ビジネスにおいて償却とは、無形資産(著作権や特許など)の価値について、その減損を耐用年数にわたって計上する実務のことです。償却費は、会社の損益計算書、貸借対照表および納税義務に影響を及ぼす可能性があります。

通常、会計目的で償却を計算することは簡単ですが、償却対象の無形資産を決定し、その償却可能な適正価額を計算することは困難になる場合があります。税金目的の場合、償却により、会社の帳簿所得とその課税所得の間に大幅な違いが発生する可能性があります。

償却の概要

"償却"という用語は、ビジネスにおける無形資産の償却とローンの割賦返済という、まったく異なる2つの財務プロセスを指す場合があります。

この記事では、ビジネスにおける会計および経費管理に関連する場合の償却に焦点を当てています。この用途での償却は、減価償却(類似する会計プロセス)と概念的に似ています。減価償却は、有形固定資産(機械など)に使用されますが、償却は、無形資産(著作権、特許、顧客リストなど)に適用されます。

ローンの割賦返済はビジネスと消費者の両方の世界で使用される別の概念で、これはローン返済を利息支払と元本削減の間で分割することを指します。割賦返済のスケジュールにより、ローン残高、利率、支払スケジュールなどの要因に基づいて、各支払を分割する方法が決定されます。

要点のまとめ

  • 償却は、無形資産の原価をそれを使用することで利益が予期される期間にわたり、分散するために使用する会計プロセスです。
  • 場合によっては、償却できる無形資産および適正な資本還元価値を決定することが困難になることがあります。
  • 償却ルールは、税金目的と帳簿目的で大幅に異なります。ただし、適切に適用すれば償却によって大幅な節税となる可能性があります。

ビジネスにおける償却

ビジネスにおいて、経理担当者は無形資産の価値をその耐用年数にわたり系統的に削減するプロセスとして償却を定義します。これは一般に受け入れられている会計原則(GAAP)の基本原則の1つである、対応の原則(opens in a new tab)の例です。対応の原則によって、費用をその支払時点ではなく、それが生成に貢献した収益と同じ期間に認識することが要求されます。

償却は、会社の損益計算書および貸借対照表に影響を及ぼします。また、償却には税金目的のための固有のルール・セットも存在し、償却が会社の納税義務に多大な影響を及ぼす可能性があります。

償却の計算方法

帳簿目的の場合、会社は一般的に定額法を使用して償却を計算します。この方法では、無形資産の原価をその資産から利益が得られるすべての会計期間にわたって均等に分散します。

償却の計算式は、次のとおりです。

年間償却費 = 資産計上済コスト / 推定耐用年数

無形資産の償却は、無形資産が利益をもたらす期間に渡って分散される、財務プロセスの一つです。償却の計算において、最も困難なのは無形資産の資産計上済コスト(opens in a new tab)(この式の分子)を決定することです。

例えば、会社が新しいタイプのソーラー・パネルに対する特許など、無形資産を購入した場合、資産計上済コストは、会社が現金または株式で支払った金額やその他の考慮事項に基づく公正市場価格に、その無形資産を取得するために発生した雑費(法的手数料など)を加算した額となります。

自社が開発した無形資産の評価は、特定の費用のみを含めることができるため、より複雑になります。例えば、特許可能な新しいソーラー・テクノロジを社内で開発した場合、特許を保護するためのコスト(法的手数料、登録料、弁護料など)のみが償却の対象となります。また、テクノロジを開発するために発生したコスト(研究開発施設やエンジニアの給与など)は、事業費用として税控除の対象になります。

税金目的の場合、さらに他にも会社が資産化したり無形資産として償却(後述)する費用の種類を管理する特定のルールがあります。

基礎となる償却スケジュールの計算と保守は、帳簿目的と税金目的のどちらの場合についても、複雑になる可能性があります。無形資産在庫を管理してこれらの計算を行う会計ソフトウェアを使用することで、財務チームのプロセスが簡素化され、エラーの可能性が低くなります。

ビデオ: 償却の定義

無形資産の償却

償却は、耐用年数を識別可能な無形資産に適用されます。帳簿償却目的の場合、耐用年数はその資産の経済的耐用年数(所有者にとって資産が有用である推定期間)、またはその契約/法定耐用年数(例えば、特許またはライセンスが期限切れになるまでの時間)のうち、短いほうとなります。

規制問題、陳腐化、その他の市場的要因による劣化により、資産の経済的耐用年数がその契約期間または法定耐用年数よりも短くなる場合があります。

償却可能な無形資産の例には、次のものがあります。

  • 特許
  • 著作権
  • フランチャイズ
  • 商標
  • 内部使用の目的で開発されたソフトウェア(顧客販売なし)
  • 顧客リスト
  • ライセンス

