クラウドコンピューティングは、成長中の企業にとってますます魅力的な選択肢となっています。その理由は、クラウドでは業務に必要なサービスをレンタルできるため、社内にITインフラを所有したり、時間のかかる高額な設定やメンテナンス、その他の要件に対応したりする必要がないためです。

多くの企業が、クラウドコンピューティングによってコストを削減しながら、拡張性と革新性を高めています。

では、クラウドコンピューティングとは何でしょうか?さまざまなタイプや導入オプションが存在する中、適切なクラウド戦略を選択するためには、まずこのテクノロジーの仕組みについて学び、自社に最適なクラウドがどれかを理解する必要があります。

クラウドコンピューティングとは

クラウドコンピューティングとは、インターネットを介したオンデマンドのコンピューティング・サービスです。企業では、ストレージ、データベース、データ分析、顧客インテリジェンスなどのサービスや、専門的な業務用ソフトウェアであるエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)や人事(HR)プラットフォームなどが利用されています。通常、企業は利用するクラウドサービスのみを契約し、その分だけ料金を支払います。そのため、サービスをセットアップし管理するのに必要な時間やコストだけでなく、インフラの購入費用も大幅に削減できます。さまざまなテクノロジーベンダーがクラウドサービスを提供または「ホスト」しています。一部のベンダーが、顧客のIT要件全体をカバーする統合ソリューションを提供しているのに対し、他のベンダーは、特定の業務分野や業界ニーズに対応するように設計された専門的なクラウドソフトウェアを提供しています。

ビジネスで利用されているサービスは、ストレージやデータベース、データ分析、顧客インテリジェンスなどのサービスから、ERPや人事プラットフォームのような専門的な業務用ソフトウェアまで、多岐にわたります。通常、企業は必要なするクラウドサービスのみを契約し、料金を支払うため、大幅な時間と費用の節約につながり必要な

ユーザーは、どこからでもこれらのサービスにアクセスできるため、パンデミック時にはこれが大きなメリットとなりました。クラウドの人気は数字を見れば一目瞭然です。世界的な調査・アドバイザリー企業であるIDCの予測によると、2021年末までに、ほぼ全ての企業がクラウド中心のデジタルインフラとアプリケーションサービスへの移行を進めるとのことで、その速度はパンデミック以前と比較して2倍となっています。クラウドサービスや、クラウドサービスを支えるハードウェアおよびソフトウェアコンポーネント、そしてクラウドサービスに関連するプロフェッショナルおよびマネージドサービスへの支出は、2024年には1兆ドルを超えるでしょう。

消費者向けとビジネス向けの比較

クラウドコンピューティングは、今やほとんどの人々の日常生活の一部となっています。クラウドコンピューティングにより、現在の消費者はファイルをハードドライブに保存することなく、Spotifyで音楽をストリーミングしたり、Netflixのような動画ストリーミング・プラットフォームからオンデマンドで映画を鑑賞したり、Gmailのような電子メールサービスを利用したりしています。また、データは「クラウド」内のリモートサーバーに保存されているため、どこからでも、どのデバイスからでも音楽やメールにアクセスできます。

多くのクラウド・プロバイダーは、必要なストレージ容量やファイルにアクセスするデバイスの数などに応じた段階的な料金オプションを用意し、サービスに対して月額料金を請求しています。

ビジネスもまた、ストレージや、データのバックアップとリカバリ機能などにクラウドを利用していますが、これらはほんの一部にすぎません。企業にとってクラウドは、複雑な業務をサポートする高性能なコンピューティング環境としても機能します。クラウドコンピューティングは、企業が自社で高価なITインフラを購入し、その保守スタッフを雇用する必要性を排除します。クラウドは、アプリケーション開発のためのプラットフォームも提供します。クラウドプロバイダーがIT関連の面倒な作業を引き受けてくれるため、企業は戦略目標の達成に集中できます。

