2023年に待ち構える課題に対し、財務のリーダーたちは必ずしも楽観的な見通しを持っていません。しかし、これらの課題にはチャンスと解決の道を含んでいます。ここでは、財務会計部門に向けて、2023年にはどのように対応し、どのように優位に立つべきかを解説します。
会計の課題とその解決策17項目
会計部門はテクノロジの活用により、2020年に発生したサプライ・チェーンの問題や収益の途絶など、予期せぬ変動に対する適応力を強化できます。では、経理担当者が今直面している最大の課題は何でしょうか。キャッシュ・フロー、新人材の雇用、新税金と規制への対応、リモート・ワークの持続などが、会計チームの主要な課題となっています。
1. キャッシュ・フロー
経済的苦境やその兆候を感じた時、企業はしばしば速やかにコストを削減し、計画していた投資を延期して流動性を向上させます。特に、キャッシュ・フローの改善を重視する設備投資の傾向は2023年まで続くでしょう。
マネジメントとコンサルティングを手がけるMcKinsey & Company社によると、経営陣が重視する事項が利息および税金控除前利益(EBIT)から現金にシフトし、その結果、各事業レベルでの現金管理の責任が強化されています。しかし、従業員や運営に関する分野では、コスト削減は緩和の傾向があります。2020年に製品やサービスの提供と価格設定戦略に加えた変更が収益をもたらすことに、企業は自信を持っています。PricewaterhouseCoopers (PwC)社による2020年10月の調査では、調査対象のCFOの約28% (opens in a new tab)が今後12か月に収益の増加が見込まれるとし、これは2020年6月のわずか11%から大幅な増加を示しています。
安定したキャッシュ・フローを確保するには、売掛金と買掛金のプロセス効率を高めることが重要になります。例えば経費、期限切れの請求書、営業キャッシュ・フローなどの指標に注意しましょう。現金のレポートを毎日生成して追跡すると、変化や変動を認識して他の意思決定の判断材料に用い、将来に向けた計画に役立てることができます。
2. 財務報告
財務状況の開示の管理は、SEC要件の影響を受ける公開会社および大規模な非公開会社にとって、引き続き関心事項です。財務リーダーは、COVID-19関連の政府による経済対策プログラムによるレポート要件と、監査に備えた適切なドキュメント、記録およびレポートの確保に関心を持っています。さらに、環境、社会、ガバナンス(ESG)に対する開示要件が今後変化する可能性があるため、会計部門 (opens in a new tab)は規制を取り巻く状況の変化に注意する必要があります。
3. 人材の雇用と維持
テクノロジ、医療、不動産管理、金融サービスなどの財務会計役職や、現金収支の安定性を維持する役職の採用が続いています。これらの職務には、請求、売掛金、回収などがあります。
競争が激化する中で、優秀な人材を維持することは重要な課題です。財務会計の管理職のおよそ10人に8人 (opens in a new tab)が、有能な従業員の維持に関心を持っています。主な2つの関心分野は、士気低下、および高い作業負荷に起因する燃え尽き症候群の多さとなり、後者は経理担当者にとって長年の問題です。教育訓練の継続などの従業員の維持の主要な戦略 (opens in a new tab)を財務会計部門に確実に適用することが、士気を高める取組みの第一歩となります。業務の自動化が進む中、経理担当者の技術的スキルやソフト・スキルの向上を支援し、その専門知識をより適切な方法で事業戦略に適用することが、2023年における定着率確保のために重要になります。
4. 自動化と人工知能
機械学習やAIを導入しているのは大企業の約2% (opens in a new tab)にすぎませんが、5分の1が開始を計画しています。AIは、労働力不足への対処、労働集約的なタスクの自動化、そしてより優れた洞察を得ることを目的として導入されます。
自動化される作業の増加に伴い、経理担当者は、新しいテクノロジから生成される情報やデータに専門知識を適用し、事業戦略でより大きな役割を担うために、別のスキルを習得することが必要です。クラウドベースの会計ソフトウェア、予算、予測、データ分析と可視化ツールが、会計における自動化の基盤の一部を構成します。
5. スキルアップ
自動化が拡大する中、既存のスキルや専門知識を強化してテクノロジを活用することが、従業員および事業に利益をもたらします。クラウドベースの給与および人事情報システム、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システム、データ分析、財務モデリングおよび予測に関するスキルの向上と学習の強化に努めてください。技術的なスキルに加え、いわゆるソフト・スキルとして求められるのは、独立してバーチャルチームで作業する能力、細部への配慮、変化への対応力、創造性、継続して学習する意欲、文書および口頭でのコミュニケーション・スキルなどです。継続的な教育訓練を提供することには、従業員の士気と定着率を高めるという利点もあります。従業員への訓練で上位にランク付けされる会社は、下位の会社よりも離職率が53%低 (opens in a new tab)くなっています。
