繰延収益管理(リカーリング・レベニュー・マネジメント)

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繰延収益(リカーリング・レベニュー)とは、企業の売上の中で将来的に継続する可能性が高い売上をあらわすことばです。通信(電話、ケーブルテレビなど)や公益(電力、ガスなど)といった業態では、毎月一定額の売上が顧客から入りますので、これらの業態は繰延収益中心のビジネス・モデルといえます。

この繰延収益は、売上が予測可能であり、確実性が高いため、近年、特に企業投資家の観点から、企業の業績の安定性を評価する際の重要なポイントとなっています。

たとえば、クレジットカード業界においては、カードの年会費だけではなく、電話料金や毎月支払いの保険料などのクレジットカードからの引き落としなど、毎月毎月、継続的に発生する代金分野のことを、繰延収益として重要視しています。

また、インターネットを介したサービス・ビジネス(この連載の主題であるクラウドERPも含まれます)においても、月次の定額制を基本としていますので、レカーリング・レベニューが中心となるビジネス・モデルといえます。

このような繰延収益中心の企業においては、重視される経営指標や業務プロセスも変わってきます。

たとえば、業務プロセスにおいては、定期的に発生する多数の請求業務を効率的に実施する必要があります。一方、経営指標としては、現在契約中の顧客の何割が契約を更新したかといった契約更新率が最重要指標となります。

クラウドERPを選択する際には、繰延収益によるビジネス・モデルに最適化された業務機能及び経営管理機能を確認する必要があります。

さまざまな請求処理パターン

繰延収益によるビジネス・モデルにおける請求処理には、さまざまパターンがあります。

(1) 都度請求と定期請求
一般的な請求形態には、都度請求と定期請求があります。都度請求とは、一度きりの取引の場合や、個々にサービスを提供する場合の請求形態で、取引の都度、請求処理が発生します。定期請求とは、継続的に取引を行う場合の請求形態で、請求締日に一定期間(1ヶ月、1年など)の売上を集計した結果から請求金額を確定させて請求処理を実行します。繰延収益によるビジネス・モデルにおいては、定期請求が主要なパターンとなります。

(2) さまざまな請求期間
定期請求においては、請求締日に一定期間の売上を集計して請求金額を確定させますが、この集計対象期間には、1か月、3か月、半年、1年など、さまざまなパターンが存在します。また、1回の請求処理の中でも、商品やサービスの内容によって、ことなる集計対象期間が適用される場合もあります。

(3) さまざまな請求項目
定期請求においては、商品ごと、サービスごとといった一般的な請求項目以外に、前受金、滞納金などの特殊な項目も必要です。

クラウドERPには、これら多様な請求パターンに対応する機能が必要です。

収益認識

繰延収益によるビジネス・モデルにおいては、多くの場合、通常のビジネス・モデルにある出荷、納品、検収といったプロセスが存在しません。そのため、収益認識基準もことなります。また、定期請求における請求期間が1年であっても、収益認識は毎月といった、請求と収益認識のタイミングがことなるようなケースも発生します。

クラウドERPには、このような繰延収益によるビジネス・モデルに対応した収益認識を行う機能が必要です。

価格変更への対応

繰延収益によるビジネス・モデルにおいては、価格変更の影響が新規顧客だけではなく、現在契約中のすべての顧客に及びます。特に、すでに契約中の顧客については、契約期間と請求期間に応じて、どの時点の請求から新しい価格を適用するかがことなります。

クラウドERPには、価格変更にともなう複雑な請求処理の再設定に対応する機能が必要です。

契約更新率の向上

繰延収益によるビジネス・モデルにおいては、現在契約中の顧客の何割が契約を更新したかといった契約更新率が最も重要な経営指標といえますが、この契約更新率をあげるためには、さまざま取り組みが必要となります。このような施策の代表的なものには以下のようなものがあります。

(1) 契約更新手続きの簡素化
複雑な契約更新手続きは、顧客の契約更新の意欲を低下させるため、契約更新手続きの簡素化は、契約更新率の向上にとって重要な施策です。特に、インターネット上でのオンライン更新を行うようなビジネス・モデルでは、A/Bテストなどを使って契約更新画面の最適化を行う必要があります。

(2) テレマーケティングの実施
契約更新タイミングが近づいた顧客に対するテレマーケティングの実施も、有効な施策です。

(3) 営業担当者によるフォロー
営業担当者による顧客訪問が可能なビジネス・モデルにおいては、直接のフォローがテレマーケティングの実施よりもより有効な手段となります。

(4) クレームのフォロー
前回の契約更新以後にクレームの発生した顧客は、潜在的な失注顧客と考えられます。このような顧客に対しては、さまざまチャネルを通じてのフォローが必要となります。

(5) 価格変更説明
価格変更の結果で料金が上がるような、契約更新の際に不利な状況となる顧客については、個別に詳細な変更内容の説明やキャンペーンの提供といった特別な配慮が必要となります。

しかし、このような施策を実施するにあたっては、その基礎となるデータの分析とレポートが必要となります。

(1) 契約更新率のモニタリング
繰延収益によるビジネス・モデルにおける最重要指標は、契約更新率です。契約更新率は常に最新の状況を反映したものが入手できなければなりません。

(2) A/Bテスト結果の判定
A/Bテストを実施した場合、実際の契約更新データとの組み合わせにより、結果の判定ができなければなりません。

(3) 契約更新が近い顧客のレポート
契約更新率向上のための施策の対象となる顧客は、基本的に契約更新が近い顧客となりますから、このような条件に合う顧客を抽出し、リストとして作成できなければなりません。

(4) 重要顧客の絞り込み
テレマーケティングや営業担当者によるフォローといったコストのかかる施策については、すべての契約更新顧客を対象とするのは難かしいかもしれません。そのような場合、さまざま条件を設定し、重要と考えられる顧客を絞り込む必要があります。このような絞り込みを行うためには、年齢、性別といった静的プロファイルだけではなく、契約金額、契約更新回数といった動的プロファイルも含めて多次元的なセグメンテーション分析が可能でなければなりません。

(5) クレーム発生顧客のレポート
クレーム発生顧客のフォローに際しては、そのクレームの内容や対応履歴といった関連するデータをまとめて抽出できなければなりません。

(6) 価格変更の影響分析
価格変更の対象となる顧客については、価格変更の結果がその顧客について不利になるかどうかを判定し、その度合も含めてレポートされなければなりません。

(7) 顧客単位のコンタクト履歴
テレマーケティングや営業担当者によるフォローといった人的コンタクトを行う場合、顧客から見て企業は一つとして認識されています。そのため、訪問、電話、インターネットなどさまざまなチャネルでアクセスしてきた顧客のすべてのコンタクト履歴が事前に提供されなければなりません。

以上にあげたようなデータの入手、分析、レポートには、顧客ごとに管理されたデータベースとアプリケーション、すなわちCRMが必須となります。つまり、契約更新率の向上を支援するシステムを検討する際はERPとCRMの統合を視野に入れる必要があるといえます。

クラウドERPには、契約更新率の向上に必要なCRMと連動した顧客情報を分析しレポートする機能と、そのデータにもとづいて各種のマーケティング施策を実行する機能が必要です。

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