2024年のサプライチェーン運用におけるキーワードは「変動性」です。インフレ、不透明な消費者需要、労働力不足、ロジスティクスの混乱、異常気象などの問題が続く中、サプライチェーン責任者は、コストを抑えつつ柔軟性を高め、リスクを管理するために、オペレーションを再構築し、デジタル管理を強化しています。2024年のサプライチェーンのトレンドは、仕入先関係の見直しから、商品ルート変更、デジタル戦略の見直しまで、多岐にわたります。
2024年に注目すべき14のサプライチェーン・トレンド
ビジネス・コンサルティング会社KPMG(新しいタブで開きます)によると、新型コロナウイルスの蔓延により、アジア太平洋(APAC)地域全体でサプライチェーンのボトルネックや原材料・部品不足、運賃の上昇、インフラの問題などが発生しました。こうした混乱はここ数年続いており、S&Pグローバルがサプライチェーンの専門家を対象に行った調査では、2022年は「終わりの見えない激動の1年だった」と結論づけています。
現在、変動を恒常的なものとみなし、それに対応できるような、より強力なサプライチェー・モデルの輪郭が明らかになりつつあります。来年はサプライチェーンのリーダーがこれをさらに固めていくことになるでしょう。この重要な年のトレンドをまとめたものには、仕入れの現地化と「ジャストインタイム」の運用を役に立たないとみなしているものもあります。その一方、このような確立された慣行を完全に捨ててしまうのは早いとする見解もあります。しかし、潜在的な欠点を考慮しつつも、「無駄のない運用」以上に「アジリティ」を優先する傾向が圧倒的に強くなっています。
変動の激しさが、サプライチェーン全体の機会とリスクの監視、分析、リバランスを困難にしているのは明らかです。その他、どのようなトレンドがあるのでしょうか。以下に、2024年の14のトレンドをご紹介します。
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サステナビリティ
今後、サイクロン、台風、山火事などの異常気象やサステナビリティ問題は、世間の注目を集め続けるでしょう。人々は、天候に起因する地域社会への被害や、依存しているサプライチェーンの途絶をより多く経験することになります。気候変動の専門家や政策立案者からの要請もますます厳しくなります。企業には、サプライチェーンが地球温暖化に及ぼす影響を削減し、異常気象に対応できるサプライチェーンを構築することが求められます。
持続可能なサプライチェーンに対するビジネスケースは、これまで以上に重要になっています。企業は、サステナビリティに向けた取り組みを、善意によるものだけでなく、ブランドの評判を高め、より望ましい雇用主となり、投資家の環境・社会・ガバナンス(ESG)基準に合致させるための取り組みという位置づけで正当化することがよくあります。サステナビリティへの関心が高い利害関係者の数は増え続けており、それはビジネス・パートナーや金融機関にまで拡大しています。
企業がより持続可能であることを後押しする要因も変化しています。一般的に、APAC全域の多くの政府機関は、ビジネスからの排出量に対し厳しい姿勢を示しています。政府主導のアジェンダ設定ルールには次のようなものがあります。
- オーストラリア政府のNational Greenhouse & Energy Reporting(新しいタブで開きます)は、企業に温室効果ガス排出量、エネルギー生産量、エネルギー消費量の開示を義務付けています。
- シンガポールのCarbon Tax Act(新しいタブで開きます)は、企業に温室効果ガス排出量の報告を義務付け、年間ガス排出量が25,000tCO2e以上の場合、2019年から2023年まで排出量1トン当たり5シンガポールドルを支払うことを求めています。
- ニュージーランド政府のThe Financial Sector (Climate-related Disclosures and Other Matters) Amendment Act(新しいタブで開きます)は、2024年1月より、一部の大規模な金融市場参加者に気候関連の情報開示を義務付けています。
- 香港証券取引所は、香港の全上場企業に対し、2025年までに環境・社会・ガバナンス(ESG)報告書において気候変動関連情報の開示を義務付ける(新しいタブで開きます)ことを提案しています。
- フィリピン証券取引委員会は、上場企業に対し、年次報告書にサステナビリティ情報を添付(新しいタブで開きます)するよう求めています。
サプライチェーンにおける排出量を監視・管理する場合、サプライチェーン規制から2つのデジタル要件が浮上します。コンプライアンス報告に必要なデータを得るには、サプライチェーンの持続可能性をこれまで以上に可視化する必要があり、その範囲は1次仕入先から2次、3次の仕入先にも広がります。また、異常気象時のサプライチェーンの回復性強化という要件を満たすには、高度な分析を使用して変動するリスクを特定し、サプライチェーンのアジリティを実現することが重要です。
