最高財務責任者(CFO)は様々なことに目を配ります。CFOの役割が財務上の責務を超えて拡大し、会社全体の戦略的責任を含むようになったことで、大多数のCFOは疲弊しています。2021年から2022年にかけて異例とも言える2年間を終え、CFOはこれまでで最も厳しい試練に直面しているとも言えるでしょう。この記事では、あらゆる規模の企業のCFOを対象とした複数の調査、研究およびインタビューからまとめた、2023年におけるCFOの課題トップ10を解説します。

CFOの役割: 従来の役割と新しい役割

今日のCFOは企業の経営陣の一員として積極的に行動し、CEOおよび取締役会の直属として幅広い戦略的責任を担います。実際、21に及ぶ業界のリーダーを対象としたBrainyard社の調査によると、ほとんどのCFOが財務以外の職務を担当していました。

戦略的パートナシップへの注力、テクノロジの評価、または収益目標を達成するための取組みなど、CFOは財務組織のリーダーのみならず、企業の成長を戦略的に促進することを期待されています。

このようにCFOの役割が進化したことで、これらの幹部の中で財務のみに専念する人はほとんどいなくなりました。

だからといってキャッシュ・フローの維持、財務プロセスの所有、財務諸表の正確性の証明、および投資家、監査者、税務当局への対応といった責任をCFOが負わなくなったということではありません。

組織の全体的な財務健全性に関しての最終責任はやはりCFOが担います。その中心的な責任と拡大された役割を果たすために、CFOはほとんどの組織で最も長時間働いています。

さらに、新しい戦略的責務で成果を出すことができるかどうかも懸念しています。こうした懸念は、専任のコントローラや財務責任管理者がいない小規模企業においてより切実になる可能性があります。この不安はほぼすべての調査の結果に表れ、CFOは、求められる戦略的役割と日々多くの時間を奪う監視役としての煩雑な作業の期待のギャップについて多種多様な形で語っています。

米国管理会計士協会の調査によると、この従来の役割と新しい役割の進化は続くと予想されており、調査対象メンバーの72%が、CFOの役割の範囲は2025年まで、場合によっては大幅に拡大し続けると考えています。

CFOの10大課題

2023年にCFOが気がかりなことは何かを考えてみたとき、仕事のあらゆる面で困難な課題があることに気付きます。以下に、最も困難な課題を10個示します:

  1. 人材の獲得と維持

    部門に適切なスキルを持つ人材を見つけることは、CFOにとって重要な課題です。役割と要求が拡大するにつれて、CFOがスタッフに求めるスキルも変化しています。

    たとえば、Forbesは、CFOのほぼ80%が、新規採用者を評価する際にテクノロジ・リテラシを優先すると報告しています。実際、テクノロジが財務に果たす役割を考えると、2023年以降は財務の関係者にデータ・スキルを習得させるよりも、データ・サイエンティストを雇って財務の原則を教える方が効果的であると考える人もいます。技術力のある従業員を雇うには追加のコストがかかるため、これらのスキルを持つ従業員を維持(opens in new tab)することに重点を置くことが重要です。

    同様に、優れたコミュニケーション・スキルは、CFOとそのスタッフにとってますます重要になっています。コンセンサスを形成し、複数のメディア(電子メール、テキスト、対面および仮想)間でポリシーを伝達する必要性は、財務部門全体に浸透しています。CFOはこの領域には改善の余地が多いと考えているため、現在のスタッフを教育し、新規採用者の場合にはそれに重点を置いています。

    EY社の調査によると、CFOの約70%が文化を変えることが優先事項であるとし、PwC社の調査ではCFOの約半数が多様性、公平性および包括性(DEI)プログラムが採用と教育のイニシアチブの重要な部分であるとしています。CFOは、DEIにより、補完的なスキル・セットを備えた強力なチームを開発する際にメリットが得られると感じています。

  2. 異種データの統合

    CFOは、2023年にはレガシー・データに起因する課題に対処することが必要になります。2022年にビジネスにおいて機敏さが必要とされたことにより、意思決定をサポートする最新の正確なデータの必要性が高まりました。分析用のデータを統合することで、切断されたデータベースおよびスプレッドシートからデータを取得する必要がなくなります。同時に、データ・ソースが1つになるため、レポート作成の速度が向上し、手動プロセス特有の非効率性とエラーが減少します。

    Accenture社によると、CFOの76%が、ビジネス目標の達成には異種データの統合が不可欠であると考えています。異種データの課題におけるもう1つの重要な側面は、CFOが企業の財務諸表の正確性と監査可能性を確保する必要があることです。

    これは公開会社にとって長年の問題であり、2023年にはあらゆる規模の上場企業と非上場企業にとって、融資の申請時などに影響が発生します。データを統合することによるメリットは、監査業務の円滑化、および専門サービスと財務部門の超過勤務コストの削減です。

