日本オラクル株式会社は2024年11月5日、2回目となるOracle NetSuiteカスタマーミートアップを東京アメリカンクラブにて開催しました。本イベントでは、株式会社SkyDriveやグラフィック・パッケージング・インターナショナル株式会社による活用事例セッションなど、Oracle NetSuiteの多彩な機能の活用方法を紹介。特別セッションとして、株式会社ちん里う本店、Celigo,Incが登壇し、システム間連携に関する知見を共有しました。
最初の顧客事例セッションでは株式会社SkyDriveのHead of Corporate ITである佐野琢也氏が、同社におけるNetSuiteの導入と活用について講演しました。
NetSuiteを導入したのは、2020年のこと。「従業員数約30名、経理マネージャー1名とIT担当1名という体制でスタートしました」と佐野氏は振り返ります。導入の背景には将来を見据えた内部統制の構築がありました。当時の企業体力で利用できる費用感であることや、利用人数や使用機能に応じて柔軟なライセンス形態を選択できる点を重視したといいます。
システムの導入は財務会計から段階的にスタートさせました。その後、購買・債務管理、在庫管理へと拡大し、2022年からは従業員センターを導入しました。2024年現在では、全従業員の3分の1から2分の1が、研究開発目的の発注に利用しています。
「今期は、固定資産モジュールの活用や在庫管理における資材管理の実装を推進しており、今後は生産管理・調達などSCM領域での活用を計画しています」と佐野氏は説明します。
一方で、急速な成長に伴う課題も顕在化しました。「今年5月のゴールデンウィーク中に発生した障害をきっかけに、システム運用における課題が明確になりました」と振り返ります。このとき、問題切り分けから原因特定、問題解決、再発防止策の実施までを進めるなかで、開発プロセスや障害対応プロセスについて、組織レベルでの仕組み化が急務となりました。
これらの課題に対し、同社はいくつかのアプローチを通じて対応を進めました。まず、技術面ではVisual Studio CodeやSuiteCloud、Bitbucket、Jiraといったツールを活用し、開発・運用環境の整備を行いました。特にサンドボックス環境を導入することで、開発・検証・本番環境の基盤を整え、CI/CD環境を構築することでリリースやデプロイ管理の効率化を実現したといいます。「これにより、運用プロセスが大幅に最適化されました」と佐野氏は語ります。
一方、組織面ではプロジェクトとして各担当の役割明確化と工数不足に対して、必要な求人要件を明確化し、ソーシングし、体制の強化を行いました。元々の強みである業務部門の積極的な改善案件のリード、オンサイトでのきめ細やかなサポートやリモートによるIT対応と並行して、組織的にトラブルに対応していく体制を再整備しました。
これらの取り組みの結果、同社は大きな成果を上げています。まず、カスタマイズやNetSuite SuiteFlowを活用することで、ユーザビリティの高いシステムを提供しています。また、CI/CD環境の構築やテスト自動化を含むDevOpsの実現により、システムの保守・運用負荷が軽減されています。さらに、SaaS型ERPの特性を活かして、利用ニーズに応じた料金の最適化が容易となり、柔軟にコストコントロールした運用を実現しています。
最後に将来のビジョンとして、NetSuiteを核としたERPに加え、PLMシステム連携、データレイク構築、BIによる可視化まで、製造業として必要となる包括的なシステム基盤の整備を計画していることを紹介。「クラウドベースのSaaS型ERPをアジリティを高く保持しながら利用していくことが、急成長するスタートアップにとって重要です」と、セッションを締めくくりました。
特別セッションでは、Celigo, Incアジア太平洋および日本地域担当副社長のジョージ・ポリゾス氏と、同社のソリューションを導入した株式会社ちん里う本店の常務取締役 ゾェルゲル・ニコラ氏が登壇しました。
ジョージ氏は、CeligoがNetSuiteのクラウドパートナーとして世界一に選ばれたことを最初に紹介しました。Salesforce、Shopify、Amazon、HubSpot等の主要サービスとの完全な機能連携を提供している同社が、2024年度のSUITECLOUD PARTNER OF THE YEARを受賞。現在では、5000社以上のNetSuite顧客基盤を持っています。
