ユニファイド・ビリング

ユニファイド・ビリング


ユニファイド・ビリング(統合ビリング)とは

ユニファイド・ビリングとは、複数のシステムに分割された請求業務を統合することで、業務の効率化と顧客満足度の向上を目指すソリューションです。

ユニファイド・ビリングの目的の一つは、業務の効率化にありますが、こちらは一般的なシステム統合と同じく、統合に要するコストと、長期的な運用コストの兼ね合いで行われるもので、あくまでも企業内部の事情に依存することになります。

したがって、顧客満足度の向上というユニファイド・ビリングのもう一方の目的の方が、より重要性が高いといえます。それでは、なぜユニファイド・ビリングが顧客満足度の向上に貢献するのかを考えてみましょう。

通信業界では、新規参入やM&Aが盛んに行われた結果、固定電話、携帯電話、インターネット回線といった異なるビジネス・モデルを持つ通信業者がいくつかの系列(企業グループ)にまとまってきています。

しかし、顧客の観点からすると、固定電話、携帯電話、インターネット回線などを同系列の通信業者からサービスを受けていたとしても、請求書は、ばらばらに発行され、決済が大変煩雑な状況に変わりはありません。

これでは、顧客は同系列の通信業者と複数のサービスを契約する利点が感じられないことになります。

このような状況を改善するために、ユニファイド・ビリングが行われます。ユニファイド・ビリングにより、複数のビジネス・モデル(通信サービス)における請求業務を統合することで、1人の顧客に、複数のサービスからの請求がまとめられた、ただ1通だけの請求書を送ることができるようになります。

これにより、顧客の利便性が向上し、同系列の通信業者を契約するメリットが生まれることになります。

ユニファイド・ビリングの代表的な例

ユニファイド・ビリングの日本国内における代表的な例が、NTTグループです。

NTTグループは、2012年にグループ会社のNTTファイナンスに請求業務を統合しました。これにより、例えば、NTTグループの各通信業者と契約している固定電話、携帯電話、インターネット回線の料金をWeb上で一度に確認する、あるいは、これらの料金に対する請求書を1通にまとめて受け取り、一回の支払で済ませるといったことができるようになりました。

これは、まさにユニファイド・ビリングの典型的な例といえます。

通信料金だけではなく、すべての公共料金をユニファイド・ビリングの対象としようとしている国があります。それが、エチオピアです。

エチオピアでは、通信会社、電力会社、水道会社がすべて国営企業として運営されていますが、これらの企業が別々に行っている請求業務を統合し、公共料金をまとめて支払えるようなサービスを今年から開始しています。

ユニファイド・ビリングの一般企業への展開

このように、ユニファイド・ビリングは、通信会社や公共機関を中心に導入が進んできましたが、最近では、一般企業への展開が始まっています。

近年のビジネス環境は、企業に対して短期間での新規事業立ち上げや、M&Aによる事業拡大・再編を要求しています。このような施策の目的の一つは、ある特定の顧客層に対して、複数のビジネス・モデルを通じた商品・サービスを提供することで、顧客の価値を最大化することにあります。

しかし、短期間での新規事業立ち上げや、M&Aの結果として、業務システムは分断され、あるいいは、不完全な統合のままで放置されるケースが多くなっています。請求業務の場合、システムが統合されていないことで、せっかく同一企業、またはグループ企業として囲い込んだ顧客に対して、複数の経路から請求を行う結果となり、かえって、顧客の満足度を低下させるという結果につながります。

このような、状況にある企業は、ユニファイド・ビリングの導入が急務といえます。

ユニファイド・ビリング基盤としてのクラウドERP

このように、一般企業において、ユニファイド・ビリングが企業の差別化につながる状況になってきています。しかし、通信会社や公共機関のような巨大な組織ではなく、一般企業において、専用の巨大な請求業務アプリケーションを構築することは難しいことです。

一方で、請求業務は、もともとERPの一部の機能として実現されてきていますので、ユニファイド・ビリングの実現においても、ERPを基盤とする方法が自然な流れといえます。さらに、ERPの中でもクラウドERPが、コスト、柔軟性、短期導入などの面から注目されています。

