2025年7月23日、日本オラクル株式会社主催のイベント「SuiteConnect Tokyo 2025」にて、「経理はもっと経営の武器になる──チームスピリットが実践した脱Excelの財務改革とは」をテーマにした分科会セッションが行われました。
登壇したのは、株式会社チームスピリット 財務経営本部部長で公認会計士の大藤知則氏。多くの企業が紙やExcelに依存した非効率な経理業務に課題を抱えるなか、チームスピリットはERPとクラウドアプリの連携によって属人化を解消し、業務改革を実現しました。同社におけるバックオフィスDXの取り組みについて紹介します。
Excelからの脱却がもたらした経理業務の進化
勤怠・工数・経費の管理を統合したクラウドサービスを提供するチームスピリットは、労働力不足や働き方改革といった社会課題に対応し、チームワークを促進することで人的資本の生産性向上を支援しています。サービスは2,000社以上、60万人超のユーザーに導入されており、大企業にも対応できる拡張性と技術力が強みです。
2020年にチームスピリットへ入社した大藤氏は、公認会計士としての専門性を活かしつつ、経理業務やセールスオペレーション、IR(投資家対応)やチームマネジメントに至るまで、ファイナンス領域のDXを推進してきました。そうした実務経験を踏まえ、SaaS型ビジネスにおけるファイナンス部門の役割として、次の3点を挙げています。
- 上場会社として高次元でのコンプライアンスを担保した財務数値の把握
- 業務の標準化とシステム化による収益の最大化
- コンプライアンスと収益化を実現するための専門性向上
チームスピリットはこうした認識のもと、経理業務を「手作業+Excel」から脱却させる方針へと転換を決めました。
NetSuiteを中核に据えた業務改革
方針転換当時の2020年頃は、社内の各業務が連携しておらず、支払請求書は紙ベース。経費精算も申請データをExcelで加工してから会計システムに手入力するなど、属人的で非効率なプロセスが常態化していました。転記ミスやオペレーションのブラックボックス化といったリスクも内在していたといいます。
こうした状況を受け、大藤氏は「紙・Excel・手入力をいかになくすか」を軸に業務設計を見直し、NetSuiteを基幹システムに据えた改革を推進しました。複数のSaaSアプリケーションと連携させ、手入力の排除、リアルタイム処理、業務の可視化を実現する仕組みを構築したのです。
その結果、月初の実績集計作業は平準化が進み、取締役会向けの財務報告のリードタイムも大幅に短縮。さらに、親会社と海外子会社が同一環境下で個別・連結決算をリアルタイムに並行して進められるようになり、365日ベースでの着地見込みが見える予算管理体制も整いました。
「NetSuiteを中心に各種アプリケーションを連携させたことで、業務全体がエコシステムとして機能するようになったことも大きな成果です」と大藤氏は言います。属人化から脱却し、チームで成果を出せる体制へと移行することで、経営効率の向上にもつながったのです。
NetSuite導入で得た3つの成果とは
大藤氏はNetSuite導入の効果を「3つの主要ポイント」として、次のように紹介しました。
- 償却資産の自動管理
SaaS事業ではライセンス料の前払いなど、費用性資産の償却管理が多数発生します。チームスピリットでは、2,000社を超える契約に伴う償却スケジュールを、NetSuiteの償却機能で一元管理。作業の効率化と精度向上の両立を実現しています。 - 多様なアプリとの柔軟なデータ連携
経費精算書や支払請求書は、自社プロダクト「TeamSpiritエンタープライズ」と連携しており、申請・承認済みのデータのみ自動でNetSuiteに取り込まれます。また、売上・請求書データはサブスクリプション管理システムと連携し、受注処理から請求書の発行、売掛金の計上までを自動化。一連の業務がスムーズに連携・可視化されるようになりました。 - レポート分析の高度化と検証作業の効率化
NetSuite上のトランザクションデータをもとに、財務レポートを製品別・顧客別・ベンダー別などで分析可能に。二重計上や計上漏れの検出、前期末との比較なども容易になりました。
「毎月の取締役会前には、メンバー全員で最小単位のデータまで深掘りし、検証作業を行っています。以前は複数のExcelファイルを突き合わせていましたが、今ではNetSuite上でワンストップで対応できるようになったのは大きな変化です」(大藤氏)
経理とAIの未来 協働が当たり前になる時代へ
NetSuiteを中核とした業務改革によって、属人的な作業の脱却やリアルタイムな情報管理を実現してきたチームスピリット。こうした変化を経て、「紙とExcelに追われる経理業務は、すでに過去のものになりつつある」と大藤氏は語ります。
さらに今後は、NetSuiteのようなERPを軸に、機能特化型アプリケーションを組み合わせた“エコシステム”を使いこなすことで、さらなる経営効率化に貢献していくことが求められると強調しました。また、「これからの経理は、AIエージェントとチームワークで仕事をする時代になります」と、AIエージェントとの共存も見据えています。
最後に、現在も一部残っているExcel業務についても、今後はNetSuite Analytics Warehouse(NSAW)へと移行し、経理とAIを掛け合わせた進化に挑戦していきたいと意気込みを示しました。
NetSuiteでは、お客様の業務課題に合わせた導入支援や活用のご相談を随時受け付けております。お気軽にお問い合わせください。