エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)は、会計、業務、製造、営業などの複数の部門で、単一のデータベースから洞察を収集して分析し、共有する必要のある事業にとって中心的なテクノロジとなります。ERPはビジネス・プロセス間で点と点をつないで効率を高めるために有用ですが、現在、競争力を保つにはさらに多くのことが求められます。それは、組織のよりスマートな意思決定を支援する、リアルタイムのデータ分析と洞察です。

ビジネス・インテリジェンス・テクノロジ、つまりBIの扉を開けてください。ERPとBIは連携することで会社の俊敏性を高め、リーダーによる管理を支援し、事業の成功の基礎を築きます。

ERPとは

組織は、ERPソフトウェアを使用して、ビジネス・プロセスを自動化し、洞察と制御のための一元化されたハブを確保します。最新のERPは、財務、製造、業務、営業、マーケティング、人事などの部門から入力されたデータを収集する中央データベースを利用します。その中央データベースから得られる部門横断的な洞察を利害関係者が使用して、様々なシナリオを分析したり、財務計画および分析(FP&A)を実行したり、必要なデータを探して費やす時間が短縮されることで大幅な効率改善やコスト削減、生産性向上につながるプロセスの改善点を見出すことができます。

つまり、ERPの主要な価値とは、財務、サプライ・チェーン、生産管理などの重要な業務プロセスを最適化および自動化することで、戦略的な業務に割く時間とリソースを確保できるようにすることです。

ビジネス・インテリジェンス(BI)とは

ERPと同様に、ビジネス・インテリジェンス(BI)ソフトウェアは業務に対する包括的な視点を会社にもたらすことで、管理者がデータに基づいて意思決定できるようにします。また、BIは高度な戦略と市場の需要に対する戦術的な対応の両方においての中心的な役割も担います。これにより、事業の効率を高め、競争上の優位性に集中し、最終的に収益性を高めることができるように支援します。

実務においては、BIは、一元化されたリポジトリからデータを取得し、事業の現在の状況を示す詳細で透明性のある視点を提供するための、ダッシュボード、レポート、顧客対応ITシステム、外部ソースの生成を支援します。これによって提供される包括的で詳細な分析は、ユーザーがフロント・オフィスとバック・オフィスの両方で業務を改善するために役立ちます。たとえば、サプライ・チェーンに問題を抱える小売業者が、BIによる分析で業務のボトルネックを特定し、より信頼性の高いルートを経由するように出荷ルートを変更する計画を策定できます。

ERPとBIの主な違い

ERPとBIは多くの点で重複しますが、それぞれ異なる強みを持っています。ERPは、主に、製造、在庫管理、財務、サプライ・チェーンなどの重要なビジネス・プロセスを管理および統合するプロセス管理ソフトウェアとして機能します。統合されたプロセス・システムとして、一元化されたデータでサイロを解消し、組織全体にわたって効率性を高めます。BIは、このデータをさらに活用し、会社全体からの情報を整理、分析およびコンテキスト化して、事業にとって実用的な洞察を生成できるようにします。

ダッシュボードやその他の表示機能を作成することで、複雑なデータを理解しやすくします。

また、ERPとBIはサポートする意思決定のレベルも異なります。ERPは、事業の各部門がその時点でどのようなパフォーマンスを示しているかを正確に把握できるようにすることによって、業務レベルで最大の価値をもたらします。BIはそれ以外のデータも分析し、会社のパフォーマンス指標をより詳細に確認して傾向を把握できるようにします。その情報は、概要レベルと詳細レベルの両方での戦略の微調整に使用できます。

新しいデジタル・マーケティング戦略のROIを分析する場合も、在庫管理に対してよりリアルタイムのアプローチを導入した場合に削減できるコストを計算する場合も、BIシステムは時間とリソースを節約することを含め、コストを抑制しながらパフォーマンス向上を促進します。

OLTP + OLAP: 相乗効果

オンライン・トランザクション処理(OLTP)システムは、企業がトランザクションを記録するために使用するデータ処理システムです。ERPはOLTPシステムの例です。一方、ビジネス・インテリジェンスはオンライン分析処理(OLAP)システム上に構築され、多次元分析機能を提供します。

OLTP OLAP
常に更新される 更新頻度が低い
業務データソース 連結されたデータセット
比較的標準化されたクエリ 複雑なフリーフォーム・クエリ
迅速にレスポンスを返す クエリ処理に時間がかかる場合がある
レコードのオリジナル・データソース