6. 税法の変更
税法における変更の適用は、会計部門に共通する懸念事項です。しかし、2023年には通常よりも大きな変化が待っています。National Conference of CPA Practitioners理事長のNeil Fishmanは、2023年1月のニュースレターで、新しい税のシーズンを迎えるにあたり、実務家は、COVID経済対策として知られる、統合歳出法の約5,593ページにわたる新しい条項を吸収することが必要になったという事実を指摘しました。これには、税制延長、PPP経費の控除、2回目のPPP融資の可能性、150,000ドル未満のPPP融資返済免除手続きの簡略化が含まれます。会計チームにとって、税制の変更、特に合計納税額の把握、貿易および関税政策の変化への対応が最重要事項です。
税法の変更に効果的に対応することは、将来発生する他のビジネスの課題に対応するための資金をより多く確保するために役立ちます。会計ソフトウェアの、デジタル化された正確かつアクセスしやすいデータを使用すれば、複雑な課税年度での管理が容易になります。
7. 規制の変化と新しい会計基準
新しい収益認識基準、リース会計の基準およびCECL会計基準が、会計部門の課題となっています。基準導入の複数のフェーズがパンデミックによって延期されたものの、予定されていることには変わりないため、通知に注意を払ってください。PPP融資に関する新しい規制と、現在および将来のCOVID経済対策パッケージに関連する変更の最新情報を把握してください。
8. 経費管理
従来経費精算の大半を占めてきた交通費が前年比77%減 (opens in a new tab)となりました。一方、支出のリスクは2019年の3倍に上昇し、2020年の第2四半期と第3四半期だけでも不正行為が57%増加しています。従業員がリモート・ワークに移行したことで、全体的に新しい経費管理の課題がもたらされました。自宅で働くために必要な、事務用品やコンピュータ機器、その他物品が一般的な経費でした。しかし、この状況を従業員が悪用して、大画面のテレビや音響システム、テレビのサブスクリプションにまで経費を使うリスクが発生しました。
許容されるホーム・オフィス経費や食費(宅配サービスやギフト・カードを含む)を中心として経費のポリシーをまだ更新していない場合は、それを実施します。内部統制を確認し、ソフトウェアによる経費管理プロセスの自動化(opens in new tab)を強化し、疑わしい場合は自動的にフラグが付くようにして、不正な経費を発生しにくくします。
9. 給与管理
法律および規制の変化に伴う新しい給与の課題(opens in new tab)が発生しつつあります。そして、異なる場所にいる従業員の源泉徴収を管理する作業が、給与管理者にとっての大きな課題になっています。リモート・ワークによって主要な勤務地の判断が複雑化したことで、所得税の管理が難しくなりました。
給与プロセスをまだ自動化していない場合はそうすることを検討してください。クラウドベースの給与プラットフォームは所得、控除、会社負担、税金および有給休暇の計算に役立つと同時に、税金、申告書、口座振込などについて複数の管轄に対するサポートを提供します。
10. サイバーセキュリティ
データ侵害を識別して阻止するまでに平均で280日かかり、その平均コストは3.86百万ドル (opens in a new tab)になります。それらの侵害の大部分は、従業員の資格情報の漏洩または盗難がその発端となっています。会計部門は添付ファイルや請求書のリンクが付いた電子メールを常に受信しており、悪意のあるリンクが知らないうちにたやすく紛れ込むことは想像に難くありません。
会計部門はその職務に必要な、厳格な内部統制、アクセスおよび権限に関する訓練をすでに受けているため、会社全体のサイバーセキュリティ意識の推進役として適任です。古いソフトウェアはマルウェアやランサムウェアの被害を受ける率が高くなるため、すべてのシステムを必ず最新の状態にしましょう。
11. リモート・ワーク
他の多くの業界と同様、会計においても、リモート・ワークの柔軟性向上を求める傾向が顕著になっています。約77%の会計のプロフェッショナル (opens in a new tab)が、リモート・ワークの継続を希望しています。しかし、リモート・ワークは、何十年もの間、長時間の残業によって月末締めなどのタスクをこなしていた財務会計部門に課題をもたらしました。さらに、リモート・ワークによって攻撃のリスクも高まりました。IBMによれば、パンデミックの間にテレワークを導入した会社の70%が、データ侵害のコスト増加を予想しています。
確立された財務統制を分散した従業員で機能させることに重点を置きましょう。従来どおりのリスク評価の枠組みを使用して、どの統制によって会社がリスクにさらされる可能性があるかを判断します。
