お客様にスポットライト 松田 憲幸 氏 | 株式会社ポケトーク

日本の中小企業の競争力を高める戦略とは~ポケトーク松田様との対談

yuki shibuya 渋谷由貴 | 日本オラクル バイスプレジデント NetSuite事業統括 日本代表 カントリーマネージャー

優れた起業家は、トレンドを追うのではなく訪れる前に察知する。成功している起業家の方々と話すたびに、その鋭い嗅覚、驚異的な意思決定のスピード、そして圧倒的な行動力に感銘を受けます。それを支えているのは、豊富な経験、場数、そしてデータです。

私たちNetSuiteの役割は、そうした創業者・起業家と同じ目線に立ち、意思決定を支えること。日本企業がグローバルで生き残るためには、「守り」ではなく「攻め」の姿勢が不可欠です。今回は、米国事業を成長軌道に乗せてグローバルにビジネスを展開するポケトーク代表執行役会長 兼 CEOの松田憲幸氏にお話をお伺いしました。

ポケトーク株式会社 代表執行役会長 兼 CEO 松田 憲幸 氏

1965年生まれ。日本アイ・ビー・エムでシステムエンジニアを務めた後、96年にソースネクストを創業、代表取締役社長に就任。2006年に株式上場を果たす。17年AI通訳機「ポケトーク」を開発。22年に同製品事業を専門に扱うポケトークを分社独立。現在、ソースネクスト代表取締役会長兼CEO、ポケトーク代表執行役会長 兼 CEOを務め、米国市場を筆頭に海外展開を牽引している。

ビデオ: なぜポケトークはNetSuite ERP を選んだのか?

外部環境の変化を察知し、迅速かつ攻めの戦略を立てる

渋谷 – 日本企業の外部環境はいま大きく動こうとしています。急激な物価上昇、円安、少子高齢化による労働力の慢性的不足で特に中小企業は厳しい状況に直面しています。今までのように売上高を維持するだけでは価値がどんどん目減りしていき、競争に負けてしまいます。松田さんはこのような状況にどう対応していくべきとお考えですか。

ポケトーク松田氏 – 物価高をどう捉えるかで戦略が変わって来る。物価が高いということは、利益が出ている事業であれば物やサービスがより高く売れるというようにポジティブに捉えることもできる。物価が上がっていかないと賃金も上がらない。私は今アメリカに生活の起点を置いているが、毎回日本に来るたびにアメリカとの物価差を感じる。率直に申し上げると、日本でのみ事業を展開していても今後は厳しい状況になってくる。そのため、企業は今後海外に出ていく必要があると私は危機感を持っている。ポケトークでは日本から海外に事業展開を進めている。

海外事業を行う際は、円相場や物価といったマクロ指数の読み方が重要になる。私がソースネクストという会社を創業した1996年は1ドル100円台だった。当時は米国や海外から商品を輸入して日本で売るビジネスがうまくいったが、現在は1ドル150円台後半となっており、同じビジネスモデルが今も通用するはずがない。

インフレや円安などのマクロ指数は企業の努力では変えることができないものであり、経営者はこの流れを読んで商品を作る場所と売る場所を変える必要がある。今であれば、日本から商品を輸出するほうがうまくいくだろう。

今後は中小企業も海外進出が必須に

渋谷 – 今は昔と違って物価が相対的に安い日本から米国や海外に輸出をするほうが筋が良いということですね。そして海外にも事業を展開することは、事業のリスクヘッジになることが分かりました。しかし、日本では海外に事業を展開していこうという経営者はまだ多くないように感じます。新しいチャレンジをして新しい事業モデルを作っていくことが重要だと思いますが、これを実践するにはどうすればよいでしょうか。

ポケトーク松田氏 – 経営者が海外を好きか嫌いかというのが大きいだろう。経営者が海外を嫌いであれば、海外展開は難しいかもしれない。海外を好きになって自ら何回も現地に足を運ぶ必要がある。特に、シリコンバレーで成功するには、家族で現地に移住してコミュニティに入り込むくらいのことをする必要がある。私は好きでシリコンバレーに移住した。

