ERPへのデータ移行について詳しく学びましょう。ERPへのデータ移行をスムーズに進めるためのベストプラクティスについて学ぶことで、時間やコストを節約し、確実にERP導入を成功させることができます。
データ移行は、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムの導入には不可欠なステップですが、時に困難を伴います。
すべてのERPシステムの中心には、組織内の従業員が同じ一貫した情報セットにアクセスできる共有データベースがあります。ERPソフトウェアを導入する際、組織は古いシステムからこのデータベースにデータを移行する必要があります。
データ移行プロセスは複雑で時間がかかる場合があります。慎重にERP移行プランを立て、適切に実行することが重要です。必要な時間と労力を過小評価すると、ERP導入全体が遅れる可能性があります。また、顧客満足度、意思決定、サプライチェーン、パートナー関係など、ビジネスの多くの要素がデータベースに依存することになるため、移行されるデータの正確性と完全性は極めて重要です。
ERPへのデータ移行とは
ERPへのデータ移行とは、データを元のソースからERPシステムのデータベースに移行するプロセスです。多くの場合、さまざまな異なるシステム、フォーマット、ストレージタイプから単一の共通構造にデータを移行する必要があります。
ERPの導入前は、一部の部門ではスタンドアロンの会計または人事アプリケーションなど、特定の機能のみをサポートするよう設計されたシステムを使用していたかもしれません。また、スプレッドシートなどの汎用ツールを使用していた部門もあったでしょう。データ移行を確実に成功させるためには、各アプリケーションからのデータを検査、抽出、クレンジング、変換してからデータベースにインポートするといった、体系的なアプローチを取る必要があります。
主なポイント
- データ移行における課題には、時間、コスト、データの冗長性と整合性、利害関係者のサポート、規制上の懸念などが含まれます。
- 明確なERPへのデータ移行戦略を立てることが、導入を成功させるカギとなります。データの分析、移行、結果の検証に専念するチームを編成しましょう。
- ERPのベストプラクティスには、ERPの導入が遅れないように早めにデータ移行を開始すること、移行時に不要な履歴データを削除することが含まれます。
ERP導入においてデータ移行が極めて重要な理由
データ移行プロセスは、新しいERPシステム内のデータが正確かつ完全であることを保証するために極めて重要です。なぜなら、企業の異なる部門の多くの人々がその履歴データに依存しているためです。
データ移行を綿密に計画することで、ERP導入プロジェクト全体を予定通りかつ予算内で進めることができます。また、組織の古いシステムに潜む古いデータや重複データを削除する機会にもなります。逆に、データ移行を後回しにしておろそかにすると、不正確なデータや重複データ、プロジェクトの遅延など、さまざまな問題が発生する可能性があります。
データ移行の課題
ERPへのデータ移行には、次のようなさまざまな課題が伴います。
1. データの重複と整合性:
複数の部署が同一の顧客や製品に関する情報をそれぞれ独自の方法で保管している場合、それらのデータが同一であるとは限りません。各部署でデータの分類方法が異なる場合があるためです。
例えば、顧客名や住所を異なる形式で保存していたり、同じの顧客に対して異なる住所を登録している場合もあります。各部署のシステムからすべてのレコードをERPデータベースに単純にインポートすると、顧客リストが重複したり、不正確になるなどの問題が発生する可能性(新しいタブで開きます)があります。
2. データ移行コスト:
データの抽出、クレンジング、再構築にかかるコストは、ERP導入プロジェクト全体の予算の中で大きな割合を占める可能性があります。ERP Focus のレポートによると、単に古いERPシステムから新しいシステムにデータを移行する場合でも、データ移行コストは新しいシステムの総コストの10~15%を占めるとのことです。
3. ステークホルダーの合意:
企業の経営陣にはさまざまな優先事項があるため、ERPへのデータ移行が必ずしも最優先事項であるとは限りません。しかし、内部対立を避けるためには経営陣による支持が必須です。前述のとおり、さまざまな部門がそれぞれの業務ニーズに合わせて独自のシステムを使用し、独自のデータ入力方法に慣れている可能性があります。そのため、すべてのグループが協力して一貫性のある単一のデータセットを作成するには、経営陣の支援が必要となります。
4. 規制上の問題:
地域や業界ごとに異なる規制がますます増えており、組織がデータを保存および使用する方法に影響を与えています。データを転送する際は、これらの規制に準拠していることを確認する必要があります。例えば、医療機関はHIPAAの規則に従い、特定の文書を6年間保持する必要があります。一方、ヨーロッパのGDPRやカリフォルニア消費者保護法などの新しい法律では、組織は消費者の要請に応じてすべての個人データを削除できるようにする必要があります。
