クラウドERPはオンプレミスではなくベンダーのクラウド・プラットフォーム上で実行されるエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムであり、インターネットを介してアクセスすることが可能です。ERPソフトウェアは、財務および業務上の主要なビジネス機能を統合および自動化して、在庫、注文、サプライ・チェーン管理を含むデータの単一ソースを提供し、調達、生産、流通、配送業務などを支援します。

このような守備範囲にあって、ERPシステムは、従業員の作業場所を問わずすべての部門に対応できる高い可用性を持ち、統合された最新データのビューを提供する必要があります。サービスとしてのクラウドERPは、これらの要件を満たします。組織はインターネット経由でソフトウェアにアクセスすることから、接続とブラウザがあれば十分です。

クラウドERPソフトウェアとは

クラウドERPソフトウェアは、ERPベンダーによってホストされ、サービスとして企業に提供されるため、初期ライセンス料のようなマイナス面はほとんどなしに、オンプレミス・システムと同等、またはそれよりも優れた機能を企業に提供します。

IDC社のレポートでは、ほぼリアルタイムで膨大な量のデータにアクセスし、分析できることから、クラウドベースERPに対する需要は増え続けていると述べられています。

つまり、営業チームにとってはリアルタイムの在庫の動向を把握でき、財務チームにとっては監査やその他の業績データの要求にすばやく応じるためにキャッシュ・ランウェイを常時監視することから解放されることを意味します。

ビデオ: クラウドERPとは(英語)

クラウドERPソフトウェアのコンポーネント

クラウドベースのすべてのERPソフトウェアは、基本的な財務および会計機能を提供しています。その中から組織が選択して導入するモジュールやアプリケーションのタイプは、業界や独自のビジネス・ニーズに応じて異なります。利用可能なクラウドERPモジュールには次のようなものがあります。

  • 財務および会計
  • 顧客関係管理(CRM)
  • 在庫管理
  • 注文管理
  • 調達
  • サプライ・チェーン管理
  • プロジェクト管理
  • 資材所要量計画(MRP)

クラウドERPの概念

さらに深く掘り下げるにあたり、クラウドERPに関連する基本概念のいくつかを理解しておくことが重要です。

  1. デプロイメント戦略: ERPソフトウェアは、オンプレミス・サーバーまたはプライベートのホスト型サーバーにデプロイするか、as a serviceモデルでの購入が可能です。クラウドERPの機能は、通常、迅速に提供可能ですが、いずれのケースであっても会社は計画、データ移行、カスタマイズ、構成、スタッフ・トレーニングのための時間をとる必要があります。
  2. クラウドベースERP: オフサイトのERPベンダーのサーバー上でホストされ、サービスとして提供されてWebブラウザを介してアクセスするエンタープライズ・リソース・プランニング・ソフトウェア。
  3. オンプレミスERP: 会社のコンピュータとサーバーにローカルでインストールされ、社内または契約のITスタッフによって管理されるエンタープライズ・リソース・プランニング・ソフトウェア。ソフトウェアおよびサポート・インフラは、社内で管理、保管および保守されます。
  4. ホスト型ERP: 会社またはホスティング・プロバイダがERPソフトウェアおよび関連インフラのデプロイメントを管理します。多くの場合、ホスト型デプロイメントは、企業がIT業務を外注する場合に利用されます。クラウドの利点はいくらかはあるものの、この構成は真のas a serviceモデルではありません。
  5. エンドツーエンド・セキュリティ: クラウドベースERPベンダーとその顧客との間のセキュアで暗号化された接続。
  6. サブスクリプション・ライセンス: 会社は、ソフトウェアを使用するために、特定の時間間隔(毎年または毎月)で固定のサブスクリプション料金を支払います。この料金は、通常、ソフトウェアの保守とアップグレードをすべて含み、ユーザー単位または組織単位で請求されます。

クラウドERP vs.オンプレミスERP

前述の分類から、次のような疑問を持ったかもしれません。クラウドベースERPシステムとオンプレミスERPシステムで提供される機能が似たようなものなら、なぜクラウドを選ぶのかという疑問です。

オンプレミスERPソフトウェアは、会社のITスタッフまたは管理対象サービス・プロバイダによってインストールおよび管理されます。企業は標準のソフトウェア・プラットフォームのライセンス料を事前に支払った後、ソフトウェアと関連データを物理的に実行および格納するためのエンタープライズ・レベルのサーバー、ネットワークおよびストレージを購入またはリースします。オンプレミスERPを使用する企業には、保守、トラブルシューティング、補助ソフトウェア、更新およびカスタマイズの追加コストが発生します。ウイルス対策およびセキュリティ・ソフトウェアとストレージおよびサーバー・バックアップ・システムも必要な追加コストです。

