェクトマネージャーや会計担当者が、プロジェクトごとに主要な財務業務を統合し、進捗や成果を経営陣に報告するために使用します。

プロジェクトマネージャーは、プロジェクト会計を利用して、特定のプロジェクトにおける直接費、間接費、収益を把握し、それを基に、プロジェクトの予算や作業分解構造(WBS)を調整する必要があるかどうかを決定します。

財務会計

財務会計は、ビジネスに関心を持つ外部関係者に情報を提供することに焦点を当てています。財務会計担当者の一般的な仕事は、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を作成することで、それらは投資家が企業の業績を理解したり、銀行に融資を依頼したりする際に使用されます。

会計が重要な理由

会計は、複数の重要なビジネス機能をサポートしています。会計の基本的な役割は、収益、費用、資産、負債、株主資本を追跡し、キャッシュフローを管理し、顧客が支払いを行ったかどうか、また、企業自身が請求書を支払ったかどうかを把握できるようにすることです。

会計は、将来の計画立案に役立つインサイトも提供します。たとえば、管理者は在庫情報を利用して、製品の製造コストが上昇しているかどうかを確認し、それに応じて価格を調整したり、仕入先を変更したりできます。また、販売データを分析して、どのような新製品を追加すべきか、どの顧客により注意を払うべきかといった判断材料を得ることもできます。

会計担当者は、資金調達や投資家の確保も支援します。ほとんどの貸し手は融資を行う際、中小企業であれ大企業であれ、その事業が継続可能であるという証拠を必要とします。投資家もまた、投資から得られるリターンを評価したいと考えます。

さらに、会計は税務およびコンプライアンスの確保にも役立ちます。公開会社の場合、決算公告が義務付けられており、正確な財務諸表の作成が必要です。また、非公開会社・公開会社の両方が、課税期間の終了日の翌日から2ヵ月以内に申告書を提出することが義務付けられています。報告内容に誤りがあると、企業は過少申告と見なされ、税務署による監査や罰金の対象となる可能性があります。逆に、過剰申告の場合は、必要以上の税金を支払っている可能性もあります。

会計の歴史

会計は、古代文明が初めて物品の交換を始めた時から存在していました。最も古い会計の証拠は、紀元前3300年頃のエジプトとメソポタミアの粘土板に見られます。

現在の会計の概念のいくつかは、中世ヨーロッパで生まれました。1458年には、商人ベネデット・コトルリが、借方・貸方の会計システムを考案したとされています。しかし、世間で一般的に会計および簿記の父として知られているのは、イタリア人数学者でフランシスコ会の修道士であったルカ・バルトロメオ・パチョーリです。彼は1494年に出版した著書『Summa de Arithmetica, Geometria, Proportioni et Proportionalita(算術・幾何・比及び比例全書)』の中で複式簿記について説明しており、今日に至るまで会計の教育や実践に影響を与えています。

会計専門職

会計専門職は、古代文明や初期の会計帳簿の時代から大きく進化しました。現在では、U.S. News & World Reportの「2019 Best Jobs」によると、最も優れた職業の一つとされています。

会計専門職の役割

会計専門職は一般的に、さまざまな財務業務を行います。一般的な業務には、帳簿の記入、財務報告書の作成、予算の策定などがあります。その他にも税務申告や経営計画、コンサルティングなどを行うことがあります。

なかでも公認会計士は、監査業務が行える唯一の国家資格です。公認会計士のライセンスを取得するには、公認会計士試験の合格と3年以上の実務経験等の条件を満たす必要があります。公認会計士は通常、独占業務である監査の他に会計や税務、コンサルティング等を提供し、企業が利益を最大化できるような財務戦略の策定を支援します。

