社内でこれ以上ERPシステムの維持と保守の責任を続けたくないと判断した会社もあるでしょう。それは賢明な選択であり、また、クラウドに移行することでITインフラへの注力を減らし、より事業に集中しようとする会社の数が増え続けていることからも明らかです。

ただし、サービスを導入する際には注意が必要です。"クラウド"を標ぼうするホスト型のサービスの中には、真のクラウド・ソリューションではないものもあります。多くのオンプレミス・ベンダーは、収益ストリームを拡大する収益性の高い機会を認識して、敢えて自社のアプリケーションをクラウドに見せかけることによって顧客の目を欺こうとしています。

それでは、どうすれば真のクラウド・ソリューションと偽物を見分けることができるでしょうか。さらに重要なポイントとして、なぜこれを気にする必要があるのでしょうか。

誰がサーバーを管理していますか?

真のクラウド・ベンダーは、クラウド用にソリューションを一から設計します。このようなベンダーは、独自のマルチテナント・クラウド環境において完全にホストされたソリューションとして高いパフォーマンスを実現するためにソフトウェアをコーディングし、何百ものサーバーおよび複数のレベルで冗長化されたデータを横断するソフトウェアを、ホスティング、メンテナンスおよび管理するための人材と専門知識を構築します。

偽のクラウド・ベンダーの主張とは異なり、マルチテナントは重要です。たとえば、真のクラウド・プロバイダの場合、すべての顧客は、通常、同じクラウドから同じソリューションにアクセスします。これにより、顧客は、最新の製品アップグレードに継続的かつ即時にアクセスできます。

最良のクラウド・ベンダーは、ユーザーが自社のプラットフォーム上でアプリケーションをカスタマイズできるようにするだけでなく、ベンダーが製品の機能改善を新しく追加した場合も、すべてのカスタマイズが引き続き利用できるようにするカスタマイゼーション・プラットフォームも提供します。これにより、最新の機能を遅滞なく使用できるだけでなく、新しい製品バージョンが登場するたびに、以前使用していたカスタマイズや統合を何度も再実装する必要がなくなります。

では、偽のクラウド・ベンダーはどのような仕組みを採用しているでしょうか。"クラウド"で実行されると主張されている多くのERPシステムは、オンプレミスで実行するよう設計されています。通常、これらのベンダーは、これらの"クラウド" ERPソリューションをホスト、管理またはメンテナンスしません。かわりに、ローカルの付加価値再販業者(VAR)またはその他のSIerに責任を委ねます。これは、20年以上前のアプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)の運営方法によく似ています。現在、このようなASPの大部分が廃業したことにはそれだけの理由があります。

偽のクラウド・ソリューションのデメリット

単に別の会社でホストされているにすぎないオンプレミスERPアプリケーションをサブスクライブすると、自社でホストする場合と同じ問題やコストの多くが発生するうえ、独自のサーバー上にソフトウェアをインストールした場合よりもアクセスが一般的に遅くなります。さらに、当然、問題の対処をサード・パーティに依存する必要があります