一方、クラウドベースERPは、クラウドを介してas a serviceモデルでソフトウェアを提供するベンダーによってホストおよび管理されます。ベンダーは、アプリケーション、データ・ストレージ、基盤となるオペレーティング・システム、サーバー、物理的なデータ・センター・インフラ、セキュリティの更新や機能のアップグレードのインストールを担当します。

オンプレミスとクラウドのERPの最も明らかな違いはソフトウェアがどこで実行されるかと誰がこれを管理するかですが、他にも重要な違いがあります。

クラウドERPソフトウェアのタイプ

新規導入の場合、すべてのクラウドが同じであるとはかぎりません。従来のERPベンダーの中には、ソフトウェアをインターネットに接続された独自のデータ・センターで実行するよう改良するものもありました。このようなERPシステムを導入した場合、企業は、クラウドベースERPの利点である、簡略化されたアップグレードや、個別のソフトウェア・コンポーネント専用のインフラではなく大量のリソース・プールがアプリケーションをサポートするクラウド・データ・センター・モデルの強みなどを最大限に活用できない可能性があります。

また、クラウドERPソフトウェアには様々なタイプがあります。

  • マルチテナントSaaS: 単一バージョンのERPソフトウェアとその関連インフラによって、複数の組織にサービスが提供されます。各組織が同じソフトウェアを使用し、同じサーバー上でホストされますが、1つの会社のデータは他の会社からアクセス不可の状態が保たれます。真のクラウドERPシステムは、通常、マルチテナントSaaSです。
  • 単一テナントSaaS: 単一バージョンのERPソフトウェアとその関連インフラによって、1つの組織にのみサービスが提供されます。つまり、組織のデータは、一意のソフトウェア・インスタンスを実行するプライベート・サーバー上でホストされます。クラウドERPベンダーの中には、プライベート・インスタンスまたは共有インスタンスのいずれを実行するかを顧客が選択できるようにしているものもあります。
  • パブリック・クラウド: サービス・プロバイダが所有しており、複数の組織がクラウド・サービスを共有します。ただし、各組織のデータとアプリケーションは、他の組織に対してアクセス不可になります。パブリック・クラウドの例として、Amazon Web Services、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloudがあります。
  • プライベート・クラウド: 他の組織と共有されないサービスです。
  • ハイブリッドERP: その名前が示すとおり、ハイブリッドERPアプローチでは、コンピューティング、ストレージおよびサービスのためにオンプレミス・ソフトウェアとプライベート・クラウドまたはパブリック・クラウドが組み合わせられます。

クラウドERPソフトウェアの8つの利点

初期のインフラと運用のコスト。クラウドベースERPソリューションの最大の利点の1つとして、全体的なコストの削減がありますが、これは導入時から実現できます。オンプレミスERPでは、企業にはサーバー購入、データベース作成、初期導入、コンサルタント、IT人材配置、セキュリティおよびバックアップの初期コストが発生します。

オンプレミスERPシステムを使用する会社では、社内の特別なリソースやオンコール・リソース、アップグレードや更新、および会社の成長に伴う追加のサーバーの追加コストが発生します。一般的に、クラウドERPのコストは、オンプレミスERPよりも30%少なくなります。クラウドERPベンダーは独自のサーバー上でソフトウェアをホストおよび管理することから、企業は、初期のインフラ・コストとITスタッフ、保守、セキュリティ、更新の追加コストを回避できます。また、ベンダーは継続的なITサポートを提供します。

導入までの時間。新しいERPソリューションの最大の障害の1つに、導入にかかる時間があります。これは業務のダウンタイムと導入価値の実現までの時間に直接影響を与えます。ある調査によると、約半数の企業が予定時間内で導入を完了したと回答しています。ハードウェアを選別して設定したり、ITスタッフを採用してトレーニングする必要がないため、企業が稼働状態になるまでの時間は、オンプレミスよりもクラウドベースのERPシステムの方が短くなります。

アクセシビリティ。クラウドベースERPのユーザーは、場所や使用するデバイスを問わず、リアルタイムでビジネス情報にアクセスできます。これにより、組織全体の従業員が、部門や場所に関係なく同じデータを使用し、より迅速な意思決定を確信をもって下すことができます。

スケーラビリティ。ユーザー、事業所または子会社の増加に伴うサーバーの追加という問題が生じないため、クラウドベースERPソリューションでは、ビジネスのスケーリングが容易になります。ビジネスの成長にあわせてクラウドERPも拡張します。

組織は基本機能から開始し、必要に応じて追加することが可能で、その際、ハードウェアの追加は必要ありません。クラウドERPソリューションでは、インターネットに接続するだけで世界中のユーザーがビジネス情報にアクセスできることは言うまでもありません。ローカル・サーバーは不要で、会社が吸収合併によって大きくなったとき、新会社の部門を迅速に追加できます。クラウド・ベンダーは、通常、世界中に独自のデータ・センターを所有し、各顧客のデータを複数の場所に保持することで、たいていの企業が自身で管理するよりも信頼性の高い優れたサービスを提供します。クラウド・ソフトウェア・ベンダーが目指すのは、通常、99.999%の可用性であり、これは、顧客が遭遇する計画外のダウンタイムが年間8分未満であることを意味します。