主なポイント

  • クラウドコンピューティングにより、すべての企業がインターネット経由で最新かつセキュアなテクノロジーリソースをオンデマンドで利用できるようになります。
  • ユーザーは、パブリック・クラウド、自社専用のプライベート・クラウド、またはハイブリッド・クラウドから選択できます。
  • パンデミックにより、クラウドコンピューティングの導入が加速しました。大小を問わず、多くの企業が業務をサポートするためにこのテクノロジーを活用しています。

クラウドコンピューティングの仕組み

クラウドとは、分散型のテクノロジー環境を指す言葉で、クラウドではコンピューティング・サービスとデジタル情報が共有されます。クラウドコンピューティング・サービスには、企業の社内ネットワークではなく、インターネットに接続されたWebブラウザやモバイルアプリからアクセスします。アプリケーション、データストレージ、基盤となるオペレーティング・システム、サーバー、物理データセンターのインフラストラクチャ、セキュリティ・アップデートや機能アップグレードのインストールは、ベンダーの管理となります。顧客は、エンドポイントとログイン権限を管理し、従業員がアクセスできるデータとサービスを制限します。料金は、通常はサブスクリプション・ベースで、利用したサービスに対してのみ支払います。

これらのアプリケーションをホストする企業は、一般的に、大企業以外では手が出ないほどの高度なデータセンターで、強力なコンピューティング能力、セキュリティ、ストレージ機能を備えた環境でアプリケーションを運用しています。

企業が利用できるクラウドサービスの幅は、拡大し続けています。一部の企業は、単純なデータストレージのためにクラウドを利用しています。また、複雑なアプリケーションを実行するための処理能力の強化を目的にクラウドを利用している企業や、膨大な計算能力と専門的なコーディングの知識を必要とするAIのような革新的なテクノロジーの実験のために利用している企業もあります。また、リモートワークの人気が高まるにつれて、リモートの従業員やパートナー間のコラボレーションとセキュアなデータ共有を可能にするためにクラウド・アプリケーションを利用している企業もあります。

クラウドコンピューティングが企業にとって重要な理由

クラウドコンピューティングが企業にとって重要な理由は、財務上、業務上、戦略上の3つのカテゴリーから見ることができます。財務上の利点は、ITインフラストラクチャのコストと管理コストを削減できることです。業務上の利点は、従業員間のデータアクセスとコラボレーションが向上することです。戦略上の利点は、企業がクラウドを活用して生産性を向上させ、自社のサービスを拡大し、最終的には競争優位性が得られることです。

企業にとってのさらなる財務上の利点は、クラウドコンピューティングの費用を、資本支出(CapEx)ではなく営業経費(OpEx)として計上できることです。なぜなら、物理的な資産ではなくサービスに対する支払いだからです。これにより、企業はITコストを長期的に分散させることができ、短期的な予算の制約に縛られることがなくなります。サブスクリプション・モデルの価格設定により、IT支出がより予測しやすく、正確なものになります。これにより、サーバーの問題やセキュリティ侵害が発生した場合のような、隠れたIT支出や計画外のIT支出を排除できます。

クラウドコンピューティングの用途

クラウドコンピューティングの人気の高まりにより、企業の運営方法がほぼすべての側面において飛躍的に向上しています。ストリーミングサービスが従来の音楽やビデオ販売に取って代わったのと同じように、クラウドコンピューティングがオンプレミスのITインフラストラクチャに取って代わり、多く企業がクラウド・インフラストラクチャおよびプラットフォーム上での運営を選択するようになっています。

では、誰がクラウドコンピューティングを利用しているのでしょうか?

クラウドコンピューティングは、あらゆる業界のあらゆる組織が、あらゆる部門で利用しています。たとえば、財務チームは、ビジネス・パフォーマンスを追跡・監視するためにERPクラウドシステムを利用しています。人事チームは、給与やパフォーマンス・レビューなど、従業員エクスペリエンス全体を管理するためにクラウド・プラットフォームを活用しています。マーケティング部門は、顧客との関係を深め、よりパーソナライズされたコミュニケーションを提供するために、クラウド上で顧客関係管理(CRM)および分析ソフトウェアを利用しています。