役割と役職

企業が成長するにつれ、財務リソースを正確に管理するために財務部門の拡大も必要となります。財務部門には次のような役職があり、それぞれ役割や責任が異なります。
CFO: 最高財務責任者は、CEOおよび取締役会に直接報告するという責任を負っています。CFOは単に決算を行うだけでなく、企業の実情を検証し、戦略を立て、リスクを軽減する役割も担います。CFOは通常、多様な財務・会計チームを監督し、ビジネスの財務状況全般に責任を負います。上場企業のCFOは、財務諸表や株主報告書の正確性を公式に証明する義務があります。
財務部長: 財務部長は、豊富な会計経験を持ち、リーダーシップスキルを備えているのが一般的です。彼らは会社の現在および過去の財務データを深く理解しています。通常、CFOよりも給与は低くなりますが、財務部長はCFOに昇進することもあります。
経理部長: 経理部長は熟練した会計エキスパートであり、企業の財務諸表作成や資金管理、決算事務等の社内業務を統括します。中小企業では、経理部長と財務部長を兼任する場合もあります。
経理部長: 経理部長は熟練した会計エキスパートであり、企業の財務諸表作成や資金管理、決算事務等の社内業務を統括します。中小企業では、経理部長と財務部長を兼任する場合もあります。

会計の専門分野

コーポレート・ファイナンスには、いくつかの専門分野があります。大企業では、これらの分野の1つまたは複数を専門とする会計士を雇用することがあります。

  • 予算: 在庫の評価や製品の販売価格の設定、過去のデータを基にした予算の作成を行います。
  • 売掛金/買掛金 (AR/AP): 請求書の発行、代金の回収、支払管理が主な仕事です。
  • 記帳: 取引を記録し、帳簿を調整します。
  • 回収: 顧客が期日通りに支払っているかどうかを追跡し、未払いの場合には支払いを確保するための措置を取ります。
  • 税金: 企業が適切な税金を支払い、利用可能な控除を最大化できるようにします。

会計と簿記と経理の違い

「会計」と「簿記」という用語は、時として同義語のように扱われることがありますが、簿記は会計の一部に過ぎません。

  • 簿記の仕事の1つは、適切な勘定科目または元帳に財務取引を体系的に記録することです。これらの記録は最終的に、企業の全取引を完全に記録した総勘定元帳に反映されます。
  • 会計は簿記よりも幅広く、データの要約・分析・報告、税務申告の準備、法令遵守の確認など、高度な業務も含まれます。例えば、企業の熟練した会計担当者は総勘定元帳の管理、財務諸表の作成、外部監査人との連携などを行います。
  • 経理は、法令を遵守しながら資金管理や財務状況の可視化を行い、企業の財務の健全性、透明性を維持する重要な役割を担っています。

簿記と会計と経理の違い

簿記 会計 経理
全体的な役割 すべての財務取引について、正確かつ最新の記録を維持すること。 簿記から得られた情報を使用して、企業の財務状況を判断すること。 企業の経済活動を記録し、正確な財務記録を維持すること。
目的 すべての財務活動と取引を体系的かつ時系列に記録すること。 データを分析・解釈し、財務予測を行い、経営者に財務上の助言を提供すること。 企業の財務状況や経営状態の可視化により、経営層の意思決定をサポートすること。
成果物 会計処理に必要な情報やデータの提供。 意思決定に活用するための財務諸表を作成・分析。 企業の財務的安定性をサポートするための財務指標や、予実分析等の提供。
必要なスキル 簿記に関する正確な知識とスキル。成果物は内部または外部の会計士が確認。 より複雑な財務事項を理解し、経営者のためにデータを解釈できるスキル。 財務知識、正確性、組織力、コミュニケーション能力、分析的思考などの組み合わせ。
主な業務 仕訳入力、請求書の送付、入金の記録、勘定照合。 コスト分析、監査の実施、納税申告書の作成と提出、納税計画の提供、経営者への助言。 取引登録、資金管理、財務報告、税務申告など、企業の経済活動を支えるさまざまなタスク。
小規模企業にとって、簿記と会計、そして経理の違いを理解することは、会社のニーズに合った適切なサービスを選択する上で重要です。

GAAPとは

GAAP (Generally Accepted Accounting Principles:一般に公正妥当と認められた会計原則) は会社法や金融商品取引法をもとに、民間の会計基準設定主体である企業会計基準委員会がまとめたルールやガイドラインのことを示します。

公開会社は、財務諸表の作成時を含め、会計業務においてGAAPに従う必要があります。これにより、投資家や規制当局が異なる企業の財務状況を評価・比較しやすくなります。非公開企業はGAAPに従う必要はありませんが、特に将来的に株式公開を計画している場合は、GAAPに従うことを選択するケースが多くあります。