  3. ビッグ・データの活用

    過去数年間の出来事により、データの追跡が重要な問題になりました。CFOの2023年の課題は、データを追跡して、将来を見据えた企業の戦略策定をサポートするトレンドと洞察を明らかにすることです。ビッグ・データ分析を適切に行うことで、CFOはより正確な予測を行う(opens in new tab)ことができ、組織全体の俊敏性が向上します。

    そのために、CFOとそのスタッフは、財務データの枠を超えることを求められています。業務、市場、ソーシャル・メディアおよびマーケティングのデータを取り込み、その情報を実用的なインテリジェンスに変換するという課題に直面しています。

    逆説的ですが、データ分析ツールがより有効活用できるようになっている一方で、多くのCFOがデータよりも直感と経験に頼っていることが調査で示されています。これまで履歴分析に頼っていたCFOが、この課題を克服して予測分析を活用することは難しい場合があります。

  4. テクノロジによる自動化の追加

    2022年は、多くの企業が新しい方法でテクノロジを活用し、従業員がリモート接続した状態を保ちながら収益の成長を促進することに成功しました。2023年以降、さらにテクノロジを実装して自動化を推進することは、CFOの重要な課題です。

    Accenture社は財務タスクの80%を自動化できると推定していますが、約3分の1しか自動化されていません。また、CFOの3分の2が自動化テクノロジの責任者である一方、ほぼ同じ割合のCFOがテクノロジを完全に最適化するための十分な知識がないと述べ、ほとんどのCFOは財務管理ソフトウェアが生産性を向上させる(opens in new tab)と(正しく)認識しているため、その状況を懸念しています。

    このギャップの根本的な原因の1つは、変化を嫌うスタッフによって採用が妨げられている可能性があることです。CFOは、ルーチン・タスクを自動化することで、財務スタッフがよりクリエイティブな業務に専念できるようになることと、自動化されたインテリジェンスから得られる洞察がビジネスの成功に役立つことを示す必要があります。

    同時に、一部のCFOは、自動化と、手動または個人でリスクを管理する能力を比べて葛藤していますが、ほとんどのCFOは、数年以内に財務がクラウドネイティブになると考えています。ただし、障害に関係なく、戦略的CFOは、新しい財務管理テクノロジ(opens in new tab)への投資が2023年の最も重要な目標の1つであると述べています。

    より進歩的なCFOは、ビジネスの価値と効率を最大化するために、機械学習を使用した財務予測(opens in new tab)、ロボティック・プロセス・オートメーション、ブロックチェーンなどの新しいテクノロジを検討しています。投資収益率の計算を行う際は、会社全体の費用対効果を調べ、それらの投資の効果を測定するための目標を設定しています。

  5. 不正の防止とサイバーセキュリティへの投資

    企業の経済的守護者であるCFOの任務の一環として、これらのリーダーは多くの場合、不正の発見と防止やサイバーセキュリティへの投資など、リスク管理を担当しています。CFOは、機密データを保護する必要性と、サイバー攻撃が引き起こす可能性のある潜在的なコストを認識しています。

    実際、世界のCFOを対象としたEY社の調査によると、半数以上がリスク管理を最も困難な課題の1つとみなしており、その割合は組織の規模が大きくなればなるほど増加します。

    従業員がリモートで永続的に働くことが想定されることで、CFOが潜在的な不正およびサイバーセキュリティのリスクを管理する新たな側面が追加されます。セキュリティ上のメリットを考慮すると、クラウドがより魅力的です。

  6. リモートで働く従業員のサポート

    リモート・ワークへの移行は、2023年以降、CFOに機会と課題をもたらします。この移行が成功した組織は、物理的なオフィス・スペースへの投資を再考しています。潜在的なコストを削減し、テクノロジへの投資に対して利益を得られるため、従業員のメリットと相まって、継続的な在宅勤務またはハイブリッド・オプション(opens in new tab)が支持されています。

    リモートで働く従業員がいる企業のCFOが最も多くあげる課題は、従業員の燃え尽き症候群の懸念と、文化を再構築する必要性です。Brainyard社の調査によると、2020年の在宅勤務期間中には、ほとんどのCFOとそのスタッフの勤務時間が週当たり50時間から60時間、あるいはそれ以上増えました。

    仕事と家庭生活の境界があいまいになることでこの作業負荷が悪化し、持続不可能なストレスを引き起こす可能性があります。特に、ビジネスが再び回復する中で、財務部門の文化に潜在的に与え続けている悪影響は、CFOの重要な課題です。