また、クラウドはイノベーションのためのテスト環境も提供します。開発者は、必要なインフラに投資することなく、クラウドベースの開発プラットフォームのコンピューティングパワーを活用して、最先端のサービスを構築、テスト、微調整することができます。レガシーシステムを数多く抱える大企業でも、クラウドで構築されたデジタルファーストのサービスを立ち上げ、新たな顧客層を開拓し、ビジネスモデルを最新化できます。

クラウドコンピューティングのユースケース

クラウドコンピューティングは、社内または顧客向けに関わらず、特定のニーズに合わせてITシステムにアクセスし、カスタマイズできる柔軟性を企業に提供します。クラウドコンピューティングのユースケースは多岐にわたりますが、以下に、あらゆる業界に適用される一般的な利用方法をご紹介します。

データストレージとバックアップ

企業が保有する顧客データや業務データの量はかつてないほど増えており、データ収集は今後も増加の一途をたどるでしょう。クラウドに情報を保存することで、企業は自社のストレージ容量を拡張し続ける必要がなくなります。

データ収集と分析

企業はデータから貴重なインサイトを得ることができますが、その一方、異なるソースからの情報を1つのリポジトリに統合することが課題となります。クラウドは、異なるチームやソースからのデータを統合し、企業をより包括的に把握することを容易にします。

たとえば調達部門は、ベンダー関係に関するクラウドベースのデータを活用して、期限内の支払いとプロジェクト納品を確実なものにできます。また、小売業者は、オムニチャネルのタッチポイント全体にわたって顧客をより深く理解できます。このように、そのメリットは多岐にわたります。

部門間のサイロを解消

クラウドコンピューティングは、さまざまなソースからのデータを統合することで、情報やアイデアの共有を促進します。このように、部門間で統合された事業計画を立て、コラボレーションを図ることは、ビジネス運営を成功させるための基盤となります。たとえば、人事部門と財務部門の間でデータとプロセスを整合させることは、正確なレポートと従業員管理に不可欠です。

データセキュリティの向上

一部の企業では、堅牢なデータセキュリティが構築されていますが、多くの企業では、情報を適切に保護するための専門知識、コンピューティング能力、予算が不足しています。大手クラウド・プロバイダーは、データセンター、ネットワーク、ソフトウェア全体で最高のデータセキュリティ・アーキテクチャを構築することができます。また、ソフトウェアベースのサービスを販売する企業は、すべての顧客に対して、コード更新とパッチ適用を同時かつ即時に行います。

オンデマンドのサービス提供

企業や消費者が必要なサービスを必要な時に利用できることは、クラウドコンピューティングの大きなメリットです。サービスの提供方法は、情報の性質や機密性に応じて異なります。顧客はこれらのサービスを契約し、利用した分だけを支払います。

新しいサービスや機能のテストと構築

アプリケーションの構築とテストには、日常的なビジネス運用よりもはるかに高いコンピューティング能力が必要となります。特に、機械学習などの最新テクノロジーが関わる場合にはなおさらです。新しいサービスや機能のテストと構築をクラウド環境で行うことで、企業は開発コストを削減できます。また、現在のコンピューティング能力とデータストレージのニーズに基づいて、クラウドへの投資を調整できます。

クラウドコンピューティングの導入モデル

クラウドの大きな利点のひとつは、企業が複数の導入モデルの中から、自社の要件に最も適したものを選択できることです。一部の企業、特にスタートアップ企業やデジタル専用企業は、迅速な拡張のためにパブリック・クラウドサービスを選択する場合もあるでしょう。一方、銀行や保険会社など、機密性の高い財務データを完全に管理する必要がある企業は、プライベート・クラウドを選択するかもしれません。

以下では、現在ご利用いただける4つの導入オプションについて説明します。

パブリック・クラウド

おそらく最もよく知られているクラウドコンピューティング・モデルです。パブリック・クラウドは「マルチテナント」式で、お客様はオンデマンドで提供されるハードウェア、アプリケーション、開発プラットフォームなどのコンピューティングリソースを共有します。リソースはWebブラウザを介してアクセス可能で、高いコンピューティング能力とストレージ機能を持つサードパーティのクラウド・プロバイダーによって管理されます。

