この記事では、様々なタイプの在庫について実例を挙げ、在庫管理について説明します。在庫のベストプラクティスと分析手法を理解することで、最大の投資収益率(ROI)をビジネスで達成できます。

ビデオ: 在庫とは?(英語)

在庫とは?

在庫とは、会社が製造で使用したり、販売したりする品目や部品および原材料のことです。ビジネス・リーダーは、十分な手持在庫を確保し、不足する時期を見極めるために、在庫管理を実施します。

「在庫を調べる」という動詞は、品目を数えたり、リストアップしたりする行為を指します。会計用語としては、在庫は様々な生産段階にあるすべての在庫品を指し、流動資産です。小売業者も製造業者も在庫を適正に維持することにより、品物の販売や生産を続けることができます。ほとんどの会社にとって、在庫は主要な資産です。ただし、在庫は貸借対照表では資産ですが、過剰在庫は実際には負債になる場合があります。

在庫の例

これからわかりやすいように実例を上げてご説明します。次の例は、小売業と製造業で様々なタイプの在庫がどのように機能するかを示しています。

  • 原材料/部品:

    Tシャツの製造業者には、生地、糸、染料、プリントデザインなどの部品があります。

  • 完成品:

    ネックレスを製造する宝飾品製造業者の場合、スタッフは予め印刷されたカードにネックレスを取り付け、セロハン製の封筒に入れて、販売可能な完成品に仕上げます。完成品の原価(COGS)には、梱包材や製造に要した人件費も含まれます。

  • 仕掛品:

    携帯電話は、ケース、プリント配線基板および部品などで構成されています。専用の作業場所で部品を組み立てるプロセスが仕掛品です。

  • MRO備品:

    例えば、コピー用紙、バインダー、プリンターのトナー、掃除用手袋、ガラス・クリーナー、ほうきなど分譲マンションの保守・修理・運営に必要な備品が該当します。

  • 梱包材:

    種苗会社では、植物の種などを入れる密封用の袋が主な梱包資材になります。種の袋を輸送および保管用の箱に入れると、これが2次梱包になります。製品のケースをパレットで出荷するために、ラップ・フィルムで巻くと、これが3次梱包になります。

  • 安全在庫:

    僻地にある動物病院では、春の雪解けで道路が冠水して配送トラックが遅れる場合に備えて、消毒剤、犬や猫の餌の在庫を備蓄します。動物病院は、顧客の需要に応えるためにこれらの品目の在庫を備蓄します。

  • 予測/平滑化在庫:

    イベント・プランナーは、6月の結婚式シーズンに備えて、割引価格でリボンや花柄のテーブルクロスを購入します。

  • デカップリング在庫:

    ケーキ店では、ウェディング・ケーキを飾るための砂糖のバラ飾りは担当者が保管しています。別パーツの、飾り付けの生花の納入が遅れても、飾り付け作業を続けることができます。ケーキ店ではそれらが全て揃わなければ、ケーキを納品できなくなります。

  • 循環棚卸:

    500枚の紙ナプキンを使い切ると、新しく補充されます。ナプキンは専用の保管スペースにきっちり収納されます。

  • サービス在庫:

    10卓のテーブルがある1日12時間営業のカフェでは、顧客が平均1時間で食事をします。ここでは、120食/日がサービス在庫になります。

  • 理論在庫費用:

    あるレストランでは、料理に使う費用は予算の30%にすることを目標にしていますが、実際の支出は34%でした。この場合、廃棄された4%分の食品が含まれており、それが理論在庫になります。

  • 帳簿在庫:

    在庫レコードまたは在庫システム上にある在庫の理論在庫。棚卸時の実在庫とは異なる場合があります。

  • 輸送中在庫:

    画材店は、人気がある鉛筆セットを40ケース注文して代金を支払いました。この商品は仕入先から輸送中なので、輸送中在庫になります。

  • 過剰在庫:

    シャンプー会社が、スポーツイベントのロゴが入った特殊なシャンプーを50,000本生産しましたが、45,000本しか売れず、イベントは終わりました。買い手が見つからないため、割引販売せざるを得ません。

4つの在庫タイプとは?