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サプライチェーンのアジリティ
2024年のサプライチェーン・トレンドの大半は、「アジリティ」という大枠のトレンドに沿ったものとなっています。数十年にわたり、コスト削減を目的によりスリムなサプライチェーンを目指してきた結果、パンデミック以降、変動が急増し、多くの企業が足元をすくわれる結果となりました。時代は変わり、サプライチェーン業界はデジタル化に改めて焦点を当て、その基本運用モデルを25年以上ぶりに大幅にアップデートしました。
サプライチェーン・マネジメント協会の「Supply Chain Operations Reference Digital Standard (SCOR DS)」は、プロセス、指標、スキル、プラクティスを業界横断的にカバーするモデルです。このモデルは、2030年までのデジタル投資の基盤を提供することを目的としています。SCOR DSは、サプライチェーンの設計と運用において、市場の推進力、エンドツーエンドの可視性、買い手と売り手の連携を重視しています。直線的な思考や偏った仕入先関係を、よりアジャイルな、組織化されたサプライチェーン・マネジメントのアプローチに置き換えます。
2024年は、新しい物理的・デジタル的モデル、特にモジュール型、マイクロ型、コンポーザブル型にアジリティが集約されています。次にその例を示します。
- マイクロ・サプライチェーン: 市場の需要の変動やサプライチェーンの課題に対応するため、一部の企業は大規模な統合型オペレーションから、よりモジュール化された協調型オペレーションへと進化しています。こうした企業は、自己完結型のマイクロサプライチェーンを並行して構築し、さまざまなビジネスの流れに対応しています。このようなモジュール型アプローチにより、企業は製品や作業プロセス、その他オペレーションの側面をより迅速にカスタマイズすることができます。例えば、汎用品と特注品はそれぞれ独自のサプライチェーンを持つことができます。
- マイクロ・ウェアハウジングと注文配送: 倉庫管理と注文配送もまた、マイクロ化しつつあります。従来のロジスティクス・センターから既存の小売店舗、eコマース大手の広範なサプライ・ネットワークから転貸されたスペースまで、あらゆる場所で小規模な倉庫が利用されるようになっています。マイクロ・フルフィルメント・センターは高度に自動化されており、多くの場合、人口密度の高い顧客市場の近くに位置しています。また、低コストで迅速な配送を可能にするだけでなく、オンラインで購入して店舗で受け取る(BOPIS)という消費者に人気の選択肢も提供します。
- マイクロサービス: マイクロサービスの台頭は、デジタル・サプライチェーン戦略にアジリティをもたらします。マイクロサービスは疎結合であるため、モジュール式の変更を可能にします。また、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を介して大規模なプラットフォームにリンクされています。このアプローチにより、新しい機能を完全なアプリケーションに組み込むことに伴う複雑さを伴うことなく、特定のビジネスニーズを満たすことができます。インテリジェントな注文管理や支出管理などの機能をエンタープライズ・リソース・プランニングや顧客関係管理システムに追加できるため、これをコンポーザブル・アプリケーションと呼ぶ人もいます。
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仕入れの現地化
仕入れを現地化することで、地政学的リスク、輸送コスト、遅延を減らすことができます。2020年代は、グローバルな仕入先からローカルな仕入先への転換が進むでしょう。2021年のPROS(新しいタブで開きます)の調査によると、オーストラリアの製造業者の55%が2024年までに事業をリショア化する意向を示しています。多くの企業は、単一障害点を回避するために、単一地域の単一ソースに依存するといった戦略を見直し、できるだけ多くの地域から2つ以上のソースを確保したいと考えています。
しかし、サプライチェーンの現地化は、多額の先行投資や人件費の上昇、ゼロからの新たなソースの構築などを必要とするため、企業は慎重にならざるを得ません。その代わりに、できるだけ多くの地域から2つ以上のソースを確保し、単一地域の単一ソースに依存するといった戦略を拡張することで、単一障害点を避けようと試みている企業もあります。
一方、輸送の混雑は来年にはほぼ解消されると予想され、海上運賃も過去最高水準から下降していることから、現地化に対する当面のプレッシャーの一部は解消されるかもしれません。また、企業やその仕入先がグローバルでなくても、そのまた先の仕入先からもたらされるグローバルリスクを管理する必要があることも少なくありません。