パブリック・クラウド・サービスの利点は、拡張性が高いため、ユーザー数や機能の増加にも対応できることです。例えば、クラウドベースのビデオ会議プラットフォーム事業では、利用する企業が増えるたびに、リアルタイムのビデオストリーミングやファイル共有サービスを提供するためにクラウド・ライセンスを拡張する必要があるかもしれません。

プライベート・クラウド

パブリック・クラウドとは異なり、プライベート・クラウド導入は通常、自社で構築され、自社のファイアウォール内に企業データが保存されます。すべてのリソースは、1つの企業にのみ提供されます。これは、機密データを管理している企業や、複雑な規制に対処しなければならない企業にとって魅力的なオプションです。しかし、プライベート・クラウドにはいくつかの制限があります。その中でも重要なのが、パブリック・クラウド・プロバイダーと同じ規模でプライベート・クラウドを拡張できる企業がほぼ存在しないことです。

とはいえ、プライベート・クラウドの導入はクラウドコンピューティングの出発点として人気があります。その後、多くの企業がハイブリッドまたはパブリック・クラウド・モデルへと移行します。

ハイブリッド・クラウド

現在クラウドを使用している多くの企業は、ハイブリッド・モデルを使用しています。このモデルでは、一部のデータやサービスがパブリック・クラウドに保存され、機密データやプロジェクトがプライベート・クラウドに保存されます。また、一部のデータやサービスはクラウド間で共有されます。これにより、企業はパブリック・クラウド導入の拡張性と、プライベート環境の制御性を兼ね備えることができます。

金融機関、医療機関、公共部門の企業、および機密データを管理するその他の組織は、独自のペースでイノベーションを続けるために、ハイブリッドモデルを利用する傾向にあります。

マルチクラウド

名前からも分かるように、マルチクラウドの導入を選択する企業は、異なるプロバイダーが提供する複数のクラウドサービスを利用します。ベンダーを1社に限定したくないという理由でこのオプションを選択する企業もあります。また、業務ニーズに適したアプリケーション群を異なるベンダーから選びたいという企業もあります。

マルチクラウド導入により、一定レベルの冗長性が確保できます。たとえば、一つのクラウドベンダーで問題が発生しても、その影響は企業のIT機能の一部にとどまります。

Types of Cloud Computing Deployment

クラウドコンピューティングのメリット

クラウドコンピューティングは、企業の長期的な成功につながる数多くのメリットを提供します。より柔軟なコスト構造から従業員の生産性の向上まで、クラウドシステムは、ビジネス運用のほぼすべての側面でパフォーマンスを向上させます。

コスト

パブリック・クラウドコンピューティングを利用することで、企業はオンプレミスのハードウェアやソフトウェアの購入、維持、アップグレードにかかる費用を削減できます。また、これらの作業を担当するスタッフの人件費や時間も節約できます。クラウドコンピューティングは、物理的なITインフラストラクチャのコストなどの資本支出を、使用した分だけを支払う営業経費(通常はサブスクリプション)に変えます。これにより、コストがより予測可能になり、予算を他の重要な事業に充てることができます。

もちろん、企業は、リソースが過剰にプロビジョニングされたり、アイドル状態になったり、孤立したりしないよう気を配る必要があります。

俊敏性

クラウドコンピューティングにより、企業は数分でさまざまな強力なアプリケーションやサービスを購入して導入できます。このような俊敏性により、かつては成長企業が手に入れるのは難しかった強力なコンピューティング能力や専門知識へのアクセスが提供され、迅速なイノベーションと競合優位性の獲得が可能になります。

ユーザーは、ウェアラブルデバイス用のSaaSオペレーティング・システムや、機械学習やAIアルゴリズムをサポートする全社的なデータレイクなど、さまざまなサービスを展開するために必要なストレージや分析エンジンを迅速に設定できます。

拡張性

クラウドコンピューティングにより、あらゆる規模の企業が迅速にサービスを構築し、顧客の需要に合わせて拡張できます。企業は、提供するサービスの変化や需要の増加、新しい市場への参入などで、より多くのストレージや高いコンピューティング能力、または新しい機能が必要になった場合は、その分にのみ追加の必要を支払います。例えば、海外市場への進出を望む物流業者は、新しいクラウド・ライセンスとストレージ機能に投資するだけでよく、独自の新しいITインフラを構築する必要はありません。