カスタマイズと敏捷性。組織とともにスケーリングできるのと同様に、クラウドベースERPは、企業の成長と発展に伴い、最初から、または長期的に、ビジネス・ニーズにあわせて容易にカスタマイズできます。オンプレミスERPソフトウェアもカスタマイズ可能ですが、そのカスタマイズは現行のソフトウェアに結び付いており、特に社内で開発された場合には、将来のバージョンで動作することが困難である可能性があります。このことは、一部の企業がオンプレミスERPシステムのアップグレードを避け、古くなった技術を実行し続ける主な理由の1つとなっています。

さらに、クラウドERPシステムは、他のクラウドベース製品と緊密に統合できる傾向が強く、ダウンタイムや追加ハードウェアなしで新しいモジュールをクラウドERPシステムに追加することが可能です。このような拡張性によって、企業は事後対応型ではなく事前対応型で、業界の変化、消費者の傾向、予期しない状況などに応じて迅速に調整できます。

アップグレード。通常、クラウドERPベンダーは、すべてのシステム・アップグレードを継続的に管理し、変化するビジネス・ニーズに対応し、顧客が確実に最新の技術を使用するようにします。オンプレミスERPソフトウェアの更新またはアップグレードにはより時間がかかり、プロセス管理のための専門業者の採用が必要になる場合もあります。クラウドERPでは、更新にかかる時間はわずか30分で、通常は業務の中断を防止するために業務時間外に実施されます。

セキュリティ、コンプライアンスおよびDR(障害復旧)。会社のビジネス・データの安全な格納を外部ベンダーに依存するのは、多くの組織にとって懸念事項です。クラウドベースERPプロバイダは、会社に他の方法で得ることのできない優れたセキュリティとコンプライアンスを提供できます。さらに、企業は、データが常にバックアップされていることと、ベンダーが計画および訓練された障害復旧手順を準備していることに自信を持つことができます。

組織に障害復旧計画および事業継続計画がある場合を除き、オンプレミスERPソリューションには、ハードウェアまたはソフトウェアの障害発生時あるいは自然災害、火災、不法侵入の際に致命的なデータ損失のリスクが伴います。

クラウド・プロバイダは、通常、ベンダーと組織の間のデータに対するエンタープライズ・グレードのセキュリティとエンドツーエンドの暗号化を提供しています。会社は、クラウドERPユーザーのIDおよびアクセスの管理と、PCやスマートフォンなどのデバイスの保護に責任があることに注意してください。

ストレージのレジリエンスとアクセス。オンプレミス・ハードウェアに障害が発生した場合、会社が新しいシステムにデータを転送するのにかなりの時間とコストがかかる可能性があります。クラウドベースERPでは、データは、通常複数の地理的に分散されたプロバイダのデータ・センターに格納されています。このことは、ビジネス情報およびデータへのアクセスをインターネット経由で提供する観点でも有益であり、オンラインに移行するジョブや業務が増えていることや、会社がビジネス・プロセスの自動化および合理化を模索していることから、考慮すべき重要事項です。

クラウドERPの課題

クラウド使用の増加傾向は明白ですが、組織が直面する可能性のある課題があります。

レガシー・システム。長年オンプレミスERPシステムを使用している大企業がクラウドベースERPに移行しようとする場合、その移行は困難で、かなりの時間と専門知識が必要になる可能性があります。

変化への抵抗。大規模なITおよび管理チームを有する大企業の場合、主要な利害関係者からの抵抗に直面する可能性があります。ERPソフトウェアをオフサイトへ移行すると、管理者が自動化によってプロセスの一部の制御するタスクを失ったり、ベンダーがすべての保守とインフラを管理することで、ITチームが特定の業務プロセスの制御をするタスク失います。

規制コンプライアンス。特別に厳格なサイバー・セキュリティ・ポリシー、クラウドでの顧客情報のホストに関する制約、規制、コンプライアンス関連の課題のある会社は、クラウドベースERPソリューションの利点を最大限に得ることができない可能性があります。それでも、主なSoftware-as-a-service(SaaS)プロバイダは、HIPAAやGDPRのような規制への準拠においてかなり前進しており、通常はデータの主権と局所性に関する指令に対応できるため、オンプレミスERPに限定されていると決めつけることのないようにしてください。

NetSuite ERP

NetSuiteはクラウド用に構築され、重要な財務機能と業務機能を統合して自動化することによって、リアルタイムの分析情報を提供し、カスタマー・サービスを改善してサプライ・チェーン・コストを削減することで、すべての業界にわたる中小企業を支援します。NetSuite ERPで組織を次のレベルに引き上げる方法を学習しましょう。