S&P Globalの調査では、「我々はまだ、グローバル・サプライチェーンにおけるベストプラクティスの成熟度モデルを模索し始めたばかりである」と述べられています。このようなバランスを取ろうとする流れと、そのきっかけとなった激動する市場を背景に、サプライチェーンのアジリティの重要性がますます明らかになりつつあります。
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安全在庫の増加
供給を現地化する傾向と同様に、最近のサプライチェーンの課題が安全在庫の増加につながっています。しかし、2024年を見据えた経済予測では、インフレによる個人消費の減少と相まって、小売などの市場で過剰在庫の懸念が指摘されています。そのため企業は、売れない在庫の割合を見積もる重要な財務メカニズムとして、安全在庫に細心の注意を払う必要があります。
原材料であれ、完成商品であれ、安全在庫は、貸借対照表上、商品原価に計上される将来のための流動的な費用です(勘定消込は事後的にしか行われません)。過去の在庫パターンと現在の市況を加味して、売れない商品のパーセンテージを正確に予測できれば、安全在庫をより正確に計算し、ネット在庫に転嫁することができます。これらはすべて、企業の純資産と将来の収益機会を理解するために不可欠なものです。
昨今の変動性を考えると、安全在庫をより頻繁に計算する必要があり、同時に在庫管理の他の側面も継続的に精査する必要があります。例えば、在庫の備蓄はインフレに対するヘッジになり得ますが、保管コストや資金調達費用の上昇により、今日安く買って明日高く売るという潜在的なメリットが相殺されてしまう可能性があります。
そのため、これまで重要視されてきた「ジャストインタイム」のアプローチを「ジャストインケース」のアプローチに変え、安全在庫を確保するべきだという見解に反対する専門家もいます。その代わりに、限定的で戦略的な備蓄、バックオーダー計画、さらには代替可能な製品を確保することで「ジャストインタイム」の在庫システムを強化することを勧めています。
このような在庫管理の懸念事項を背景に、企業は、最新かつアジャイルな状態を維持するために在庫管理ソフトウェアをますます重要視するようになっています。
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柔軟な契約統合
変動性は、コスト削減のための大量生産による大規模な長期固定価格契約に依存しているサプライチェーンに大きな課題を突きつけています。契約の新しいモデルは、より流動的な関係において仕入先と買い手の双方の成功をサポートすることを目的としています。このような契約では、買い手は注文を細かく分割し、市場の変動に応じて必要に応じて調整することができます。同じような変動性の問題に直面している仕入先と買い手は、インフレの条項など、不測の事態に関する新たな条項を契約に盛り込んでいます。
企業がこのような柔軟性を実現すると同時に、サプライチェーンの単一障害点を回避するために仕入先の幅を広げることは、確かに容易ではありません。そのため、2024年以降、契約管理がこれまで以上に重要になります。複雑化するサプライチェーンを管理するためには、ITや業務システムからデータを引き出し、より高い可視性を実現するデジタル・サプライチェーン・テクノロジーを活用する必要があります。
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eコマースの増加
B2Cのeコマースは、パンデミックの初期にオンライン・ショッピングがかつてないほど急増したことを受け、2024年以降成長を続けています。現在、消費者が新たに確立したオンラインショッピングの習慣を堅持するのか、それとも店舗でのショッピングや旅行、エンターテイメントに回帰するのかが注目されています。さらに、インフレによる圧力が個人消費全体に影を落とすのかどうかも注目されています。
消費者の行動が予測不可能なため、サプライチェーン責任者は常に気を抜けません。販売量に不透明感が漂う一方で、店舗でのショッピング、eコマース店舗、消費者直販(D2C)、定期購入、オンライン注文の迅速な配送、オンライン購入後店舗で受け取る(BOPIS)サービス、オンライン/店舗での返品など、さまざまなプリファレンスにも疑問符が付きます。例えば、シームレスな返品に対する顧客の期待の高まりは、サプライチェーン内のリバース・ロジスティクスを効率的に処理するよう、小売企業に圧力をかけています。
一方、2020年代初頭にB2Bマーケットプレイスでの売上が急増したことから、B2Bはより大きなeコマース市場になる素地があります。この変革は、オフィス用品や事業運営に必要なその他の必需品の購入にとどまらず、最終製品に使用される実際の原材料や部品のB2B取引の増加傾向を包含しています。仕入先と買い手の双方にメリットがある一方で、デジタル・サプライチェーンの大幅な変化を管理する必要性も生じてきます。