パフォーマンス

クラウドコンピューティングでは、ユーザーは必要に応じてサービスプロバイダーの強力なコンピューティング能力を利用することができます。クラウドサービスは、企業のパフォーマンス要件に動的に適応できるため、需要の急増時にはサーバーパワーを自動的に割り当て、需要が落ち着いたらパワーを削減できます。

例えば、オンライン小売業者がホリデーシーズンの販売をスタートさせるために商品やサービスを値引きするサイバーマンデーを例に考えてみましょう。コンピューティング・パワーを追加しなければ、この24時間、eコマースサイトはトラフィックの急増に耐えられない可能性があります。

スピード

クラウドコンピューティング・サービスは、オンプレミス・ソリューションと比較して、セットアップや導入が容易です。実際、リソースへのアクセスは数回のクリックで完了します。

新しいアプリケーションの導入や、新しい機能の追加など、新製品を市場に投入する際の期間を短出できることもクラウドの競争優位性の1つです。

信頼性

クラウドコンピューティング・サービスは、優れた信頼性と可用性を提供します。ベンダーは通常、ビジネス継続性と災害復旧を確保するために顧客データをミラーリングしますクラウドソフトウェアは、最適なネットワーク・パフォーマンスを実現するように設計されています。そのため、ベンダーは一般的に、社内で構築される同等のシステムよりも優れたアプリケーション可用性を提供します。電子メールや企業コラボレーション・プラットフォームなどの重要なサービスの場合、企業は戦略的な取り組みに集中できるよう、管理をクラウドプロバイダーに委託する傾向があります。

生産性

クラウドコンピューティング・システムは、企業がデータサイロを排除し、チーム間のコラボレーションを改善するのに役立ちます。例えば、財務部門と人事部門が緊密に連携して従業員の業績や給与を管理している企業では、クラウドベースのERPシステムとクラウド人事ソフトウェアを統合することで、部門間のデータ共有を強化できます。

また、リモートワークやハイブリッド式のワークモデルを採用する企業が増えるにつれ、データへのアクセスもより重要性を増しています。

セキュリティ

データセキュリティ、バックアップ、災害復旧、データ損失防止の必要性は、企業でますます高まっています。しかし、多くの企業では、エンドツーエンドのデータ保護に必要な専門知識やリソースが不足しています。クラウドベースのプロバイダーは、特に資金に限りがある成長中の企業では到底手が出ないレベルのセキュリティを提供します。

サステナビリティ

通勤者がそれぞれ自動車で通勤するよりも電車やバスを利用した方が環境に優しいのと同様、クラウドコンピューティングは、各企業がすべてを自社で構築する場合と比較して、必要な機器の量を削減します。これにより、エネルギー消費量と二酸化炭素排出量の削減というメリットが得られます。

実際、市場調査会社IDCによると、クラウドコンピューティングは2024年までに10億メートル・トンの二酸化炭素排出量を大気中から削減するのに役立つ可能性があるとのことです。

クラウドコンピューティングのデメリット

クラウドには多くの利点がありますが、企業はいくつかのデメリットについても考慮する必要があります。一般的に、これらは新しいコスト構造や、データセキュリティやコンプライアンスに適したクラウド導入を選択しないことによるリスクに関連しています。

時間の経過に伴うコスト: クラウドコンピューティングの初期費用は、オンプレミスのITインフラやシステムを一括購入するよりも大幅に低くなりますが、クラウドサービスは減価償却が無いため、3~5年間のスパンで見ると必ずしも低コストだとは限りません。そのため、長期的なソフトウェア要件に対してオンプレミスのソリューションを選択し、新しい製品開発とイノベーションをサポートするためのクラウドベースのアプローチと組み合わせる企業もあります。