ユニファイド・ビリングの主な機能

クラウドERPを利用してユニファイド・ビリングを実現する場合には、次のような機能がポイントとなります。

  • さまざまな請求処理パターンへの対応
  • 複数の請求メディアへの対応
  • 複数の決済手段への対応
  • 大量で複雑な入金消込処理

さまざまな請求処理パターンへの対応

複数のビジネス・モデルにおける請求処理を統合するためには、さまざまパターンの請求処理に対応する必要があります。

  • 都度請求と定期請求
    一般的な請求形態には、都度請求と定期請求があります。都度請求とは、一度きりの取引の場合や、個々にサービスを提供する場合の請求形態で、取引の都度、請求処理が発生します。定期請求とは、継続的に取引を行う場合の請求形態で、請求締日に一定期間(1ヶ月、1年など)の売上を集計した結果から請求金額を確定させて請求処理を実行します。
  • さまざまな請求期間
    定期請求においては、請求締日に一定期間の売上を集計して請求金額を確定させますが、この集計対象期間には、1か月、3か月、半年、1年など、さまざまなパターンが存在します。また、1回の請求処理の中でも、商品やサービスの内容によって、ことなる集計対象期間が適用される場合もあります。
  • さまざまな請求項目
    定期請求においては、商品ごと、サービスごとといった一般的な請求項目以外に、前受金、滞納金などの特殊な項目も必要です。

このように請求処理には、多様なパターンがあり、かつ、複数のパターンの組み合わせが発生する場合があります。例えば、電話料金の請求において、通話料金は毎月の定期請求ですが、回線の工事費は都度請求になるといったような場合が考えられます。

クラウドERPには、これら多様な請求パターンに対応する機能が必要です。

複数の請求メディアへの対応

さまざまな通信手段の発達により、顧客への請求を行う通信メディアも一種類では対応できなくなっています。以前は、印刷された請求書を郵送することがほとんどでしたが、その一部がFAXで送信されるようになり、さらには最近では、電子メールに請求書ファイル(PDF形式が主流)を添付して送信する方法が主流になりつつあります。

これらの複数の通信メディアを、請求する側が勝手に統一することはできません。顧客の希望する通信手段を事前に登録しておりた上で、顧客ごとに異なる通信手段に振り分けて請求書を送付する必要があります。

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また、顧客の要望があれば、途中から通信手段を(例えば郵送から電子メールへ)切り換えたり、場合によっては、複数の通信手段を(例えば郵送と電子デールを)併用する必要があります。

クラウドERPには、これら複数の通信メディアによる請求書の送付に対応する機能が必要です。

複数の決済手段への対応

個人消費者向けの決済手段は、近年、多様化の一途をたどっています。現時点でも、主要な決済手段だけで、以下の3種類が存在します。

  • 銀行振込:請求書に記載された支払金額、支払期限、支払先口座に従って、顧客が金融機関の窓口やATMで支払う方法
  • クレジットカード:あらかじめ顧客が登録したクレジットカードを利用して、自動的に支払いを行う方法
  • コンビニ決済:コンビニエンスストアの代金収納サービスを利用した決済方法

請求書の送付における通信手段と同様に、決済手段についても、顧客の希望する決済手段に応じて、請求書の形式や内容を切り替える必要があります。例えば、銀行振込やコンビニ決済では、払い込み依頼票を送付するのに対して、クレジットカード決済では、引き落とし通知書を送付することになります。

クラウドERPには、これら多様な決済手段に対応する機能や、決済代行サービスとのインタフェースが必要です。

大量で複雑な入金消込処理

一般のビジネス・モデルでも入金消込は面倒な作業です。ましてや、ユニファイド・ビリングを必要とするようなビジネス・モデルにおいては、大量の請求処理が発生し、それにともなう大量の入金消込作業が必要となります。また、異なる決済手段が存在する場合は、消込のタイミングも一定しません。

クラウドERPには、このような大量で複雑な入金消込処理に対応する機能が必要です。

ユニファイド・ビリングと繰延収益

ユニファイド・ビリングを必要とする企業には、複雑で大量の請求処理が定期的に発生するビジネス・モデルが存在します。このようなビジネス・モデルでは、多数の顧客から継続的な売上を得ることで事業がなりたっています。この多数の顧客から継続に得られる売上のことを繰延収益(リカーリング・レベニュー)といいます。

ユニファイド・ビリングの導入が盛んな通信(電話、ケーブルテレビなど)や公益(電力、ガスなど)といった業態では、毎月一定額の売上が顧客から入りますので、これらの業態は繰延収益中心のビジネス・モデルといえます。

これら以外の業態でも、たとえば、クレジットカード業界においては、カードの年会費だけではなく、電話料金や毎月支払いの保険料などのクレジットカードからの引き落としなど、毎月毎月、継続的に発生する代金分野のことを、リカーリング・レベニューとして重要視しています。

また、インターネットを介したサービス・ビジネス(クラウド・サービス提供など)においても、月次の定額制を基本としていますので、レカーリング・レベニューが中心となるビジネス・モデルといえます。