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顧客中心主義
消費者とブランドとのデジタル接続が進むにつれ、サプライチェーンはカスタマー・エクスペリエンス(CX)の分野でもますます重要な役割を果たすようになっています。現在の消費者や企業は皆、購入した商品がサプライチェーンのどの段階にあるのか、リンクをクリックするだけで知りたいと思っています。
Gartnerによると、サプライチェーン責任者の60%以上が、顧客の要望、要件、感情を理解し、それに対応できるサプライチェーンを構築するために、CX指標と顧客データ分析に投資しています。CXへの投資を優先し、社内のさまざまな部門間の連携を促進することは、ビジネスの拡大を促進するだけでなく、予測や在庫の最適化といった従来のサプライチェーン業務も強化します。
2024年に注目すべきは、D2Cモデルです。2020年代初頭、優れたカスタマー・エクスペリエンスにおいて最も成功を収めたのは、オンラインで事業を展開するD2Cブランドでした。このB2Cモデルは、マーケットプレイスの活用を拡大するB2Bのシフトとは対照的に、オンライン・マーケットプレイスを迂回して顧客に直接関与し、多くの場合、サブスクリプションやソーシャルメディア・マーケティングを中心とした、高度に焦点を絞った顧客中心の戦略を採用しています。D2Cブランドは、豊富な顧客データを収集しています。しかし、Eコマースやソーシャルメディアの成長に減速の兆しが見える中、こうしたブランドの多くは現在、流通チャネルを拡大しています。一方、従来外ブランドは、D2C戦略の要素を自社のオムニチャネル戦略に取り入れています。
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カスタマイズ
多種多様な選択肢やカスタマイズを求める顧客の声は拡大し続けています。しかし、サプライチェーンが大きな負担にさらされている今、このような多様な製品を提供するためには、新たなサプライチェーン・モデルが必要となります。また、コストと複雑性にもかなりの注意を払う必要があります。
この需要を満たすモデルのひとつがマス・カスタマイゼーションです。大量生産とカスタマイズを組み合わせることで、比較的大規模でありながら低コストでユニークな製品を提供することができます。3D印刷のような技術を活用すれば、生産工程の最終段階でカスタマイズされた要素を製品に加えることができます。
もうひとつの戦略は、先に述べたように、マイクロサプライチェーンを構築し、一次サプライチェーンの運用に影響を与えることなく、カスタム注文を効率的に管理することです。同様に、カスタム商品の注文処理も、業務の効率化のために細分化することができます。
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モノのインターネット(IoT)
ユビキタス5Gモバイルからビル内Wi-Fi 6および7に至るまで、新しい高速・低遅延無線テクノロジーの急速な展開は、何十億もの新しいIoT接続の普及に拍車をかけています。そしてサプライチェーンは、これから大きな恩恵を受けています。他の広域無線ネットワークやビル内ネットワークと連携する5Gは、センサーやエッジコンピューティングによってクラウドベースのネットワークの機能を拡張し続け、業務や物流に関するデータをより発生源に近い場所で収集・処理することができます。Gartnerは、2025年までにサプライチェーンの意思決定の25%がインテリジェント・エッジ・エコシステムで行われると予測しています。
IoTの応用範囲は広く、ドローンやロボットから、包装食品を含むさまざまな商品の生産を追跡できるデバイスなどが含まれます。これらのIoTデバイスは、原材料の調達から生産、出荷、小売販売に至るまで、すべてのステップを監視し、サプライチェーン全体の環境や労働条件も監視します。
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クラウドベースのソリューション
2022年のGartnerの調査によると、回答者の61%がテクノロジーは競争優位性に大いに役立つと考えている(新しいタブで開きます)ことが明らかになりました(新しいタブで開きます)。そのため、クラウドでビジネスを行う企業が増えているのも不思議ではありません。
クラウド・コンピューティングの普及は、サプライチェーン・マネジメントにおける数々のイノベーションに道を開いています。例えば、いわゆるメッシュ・テクノロジーは、複数のサプライチェーン・システムからデータを取り込み、組み合わせて「デジタルツイン」を作成することを可能にします。「デジタルツイン」とは、意思決定や業務の効率的な調整を支援する仮想レプリカのことです。具体的には、在庫データを輸送スケジュールや利用可能な輸送車両と組み合わせることで、在庫不足を防ぐことができます。