競争優位性の低下: どの企業でも利用できる同じアプリケーションを使用することで、競争優位性を放棄することになると考えるリーダーもいます。このような場合、多くの企業は、生産性、人事、会計ソフトウェアなどのコア業務アプリケーションにはクラウドサービスを利用し、一方でビジネスに特化した「独自のテクノロジー」の開発にも力を注いでいます。例えば、オンライン小売業者のためのパーソナライゼーション点エンジンや、配送会社向けのGPSベースのルーティング・システムなどが挙げられます。

データ管理: クラウドは十分に確立されていますが、依然として機密データを自社で管理することを好む企業も存在します。その主な理由は、セキュリティ、コンプライアンス、管理に関する懸念です。競合他社とクラウドプラットフォームを共有したくないと考える企業もあれば、共有を規制当局が許可していない場合もあります。

移行の難しさ: スタートアップ企業であれば、最初からすべてのシステムをクラウドで構築し運用できますが、老舗企業は、クラウドプラットフォームに移行する前に、長年にわたって構築してきた複雑なITシステムやインフラの網を解きほぐす必要があります。クラウドへの移行には、アプリケーションの書き換えや、適切な専門知識を持つスタッフの確保など、さまざまな課題が伴います。当初から明確な計画を立てておかないと、クラウドへの移行は複雑化し、時間と費用がかさむことになります。

クラウドプロバイダーの変更(データをあるクラウドから別のクラウドに移行すること)は、必ずしも容易ではありません。サービスを更新しないことを決めた場合、データがどのように提供されるのかを必ず理解しておきましょう。

一般的なクラウドの例

クラウドコンピューティングは、現代の人々が仕事や娯楽で使用する多くのサービスの背後にあるテクノロジーです。GoogleやAppleなどの企業が提供するマルチサービス・プラットフォームでは、ユーザーはシングルサインオンを使用して、さまざまなデバイスから音楽、写真、動画、クラウドストレージにアクセスできます。

もう一つの一般的な利用例は、NetflixやSpotifyに代表されるコンテンツのストリーミングです。これらのクラウドプラットフォームでは、顧客はあらゆるデバイスで膨大な数の動画、音楽、ポッドキャスト、その他のメディアにアクセスできます。さらに、顧客データは一元的に収集・保存されるため、最新かつ最も完全な顧客プロファイルに基づいて、新しい映画や音楽の推奨アルゴリズムが作成されます。

ビジネス運用に関しては、「as a service」として提供される人事、生産性、財務アプリケーションと並んで最も頻繁に使用されるクラウド・アプリケーションがクラウドERPです。般的にハイブリッドクラウド導入の一部として使用されるクラウドベースのERPシステムは、財務および会計の主要機能と、特定の部門や業界に合わせて調整されたモジュールを提供します。ハードウェアのセットアップが不要なため、迅速に立ち上げることができます。

クラウドサービス・モデルの種類

さまざまな導入形態に加え、クラウドコンピューティングは異なるサービスモデルを通じて提供されています。企業が選択するモデルは、コンピューティング、スケーラビリティ、セキュリティの要件によって異なります。

Infrastructure-as-a-service (IaaS)

ユーザーはクラウド環境内のサーバー、ストレージ、ネットワーク・インフラストラクチャをレンタルします。IaaSモデルは、独自のアプリケーションを構築し、自社でほぼすべてを管理したい企業にとって魅力的なオプションです。IaaSは、コンピューティングパワーを単にユーティリティとして購入したい企業や、エンドユーザーのアクセスやデバイス、仮想マシン、アプリケーション自体の管理を行う技術スキルやスタッフを社内に抱える企業に広く採用されています。

ソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)

SaaSは、クラウドコンピューティングの最も一般的な形態です。IaaSやPaaSとは異なり、エンドユーザーはSaaSソリューションの基盤にあるハードウェアやオペレーティングシステムを意識する必要はありません。ユーザーはインターネットを介して必要なアプリケーションにアクセスし、必要に応じてライセンス料を支払い、従業員のアクセス権限を決定します。

消費者向けのクラウドサービスのほとんどは、SaaSのデリバリーモデルを基盤としています。また、企業でも、スケーラビリティと柔軟性のメリットを得るため、そして望ましいサブスクリプション収益を得るため、自社のアプリケーションをSaaS環境で稼働させるケースが増えています。

