希望や夢を抱き、開業や新商品の発売を考えることもあるでしょう。また、商品提供の拡充や人材採用を検討しているかもしれません。実行する前にリスクを抑えることが賢明です。損益分岐点分析で、事業が利益を出すタイミングが分かるので、投資する前に方向性を明確にすることができます。
損益分岐点分析は、価格やコストの調整の参考となります。さらに、利益を確保するまでの資金の必要性や事業の価値を判断する材料としても活用できます。
損益分岐点分析とは
損益分岐点分析は、新しいビジネスやサービス、製品のコストと販売単価を比較し、損益分岐点を計算する手法です。これは、すべてのコストをカバーする販売数を明示します。その点においては、損失も利益も生じません。
要点のまとめ
- 損益分岐点分析で、事業が得も損もしないポイントが明確になります。
- 損益分岐点分析は、企業の損益分岐点(BEP)を計算する財務手法です。固定費が低いほど、損益分岐点も低くなる傾向があります。
- コストの追加を考える際、企業は損益分岐点分析を活用したがるものですが、市場の需要はこの分析では考慮されません。
- 損益分岐点を下げる方法は、主にコストを削減するか価格を上げるのか2つです。
損益分岐点分析の仕組み
損益分岐点分析は、企業の損益分岐点(BEP)を決定する財務の内部管理ツールです。通常、投資家や規制機関とは共有されませんが、銀行融資の申込時に、金融機関が財務予測の一部として要求することがあることを留意してください。
この計算式には、単価と利益を考慮するとともに、固定費と変動費も含まれます。固定費は、製品やサービスの販売量に関係なく変わらない経費です。例えば、施設の家賃、設備費、給与、資本金に対する利息、固定資産税、保険料などが固定費に該当します。
変動費は、売上高に応じて変わる経費です。変動費の例としては、時間給の労働費、販売手数料、原材料費、光熱費、配送費などが考えられます。変動費は、製品1単位を生産する際の人件費と材料費の総額となります。
総変動費は、1単位生産するのにかかるコストを、生産した単位数で乗算して求めます。例えば、1単位の生産コストが$10で、30単位生産した場合、総変動費は10 x 30 = $300となります。
貢献マージンとは
貢献マージンは、製品の販売価格から総変動費を差し引いた金額を指します。例えば、スーツケースが$125で販売され、変動費が$15の場合、貢献マージンは$110となります。このマージンは固定費を補填するために利用されます。
単位貢献マージン = 販売価格 – 変動費
平均変動費は、総変動費を生産した単位数で除算して求めます。
固定費が低いと損益分岐点も低くなる傾向がありますが、変動費が販売売上を超える場合はその限りではありません。
損益分岐点分析の実施が必要である理由
損益分岐点分析は多岐にわたる用途を持っていますが、特に新製品の導入や事業拡大、スタートアップ企業の財務予測には欠かせないツールです。これを基に、必要な創業資金や開業資金の量、銀行融資の必要性などを判断することができます。
既存のビジネスの場合、新しいアイデアの実現、製品ラインの追加や削除などの重要な決定を下す際のリスク評価にも損益分岐点分析は役立ちます。例えば、新たに従業員を雇用する場合の費用対効果を評価するために、どれだけの追加売上が必要かを損益分岐点分析を通して確認することができます。
損益分岐点までの標準的な期間
損益分岐点の通常の目安は6か月から18か月とされています。計算の結果、損益分岐点までの期間が長くなると予測される場合、コストの削減や価格の引き上げ、あるいはその両方を検討して計画の見直しが必要です。損益分岐点が18か月を超える場合、ビジネスにとって大きなリスクとなる可能性が高まります。
損益分岐点分析を使用するタイミング
企業は、コストの追加を検討するとき常に損益分岐点分析を活用したいと考えます。この追加コストは、事業開始、合併・買収、製品の追加・削除、新しい場所や従業員の追加により発生します。
したがって、あらゆる事業投資、特に以下の3つの場面で、損益分岐点分析を使いリスクと価値を評価する必要があります:
-
事業の拡大
損益分岐点(BEP)は、ビジネスオーナーやCFOにとって、投資が利益を生み出すまでの時間を現実的に確認する手段として役立ちます。例えば、新規の拠点開設や新市場進出の際のコストを補うための最低売上を計算する際に活用することができます。
-
価格の引き下げ
特定の市場セグメントや製品で競合他社に勝つためには、価格を下げる戦略を取ることが求められることがあります。その際、価格を下げた分をどれだけのユニットで埋め合わせるべきかを計算する必要が出てきます。
-
ビジネス・シナリオの絞込み
ビジネスの変革時、多くのシナリオや「もしも( if )」の状況が考えられ、どのシナリオを選ぶかの意思決定は複雑です。BEPの使用により、ビジネスリーダーの判断が簡素化され、「はい」「いいえ」の質問に答えるだけで方針を決めることができます。
損益分岐点の計算方法
通常、ERPや会計ソフトには管理会計機能が備わっており、BEPの計算もサポートしています。しかし、その計算式にどのような要素が含まれているのかを理解しておくことは重要です。
損益分岐点分析の計算式
損益分岐数量 = 固定費 / 単位当たり販売価格 – 単位当たり変動費
損益分岐点分析の例
Bethはカップケーキの店を開くのが夢です。損益分岐点分析を基に、何個のカップケーキを売れば収支が合うかを計算しました。1年間の固定費は$10,000、1個の変動費は$0.50です。競合他社の調査をもとに、カップケーキの単価を$6.00に設定しました。
$10,000 / ($6 – $0.50) = 1,819 個のカップケーキを売れば、 1年で収支をあわせることが可能
損益分岐点分析の制限
損益分岐点分析では市場の需要は考慮されません。例えば、500単位の販売が収支の均衡点だとしても、それが実際に売れるか、いつ売れるのかは不明です。ビジネスの新しいアイデアや製品への情熱によって、この基本を見落とさないよう注意が必要です。
逆に、損益分岐点を達成するための労力と時間をどれだけ投資できるかを検討することが大切です。営業の時間と労力を数か月かけて投資することは実際に可能なのか、それとも他の製品を生産・販売した方が効率的なのかを考える必要があります。
もし製品の需要が低い場合、価格戦略の見直しで製品をより早く市場に出すことが考えられます。しかし、価格を下げることで、損益分岐点が実際には高くなるリスクもあります。価格を安く設定すれば多くの製品を速やかに動かせるかもしれませんが、収益均衡点を達成するためにはより多くの生産が必要となる点に注意が必要です。
より正確な
計画と予測
損益分岐点を下げる方法
損益分岐点を下げるための方法は、コスト削減と価格の引き上げの2つが基本です。しかし、無闇に実施すべきではありません。価格の設定や消費者の心理を考慮し、多くの製品を販売しても損失を出さないよう注意が必要です。
品質や納期などの要因が影響するブランドの価値を守るために、コスト削減の前にこれらの要素を検討することが大切です。さらに、外部委託により、需要や生産量が増えた際のコストを低減できる可能性があります。