大部分の企業にとって、クラウドベースの会計ソフトウェアには、リモートの会計部門を支援するうえでの利点があります。2020年にクラウドコンピューティング・テクノロジの活用度が高かった会社は、リモート・ワークがもたらした課題に、より適切に対処できました。さらに、社内に設置&管理しているソフトウェアにアクセスするパフォーマンスにおいて、このテクノロジがVPNさえも凌駕することがありました。
12. 士気の低下
燃え尽き症候群が財務会計を担う人員の間で一般的な問題であることは驚くに値しません。責任と重い作業負荷、規制を取り巻く状況の絶え間ない変化に常にさらされる財務会計部門はたやすく士気の低下に見舞われます。もう1つの共通の懸念事項は人員不足です。収益が2,500万ドル未満の平均的な企業では、財務職の雇用人数はわずか3人にとどまっています。さらに、年間収益が1億ドルから4億9,900万ドルの間の企業においてさえ、財務職に雇用されているのはわずか13人です。
会計部門の士気を上げるにはどのようにすればよいでしょうか。特に管理職レベルで、定期的に個人の貢献を正式に称賛する方策を講じましょう。管理職は従業員の士気に大きな影響を及ぼします。会計部門と経営陣の間のコミュニケーション体制を維持しましょう。財務に関する問題のみでなく、戦略的な意思決定に関するものも含めた意見に耳を傾けます。そして共同作業のために必要なツールを用意してください。また業務の煩雑な部分を自動化して時間の余裕を作りましょう。
13. 正確な財務予測
パンデミックによってもたらされた状況により、正確な財務予測が特に困難になりました。ビジネス・リーダーは、シナリオ計画と、営業、経費および現金の予測の再検討に取り組む必要があります。複数のシナリオに基づき、仮定、モデル・キャッシュ・フロー、バーン・レートおよび流動性の検証を繰り返します。
小規模企業とスタートアップ向けの会計のヒント(opens in new tab)として、第一に、業績の評価と予測のために財務諸表を使用することがあげられます。非常に多くのことが急速に変化するため、リアルタイムの分析にアクセスできることが重要です。過去のトレンド、現在の状況および最良、最悪、可能性が最も高いシナリオを考慮した財務モデルを構築するうえで、このことが大きな違いを生み出します。
14. 新しいテクノロジとツールへの対応
規制環境や税法の変化以外に、テクノロジの進化にも対応することは負担になることがあります。経理担当者および財務のプロの間でクラウドベースの会計ソフトウェアに関連するスキルが最も求められていることには理由があります。調査会社であるGartner社は、最近、2024年までにIT支出の45% (opens in a new tab)以上がクラウドベースのテクノロジに移行し、多くの場合、その中に財務会計ソフトウェアが含まれるだろうと発表しました。
リアルタイム分析、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)およびAIに関する最新のイノベーションは、安定し、信頼性のある無駄のないデータ・インフラを必要とするでしょう。しかし、多くの会社は、古いレガシーのオンプレミス会計システムで業務を行っています。財務レポート、現金管理、買掛金および月末締めのプロセスのすべてがテクノロジの影響を受け、かつ、近い将来においても引き続き自動化とクラウドベースの会計ソフトウェアの重要な構成要素となります。
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15. イノベーション
会計分野のキャリアは困難でしょうか。そのとおりです。しかし、業務の自動化が進み、会計のプロがより分析的な業務に注意を向ける時間が確保されるようになったことで、新たな刺激的なチャンスも生まれています。そして、会計ソフトウェアはイノベーションに満ちあふれています。
16. グローバリゼーション
企業の規模と世界にまたがる複雑度が増し続けることに伴い、会計部門ではますます多くの国際規格と規制に対応することが必要になります。テクノロジによってそれが簡単になったことで、経理担当者は出身国と働く場所の市場の両方のルールと標準に対処することが必要になりました。地域経済の不安定性、サイバーセキュリティ基準、税法の変更などにより、これらの国々では、適応力のある会計部門と課題を軽減するテクノロジが必要とされています。
17. 経済の不安定性
クラウドベースの会計システムを導入して継続的に強化することが、2023年の多くの課題に取り組むための第一歩となります。最上位のエンタープライズ・リソース・プランニング・ソフトウェアは、財務会計を、サプライ・チェーンや在庫管理、注文管理などの他のビジネス・ソフトウェアと統合します。データのソースの信頼性が高いことと、時間がかかり、間違いを起こしやすいタスクの自動化が促進されることで、会計部門に時間の余裕が生まれ、戦略的な意思決定に反映するためのより適切なデータを入手でき、事業戦略の指針を示す重要なパートナになります。