在庫の主な種類として、原材料/構成品、仕掛品、完成品、MROの4つがあります。ただし、MROを除外して、在庫の種類を3つのみと考える場合もあります。

健全な財務計画や生産計画を立てるには、様々な在庫タイプを理解する必要があります。

13種類の在庫タイプ

  1. 原材料:

    原材料とは、会社が製品を製造して完成させるために使用する材料のことです。シャンプーを作る場合のオイルのように、通常は製品が完成すると、原材料の元の形状はわからなくなります。

  2. 構成品:

    構成品は、会社が製品を製造して完成させるために使用する材料という点では原材料に似ていますが、ネジのように、製品が完成しても形状を認識できる点が違います。

  3. 仕掛品(WIP):

    仕掛品在庫とは、生産中の品目のことで、原材料や部品、人件費、間接費、さらに梱包資材も含まれます。

  4. 完成品:

    完成品とは、販売準備が整った品目のことです。

  5. 保守、修理、運営(MRO)に必要な備品:

    多くの場合、MROは製品の製造や業務の維持管理に必要な補修部品在庫です。

  6. 包装および梱包資材:

    梱包資材には大きく3種類あります。1次梱包は製品を保護し、品質保持に使われます。2次梱包は完成品の外装で、ラベルやSKU情報が含まれる場合があります。3次梱包は、輸送用の一括パッケージです。

  7. 安全在庫と見越在庫:

    安全在庫とは、予期しない状況に対処するために、会社が購入する余分の在庫のことです。安全在庫は、在庫維持費がかかりますが、顧客満足度に貢献します。同様に、見越在庫とは、販売と生産の動向に基づいて、企業が購入する原材料や完成品のことです。原材料の価格が高騰している場合や、販売のピーク時期に近づいている場合、企業が安全在庫を購入する場合があります。

  8. デカップリング在庫:

    デカップリング在庫とは、作業が止まらないようにするために生産ラインの各ステーションに保管されている余剰品や仕掛品を指す用語です。デカップリング在庫は、ラインの一部で作業速度が異なる場合に役立ち、品物を製造する企業でのみ使用します。一方、安全在庫はすべての会社が持つことができます。

  9. 循環棚卸:

    会社は保管費を最小限に抑えながら、適切な在庫量を確保するために、循環棚卸で在庫不足を認識してロットで注文します。循環棚卸の式の詳細は、在庫計画の重要ガイドを参照してください。

  10. サービス在庫:

    管理会計の概念である「サービス在庫」は、特定の期間に企業が提供できるサービスの量を示しています。たとえば、10部屋のホテルの場合、一週間のサービス在庫は70泊になります。

  11. 輸送中在庫:

    パイプライン在庫とも呼ばれる「輸送中在庫」とは、製造業者、倉庫、物流センターの間を移動中の在庫のことです。輸送中在庫の施設間の移動には数週間かかる場合があります。

  12. 理論在庫:

    帳簿在庫とも呼ばれる「理論在庫」は、会社が待機時間なしでプロセスを完了するために必要な最小在庫量のことです。ほとんどの場合、理論在庫は製造業や食品産業で使用されます。これは、実績式と理論式を使用して計測されます。

  13. 余剰在庫:

    陳腐化在庫とも呼ばれる「余剰在庫」は、売れ残った品物や使用されなかった原材料のことです。会社はこの在庫を使用または販売することを期待できませんが、保管費は支払う必要があります。

製造在庫とは?

製造業では、在庫品目、品物を製造するために使用する原材料と構成品が在庫に含まれます。製造業者は在庫水準を注意深く見守って、作業の停止につながる可能性がある欠品がないようにします。

会計上、製造在庫は原材料、仕掛品、完成品に分割されます。これは、在庫タイプごとに原価が異なるためです。通常、原材料のユニット当たりの原価は完成品目の原価より小さくなります。

サービス産業の在庫とは?