つまり、偽のクラウド・ソリューションはより高価で非効率、かつ拡張性もありません。具体的な短所には、次のようなものがあります。

  • 遅くて手間のかかる製品アップグレード。オンプレミス・ソリューションが他社によってホストされている場合も、やはり、ソフトウェア・ベンダーがその製品の新しいバージョンをリリースするたびに、同じように面倒な(そのうえ費用もかかる)アップグレードに苦しめられる可能性があります。さらに、そのホスティング・ベンダーが最新ソリューションを追加することにした場合も、ベンダーに従わざるをえません。ベンダーは、過去のカスタマイズを新しいソフトウェアへ転送するなど、アップグレードを顧客ごとに1つずつ行う必要があるため、更新の完了に何か月さらには何年もかかる可能性があり、その頃には、製品の次のバージョンの発表が間近に迫っています。これでは、結局のところ、オンプレミス・ベンダーを使用することと変わりありません。
  • 費用のかかる不安定な統合とカスタマイズ性。ホストされたソリューションをオンプレミスまたはクラウドでその他のアプリケーションと統合すると、かなりの手間と費用がかかります。また、オンプレミス製品はそもそもホスティング用に構築されておらず、ホストされた状態で統合することを意図していないため、不安定になる可能性があります。ホストされた状態で特定のニーズに従ってソリューションをカスタマイズする場合、追加費用を支払うことが必要になる可能性もあります。しかも、単に自社で行うのではなく、ホスティング・ファームのシステム・エンジニアの作業を待つことになります。
  • 長すぎる停止時間と不十分なセキュリティおよびサポート。技術者の数とリソースが限られている場合、ほとんどのVARおよびサービス・プロバイダが、真のクラウド・プロバイダと同じレベルのセキュリティや、プライバシー保護および稼働時間を提供することは不可能です。これを判断する簡単な方法は、稼働時間のパフォーマンス、契約上の稼働時間保証、およびセキュリティとプライバシの認証(PCI-DSSセキュリティ・コンプライアンス、EUセーフ・ハーバー認証、SSAE 16 (SOC1) Type II監査の完了など)について確認することです。
  • 過剰購入/過剰プロビジョニングする必要性。必要となる大きさが不明な場合、突然ライセンス不足することがないように、ライセンス数を過剰に購入することが必要になるかもしれません。そうしないと、さらに悪い場合、事前計画に"失敗"すると、プロビジョニング不足に陥り、顧客とのSLAを遵守できなくなります。
  • ホスティング会社の財務的実行可能性に関する懸念。また、VARまたはサービス・プロバイダを必要とすると、それら事業が継続するかどうかも心配しなければなりません。倒産したらどうしますか。別のホスティング・ベンダーを大急ぎで探し、ソリューションを安全に移行して、データへのアクセスを失うリスクを冒しながら、社内で必要なITインフラを最初から構築する必要があります。

偽のクラウド・ベンダーにはない、真のクラウド・プロバイダの優れた点

真のクラウド・ベンダーは、時代遅れのビジネス・モデルで運用されていることが多いVARと比べて、資金供給が安定しており、財務的に安全性が高く、より拡張性があり信頼できます。収益性が高く透明性があり、業歴が長く安定した真のクラウド・プロバイダを探してください。

真のクラウド・アプリケーションには、他に次のような利点があります。

  • 手間のかかるアップグレードに耐える必要はありません。真のクラウド・プロバイダの場合、定期的かつ透過的にアップグレードされ、最新のイノベーションと利点が得られます。このため、常に最新バージョンのソフトウェアが実行され、カスタマイズは自動的に最新ソリューションに移行されます。
  • より確実、安全、高速にいつでもシステムにアクセスできます。クラウド・ソリューションは、利用者がインターネットを利用してどこからでもシステムにアクセスできるよう構築され、それを支えるインフラは、高速なパフォーマンスと高度なデータ・プライバシ保護を備え、稼働時間がほぼ100パーセント保証されるように構築されています。ビジネスの成功はこの誓約に基づいて成り立ち、履行できない場合にはそのビジネス・モデルが失敗したことになるため、そのような事態が起こらないよう、可能なかぎり最良のIT運用チームが構築されています。つまり、その成功はあなたの成功に直接つながるのです。
  • 他のアプリケーションと簡単に統合できます。真のクラウドERPソリューションは、クラウドとオンプレミスの両方のソリューションと簡単に統合できます。
  • あなた自身が作業可能です。クラウド・アプリケーションを即時に管理、構成、カスタマイズおよびメンテナンスできます。アプリケーションに変更を加えるたびに、高額なコンサルタントを雇う必要はありません。
  • より高い費用対効果が得られます。クラウド・ベンダーは大幅に良好な規模の経済を実現し、その効果をお客様に分配できます。

注意:騙されないでください

偽のクラウド・プロバイダは、真のクラウド・システムとホストされたシステム提案で真偽の境界線を曖昧にしようとします。しかし、その独自のシステムの利点として主張する内容は、オンプレミス・ベンダーが宣伝するものと同じです。アップグレードや導入のスピード、パフォーマンス、価値、カスタマイズ性およびサービスに関しては、まったく比較になりません。

こちらのページで真のクラウドベースERPソリューションの利点について学習してください。