
2025年12月5日(金)、日本オラクル株式会社本社(東京都港区)にて「Oracle NetSuite Customer Meet Up Tokyo 2025」が開催されました。
オープニングでは、日本オラクル NetSuite事業統括 日本代表の渋谷由貴が登壇。NetSuite日本参入20周年の節目を迎えた現在、国内企業の基盤として定着しつつある状況を紹介しました。続いて、コンサルティング統括本部 統括本部長の玉井健志が、次世代AIプラットフォーム「NetSuite Next」を紹介し、2026年以降のERPを大きく変える未来像が示されました。
会場の熱気が高まる中、メインとなるユーザー企業4社によるパネルディスカッションでは、「経営視点での意思決定スピード」と「現場視点での徹底的な自動化」をテーマに、リアルな変革ストーリーが語られました。
パネルディスカッション①「消えた仕事、生まれた価値。NetSuiteが変えた“意思決定スピード”——現場から始まる経営DX」
最初のパネルディスカッションは、「消えた仕事、生まれた価値。NetSuiteが変えた“意思決定スピード”——現場から始まる経営DX」がテーマ。登壇したのは、電子機器メーカーである株式会社グリーンハウスの取締役兼執行役員、奥寺貴哉氏と、「スマラピ」などユニークな事業を展開している株式会社キュリエ(QRIE Ltd.)代表取締役の吉塚康一氏です。日本オラクルの福宮友和をファシリテーターに、この2社の変革の過程が語られました。
15年越しの脱却。「返品管理」の刷新と保存検索がもたらした“データの民主化”
グリーンハウス奥寺氏がNetSuite導入の最大の成果として挙げたのが、「返品管理システム」の劇的な刷新です。以前は返品の度に申請書を作成し、複数の承認者によるスタンプラリーを経て、最終的にSAPに登録するという煩雑なプロセスだったと言います。
NetSuite導入後、同社はこのプロセスを抜本的に見直しました。標準機能の「ケース登録」を活用し、返品受付から承認、処理完了までをデジタル上でシームレスに完結させるフローを構築。「紙の承認や転記作業が一掃され、返品管理にかかる作業工数は体感で半分以下に短縮されました」と、その効果を語ります。
さらに、部門や役割ごとに閲覧権限を柔軟に設定できることから、データを安心して共有できるようになりました。結果として情報のサイロ化が解消され、社内に“データの民主化”が進展。現場レベルでの意思決定スピードが大きく向上しました。
「Excelに精通した担当者」依存からの卒業。展示会当日の“即時お礼メール”で掴んだ商機
続いてキュリエの吉塚氏がNetSuite導入の結果として紹介したのは、営業現場における劇的な変化です。
同社には“Excelに精通した担当者”と呼ばれる社員にデータが依存する状況があり、必要な情報をスムーズに取り出せない課題がありました。これを改善するため、NetSuite標準のSFA機能を軸に統合基盤を整備し、誰でも同じデータにアクセスできる環境を構築しました。
その取り組みを象徴するのが、年3回出展する展示会でのリード管理プロセスの改革です。展示会で取得した名刺データをスマートフォンでデジタル化し、CSV形式でNetSuiteへ取り込むことで、展示会リード管理を一元化。展示会フラグを設定し、NetSuiteのメール機能から即日フォローアップを実施することで、迅速なリードナーチャリングと商談化率向上を実現しています。
さらに、リード獲得から受注、請求までの一連のプロセスをNetSuite上で完結させたことで、営業活動全体の流れが可視化され、施策の改善もスムーズになったといいます。他ツールに依存しないリーンな営業体制が実現し、営業組織全体の機動力向上へとつながりました。
「ひとつの数字」が経営を変える。トップラインとボトムラインをつなぐデータ基盤

セッションの終盤では、議論は「今後のデータ活用の展望」へと移りました。グリーンハウスの奥寺氏は、同社ではまだBI(ビジネスインテリジェンス)や顧客データを戦略的に活用する文化が発展途上であるとしながら、今後は蓄積したデータをもとに、より精度の高い事業戦略・営業戦略を描いていきたいと展望を述べました。
一方、キュリエの吉塚氏は、現在進めている財務データの完全統合について紹介しました。鍵となるのは、「データの正解」を一本化することです。「今後は財務データもNetSuiteに統合し、『この数字を見れば間違いない』と言える“Single Source of Truth(唯一の真実)”を確立します。これにより月次決算の早期化を進め、経営判断のスピードをさらに高めたいと考えています」と語りました。