会計サイクルの各ステップ

会計サイクルは、会計期間ごとに行われる8つの主要なステップで構成されています。会計ソフトウェアを使用すると、これらのタスクのほとんどを自動化できます。

  1. 取引の識別と分類: 例えば、会計担当者は本業で得たを収入を売上高として分類します。
  2. 仕訳の登録: 各取引を適切な勘定科目に入力します。
  3. 総勘定元帳への転記: この作業は、複式簿記の規則に従って実行する必要があります。
  4. 調整前試算表の作成: すべての事業勘定とその残高が含まれるレポートです。借方と貸方の比較に使用され、双方は一致していなければなりません。
  5. 調整仕訳の登録: 会計期間の終了時に、会計担当者は、繰延・見越仕訳や貸倒引当金など、未記帳の項目を追加します。
  6. 調整後試算表の作成: 調整仕訳を反映した試算表を作成します。
  7. 財務諸表の作成: 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を含む財務諸表を作成します。
  8. 期間締め処理: 帳簿を締め、次の会計期間に備えます。

中小企業と大企業の会計処理の違い

会計処理の原則の多くは中小企業と大企業で同じですが、実務上、いくつかの重要な違いがあります。最大の違いは財務活動の件数です。中小企業では、月間取引件数は数百件程度ですが、大企業では数千件、あるいは数百万件に上ることもあります。

もう一つの一般的な違いは、取引の記録方法です。主な方法としては、現金主義会計と発生主義皆生の2つがあります。小規模な企業では、シンプルな現金主義会計がよく用いられます。この方法では、現金が動いた時点で収益や費用が記録されます。

公開会社など、GAAPに準拠しなければならない大企業は、発生主義会計を使用する必要があります。発生主義会計は企業の財務状況をより正確に反映します。発生主義会計では、現金の動きに関係なく、収益や費用は発生した時点で認識されます。例えば、企業が複数年契約で前払いを受けた場合、その収益は契約期間ごとに分割して記録されます。

会計の例

会計担当者は、取引を記録するために複式簿記を使用します。各取引は仕訳として資産の増加は借方に、資産の減少は貸方に記録されます。これらの記入は、互いに一致していなければなりません。この方法により、各取引が適切な金額で記録され、5つの主要勘定科目(収益、費用、資産、負債、純資産)のすべてのバランスが取れていることが保証されます。

以下は、会計における複式簿記の例です。会社が顧客に請求書を送付したとします。複式簿記を使用して、会計担当者は「売掛金」に借方を記録します。対応する貸方は「売上高」の勘定に記録されます。

顧客が請求書に支払いをすると、会計担当者は「売掛金」勘定に貸方記入を行い、「現預金」に借方記入を行います。

この取引に関する仕訳は以下のようになります。

売上高を記録するための仕訳:
  借方 借方
売掛金 1,000円  
売上高   1,000円
顧客からの現金収受と債権消込:
現預金 1,000円  
売掛金   1,000円

会計システムの管理

会計システムを使用すると、請求書の支払い、レポートの作成など、一般的な会計業務の多くを自動化できます。特に、システムが他の業務アプリケーションと統合されている場合、手作業が大幅に軽減されます。これにより、コストを削減、ミスを減らすことができます。通常、特にカスタムレポートの作成や承認ワークフローの作成に関しては、財務部門がシステムのセットアップにおいて重要な役割を果たします。

会計ソフトウェアの維持・更新にかかる作業量は、選択するシステムの種類によって異なります。企業は通常、オンプレミス型とクラウドベースの会計ソフトウェアのどちらかを選択します。オンプレミス型を選択する場合、ソフトウェアやハードウェアの設置・管理にITの専門知識が必要です。一方、クラウドベースのソフトウェアやSaaS(Software-as-a-Service)システムは、プロバイダーがソフトウェアを自動的に更新し、ユーザーはブラウザを使用してインターネット経由でシステムにアクセスするため、管理が容易です。

自社内のスキルを活用するか、外部のプロバイダーを雇うかに関わらず、会計担当者は、日常的な財務活動の管理、税務および規制要件への準拠、そして企業の業績に関する洞察の提供に不可欠な専門知識を提供します。