購買トランザクションや仕入先支払などのトランザクション・データを取得および維持する
ERPなどの複数のソースからデータを取得する

ERPとBIの進化

ERPのルーツは1960年代に製造業で使用されていた資材所要量計画システムです。1980年代になると、これらのシステムは製造生産資源計画システムに進化して生産計画の改善を支援するようになりました。90年代には統合業務管理プラットフォームが出現し、オンプレミスからホスト化、そしてクラウドベースERPの基盤として、事業全体のプロセスを1つの中央データベースにまとめ、いつでもどこでも洞察を使用できるようになりました。

BIも同様の経過をたどり、意思決定支援システムをルーツとして1960年代に生み出され、1980年代にさらに開発が進みました。BIは1990年代終盤にオンプレミス・ソリューションになりました。ベンダーがBIソリューションをクラウドで提供し始めたのは過去わずか数年のことです。

現在、一般的に、ERPはクラウドでBIと統合されています。これにより、ホスティングと管理、オンプレミス・インフラに対する支払という負担が取り除かれるのみでなく、システム間でデータをリアルタイムで統合できるようになり、その結果、よりスマートな意思決定が可能になります。

ビジネス・インテリジェンスとERPの統合

事業の適切な意思決定は、常に、データと分析に基づくものです。しかし、現在の会社には、構造化された、またはされない膨大な量のデータが集められるため、これらの情報を大規模に整理して格納し、分析する方法が必要になっています。ERPとBIを統合することで、すべてがまとめられ、何百万ものデータ同士を連結して明確で実用的な洞察を導く助けとなります。

事業で将来に備えるには、従来のレポートから予測モデリングに移行することが必要となり、このことはERPとBIの統合の普及が進む原動力にもなっています。傾向とパターンを発見し、市場の変化を予測してプロアクティブに計画を調整できるというすべてのことが、現在のデジタル経済における競争優位性となります。

ERPでビジネス・インテリジェンスを使用する理由

BIとERPソフトウェアは補完的であるばかりでなく、相互のパフォーマンスを高めます。

ERPはデータ分析に不可欠であり、財務、人事、業務、営業などの重要な部門の間のサイロを解消します。BIはこれらの情報ソースのすべてを各部分の集積以上のものに変え、ERPから業務データを取得して事業戦略の目的に直接的に貢献する実用的な洞察を導きます。

コストを低く保ち、生鮮食料品の廃棄を回避するために在庫と配送ロジスティクスを改良し続ける必要がある食料品小売業者の例を考えてみましょう。在庫、サプライ・チェーン、顧客の需要をリアルタイムで把握できれば、その小売業者は量とスピード、廃棄の間で適正なバランスをとることができます。

現在、BIはERPなしには存在できません。BIソフトウェアはERPデータベースをマイニングし、ダッシュボードやその他の表示機能を介して、事業の利害関係者全体が洞察をより簡単に利用できるようにします。一方、ERPは、BI機能の支援を得て、戦略的な意思決定においてより大きな役割を担います。

ビジネス・インテリジェンスがERPにもたらす7つのメリット

BIは、データをビジュアルな分析に変えて組織全体の意思決定に役立つ情報を提供する以外に、様々な方法でERPを拡張します。ERPとBIを統合する主なメリットのいくつかを詳しく見てみましょう。

  1. データの集計および分析: ERPによって生成される生データは膨大な量になり、この情報を活用してより多くの価値を生み出すことが常に可能です。BIをERPに統合することで、ERP内でデータから直接的に詳細な洞察を引き出すことができます。

  2. カスタマイゼーション: 社内のすべてのチームが共通の目標に向かって作業しているときでも、個々の利害関係者にはデータ分析に対して独自の責務や要求がある場合があります。BIとERPが統合されていれば、各チームがその目的を果たすために必要なレポートとダッシュボードを生成できます。

  3. 予測機能: 従来のERPデータはパフォーマンスに対する洞察を提供する一方、BIは予測分析とモデリングの扉を開きます。これらを組み合せることで、会社の過去、現在、将来の可能性をエンドツーエンドで把握できます。

  4. リアルタイムの意思決定: 従来のレポートは過去遡及的ですが、前述のとおり、事業の競争力を維持するにはより未来予測的になる必要があります。BIは、そのニーズに対応するために、データと分析をリアルタイムで提供し、より適切で迅速な意思決定を支援します。

  5. 包括的な洞察: BIとERPが統合されると、事業のパフォーマンスを評価するために複数のシステムを切り替える必要がなくなります。必要なすべてのデータが一箇所にまとめられ、シンプルなレポート、予測モデリング、特定の問合せへの回答に使用できるようになります。

  6. 効率性: BIをERP内に統合することで、会社で、複数のソースからの大規模なデータをリアルタイムで連結、整理および分析できるようになります。その時間短縮によって、従来事業の俊敏性を阻んでいた重大な障壁が取り除かれます。