すべての会社には、通常の業務に必要な在庫があります。サービス会社の場合、この在庫は無形資産になります。たとえば、法律事務所の在庫には、ファイルが含まれます。法律文書を印刷するための用紙が会社のMROになります。

在庫管理の重要性

在庫管理は、会社が適量の在庫を適切な時期に購入する助けになります。在庫管理のプロセスは、在庫水準を最適化して、保管費を減らしながら欠品をなくすのに役立ちます。

詳細は、在庫管理の重要ガイドを参照してください。

在庫のベストプラクティス

在庫のベストプラクティスには、注意深い在庫管理が含まれます。ここでは、「測定できないものは管理できない」というビジネスの名言が当てはまります。最初のベストプラクティスは、在庫を追跡することです。他にも次のような項目があります。

  • 安全在庫の保有:

    緩衝在庫とも呼ばれるこれらの製品は、材料や需要の多い品目の欠品を回避するのに役立ちます。予想に反して需要レベルが上がった場合は、計算した供給分を会社が使い果たしたときに、安全在庫をバックアップとして利用できます。

  • クラウドベースの在庫管理プログラムへの投資:

    クラウドベースの在庫管理システムがあれば、すべての製品およびSKUの場所をグローバルかつリアルタイムに把握できます。このデータにより、組織の対応力が高まり、最新の状況に柔軟に対応できます。

  • 循環棚卸プログラムの開始:

    時間と資金を節約して、顧客を守ります。循環棚卸のメリットは倉庫管理にとどまりません。在庫を調整して顧客満足度も向上できます。

  • バッチ/ロット追跡の使用:

    製品の各バッチやロットに関する情報を記録します。製品の販売可能な日付を示す消費期限などの詳細をログに記録する企業もあります。消費期限付きの品物がない会社では、製品の陸揚費や貯蔵寿命などを把握するために、バッチ/ロットの追跡を使用します。

在庫プロセスとは?

在庫プロセスでは、在庫品を、会社の受取、保管、管理、および仕掛品としての引出または消費に伴って追跡します。基本的に、在庫プロセスとは、商品および原材料のライフサイクルのことです。

在庫プロセスの図および詳細は、在庫計画の重要ガイドを参照してください。

在庫棚卸とは?

在庫棚卸とは、保管場所や倉庫の品目を実際に数え、品目の状態も確認します。会計上の在庫棚卸は、資産と負債の査定に役立ちます。

在庫棚卸により、どの在庫の回転率が高いかもわかります。在庫管理者はこの情報を使用して、在庫の必要量を予測し、予算を管理できます。在庫棚卸の詳細は、実地棚卸の実施および循環棚卸入門を参照してください。

在庫の記録方法

在庫の記録には、定期と継続の2種類の方法があります。定期在庫では、特定の時点で在庫棚卸をして、その合計を総勘定元帳に追加します。継続記録法では、在庫が変化するたびに変化を記録します。

どんな企業でも定期在庫を採用できますが、小規模な組織で、特に事業規模の変更計画がない場合によく採用されています。定期在庫には、特別なソフトウェアや機器は必要ありません。継続記録在庫管理で必要なリアルタイムの棚卸をするには、スキャナーやPOS (販売時点情報管理)デバイスがよく利用されます。それぞれの方法の詳細は、定期在庫システム: 正しい選択?および継続記録在庫管理の決定版ガイドを参照してください。

在庫回転率とは?

在庫回転率とは、特定の期間内に、会社が品物を販売または使用する回数のことです。この数字により、会社の手持在庫が多すぎるかどうかがわかります。在庫回転率は、次の式で求めます。

平均在庫 = (期首在庫 + 期末在庫) / 2

在庫回転率 = 売上 + 平均在庫

在庫回転率の詳細は、在庫回転率入門: 計算、レートおよび分析を参照してください。

在庫分析とは?