渋谷 – ポケトークは2017年の発売当初は日本で購入して海外旅行に持っていくツールだったと聞いていますが、今では米国や欧州をはじめとする海外でも展開され、学校や病院、そして国内外で実施されるカンファレンスでも多言語対応の用途で広く活用されています。このような進化を遂げたのは何が大きかったでしょうか。

ポケトーク松田氏 – 2020年に新型コロナ禍に突入してから海外に行く旅行者はほぼゼロになってしまいました。一番売れていたシナリオがなくなりだいぶ焦った。幸いポケトークはAppleが提供するデバイスのように、初回起動で国と地域、言語を指定する多言語対応を最初から行っていたため、海外での販売シナリオを探すことに迅速に切り替えることができた。それまで日本で発売されているデバイスは電子辞書など日本語のみの対応になっているものが多かったが、ポケトークはそうではなかったため功を奏した。多国籍な人が生活する米国内で、病院や学校などに向けたニーズがあることを見つけ、私自身が米国に移住して市場を開拓し、その後急拡大させることができた。現在では観光需要も復活しており事業全体が軌道に乗っている。

渋谷 – 私も多くの経営者と話をする機会がありますが、グローバル化をリードできる人材がいないということを口々におっしゃっています。言語、カルチャー、法律、会計基準の違いなど超えるべきハードルはたくさんあります。これを乗り越えていくには海外が好きか嫌いか、海外に出ていくことをリスクと捉えるかチャンスと捉えるか、松田さんのように前向きに進めたいと思う経営者のマインドセットがとても重要であることを学びました。

データに基づいた試行が経営のカギに

渋谷 – 企業がグローバルに事業を展開するにあたり、データの活用はますます重要度が増していきます。今までは経営を経験、勘、根性で乗り越えてきた経営者も多くいらっしゃると思いますが、経営におけるデータ活用の重要性についてどう考えておられますか。

ポケトーク松田氏 – 現代において、データドリブンでない経営があるとすれば、それはかなり危ない。20年以上前から経営におけるデータ活用は基本事項として当社では経営をしてきた。事業内容によってさまざまな所から取れるデータを使うことになる。たとえばeコマースであればボタンの色を青から赤にするなど何か条件を一つ変更してテストを行う「A/Bテスト」をすることで、結果に一番効いてくる要素である「キーファクター」を見つけることができる。

量販店のようなアナログ店舗の場合は、変更できる要素がより多く存在したりデータ化されていないものも多いので、より難しくなる。宣伝、店頭ポスター、商品に貼ったシール、棚の位置など、色々試したが、これらの条件を複数一遍に変えてしまうと何がキーファクターなのかがわからないため、ひとつだけ変えて試す必要がある。また、データ化されていないものをデータ化する仕掛けづくり、たとえば売り場の人の動きをビデオカメラで撮影して分析するといったことも行っていく必要がある。

特定の地域で売り上げの傾向が変わったときは、私は直接現地に行って確かめることが多かった。現場に出ると、たとえば競合他社が売り場で当社商品を見つけにくくしていたことが分かったり、時には在庫切れだったりと、データだけでは分からないこともあるためデータと現場のどちらかだけでも不十分だ。商品も店舗にはあっても店頭なのか倉庫なのか、棚の手前にあるのか後ろにあるのかまではデータでは分からない。

現場とデータを行ったり来たりして、日々のデータ分析をオタクのような探求心を持ちながら行い、キーファクターの因数分解を行っていた。私は1,000店舗以上を回って、在庫をひたすら前に出し続けたり売り場の改善をしたりということをやっていた時期もあった。

渋谷 – データドリブンな分析を行い、自ら動いてアクションも実施されるという、何ともパワフルな例ですね。鮮度の高いリアルタイムデータをシングル・ソース・オブ・トゥルース (信頼できる唯一の情報源) に集めて分析するということはとても重要です。しかし、それをもとにアクションに落として実行するところまでできている企業は多くないかもしれません。

よくある話として100%の精度の情報が揃わないのでアクションができないということを聞きます。不確かな状態でも好機を逃さずに動き出すアジリティがセットになって「データドリブン経営」と言えるのではないでしょうか。このカルチャー変革も含めて日本企業の支援をもっと行っていきたいと考えています。

