売掛金と買掛金はビジネスの陰と陽の関係にあります。収益と支出の健全な状況が保たれていることが、成長の機会をつかむことができ、顧客や仕入先との良好な関係の基盤が維持される条件だと言えます。
会社の買掛金(AP)の台帳には短期の負債、つまり仕入先から購入した物品などに対する支払義務および債権者に対する債務がリストされます。売掛金(AR)は会社が顧客やパートナーから受領する予定の資金です。売掛金は貸借対照表では流動資産としてリストされます。
金融機関や投資家は買掛金および売掛金を参照して会社の財務状態を評価します。収入が重要であるのと同様に、ビジネスを成長させ顧客を保持するための賢明な支出も重要です。どちらの側の管理を誤っても、信用を損ない、最終的にビジネスの安定性に悪影響が出る可能性があります。
買掛金(AP)とは
会社の買掛金は、購入して請求対象となった物品やサービスに対する、仕入先およびその他の貸主への債務金額で構成されます。買掛金には給与および有担保ローンなどの長期の債務は含まれませんが、長期の債務に対する支払は含まれます。
買掛金は、通常、取引を開始するときに当事者間で合意した支払条件に基づき、請求書を受領した時点で記録されます。財務部門が物品およびサービスに対する有効な請求を受領すると、仕訳入力として記録され、総勘定元帳に経費として転記されます。貸借対照表には買掛金の合計金額が示されますが、個別の取引は記載されません。
承認者がその経費を承認し、30日以内や60日以内などの契約の条件に従って支払いが行われると、会計部門が該当の経費を支払済として記録します。
買掛金を管理する部門は経費精算書および請求書を処理し、支払を確実に行う責任を負います。優れた買掛金担当は、仕入先(支払先)情報が正確かつ最新であるようにし、請求への支払が期限内に行われるようにすることで、仕入先との関係を良好に保ちます。有利な支払条件と利用可能な割引を最大限に活用することで、会社の経費を節約できます。買掛金処理の実務を着実に行い、資金予測の正確性を保ち、誤りや不正を最小化し、経営・管理者およびサードパーティ向けのレポートを生成することはビジネスの成功に貢献します。
買掛金処理の例
ファッション性の高い眼鏡メーカー、StyleVisionが$500分の新しいフレームを卸売業者であるFrames Inc.に注文し、これに対して期日前支払に対する割引なし、30日以内の条件で8月15日に請求書が送られたとします。StyleVisionの簿記係は買掛金の仕訳入力を作成し、Frames Inc.の勘定で期限を9月15日として$500を貸方記入し、StyleVisionの在庫資産勘定で$500を借方記入します。
買掛金を記録する方法
会社は買掛金を記録するために発生主義会計方法または現金主義会計方法のいずれかを使用できます。
発生主義会計においては、財務部門が記録したすべての未払の経費が、現金事象のプレースホルダとしての役割を果たします。たとえば、先ほどの眼鏡メーカーがFrames Inc.から新たに$1,000の購入を開始することを決定し、原価の50%を前払、残りを納品時の支払で合意したとします。フレームなどの在庫物品の場合には、経費は物品が顧客に販売されたとき、つまり収益が得られたときに認識されます。通常は、請求書が受領されたときに全額が経費として記録されます(物品またはサービスが提供済であることを想定)。
現金主義会計方法では、会社は仕入先に実際に支払ったときに経費を記録します。StyleVisionは注文して支払うときにフレームに対する$500の頭金を記録し、フレームを受領して最終支払を発行するときに$500の残高を転記します。
財務部門が追跡する主要指標は買掛債権回転日数(DPO)です。これは会社が債権者および仕入先への支払にかかる平均日数を表し、キャッシュ・フローおよび仕入先との関係の管理がどの程度良好であるかを示します。
DPOを計算するには、まず、特定期間(1か月か四半期が一般的)の平均買掛金を計算します。
平均買掛金 = 期間開始時の買掛金残高 -
期間終了時の買掛金残高/2
DPO = 平均買掛金/売上原価 x
会計期間内の日数
売掛金(AR)とは
売掛金は請求済の製品またはサービスに対して顧客が会社に債務を負う資金です。すべての売掛金の総額が貸借対照表に流動資産としてリストされ、これには後払いの物品または実行された作業に対して顧客が支払う請求書が含まれます。
一般的に、契約の締結または発注書の発行の時点で相互に合意した条件に従い、仕入先はサービスや製品を提供した後に顧客に請求します。条件は、通常、30日以内(顧客は30日以内に請求書に対して支払うことに合意)から60日以内または90日以内の範囲になり、会社はこの中から選択して契約を締結できます。ただし、特に受注生産の製品に対する大規模な注文については、会社が先に前受金を求めることがあります。また、サービス企業が手数料の一部を前もって請求することもよくあります。
会社が顧客に物品またはサービスを提供した後、売掛金担当は顧客に請求し、条件を書き添えて請求済額を売掛金として記録します。
顧客が合意に従って支払うと、担当者はその支払を前受金として記録します。この時点で、この勘定は売掛金ではなくなります。顧客が期日までに支払わなかった場合、売掛処理担当または回収担当は、通常、元の請求書と、遅延手数料がある場合はそれも含む督促状を送ります。
会社は、会計および財務ソフトウェアを使用して自動的に期限切れの請求書に関する電子メールを顧客に送信して即時支払を求めることで、買掛金の日数の指標を改善できます。経営・管理者は、顧客、請求書、期日、請求書金額および支払条件について、より詳細にそれぞれの勘定やすべての期限切れの勘定など、気になる情報をドリルダウンできます。また、支払期間延長が設定されている顧客など、特定条件に該当する顧客を督促電子メールから除外する機能もあります。
