収益認識

収益認識


収益認識とは、もともとは売上計上と同じ意味を持つことばで、売り上げをいつどう計上するかを定めた会計ルールを収益認識基準、もしくは売上計上基準と呼びます。この基準には、基本的なパターンとして出荷基準、納品基準、検収基準などがあります。しかし、どの基準を採用するかは、ビジネス・モデルによって異なりますし、同一企業内であっても、売上の内容(商品かサービスかなど)によって、複数の基準を使い分ける必要があります。また、近年、IFRS対応が大きな課題となっていますが、その中でも最大の課題がIFRSと多くの日本企業が今まで採用してきた収益認識基準の違いにあるといわれています。したがって、クラウドERPを選択する際には、複数の収益認識基準に対して、いかに柔軟に対応できるかを確認する必要があります。

収益認識基準の基本パターン

商品(や製品)の受注から入金までの一連のプロセスには、以下のような段階があります。

受注:商品の注文が取引先からあった。
出荷:商品を取引先に向けて出荷した。
納品:商品が取引先に到着した。
検収:取引先で商品が検収された。
請求:取引先での検収が合格したため、代金請求をした。
入金:取引先より、代金を回収した。

商品(や製品)を売った場合、どの段階で収益認識(売上計上)をすべきかが問題になります。日本の法人税法(基本通達)上では、商品を販売した場合の収益認識(売上計上)の時期は、その引渡しがあった時点とされていますが、この「引渡しがあった時点」の解釈には、受注から入金までの一連のプロセスの中で、出荷、納品、検収のいずれかの時点とする解釈(収益認識基準)が基本的なパターンです。

(1)出荷基準‐商品を出荷した時点で収益として認識する。
(2)納品基準‐商品が取引先に到着した時点で収益として認識する。
(3)検収基準‐取引先が納品された商品の内容を確認し、問題ないことを書面(検収書)などで通知した時点で収益として認識する。

企業は、これらの中から自ら選択・採用することができます。ただし、選択した基準が、商品の性質や販売契約の内容に照らし合わせて合理的であると認められなければなりません。また、いったんその基準を採用したならば、継続してその基準で収益認識を行う必要があります。

これらの3つの基準の中では、検収基準がもっとも確実な基準といえます。なぜなら、商品の内容や数量に間違いがあったり、品質に問題があった場合には返品が発生しますが、出荷基準と納品基準では、すでに収益認識されてしまっているため、売上高を訂正(マイナス)する必要があるからです。特に、納品された商品の品質検査が取引先で行われるような場合は、商品の性質から返品が頻繁に発生する場合には、検収基準が望ましいといえます。

しかし、検収基準を採用した場合には、出荷・納品から検収(収益認識)の間の時間がかかりますので、在庫側のデータと会計側のデータの間の整合性をとる処理が複雑になったりします。また、出荷・納品と検収の時期が月をまたがることで、出荷基準や納品基準に比べて請求・入金のタイミングが遅くなり、資金管理上不利になる場合もあります。

したがって、商品の性質や、販売契約の内容に応じて、これらの基準を使い分ける必要がありますので、クラウドERPには、販売契約ごとに異なる収益認識基準を設定できる機能が必要になります。

工事進行基準

建築業、造船業、IT業などの業種における、商品の受注から納品までに数か月や数年間といった長い時間がかかる販売契約のことを工事契約と呼びます。この工事契約の、収益認識基準には、「工事完成基準」と「工事進行基準」の2つの基準があります。

(1)工事完成基準-商品が完成し、取引先が納品された商品に対する検収を通知した時点で収益として認識する。
(2)工事進行基準-工事期間中、商品が完成に近づくにつれて徐々に売上が発生するという考え方で、商品の完成度合いに応じて工事に関する売上と製造原価を計算し、各会計期間に分配して収益として認識する。

企業は、これらの中から自ら選択・採用することができます。工事完成基準は、検収基準と同じ考え方ですが、工事進行基準は、まったくことなる考え方のため、収益認識の処理が複雑になります。そのため、これまでは、工事進行基準は、あまり採用されませんでした。

しかし、2009年より、特定の要件を満たす工事契約には、すべて工事進行基準を採用することが義務付けられるようになりました。

工事進行基準を採用する場合の要件には、「工事収益総額」「工事原価総額」「工事進捗度」の3つがあります。この3つに関して「成果の確実性」が認められる(信頼性の高い見積もりができる)場合には工事進行基準を適用し、そうでない場合には工事完成基準を適用します。

工事収益総額‐信頼性の高い収益総額の見積もりができるということは、受注金額とその決済条件について、取引先との間で実質的な合意があることが前提となります。

工事原価総額‐信頼性の高い工事原価総額の見積もりができるということは、当初の工事原価の見積りと、実際に発生した工事原価とを随時比較し、工事原価総額の見積りの見直しができることが前提となります。

工事進捗度‐工事進捗度の見積もりを行う方法としては、それまでに発生した工事原価が工事原価総額に占める割合を用いる原価比例法が一般的です。この場合、信頼性の高い工事進捗度の見積もりができるということは、工事原価総額と同様の前提条件が必要となります。

このように工事進行基準の採用が必要な場合、他の収益認識基準とは全く異なる複雑な処理が必要になります。工事契約を行う業界においては、クラウドERPには、工事進行基準での収益認識を行う機能がもとめられます。

複合契約における収益認識管理

複合契約とは、異なる性質の商品(たとえば物品とサービス)を組み合わせて販売する場合の契約のことです。良くあるケースとしては、商品それ自体と商品の設置や保守を行う役務(サービス)が一括して販売されるケースが考えられます。このケースでは、役務の収益認識は、役務の提供がすべて完了した時点で行われるのが一般的ですので、商品の収益認識を行う時点との間にずれが生じることになります。

したがって、複合契約における収益認識基準は、一つの契約であっても別々の基準を、契約の一部に対して採用する必要があります。クラウドERPには、このような複合契約に対応するために、契約を分割し、別々の収益認識基準で処理を行う機能がもとめられます。

IFRS対応

収益認識は、IFRS導入による影響が大きいといわれている分野の一つです。それは、IFRSでは、商品の経済価値と商品の所有によるリスクが移転したときに収益計上しなければならないとされているためです。

従来の日本の会計基準では、「出荷基準」や「納品基準」が認められており、実際に、これらの基準が多くの場合、採用されています。しかし、IFRSの考え方では、「検収基準」が中心になるといわれています。

したがって、実際にいつどうような形でIFRSに対応する必要があるかは、まだ不透明な状況であっても、将来のいずれかの時点で、現在「出荷基準」や「納品基準」で行っている収益認識を、「検収基準」に変更することになり、そのための対策が必要です。

しかし、いままでERPの多くは、導入時に採用した収益認識基準を途中で変更することは、多大なシステム変更を必要とします。クラウドERPには、複数の収益認識基準を設定できるだけでなく、一度設定した基準を柔軟に変更できる機能がもとめられます。

No.1 クラウドERP
ソフトウェア

お問い合わせ(opens in a new tab)
営業担当者とチャット

NetSuiteにご関心をお持ちですか?

チャットを開始