
2025年11月6日(木)、日本オラクル株式会社本社(東京都港区)にて、「財務・経理リーダーのための実践フォーラム―現場と経営をつなぐ実践力と変革のヒント―」が開催されました。本イベントは、CFOや経理・財務部門のリーダーを対象に、データ経営の推進と組織変革をテーマとしています。
当日は、株式会社トリドールホールディングス 取締役 兼 CFOの山口聡氏による基調講演に加え、株式会社みなとグローバル 代表取締役の中山寿英氏、株式会社チームスピリット 財務経理本部長の大藤知則氏を迎えたパネルディスカッションを展開。モデレーターは日本オラクル NetSuite事業統括の寺本健太郎が務め、会場に集まった多くの参加者と共に、現場と経営をつなぐための具体的なアプローチや変革へのヒントが共有されました。
「CFOが導く変革の時代 ― データ経営を支える新たな役割とリーダーシップ」データと人の力で、企業価値を最大化するトリドール山口氏
第1部のスペシャルセッションでは、株式会社トリドールホールディングス 取締役 兼 最高財務責任者(CFO)山口聡氏が登壇。「CFOが導く変革の時代 ― データ経営を支える新たな役割とリーダーシップ」と題し、トリドールの独自の経営理念や、攻めと守りを両立するCFOとしての実践について講演しました。
トリドールホールディングスは代表的なグループブランド「丸亀製麺」をはじめ、世界30カ国・約2,000店舗を展開し、ほかにも多様なブランドをグローバルに展開しています。「ハピネス」と「感動」を組み合わせた「ハピカン経営(心的資本経営)」という独自の経営理念のもと、「安心感・つながり感・貢献実感・誇り」といった従業員の“4つのハピネス”を企業経営の中心に据えることで、人を起点とした循環型経営を実現している企業です。
CFOを勤める山口氏は、金融機関に始まり、IT企業、戦略コンサル、国策企業など多様な業界を経て、2020年に現職のトリドールへ入社しました。ITバブルの崩壊やリーマンショックといった荒波を乗り越え、ファイナンスと経営の現場を横断的に経験してきたと言います。
そうした山口氏が管掌する領域はファイナンスにとどまらず、経営企画、サプライチェーン、そしてビジネストランスフォーメーション(DX)など多岐にわたります。グローバル化が進む同社において、いかにデータを活用し経営の舵を取るか。その基盤構築は、同社の変革を支える重要なテーマとなっています。
“攻め”と“守り”を統合したCFOの意思決定力とは

外食業という「攻め」の事業領域を支える一方で、CFOとして山口氏が最も重視するのが「攻めと守りのバランス」です。
「心的資本経営や事業成長といった“攻め”には投資が必要です。同時に、ガバナンスやリスクマネジメントといった“守り”も欠かせません。CFOはこの両輪の真ん中で、バランスを取りながら舵を取る存在です」(山口氏)
さらに「資本コストと株価を意識した経営に関する考え方の枠組み」も積極的に実践。資本コストを因数分解し、投資リターンの最大化と資本コストの低減という両面から企業価値の向上に挑んでいます。
「収益性と成長性に加え、“効率性”という第三の軸で経営を立体的に捉えています。将来的には、こうした高度なデータ分析やシミュレーションを、システム基盤の上で再現できるようにすることを目指しています」(山口氏)
NetSuite導入で財務組織を再構築。CFOが推進するDX戦略