ポケトーク松田氏 – 私も日々の売上データや調査会社が定期的に発行するシェアの情報には細心の注意を払っていた。売上が1%でも落ちていれば背景には必ず理由がある。データ更新の頻度にもこだわり、1時間毎に数字を見てアクションが取れる仕組みを作って見ていたが、30分にしようとしたらさすがにシステムが重くなりすぎてしまい断念したこともあった。アクションは夕方であっても取れるものもあるので、データを見てすぐにアクションを取る重要性は痛感している。

世界の成長企業が選ぶNetSuite――信頼できる唯一の統合情報基盤

渋谷 – ポケトークでは創業以来NetSuiteをご利用いただいています。選んでいただいた理由や選んでみての感想をお聞かせください。

ポケトーク松田氏 – ポケトークは最初から米国、欧州、日本などグローバルで販売することを前提に事業を進めており、複数言語、複数通貨、各国の法律対応などのグローバル対応は必須機能だった。海外での上場も視野に入れて事業展開を進める場合、基幹業務システムであるERPの選択肢は限られていた。日本の製品は対応しているものがほとんどなかった。

NetSuiteはグローバル対応に加えて、小さく始めて後で大きくできる導入の手軽さと拡張性があり、自然にNetSuiteを選択することになった。NetSuiteがオラクルのOCI上で動いていることも安心材料となった。

渋谷 – NetSuiteは2025年2月現在で世界219カ国、4万1000社以上にご利用いただいている導入実績があるクラウドERPです。ERPは企業の財務会計顧客管理eコマースなどの機能を単一のデータ基盤で管理する仕組みです。グローバル対応、手軽さと拡張性、中小企業が導入しやすい手頃な価格を実現していることが、世界で多くのユーザーから支持されている理由です。

NetSuiteでは多くの実績の中からのベストプラクティスをテンプレート化しており、お客様は成功のレシピを手に入れて、とても短い時間で手をかけずにERPを導入できます。お客様によっては3か月といった短期間で導入した例もあります。導入後はシステムのことは気にせず本業に集中できます。

ERPの導入は企業によっては2年、3年と時間をかけてカスタマイズをして、準備ができたころには事業の課題やポイントが変わってしまうという事例もあります。如何に手をかけずに小さく始められるか、「時間」がとても重要だと感じています。

ポケトーク松田氏 – ツールに煩わされないという考え方はとても重要で、我々が製品を作るときにも心がけている。使われなくては意味がないものになってしまう。

渋谷 – 本日のまとめとして、これからグローバル経営、データドリブン経営を目指す日本の中堅中小企業の経営者へのメッセージをお願いできますか。

ポケトーク松田氏 – やはり、データ化することが重要。様々な情報がデジタル化されるようになってきたとはいえ、データ化されていない情報もまだまだ多い。データ化されていないものの中にも売上に結び付く重要なキーファクターがある。小売の世界はまだまだデータ化されていないものが多く、たとえば外国人が多く訪れる店頭に置いているPOPの内容が外国人向けになっていなくて効いていないなど、見落としている要素を発見することもよくある。

今まであるデータから判断するのと、データ化されていないものを無理やりにでもデータ化していく、という2つのことを行うことが重要。ここは経営者の意思がないと難しい。私もCEOとしてこの部分のレビューをしっかり行っている。

渋谷 – 私たちNetSuiteはグローバル経営、データドリブン経営を進めるお客様がコア業務ではないところに忙殺されないように支援していきたいと考えています。私たちはグローバルの知見があると同時に、日本市場ならではの課題や調整が必要なところを見つけて開発部隊にも届けていき、日本のお客様に根差した製品を提供していきます。

NetSuiteはオラクルが提供するOCIのインフラに乗っていますが、そのことでインフラの強力なセキュリティ、最先端のAIや強力なデータ処理・活用機能などを搭載しており、中小企業にも手が届きやすい価格でありながら搭載されている機能は非常にハイスペックという特長があります。

NetSuite OneWorldを活用し、日本の中堅中小企業がどのように海外展開を成功させているのか、ぜひご確認ください。

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