例
Frames Inc.はStyleVisionを有望な顧客とみなし、関係を強化しようとしています。取引を増やすために、Frames Inc.はStyleVisionに対し、$1,000以上の新規発注書について60日以内、50%は前払という条件を提示します。StyleVisionが$1,000の注文を送信すると、Frames Inc. (発生主義会計を使用)は契約に従ってフレームの受領後60日以内に請求書の全額が支払われることを予想して、注文が出荷されたとき、資産として$1,000全額の売掛金を記録します。
売掛金を記録する方法
発生主義会計では、売掛/未収金残高は総勘定元帳で流動資産の下にリストされます。請求書に対して支払が行われると、財務担当者は適切な負債勘定を貸方記入し、売掛金を借方記入することで支払を計上します。該当する遅延手数料も売掛金の一部として計上されます。
次のようないくつかの重要な比率が売掛金に基づいて求められます。
売上債権回転率: "債権回転率"とも呼ばれる売上債権回転率は、会社が特定の会計期間内に売掛金を現金化する効率性と速さを測定します。1年の期間の売上債権回転率を計算する計算式は次のようになります。
純年間信用販売/平均売掛金 = 売上債権回転率
流動比率: これは運転資本とも呼ばれ、流動性の尺度として、利用可能な現金または1年以内に現金化できるその他の流動資産で会社が短期の支払義務に対処できるかどうかを表します。
運転資本比率 = 流動資産/流動負債
売掛金回収期間(DSO): 顧客が物品およびサービスに対して会社に支払うまでの平均期間。
売掛金回収期間 = 特定期間の売掛金/信用販売合計 X 期間内の日数
買掛金と売掛金の共通点
個別の取引では、すべての請求書は、一方の当事者にとっては買掛で、もう一方の当事者にとっては売掛です。買掛と売掛の両方が会社の総勘定元帳に記録され、1つは負債勘定、もう1つは資産勘定となります。この両方を概観することは、会社の財務状態の全体像を把握するために必要です。
CFOは買掛金と売掛金に同等の注意を払う必要があります。買掛金を単なるコストとみなすことは避けてください。
監視する領域: 「ビジネスとともに拡張するための適切なツール、スキルおよび能力を両方のチームが持っているか。」「会社は適切な額のクレジットを供与および受領しているか。」「売掛金回収期間(DSO)などのベンチマークの方向性は適切か。」「現金に余裕がない場合、ビジネスにとっての重要度、合意された条件および期日前支払のインセンティブに基づいて仕入先が優先順位付けされているか。」
財務リーダーの最優先事項は、優れた会計実務、キャッシュ・フローの管理、レポートの改善および運転資本の最大化であり、売掛と買掛の両方がこれらすべての基礎となります。
買掛金と売掛金: 主な相違点
ビジネスにおいては、すべての販売または購入に対して、請求書を発行するか受領します。物品またはサービスを提供すると、支払われる予定の金額を財務部門が売掛金として記録します。請求書に対して支払う場合は、金額を買掛金として記録します。
売掛金は資産とみなされます。これは、販売が開始したときに定義されたタイムライン内に代金を受領することが予定されているためです。買掛金は負債とみなされます。これは、一定のタイムライン内にその金額を支払う必要があるためです。
リーダーシップの観点からは、これらの2つの機能は、異なる部門や人員が担当するようにして、厳密に分離した状態を維持する必要があります。米国公認会計士協会は、これらの職務分掌は基本的な会計原則であり、主に不正のリスクを減らすためのあらゆるビジネスにおける不可欠な内部統制であるとみなしています。
買掛金および売掛金については、CFOは請求への支払の担当者が請求書を入力できないようにする必要があります。企業によっては、売掛管理の1人の担当者が顧客の支払の受領を記録、もう1人がそれらの支払を総勘定元帳に転記するようにし、さらに買掛管理側では1人の担当者が請求書を承認、もう1人が支払をトリガーするようにしています。
監査者は異なる方法を使用して買掛金と売掛金の保護の有効性を評価します。監査者が買掛金を検査するとき、通常、数量の誤りや、場合によっては仕入先側の倫理的でない行動の形跡を探します。たとえば、仕入先が誤ってまたは意図して、納入したよりも多い製品に対して請求している可能性があります。
売掛金については、監査者は120日以上期日を超過している顧客(請求先)を探します。その時点で会社は予定の変更が必要になることがあります。その顧客に支払う能力または意思がないとリーダーが判断した場合、財務部門はその金額を売掛金から取り除いて経費として計上する必要があります。
売掛金 | 買掛金 |
---|---|
受領する金銭 | 支出する金銭 |
貸借対照表で流動資産として記録 | 貸借対照表で流動負債として記録 |
仕入先のレコード | 顧客のレコード |
消し込まれない場合は収入として認識 | 支払われるまでは負債として認識 |
No.1クラウド
会計
ソフトウェア
買掛金と売掛金の関係
買掛金と売掛金は同じコインの裏表のような関係です。自分と相手が互いにどれだけ債務を負っているか。この情報は、ビジネスの財務面の強みについて理解し、キャッシュ・フローをより健全なものにするために役立ちます。
財務と会計のソリューションによって請求書処理と支払の両方を自動化すると、ビジネスで時間を節約し、統制を改善し、生産性を高めるために役立ちます。たとえば、ソフトウェアによって手動入力をなくし、自動的に割引を計算することで、請求書を処理する時間と労力を最小化できます。また、請求書と発注書の不一致が発生したときの例外処理が自動的に行われ、買掛金プロセス全体に対するリアルタイムな洞察が提供されることで、請求書の紛失や不正な請求書支払の可能性を低減できます。