また、クラウドを利用することで、サプライチェーン責任者は、24時間365日体制で業務を行うサプライチェーンにおいて、重要な情報にどこからでもアクセスできるようになります。また、クラウドベースのSaaS(Software-as-a-Service)の種類も増えており、貨物輸送業者の比較や保管場所の管理ができるパッケージ・ソリューションもあります。
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高度な自動化
2022年、人手不足が根強い課題であることが明らかになりました。Gartnerによると、サプライチェーン・リーダーの80%近くがデジタル・トランスフォーメーションを加速させており、サプライチェーンのロボティクスと自動化の導入率は2026年までに75%に達する見込み(新しいタブで開きます)です。
さらにGartner(新しいタブで開きます)は、バックオフィスの意思決定プロセスを強化するためにユーザーが人工知能(AI)を活用する傾向が強まると予測しています。その目標は、オペレーションを自動化されたサプライチェーンから自律化されたサプライチェーンへと昇華させることです。Capgeminiは、これを「コグニティブでタッチレスなオペレーションと透明性の高いデータ主導の意思決定を実現する、統合された摩擦のない顧客中心のサプライチェーン機能」と定義しています。
自律的なオペレーションは、電子メールを通じて共有される断片的な情報に依存する手作業プロセスからの脱却を意味します。これにより、サプライチェーンを加速させ、混乱時の対応に必要なアジリティを確保できます。例えば、高度な注文管理システムは、「ジャストインタイム」の原則とアルゴリズムを使って、出荷の集約と手配を効率化します。ドローンのような自律型機器は、単独での作業も相互通信も可能なため、これまで手作業が中心だった作業を補強するのに役立ちます。
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可視性の向上
クラウド、IoT、その他の先進テクノロジーは、これまでにないサプライチェーンの可視性を実現します。2024年に注目すべき2つの点は、デジタルツインとコントロール・タワーがこの可視性を最大限に活用し、今日の環境の激変をどのように制御するかということです。
デジタルツインは、上述したように、サプライチェーン、社内他部門、外部ソースからのリアルタイム・データを活用することで、サプライチェーン資産とその相互作用を表す仮想レプリカを提供します。デジタルツインは、センサーやクラウドコンピューティングからAIや可視化ツールに至るまで、複数のテクノロジーを駆使して構築されます。
サプライチェーン・コントロールタワーは、「信頼できる唯一の情報源(SSOT)」に基づいてAIが生成した提案を活用することで、意思決定を導きます。これにより、観察された事柄に対してあらゆる部門が組織的な対応を取れるようになります。コントロールタワーは、データ分析、コラボレーション・プラットフォーム、およびメトリック、主要業績評価指標、コントロールを備えたその他のデジタル・ツールによって実現されます。
具体例で言えば、これらのモデルは「出荷が遅れたら何をすべきか」といった単純な質問にも答えることができます。しかし、おそらくその究極の使い道はシナリオ・プランニングでしょう。シナリオ・プランニングでは、物理的施設、原材料、最終製品、顧客に至るまで、サプライチェーンのすべてのコンポーネントをさまざまな組み合わせで統合し、潜在的なイベント、変数、および望ましい結果を予測します。たとえば、施設やオペレーションがホリデーシーズンに対して適切に準備されているかどうかを評価することができます。
とはいえ、デジタルツインとコントロールタワーのメリットを完全に実現するには、まだ大きな障害が残っています。調査によると、多くの企業がサプライチェーンの包括的な可視化、一次1サプライヤーの先の2次、3次サプライヤーの可視化を実現するにはまだ時間がかかるようです。このような可視性の欠如が、多くのサプライチェーン混乱の根本原因となっています。
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予測精度の改善
可視性の向上により、企業が需要を予測する能力はますます研ぎ澄まされていくでしょう。過去の販売データのみに頼った従来の方法では、急速に変化する今日の環境における需給を予測するには不十分です。売上から仕入先のリードタイム、出荷スケジュール、倉庫の稼働率、保管コストに至るまで、サプライチェーン計画の各側面は、より広範かつ迅速に変動しています。