このような繰延収益中心の企業においてもっとも重視される経営指標に、現在契約中の顧客の何割が契約を更新したかという契約更新率があります。

契約更新率の向上のための施策

繰延収益によるビジネス・モデルにおいては、現在契約中の顧客の何割が契約を更新したかといった契約更新率が最も重要な経営指標といえますが、この契約更新率をあげるためには、さまざま取り組みが必要となります。このような施策の代表的なものには以下のようなものがあります。

  • 契約更新手続きの簡素化
    複雑な契約更新手続きは、顧客の契約更新の意欲を低下させるため、契約更新手続きの簡素化は、契約更新率の向上にとって重要な施策です。特に、インターネット上でのオンライン更新を行うようなビジネス・モデルでは、A/Bテストなどを使って契約更新画面の最適化を行う必要があります。
  • テレマーケティングの実施
    契約更新タイミングが近づいた顧客に対するテレマーケティングの実施も、有効な施策です。
  • 営業担当者によるフォロー
    営業担当者による顧客訪問が可能なビジネス・モデルにおいては、直接のフォローがテレマーケティングの実施よりもより有効な手段となります。
  • クレームのフォロー
    前回の契約更新以後にクレームの発生した顧客は、潜在的な失注顧客と考えられます。このような顧客に対しては、さまざまチャネルを通じてのフォローが必要となります。
  • 価格変更説明
    価格変更の結果で料金が上がるような、契約更新の際に不利な状況となる顧客については、個別に詳細な変更内容の説明やキャンペーンの提供といった特別な配慮が必要となります。

契約更新率の向上のためのデータ分析

しかし、このような施策を実施するにあたっては、その基礎となるデータの分析とレポートが必要となります。

  • 契約更新率のモニタリング
    繰延収益によるビジネス・モデルにおける最重要指標は、契約更新率です。契約更新率は常に最新の状況を反映したものが入手できなければなりません。
  • A/Bテスト結果の判定
    A/Bテストを実施した場合、実際の契約更新データとの組み合わせにより、結果の判定ができなければなりません。
  • 契約更新が近い顧客のレポート
    契約更新率向上のための施策の対象となる顧客は、基本的に契約更新が近い顧客となりますから、このような条件に合う顧客を抽出し、リストとして作成できなければなりません。
  • 重要顧客の絞り込み
    テレマーケティングや営業担当者によるフォローといったコストのかかる施策については、すべての契約更新顧客を対象とするのは難しいかもしれません。そのような場合、さまざま条件を設定し、重要と考えられる顧客を絞り込む必要があります。このような絞り込みを行うためには、年齢、性別といった静的プロファイルだけではなく、契約金額、契約更新回数といった動的プロファイルも含めて多次元的なセグメンテーション分析が可能でなければなりません。
  • クレーム発生顧客のレポート
    クレーム発生顧客のフォローに際しては、そのクレームの内容や対応履歴といった関連するデータをまとめて抽出できなければなりません。
  • 価格変更の影響分析
    価格変更の対象となる顧客については、価格変更の結果がその顧客について不利になるかどうかを判定し、その度合も含めてレポートされなければなりません。
  • 顧客単位のコンタクト履歴
    テレマーケティングや営業担当者によるフォローといった人的コンタクトを行う場合、顧客から見て企業は一つとして認識されています。そのため、訪問、電話、インターネットなどさまざまなチャネルでアクセスしてきた顧客のすべてのコンタクト履歴が事前に提供されなければなりません。

ユニファイド・ビリングとCRM統合

以上にあげたようなデータの入手、分析、レポートには、顧客ごとに管理されたデータベースとアプリケーション、すなわちCRMが必須となります。つまり、ユニファイド・ビリングを導入するような企業は、さらに一歩進んだシステム戦略としてERPとCRMの統合を視野に入れる必要があるといえます。

しかし、一口にERPとCRMの統合といっても、さまざまアプローチがあります。たとえば、ERPとCRMをまったく別々のシステムとして導入している場合は、Webサービス、SOAPといったEAI技術を使った疎結合型のシステム統合が、比較的容易な方法といえます。

ただし、EAI技術による疎結合型のシステム統合は、比較的短期間、低コストで業務プロセスの統合を実現しますが、顧客マスターに代表される重要なデータベースは分散したままで放置されてします。このような状況下では、データの不整合が発生しやすく、それを回避するための保守・運用負荷は、非常に大きいものとなります。

この問題を解決するためには、統合化されたデータベースをすべてのアプリケーションが共有する理想的なシステム・アーキテクチャを実現しなければなりません。このような場合は、CRMが統合されたクラウドERPの導入がもっとも適切な方法となります。

したがって、ユニファイド・ビリングのソリューションを導入する際は、将来的なCRMとの統合を視野に入れた検討が必要となります。

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