  7. コンプライアンスの遵守

    CFOには主に、企業の法規制の遵守を徹底させる責任があり、2023年には別の課題が発生するでしょう。たとえば、リース会計に関する一般に受け入れられている会計原則(GAAP)(opens in new tab)における過去の変更、環境、社会およびガバナンス(ESG)の要因に関する開示の増加、重要なコンプライアンス・プロジェクトが必要な公正貸付報告の変更などです。CFOは、今後のその他の変更の実装を支援するために外部監査人を利用する可能性があります。

  8. イノベーションの活用

    CFOが拡大された役割をどのように果たすかは、組織内でイノベーションをどの程度主導できるかに大きくかかっています。2023年におけるCFOの最大の課題は、企業が将来の機会を獲得できるように、過去数年間の経済情勢を乗り切ることを可能にした変化とイノベーションのペースを継続することです。

    CFOは、他の経営陣のリーダーと連携して、ビジネス・パフォーマンスに関する深い知識を活用して、成長を促進する方法で財務イノベーションを採用する必要があります。予測分析(opens in new tab)、ダッシュボード、主要業績評価指標などのツールは、CFOが機会を早期に特定し、業務を迅速に適応させるよう指示するために重要な役割を果たします。

  9. パンデミック後の成長の加速

    CFOの課題は、企業が2022年までに苦労して達成した成長を確実化するために体制を整えることです。戦略的CFOは、ビジネスが成長するためのコストは削減できず、意図的に投資する必要があることを理解しています。

    CFOは新しいビジネスを獲得するための支出と、中核事業への支出の間のバランスを十分認識しています。多くのCFOは、顧客の増加、新製品の発売および合併や買収によって収益の増加を促進することを最優先に考えています。

  10. 税金と規制の管理

    PwC社によると、マクロ経済および政治情勢により、CFOの67%が税務政策と規制リスクに注目しています。法人税率が引き上げられる可能性があるのです。

    また、州予算が厳しくなると、州レベルの税の変更が発生する可能性もあります。世界的に、付加価値税(VAT)や物品サービス税(GST)などの国際課税の変更は、国際貿易政策の変更と同様に、業務に大きな影響を与える可能性があります。CFOは、これらの変更が2023年にビジネスにどのような影響を与えるかを理解し、シナリオ・プランニングの演習を使用してそれらを軽減できるようにすることが求められます。

ERPを活用して仕事をより簡単に

CFOが2023年にやるべきことがたくさんあるのは明らかです。最新のソフトウェア・ソリューションは、CFOの最も困難な課題の多くを処理できるように構築されています。たとえば、ERPシステムは、財務管理および計画、注文管理、生産管理、サプライ・チェーン管理、倉庫および配送、調達をサポートする複数の統合モジュールを提供します。

財務管理機能を備えた最新のERPシステムは、CFOがテクノロジのギャップを埋めるために大きな役割を果たします。また、一貫性のある堅牢なデータをリアルタイムのスピードおよび強力な分析ツールと組み合せると、CFOとそのチームによる戦略的意思決定に、適切なタイミングで適切な情報を提供するために役立ちます。

CFOは、2023年のビジネスについて革新的な戦略を主導する立場にあります。その最も困難な課題は、適切なテクノロジとデータに裏打ちされた適切なチームを構築して、リスクを軽減し、コンプライアンスを達成し、組織を革新的な成長に導くことです。これは、ペースの速い、広範囲に及ぶ職責に慣れていても、簡単なことではありません。

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CFOの課題に関するFAQ

2022年にCFOが関心を持っていたことは何ですか?

CFOは、2022年には財務分析、組織構造および財務テクノロジの最適化という3つの主要なイニシアチブが焦点になると予想していました。COVID-19のパンデミックにより、その焦点は、リモートで働く従業員をサポートし、従業員の安全を確保して、大恐慌以来最も不確実な経済期間を乗り切るために各企業が必要とするあらゆることにシフトしました。

いまCFOが関心を持っていることは何ですか?

CFOは、全社的な責任を負う数少ない経営幹部の1人であるため、企業内の業務のあらゆる側面に関心を持っています。CFOは、財務組織を率いることに加えて、戦略的パートナシップ、テクノロジの評価、リスク軽減およびCEOへの助言に携わっています。

CFOにはどのような質問をすべきですか?

あらゆる規模および業界の企業のCFOに尋ねるのに一般的に適している質問は次のものです:

  • 最も重要な主要業績評価指標は何ですか?
  • 短期、中期および長期的にどのような方向性で投資を行う必要がありますか?
  • 生産性を高めるにはどうすればよいですか?
  • 会社は成功のために組織化され、人員配置されていますか?

2023年のCFOの悩みのタネは何ですか?

2023年には、人材の獲得と教育、異種データとビッグ・データの管理とマイニング、テクノロジの拡張、不正の防止とサイバーセキュリティの拡大、リモートで働く従業員の支援、コンプライアンス、イノベーション、成長の加速化、税および規制の変更の管理といった問題がCFOを悩ませることになるでしょう。