より高い可視性と高度な分析を組み合わせることで、より洗練された需要予測モデルが実現します。これにより、継続的な変動に適応しながら、長期、中期、短期の需要を予測することができます。例えば、内外の需要シグナルを監視し、より頻繁な予測を行えるようになった企業は、需要の減少に対応して迅速に生産を調整し、在庫評価損を回避できます。高度な需要予測は、天候のわずかな変化や広告の追加出稿など、需要に影響を与える些細な要因への対応を強化することもできます。
その結果、高度な需要計画システムを導入している企業では、予測精度と、事業計画との整合性を大幅に改善できます。今日の市場環境においてこれを実行することは困難なため、極めて重要な要素となっています。
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AIと機械学習
アジリティが2024年のサプライチェーンのトレンドの原動力であるとするなら、AIと機械学習はそのアクセラレータの役割を果たします。今後数年間で最も急成長が見込まれるのがAIです。Gartnerは、2026年までに商用サプライチェーン・マネジメント・アプリケーション・ベンダーの75%以上が、高度な分析、AI、データサイエンスを組み込んだ製品を提供すると予測しています。しかし専門家は、すでにAIに投資している企業でさえ、まだその可能性を十分に実感できていないと指摘しています。これらの企業は、これまで主に需要予測にAIを活用し、計画に役立ててきました。しかし、今後AIの自律的な意思決定能力への信頼が高まるにつれて、サプライチェーン分野におけるAIの役割はさらに拡大すると予測されます。
サプライチェーン責任者は、需要から供給、そして仕入先、地域、チャネル、気候に至るまで、サプライチェーンのさまざまな側面において、同時に発生するかもしれない混乱に備える必要があります。このような支援がなければ、サプライチェーン部門は、適切かつ迅速に対応することはおろか、潜在的な非効率性や脆弱性を効果的に管理することさえできません。
一方AIは、過去の意思決定から学習し、部門間の情報を関連付け、同様の状況に対する行動を推奨することができます。さらに、得られたデータを継続的に分析し、パフォーマンスを最適化するための意思決定を繰り返し、サプライチェーンを改善するための提案を行うことができます。そしてこれらの多くは、徐々に自律的に行われるようになります。
Gartnerが「analytics everywhere(どこでも分析)」と呼ぶユースケースには、自動運転車が含まれます。この自動運転車では、AIアルゴリズムは倉庫内の不測の事態に反応し、プログラムされたルート上の突然の障害物や事故を回避するよう訓練されています。また、AIは、天候に関連する災害を検知し、輸送ルートへの影響を評価し、このデータを仕入先、倉庫、その他の施設の位置と関連付けて緊急時対応計画を開始することができます。
NetSuiteでサプライチェーンのトレンドを先取り
最終的に、サプライチェーンのアジリティは、データの可視性とそれを分析して実行に移す能力によって決まります。NetSuite のサプライチェーン・マネジメント・ソリューションは、仕入から製造、納品まで、商品の流れを監督・最適化することで、これらの重要な要件をサポートします。NetSuite ERPは、主要プロセスを自動化し、業務および財務パフォーマンスを可視化するオールインワンのクラウド経営管理ソリューションです。2024年、サプライチェーン責任者はさらなる課題に直面することになるでしょう。需要と供給の変動は、サプライチェーンのさまざまな側面において多くの混乱を引き起こす可能性があります。こうした課題に適切に対応し、回復し、弾力性を維持できるかどうかは、組織のアジリティの高さにかかっています。そしてアジリティの高さは、組織がデータを活用した意思決定ができるかどうかで決まります。
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サプライチェーンのトレンドに関するよくある質問
サプライチェーンのトレンドとは何ですか?
2024年のサプライチェーントレンドは、インフレ、予測不能な顧客需要、労働力不足などの課題を乗り切るためのアジリティ強化です。また、関連するトレンドには、可視性の向上や予測の改善などが挙げられます。
サプライチェーン・マネジメントには今後どのようなトレンドが予想されますか?
人工知能は、クラウド・コンピューティング、モノのインターネット、自動化などのトレンドと組み合わさり、不確実な環境下でアジリティを達成しようとするサプライチェーン責任者の取り組みを加速させると予想されます。
2022年のサプライチェーンの現状を教えてください。
サプライチェーン責任者は、インフレや労働力不足など複数の要因による変動に対応するため、運用を見直し、デジタル管理を強化しています。
サプライチェーンの5大課題とは何ですか?
インフレ、不透明な消費者需要、労働力不足、物流の混乱、異常気象は、サプライチェーンが直面する最大の課題です。