ERPへのデータ移行戦略およびプラン策定のための4つのステップ
ERPシステムへのデータの移行という複雑なプロセスを円滑に進めるためには、いくつかの重要な要素を含むERPへのデータ移行戦略を策定することが重要です。
1. データ移行チームの編成:
移行が必要なデータと、そのデータのクレンジング方法を決定する責任を担うチームを編成します。データ移行チームは、通常、全体的なERP導入チームの一部であり、さまざまなビジネスグループの代表者で構成され、各グループのデータの使用方法に関する見識を提供します。
2. データの分析とマッピング:
ソースシステムごとにデータを検査し、重複や不整合がないかを確認します。データ移行チームは、ERPシステムにデータをインポートする前に、これらの問題をどのように解決するかを決定する必要があります。この導入フェーズでは、自動化ツールがデータをインポートできるように、データをERPデータベースの構造にマッピングする必要もあります。
3. 移行するデータの決定:
古いシステムには、長年取引のない顧客、倒産したサプライヤー、古い製品に関する情報など、古い情報が含まれている場合があります。また、古いトランザクションに関する履歴データも含まれている可能性があります。これらの情報の多くは、新しいシステムでは必要ないため、自社のデータ保持ポリシーに応じてオフラインで保存するか、別のシステムに保存するとよいでしょう。
4. 移行、検証、テスト:
新しいERPシステムには、データのインポート・プロセスを自動化するツールが含まれている場合がありますが、それらのツールを使用する前に、データを整理して変換し、ERPシステムで認識できる形式にする必要があるかもしれません。本稼働前に、移行したデータを各業務グループおよびERPアプリケーションでテストします。
ERPへのデータ移行の4つのベストプラクティス
ERPへのデータ移行のベストプラクティスに従うことで、組織はリスクを回避し、ERPプロジェクト全体を順調に進めることができます。ここでは、4つの主なベストプラクティスをご紹介します。
データ移行を優先する。データ移行に必要な作業は過少評価されがちです。データ移行には時間がかかるため、慎重に計画しないと、全体の導入スケジュールが遅れる可能性があります。早めに開始し、ボトルネックが発生しないよう十分なリソースを確保することが大切です。導入の初期段階で、ソースシステムからデータを抽出してクレンジングするプロセスを具体化し始めましょう。
データのより広い活用方法を検討する。移行を開始する前に、既存のデータを徹底的に分析し、ERPシステム内でどのように使用されるかを考え、ERPデータベースの構造にマッピングし、移行時にデータを新しい構造に変換するためのルールを設定します。ERP導入は、データの分析を通じてリアルタイムのビジネスインサイトを得る機会でもあります。そのため、移行の際には、各部門だけでなく、ビジネス全体の意思決定にデータがどのように使用されるかを考えることが重要です。
データガバナンス責任者を任命する。誰がどのデータを所有しているかを明確にし、チームに役割を割り当てます。例えば、チームでは、重複した顧客情報のうち、どのバージョンが正しく、ERPシステムに取り込むべきかを判断する必要があります。また、ビジネスに影響するであろうさまざまな規制への準拠を管理する責任者を任命する良いタイミングでもあります。CCPAやGDPRなどの新しい規制では、ミスが思わぬコスト増につながる可能性があります。
データを厳選する。いつか必要になるかもしれないという思いから、古いシステムからすべてのデータをERPシステムに移行したくなるかもしれません。しかし、すべての履歴データをすぐに利用できる必要はなく、有用なデータも限られています。実際、すべての履歴データをインポートすると、システムパフォーマンスを低下させ、ユーザーが本当に必要な情報を探しにくくなるなど、逆効果です。
チームのメンバーが、特定のデータを新しいシステムに移行すべき正当な理由を述べられない場合は、移行する必要はないでしょう。移行しない履歴データは、履歴分析やその他の用途で必要になる場合を考慮し、別のシステムに保存することもできます。
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ERPへのデータ移行のヒント
早期かつ頻繁なテストを行うことで、ERPへのデータ移行の成功を確保することができます。次に、いくつかのヒントをご紹介します。
- 移行データの量が少ない段階で、できるだけ早期に新しいシステムのテストを開始し、徐々に時間をかけてより包括的なテストへと移行します。
- 代表的な顧客や注文のサブセットから始め、徐々にすべてのデータ、アプリケーション、用途をカバーするように拡大していきます。
- チェックリストに従い、ユーザーが新しいシステム上で日常のプロセスをすべて実行するテストを実施します。これにより、見落とされがちな問題を特定できます。