続いて、Celigo, Incの導入事例として、株式会社ちん里う本店のゾェルゲル氏が登壇しました。同社は3年前にCeligo, Incのサービスを導入し、NetSuiteを中心とした基幹システムの統合を実現しています。2024年11月時点でのNetSuite導入状況について、Purchase to Pay(仕入管理)、Assembly(製造管理)、Quote to Cash(販売管理)、Supportまでを一気通貫で管理し、在庫管理ではロット番号によるトレーサビリティを実現、Advanced Fulfillmentによる発送管理も導入しました。
例えば、マスターデータの一元管理においては、NetSuiteに商品の基本データ、価格データ、サイズ、重量、原材料、栄養成分などを登録。これを他のすべてのシステムに供給し、食品ラベル、バーコードラベル、商品規格書(日本語・英語)、FDA商品登録情報まで、一つのデータベースから管理しています。
また、システム連携については、Celigo, IncのプラットフォームをハブとしてOffice 365、スマレジ、BIGCOMMERCE、Amazon、Ship&Co、NiceLabelなど、多様なシステムとの統合を推進中です。現在のロールアウト状況では、AmazonのFBM、FBAでの在庫・注文管理が完了し、BigCommerceのウェブショップ連携も予定しているとのことです。
「2012年を基準値1として見ると、デジタル化と自動化により、より効率的なビジネスモデルが実現できました。生産性は約50%アップし、人件費比率は2024年予算で0.59まで改善する見込みです。これこそが、私たちが目指してきたデジタルトランスフォーメーションの成果だと考えています」(ゾェルゲル氏)
最後の顧客事例セッションでは、グラフィック・パッケージング・インターナショナル株式会社 管理本部 シニアマネージャーの大島祥生氏が登壇しました。ERPシステム導入プロセスと経営管理の視点から、自社の経験を共有しました。
同社は売上高1兆円超、従業員2万4000人超のグローバル企業で、消費者向けパッケージングでは世界No.1の規模を持ちます。日本法人は17名の組織ながら、中国、韓国を含むアジア統括としての役割を担っている企業です。
ERPシステム導入前は、9つのシステムが乱立し、手入力やマニュアル作業が多く、データ管理に多大な工数を要していたという同社。その結果、販売・購買・在庫管理など業務システムの統合が必要となり、ERPシステム導入へと動き出すことになります。ERPシステムの選定では、クラウド環境、多言語・多通貨対応、ビジネス要件の変化への柔軟性を重視し、NetSuiteが採用されました。
導入にあたり、プロジェクトマネジメントでは、「Fit to Standard」の考え方を重視したといいます。経営層への丁寧な説明と教育から始め、マネージャー、ユーザーへと段階的にアプローチしました。「既存プロセスをERPに合わせる決断が必要です。抽象化して考えるには、一般的なベストプラクティスを学ぶことが重要です」と指摘します。
また、プロジェクト遅延の危機に直面した際は、「メリット・デメリットを精査した上で、業務の優先順位を見直し、必要な調整を行いました」と、現実的な対応の重要性を強調しました。
大島氏は最後に、ERPシステム導入のキャリア構築面での価値にも言及。「欧米企業では、ERPプロジェクト経験が労働市場で評価され、ユーザーコミュニティを通じた情報交換も活発です。日本企業もERP導入経験がキャリア構築にとって貴重な機会だという認識を普及させ、グローバルな視点でシステム導入を進めるべきです」と締めくくりました。
事例セッションの後には質疑応答が行われ、同じような課題に直面する参加者から積極的な質問が飛び交い、活発な意見交換の場となりました。参加者同士の実体験に基づいたやり取りは、具体的で実践的な内容が多く、非常に有意義な時間となったようです。
そして、最後には前回のカスタマミートアップ同様、懇親会が開催されました。NetSuiteの関係者とユーザーが直接交流し、それぞれの思いや課題について意見を交わす姿が見られました。
NetSuiteは、今後も日本市場で企業のビジネスを支えるパートナーとして進化を続けていきます。オフラインイベントとして人気のあるNetSuite相談会をはじめ、オンラインイベントも幅広く展開していく予定です。ぜひこれらの機会をご活用いただき、企業が抱える課題やお悩みについてお気軽にご相談ください。