2024年7月17日、日本オラクル株式会社主催のイベント「SuiteConnect Tokyo」にて、「経営者が語る、DXを成功させるためのキーポイント」をテーマにしたパネルディスカッションが開催されました。モデレーターは、NetSuite事業統括アカウント営業本部統括本部長の福宮友和。登壇したのは、株式会社オーク情報システム代表取締役社長の安井勝俊氏とグラフィック・パッケージング・インターナショナル(GPI)株式会社代表取締役社長アジア地域担当プレジデントの権藤嘉江子氏です。
このセッションでは、両社のデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略を振り返るとともに、ビジネスの変革や環境変化に対応するための基幹システム構築について、具体的な成功事例やチャレンジについて紹介されました。
最初に、今回登壇したオーク情報システム社/GPI社の事業領域とDXへの取り組みについて、安井氏、権藤氏から説明が行われました。
オーク情報システムは、大林グループの唯一の情報子会社として、建設業の許可や1級建築士の資格を持つIT企業です。安井氏は今年の4月、社長に就任。大林組本体でデジタル変革を推進してきた経験を活かし、経営戦略と整合性のあるDXを進めています。
DXの現在のターゲットは、2030年度。業務プロセスの合理化・標準化やBIM生産基盤の移行を目指していると言います。DXにおける経営者の役割の重要性については、「経営者がまずは使っていく、リクエストを出して進めていくことで、ファクトドリブンも実現されていく」と述べ、経営者主導の重要性を強調しました。
一方、GPI社は、アメリカに本社を置く紙のパッケージ製造のグローバルリーディング企業の日本法人です。一番身近な製品として、ビールの6缶パックのパッケージを製造販売しています。権藤氏は、就任時にガラパゴス化していた日本法人の変革に取り組み、システムの標準化やグローバル化を推進してきました。6年半にわたる変革の中で、権藤氏は「変化は進化である」というメッセージを継続的に発信することが重要だと語りました。
両社がNetSuiteを導入した背景には、それぞれの会社独自の背景があります。
GPI社の権藤氏は、ガラパゴス化したシステムの刷新とグローバル標準への適応を目的にNetSuiteを導入しました。「日本の企業では、パッチワーク的な対応になりがちですが、大枠を変えることによって、根本的に変えていくという気持ちを見せることができる」と話します。
導入の効果として、ガバナンスの強化やアジア地域全体でのベストプラクティスの共有が可能に。特に、韓国法人にも導入したことで現地の状況をリアルタイムで把握できるようになった点を高く評価しています。「韓国の状況を、リアルタイムで日本から見ることができることになったのはすごく良かった」と述べていました。
一方で、課題としては導入プロセスにおける現場の負荷増大を挙げています。「普段の仕事もしなくてはいけない中で、導入を行うことで仕事が増えてしまうため不満をかかえることになる」と指摘。「必ず不満を吸い上げて、ガス抜きをしながら導入していくことも大事」と、適切なコミュニケーションと配慮の重要性を語りました。
オーク情報システムでは、経営管理のデジタル変革の端緒としてNetSuiteを導入。経営管理に必要な情報の可視化やファクトドリブンの意思決定の実現、プロセスの標準化を期待しています。
課題としては、「管理職が粘土層となり、経営者と若いやりたい人の間が繋がらない」と指摘。「キーとなるのは管理者層」だからこそ、彼らのマインドセットを変革できるかといった課題を挙げていました。
両氏とも現場や管理職といった人材がDXにおいて大きな課題となっています。それに対し、安井氏は「ミドルアップダウンマネジメント」を対策としてあげました。「キーとなる管理者層を、いかに巻き込んで腹落ちさせるかが大切」と述べ、DX推進における中間管理職の重要性を強調。さらに、「企業として組織として、ダイナミックケイパビリティを持つ、これを向上させるということが重要」といい、現在はダイナミックケイパビリティを実現するために、どのように人材強化するか計画中と話しました。
また、権藤氏からは「採用も人材のアサインもある種、賭け。経営者としては、成功すると信じてやることしかないと思います」と語り、人材育成の難しさと重要性を指摘していました。
最後に、両社の今後の展開とNetSuiteへの期待について議論が行われました。
まだNetSuiteの導入初期段階ゆえに「デフォルトのダッシュボードを見ても、まだ全く使えない」という安井氏。今後は、経営管理に必要な情報を経営者がリクエストして、経営者主導でダッシュボードを構築していく旨を示しました。また、組織アラインメントを形成するためにオーク情報システムのミッション・ビジョン・バリューを策定し、それらを踏まえた経営戦略、事業戦略、人材戦略の見直しを行う意向を示しました。
権藤氏は、NetSuiteを活用したKPI設定や、より攻めの経営への転換を目指しています。「1人1人業務に携わっている人たちが、業務時間を徹底的に少なくし、もっと違うビジネスやより効率的な運用に変えていければと考えている」と、今後の展望を語りました。
このパネルディスカッションでは、DXを推進する上での経営者の役割と、それを支えるERPシステム、そして現場人材の重要性を示す貴重な機会となりました。今後、さらに多くの日本企業がDXを加速させる中で、NetSuiteのような統合型クラウドERPの重要性はますます高まっていくでしょう。
NetSuiteは今後も日本市場で企業のビジネスを支えるために進化を続けていきます。NetSuite LOFTを初めとするオフラインイベントはもちろん、その他のオンラインイベントなどもご利用いただき、企業の課題やお悩みについてお気軽にご相談ください。