在庫分析とは、製品需要が時間の経過とともにどのように変化するかを調査することです。この分析は、企業が品物の適正な在庫量を保持し、顧客が将来必要とする量を予測するのに役立ちます。

よく知られている在庫分析の方法はABC分析です。ABC分析を実施するには、商品を3つのカテゴリに分類します。

  • A在庫: A在庫には、保管の場所と費用が最小で済み、最もよく売れる製品が含まれます。専門家の多くは、在庫の約20%がこれに当たると述べています。
  • B在庫: B品目はA品目と同様の割合で売れますが、より多くの保管費がかかります。一般に在庫の約40%がこれに当たります。
  • C在庫: 残りの在庫は保管費が最も多くかかり、利益も最も低くなります。在庫の残り40%がC在庫に当たります。

ABC分析では、パレート(80/20)の原理を利用して、利益の80%を生み出す20%の在庫が明らかになります。会社はこれらの品目に努力を集中して、売上および純利益率を上げることができます。

在庫分析は在庫管理の方法をジャストインタイム(適量適時型)またはジャストインケース(有事対応型)のどちらにするかの選択にも影響する場合があります。在庫分析と在庫管理の詳細は、在庫管理の重要ガイドを参照してください。

在庫分析のメリット

在庫分析により、コストが下がり、回転率が上がるので、利益が増えます。在庫分析には、次のようなメリットもあります。

  • キャッシュ・フローの改善: 在庫分析により、よく売れる品目を特定して再注文できるため、回転の悪い在庫に対する支出をなくせます。
  • 品切れの減少: 顧客が最も必要とする在庫がわかると、需要を予測しやすくなり、品切れを防げます。
  • 顧客満足度の向上: 在庫分析により、顧客の購入商品および購入方法に関するインサイトが得られます。
  • ムダな在庫の減少: 購入の内容、時期、方法を把握して、陳腐化製品の保管を最小限に抑えるとともに、製品の消費期限を把握して、該当製品のための戦略を立てられます。
  • プロジェクト遅延の減少: サプライヤーのリード・タイムがわかれば、再注文の時期を把握して、出荷遅延を避けられます。
  • サプライヤーおよび仕入先の価格設定の改善: 在庫分析により、少量を不定期に注文するのではなく、大量の製品を定期的に注文できます。定期的に注文することにより、サプライヤーに割引交渉をしやすくなります。
  • ビジネスの状況把握の向上: 在庫を確認することで、在庫、顧客、ビジネスに関するインサイトが得られます。

需要予測とは?

需要予測とは、販促や季節性など、過去の購入トレンドを見て、顧客需要を予想することです。需要を正確に予測すれば、必要な在庫量を把握できるので、余剰在庫を持つ必要がなくなります。

需要予測の詳細は、在庫計画の重要ガイドを参照してください。

在庫管理と正確な棚卸のメリット

適切な在庫管理戦略と正確な在庫棚卸により、顧客が購入する品目のみに支出して業務を簡素化できるため、会社の資金を節約できます。他のメリットの詳細は、在庫管理および在庫管理システムのメリットを参照してください。

棚卸資産の会計処理

棚卸資産の会計処理は、在庫の資産価値の変化を棚卸して記録する仕組みのことです。原材料、仕掛品および完成品はすべて資産です。在庫の財務会計により、在庫資産を正確に評価できます。

これにより、在庫品目の価値が決まり、品目が正しく棚卸されます。これらの数字により、売上原価、期末在庫価額が決まり、会社の総合的な価値に反映されます。

平均在庫原価とは?

在庫の平均原価とは、ユニット当たりの売上原価を計算するための方法です。平均原価を計算するには、販売対象のすべての在庫の原価を合計して、販売済品目数で割ります。

この方法は加重平均原価とも呼ばれます。平均在庫原価の詳細は、ビジネスで在庫原価会計方式を使用するための鍵を参照してください。

在庫管理のすべてのニーズに対応するNetSuite

ビジネスの成否は正しい在庫管理にかかっています。在庫に対する洞察を得ることが成功の鍵です。意思決定者には、在庫を効果的に管理できる適切なツールが必要です。NetSuiteには、複数の場所の在庫を追跡して、再オーダー・ポイントを判断し、安全在庫および循環棚卸を管理するための一連のネイティブ・ツールが用意されています。需要計画および流通所要量計画の機能を使用して、組織全体の需要と供給の適切なバランスを見出せます。

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