対照的に、営業権など耐用年数が不確定な無形資産は、通常GAAPに従い、帳簿目的では償却されません。かわりに定期的にレビューされ、価値の減損が決定されます。会社は損益計算書にすべての減損を償却費としてではなく損失として記録します。

このルールには制限付きの例外がいくつか存在し、株式非公開の企業は10年間にわたって営業権を償却(opens in a new tab)できます。

無形資産は貸借対照表の長期資産の部で開示されますが、償却費は損益計算書(P&L)に記載されます。ただし、償却は非現金費用であるため、会社のキャッシュ・フロー計算書(opens in a new tab)や利息、税金、減価償却、EBITDAなどの収益性基準(opens in a new tab)には含まれません。

税金目的での償却

税金の計算においては、IRSにより無形資産に異なる耐用年数が適用される場合があります。このバリエーションによって、会社の帳簿に記録された償却費と税金目的で使用される数値の間に、大幅な差が発生する可能性があります。

IRSでは、特許や商標などを含む資産をを"197条無形資産"(opens in a new tab)と呼び、税金コードに定義されています。これにより、税金目的でこれらの資産の償却を計算する場合、会社は、耐用年数として15年を適用する必要があります。

このIRSカテゴリに含まれない無形資産は、性質に応じて、異なる耐用年数で償却されます。例えば、一般の人々がすぐに購入可能なコンピュータ・ソフトウェアは、197条無形資産としてみなされません。このような場合の耐用年数は、IRSの償却に関する提示(opens in a new tab)によると、36か月とされています。

帳簿と償却の間の主な相違点の1つは、営業権の処理です。IRS広報535(opens in a new tab)によると、税金目的の場合には営業権の定額償却を180か月の期間にわたり使用できますが、帳簿目的の場合は、"価値の減損"という手段を使用し、あらゆる償却損失を決定する必要があります。

償却の例

ビジネスにおける償却の例の多くは、特許や著作権などの知的財産に関連します。典型的な状況は次のとおりです。

  • ABZ Inc.という会社が、外部の発明者が開発したソーラー・パネルの独占権に$180,000を支払いました。
  • ABZ Inc.は、特許を登録し、発明者からその権利を20年間譲渡してもらうために$20,000を支出しました。
  • その販売のニュースを聞いた他の2人の発明者が、特許の申請について異議を申し立てました。ABZは、無事に特許を守りましたが、法的手数料として$50,000が発生しました。

特許の資産計上済コスト = $250,000 ($180,000 + $20,000 + $50,000)

耐用年数 = 20年

$250,000 / 20 = 年間償却費$12,500

 償却と減価償却の違い

償却と減価償却は、どちらもGAAPの対応原則(費用をそれが生成に貢献した収益と同じ期間に認識する原則)の基礎となっている点で、類似しています。

ただし、これらの間には大きな違いがあります。

  • 無形資産と有形資産:償却は、無形資産に使用されますが、減価償却は、有形の固定資産(オフィス設備や建物など)に使用されます。
  • 資産価値が減少する原因:償却には、通常、契約失効や陳腐化などの状況に起因する、無形資産の価値の減損が反映されます。対照的に、減価償却は、固定資産が使い古されたり消耗することによって価値が失われるという事実が反映されます。
  • 適用性:償却は、無形資産のうち、耐用年数が有限で識別可能なものにのみ適用され、耐用年数が不確定なものには適用されない一方、減価償却は、土地を除くすべての固定資産に対して生成されます。
  • 残存価額:償却は、ほとんどの場合、無形資産の価値全体に対して計算される一方、減価償却では、通常、固定資産に残存価額があるものと想定されます。
  • 仕訳入力:償却費は損益計算書の費用勘定に借方記入され、同時に無形資産勘定に相殺する貸方勘定が直接記入されます。対照的に、減価償却は、減価償却累計額(相対資産勘定)に貸方記入されます。

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開業費の償却

通常、起業家は事業の運用を開始する前に、事業を組織化するための開業費を負うことになります。これらの開業費には、法的手数料、コンサルティング料およびマーケティング経費などが含まれますが、帳簿償却と税金償却の間に大きな差があることがあります。

GAAPでは、帳簿目的の場合、あらゆる開業費は費用として損益計算書に記載されますが、無形資産には資産化されません。

ただし、税金目的の場合は、運用の初年度に初期控除を受けた後、一部の開業費および組織費用を資産化し、最大15年の期間にわたって償却できます。このような資産化と償却スケジュールの管理は、時間がかかり、専門的な知識が必要な場合があります。会社が開業業務の一環として堅固な会計システムをすでに実装している場合でも、簿記の専門知識の強化(opens in a new tab)が必要になることがあります。