こうした「攻めと守り」の経営をシステム面から支えるため、山口氏は同社に着任した当初から業務プロセスを徹底的に見直し、NetSuiteの導入によるデジタル化を推進してきました。現在では約65名体制で効率的、かつグローバル対応型のファイナンス組織へと進化させています。
「標準化できる業務は外部リソースを活用し、変化の激しい領域はテーマに絞って専門家集団に業務委託するなど柔軟に対応して、固定費と変動費をかなり意識したリソース配分をしています」(山口氏)
さらに、社内の意識改革にも注力。財務部門の“怖い”や“距離がある”といったイメージを払拭するため、現場とのコミュニケーションを重視してきました。
「事業部が情報を後出しすると、結果的に会社のリスクになります。だからこそ、こちらから寄り添い、安心感を与えることが大切です」(山口氏)
また、こうした現場との対話において山口氏がよく口にするのが「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉です。 一見無関係に見える出来事が、最終的には企業価値やリスクに対して影響を与える可能性へと繋がる。そうした連鎖を想像できる力こそ、CFOや経営企画に求められる資質だと話します。
「攻めと守り、チームと個人のバランスをやりくりしながらも、チャンスを見抜く“妄想力”を養うことも促しています」と山口氏。ファイナンス部門を単なる「金庫の番人」ではなく、経営の意思決定に資するパートナーへと引き上げる姿勢は、同社が掲げる「ハピカン経営(心的資本経営)」の実践そのものです。
最後に山口氏は「CFOの役割は、経営理念としっかり寄り添いながら取り組んでいくことが、事業会社におけるCFOの一つの役割。会社やステージによってCFOの求められる役割は違いますが、どこまでアクセルを踏むか、ブレーキを踏むかの情報発信とお金や人の資源配分を決めるのが、CFOの役割だと思います」と話しました。
パネルディスカッション「財務・経理現場のリアル課題と解決へのアプローチ」属人化からの脱却、NetSuite導入で変わった現場
続いて第2部では「財務・経理部門が抱えるリアルな課題と解決へのアプローチ」をテーマにパネルディスカッションが行われました。登壇したのは、株式会社みなとグローバルの代表取締役で公認会計士の中山寿英氏と、株式会社チームスピリットの財務経理本部長で公認会計士の大藤知則氏。モデレーターは日本オラクル NetSuite事業統括の寺本健太郎が務めました。
元は同じ監査法人出身という両氏。まずはチームスピリットの大藤氏が、自社のNetSuite導入経験を交えて改革のプロセスを紹介しました。
「私が入社した当時は3人の経理メンバーが、売上や仕入れ、経費データをExcelで個別に管理し、それを手入力していました。ファイルの場所やバージョン管理も分からず、まさに属人化していました」と大藤氏は振り返ります。
勤怠管理クラウドを提供するSaaS企業として成長を続けるチームスピリットは、上場後のさらなる成長フェーズに向け、2020年にNetSuiteを導入。全ての会計データと業務プロセスをクラウド上で統合し、同時並行でチームが動ける体制を目指しました。
「NetSuiteの導入により、仕訳の承認や試算表レビューなど、内部統制に必要なプロセスをシステム上で完結できるようになりました。決算早期化やリードタイム短縮が実現し、属人化を排して“チームワーク型経理”に変わりました」(大藤氏)
この点について中山氏は、専門家の視点から次のように補足します。
「月次決算で内部統制を構築しようとすると、通常それにかかるチェックコストは膨大になります。しかしERPを導入し、データの分断をなくすことができれば、照合作業のミスが激減します。承認業務が可視化されることで、トータルでのコスト削減が可能になるのです」(中山氏)“Excel信仰”からの脱却現場を動かす意識改革のポイント
しかし、ERPの導入にはプロセス変更という痛みが伴います。特に現場レベルでの定着には工夫が必要でした。
大藤氏は「月初の決算対応が大きな負担となり、業務改革プロジェクトが後回しになるのは“経理あるある”です。そこで、週次ミーティングで月次決算と業務改善の両方を議題にし、少しずつでも前に進めて『改善を止めない』ことを意識づけました」と話します。
また、従来のExcel中心の業務をNetSuiteへ置き換える過程では、現場から「Excelの方が使いやすい」という声も上がったと言います。
「各種アプリケーションとの連携も含め、業務をクラウド上で完結させる仕組みを整えましたが、ツールが変わることへの抵抗感はあります。そこで、経理担当者が単なる会計の専門家にとどまらず、『システムを使って業務を進化させる人材』になるべきだと伝え、意識改革も合わせて行いました」(大藤氏)
リアルタイム経営を支えるデータ基盤とERPの未来
セッションの後半では、システム導入後のデータの活用と未来について議論が展開されました。
中山氏は「ERPの導入は単なる効率化ではありません。データを一元管理し、リアルタイムで可視化できる体制をつくることが、経営の意思決定をスピーディーにするうえで非常に重要です」と、データ経営の重要性を強調。今後は日本企業特有の商習慣への対応(ローカライゼーション)にも期待したいと話しました。
最後に大藤氏は「いろいろなステージの会社がある中で、段階を踏んで進めていくことが肝要です。弊社も徐々に領域を広げて現在に至っています。今後はサブスクリプション管理も含めて、NetSuiteとチームスピリットの労務管理を接続したような新しいアプリケーションにもつなげたいです」と展望を語り、セッションは終了。会場からは大きな拍手が沸き起こりました。
ディスカッションでは、財務経理の現場課題からシステム導入のポイントまで幅広い視点で語られ、関心の高いトピックの数々に、参加した皆さんが熱心に耳を傾ける姿が印象的でした。
財務・経理リーダーがつながり、変革を加速させる場に

イベント後の懇親会は、和やかな雰囲気の中、参加者と登壇者による現場課題の共有や情報交換が活発に行われました。
今回のイベントでは、単なるシステム導入の事例紹介にとどまらず、CFOのリーダーシップから現場の意識改革まで、組織全体で「攻めと守り」をどうデザインするかという、財務・経理リーダーが直面する本質的な課題に迫る一日となりました。
デジタル化の波は止まりませんが、それを乗りこなし、経営の羅針盤となるのは、やはり「人」の意志とつながりであることを再確認する場であったと言えるでしょう。
NetSuiteは、今後も日本市場で企業のビジネスを支えるパートナーとして進化を続けていきます。オフラインイベントとして人気のあるNetSuite相談会をはじめ、オンラインイベントも幅広く展開していく予定です。ぜひこれらの機会をご活用いただき、企業が抱える課題やお悩みについてお気軽にご相談ください。