最後に、ファシリテーターである福宮より、両社の取り組みの共通点として「データの一元管理と可視化によって、トップライン(売上)とボトムライン(利益)をNetSuiteでつなごうとしている点」を挙げ、これが意思決定のスピード向上につながるとまとめました。簡潔な総括に、会場からは自然と拍手が起こりました。
パネルディスカッション②「現場が回る仕組みをどう作るか。保存検索・自動化・標準化で“属人化ゼロ”を実現するNetSuite活用術」

次に行われた2つ目のセッションでは、テーマを「現場の自動化・標準化」へと移し、EC事業を展開する2社の担当者が登壇しました。
登壇したのは、ECサイトを運営する株式会社電池屋 Eコマース部課長の市倉丈寛氏と、美容・雑貨のEC事業を手がける株式会社プリアップのプロデューサー 畑絢佳氏です。いずれの企業も、大量の受注処理や出荷業務を抱える中で、NetSuiteを活用しながら「人が介在しない仕組み」をどのように構築してきたのか、実際のエンジニアリングと業務設計のプロセスが紹介されました。
残業続きの現場が「24時間稼働」へ。RPA×NetSuiteで実現した完全自動化
電池屋の市倉氏は、RPAツール「UiPath」とNetSuiteを組み合わせ、受注から出荷、売上計上までのプロセスを自動化した取り組みを紹介しました。かつては出荷処理のために深夜まで残業が続いていましたが、現在はシステムが24時間稼働し、人手をかけずに業務が進む体制が整っています。
データ連携の方法として一般的なCSVインポートはシステム負荷が大きいため、同社はUiPathのNetSuiteコネクタを採用。CSVを介さずデータを取り込めるため、安定した常時更新が可能になりました。
その結果、4名体制で行っていたデータ移行作業が自動化され、人的ミスも減少。大量の注文処理から入金消込までを無人で完結できるようになり、「スタッフを接客など付加価値の高い業務へ振り向けられるようになった」と市倉氏は述べています。
「発注業務は3クリック」 徹底的な“言語化”が生んだ業務革新
一方、プリアップ畑氏が紹介したのは、Google WorkspaceとNetSuiteを連携させて構築した「3クリックで完結する発注システム」です。従来は発注担当者の経験や勘に頼る場面が多かった業務を、誰でも短時間で処理できる仕組みに作り替えました。
まず、「どの条件で発注すべきか」を日本語レベルで明確に言語化し、その条件を保存検索に落とし込むことで対象商品を抽出。そのうえで、発注書の作成からメール送信までを自動化し、必要な操作を3クリックにまで簡素化したといいます。
さらに、自社開発の倉庫管理アプリとNetSuiteを連携させ、ピッキングや梱包が完了すると、そのステータスがリアルタイムでNetSuiteに反映される仕組みも実現しました。「現場を知る人間が作ったからこそ、実務に即した効率化ができた」と畑氏は振り返りました。
生成AIとコミュニティで加速する独自のNetSuite学習法
セッションの後半では、両氏が実践する独自の「NetSuite学習法」が紹介され、会場の関心を集めました。
畑氏は、必要なデータを得るための条件を試行錯誤しながら理解を深めてきたと話します。一方、市倉氏は「ソースコードを読むことでトランザクションの構造を把握しました」と述べ、技術寄りのアプローチを紹介しました。
また両氏は、生成AIの活用にも触れ、畑氏は「言語化した業務フローを入力し、実装のアイデアを得ています」と説明。市倉氏もNetSuite専用のカスタムGPTを利用しているとし、公式コミュニティ「NetSuite Community」について「グローバルの技術者から有用な回答が得られる」と紹介しました。
ファシリテーターである福宮より、最後に、両氏の姿勢として「まずやってみる」点を評価し、それが変革を進める力になっているとまとめました。
現場と経営がつながる場所。コミュニティで共有される“変革の知恵”
セッション後には懇親会が開かれました。軽食とアルコールを片手に、現場ならではのリアルな質問が飛び交い、”現場を変える知識”を共有した登壇者と参加者の距離はさらに縮まったイベントとなりました。
市倉氏が紹介したNetSuite公式コミュニティ「NetSuite Community」のように、いまやNetSuiteの活用ノウハウは一企業にとどまらず、グローバルで共有される時代です。今回の「Customer Meet Up」も、単なる機能紹介ではなく、経営のデータ戦略から現場の自動化まで、実践的な知見が行き交う場となりました。
NetSuiteは、今後も日本市場で企業のビジネスを支えるパートナーとして進化を続けていきます。オフラインイベントとして人気のあるNetSuite相談会をはじめ、オンラインイベントも幅広く展開していく予定です。ぜひこれらの機会をご活用いただき、企業が抱える課題やお悩みについてお気軽にご相談ください。