  7. レポート: BIは、チームがより詳細な分析のためにより大きなデータを組み込むことを可能にすると同時に、レポート生成プロセスを迅速化することによって、レポートを拡張します。さらに、シンプルなダッシュボードで、組織全体の権限のあるユーザーが、技術的なレベルに関係なくレポートにアクセスできます。

ビジネス・インテリジェンスを使用するERPの例

ERPとBIを統合するアプローチは、あらゆる規模、あらゆる業種の会社にとってメリットがあります。たとえば、小売業者は、eコマースへの移行に伴って在庫とマーケティングの戦略を調整できます。B2Bの会社は、見込み顧客の各ステージにおけるマーケティングの収益促進状況をより詳細に把握して、広告への支出を最適化できます。他にもまだあります。

また、様々な立場の方にとってメリットがあります。たとえば、現在、CFOは、売上、顧客体験、取扱商品やサービスを改善する活動に関与します。これらのすべてのことにリアルタイムのBIダッシュボードを利用すると同時に、投資分野に関する役員の意思決定の場において、事業部門の管理者がより戦略的な役割を果たすよう支援できます。

業務管理者は製造プロセスと製品品質の間のリンクを新たに発見し、最高の品質を最も低いコストで実現するためにアプローチを調整できます。顧客体験を担当するリーダーは物理的およびデジタルの販売チャネルからのデータを分析して、一貫した体験を提供していることを確認できます。

つまり、BIをERPに統合すれば、意思決定者はデータをドリル・ダウンして、業務のそれぞれの部分がどのように関連しているかを理解できます。その知識に基づいて、正しい問いを発し、販売やパフォーマンスの変化の背後にある根本原因を突き止め、市場によって次の行動が促されることを待たずにプロアクティブに問題に対応できます。

ERPにおけるビジネス・インテリジェンスの未来

ERPとBIは、進化し続けることに伴って関連性をさらに深めると考えられます。事業戦略の策定においてデータと分析が果たす役割はさらに大きくなり、意思決定者は業務に対するリアルタイムの洞察をより強く求め、依存するようになるでしょう。

また、ERPとBIが連携して、チーム間のより緊密なコラボレーションを促進します。ERPによって部門間のデータ・サイロが排除される一方、BIによって意思決定者が知識を組み合わせ、共通の目標に向けての協力を促進できるようになります。

利便性の高いERPは、会社がデータと業務を把握するために役立ちます。しかし、大規模なデータセットを連結して解釈し、理解しやすく実用的なものにするには、BIの分析機能が欠かせません。ERPとBIを統合するソリューションにより、それらの貴重な機能が一箇所にまとめられ、リアルタイムで組織が自由に利用できるようになります。他のメリットとしては、傾向を発見してプロアクティブに事業戦略を調整する時間的余裕がもたらされることや、より大規模なデータセットに基づいてレポートが強化されることなどがあげられます。

ERPとBIを組み合せることで、組織でより確かな情報に基づいた意思決定をより迅速に行い、事業の管理を改善し、市場勢力の中で優位に立つことができます。

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ERPとビジネス・インテリジェンスに関するFAQ

Q: ビジネス・インテリジェンスの戦略とはどのようなものですか。

A: ビジネス・インテリジェンスは4つのステージに分割できます。最初のステージはデータ収集です。次に、分析の準備のためにデータが連結されます。その次は分析、ダッシュボード、KPIまたはレポートの作成です。完了すると、レポートとダッシュボードは事業全体で関連する利害関係者に共有されます。

Q: ビジネス・インテリジェンスにはどのような例がありますか。

A: ビジネス・インテリジェンスは多くの理由で価値があり、たとえば、予測において特に有用になる可能性があります。小売業者がBIを活用し、履歴データとリアルタイムの市場の状況に基づいて一定期間の需要をより正確に予測するために役立てることができます。

Q: OLTPはERPとはどのように違いますか。

A: オンライン・トランザクション処理(OLTP)システムは、企業がトランザクションを記録するために使用するデータ処理システムです。ERPはOLTPシステムの例です。一方、ビジネス・インテリジェンスはオンライン分析処理(OLAP)システム上に構築され、多次元分析機能を提供します。

Q: 生産におけるERPとはどのようなものですか。

A: ERPソリューションは、会社の人事、サプライ・チェーン、生産と品質保証のシステムに対するより優れた洞察を提供することによって、生産と製造のプロセスの効率を高めます。さらに、透明性を高め、生産ワークフローに関与するチーム間のコミュニケーションを円滑化する効果もあります。