プラットフォーム・アズ・ア・サービス(PaaS)

PaaSモデルでは、自社のストレージおよびネットワークインフラ上にクラウドベースのアプリケーションを構築するために必要なソフトウェアやオペレーティングシステムを、クラウドサービス・プロバイダーが提供します。ソフトウェアはデータベース管理ツールからミドルウェアまで多岐にわたり、開発者はクラウドベースのサービスを構築・管理するための堅牢な環境を利用できます。また、ネットワーク・セキュリティを確保するためにPaaSクラウドシステムを利用する企業もあります。

サーバーレス

「サーバーレス」システムと呼ばれるのは、サーバーレス・プラットフォームの下にあるITインフラストラクチャがどのように管理されているか、開発者が確認できないためです。企業は、新しいアプリケーションを構築する必要があるものの、クラウドベースのサーバー(仮想または物理)や関連ITインフラストラクチャを自社で管理するための時間、予算、または必要性がない場合に、このアプローチを選択する傾向があります。

クラウド・セキュリティ

オンライン・ビジネスやクラウドの利用が増加するにつれ、サイバーセキュリティへの懸念も高まっています。データのセキュリティやコンプライアンスの責任を外部のベンダーに委ねることに懸念を覚える企業もありますが、実際には、クラウドプロバイダーの多くは、個々の企業よりも機密データや知的財産の保護に適した体制を整えています。

クラウドコンピューティングの安全性

クラウドコンピューティングの大手ベンダーは、長年にわたるITセキュリティの経験を活かし、クラス最高の保護で顧客のデータを管理しています。このレベルの保護を自社で開発するのはかなり難しいでしょう。また、近年、データを保護し攻撃をブロックするクラウドセキュリティ・ツールが数多く市場に登場しています。

これらのテクノロジーは、オンプレミスとクラウドシステム間、ハイブリッド導入モデル内、あるいはマルチクラウド・スタック内のクラウド・アプリケーション間で移動するデータを追跡するように設計されています。ITセキュリティ対策を補完するために、企業は従業員がクラウドコンピューティングのセキュリティ上の影響を理解できるよう教育し、必要な保護メカニズムを日常業務に組み込む必要があります。

クラウドコンピューティングのトレンド

クラウドコンピューティングは新しいものではありませんが、多くの企業はまだクラウドの導入や革新の初期段階にあります。その他、どのITインフラやサービスをクラウドに移行できるかを検討している企業も多くあり、このような企業はさまざまな導入モデルのメリットとデメリットを比較検討する必要があります。

このような企業における意思決定に役立つトレンドを以下にご紹介します。

ハイブリッド・クラウドとマルチクラウドが人気: パブリック・クラウドとプライベート・クラウドのどちらが適切かという問いに明確な答えがあるとは限りません。特に消費者向けサービスでは、パブリッククラウド環境が依然として人気ですが、企業は今後、複数のソリューションを組み合わせる傾向が強まると考えられます。

ハイブリッドおよびマルチクラウド環境の人気はますます高まり、企業はビジネスニーズに合わせて最適なソリューションの組み合わせを選択できるようになるでしょう。このトレンドにより、クラウドベンダーが提携し、それぞれの機能を1つの柔軟なクラウドコンピューティング・サービスに統合した統合サービスを提供するようになると考えられます。

PaaSの増加: クラウドコンピューティングのユースケースではSaaSが最も高い割合を占めていますが、クラウド・プラットフォーム・ソリューションも急速に成長しています。パンデミックがもたらしたリモートワークへのシフトにより、企業は従業員が場所を問わず高性能なアプリケーションや開発環境にアクセスできる新しい方法を見つける必要に迫られています。PaaSのクラウドコンピューティング・サービスは、このニーズに応えます。

AIがクラウド機能を強化: あらゆる業界の企業が、データからより多くの価値を引き出し、より迅速に適切なビジネス上の意思決定を行うために、AIや機械学習を試験的に導入しています。多くの企業は、アルゴリズムを独自に開発・テストするのではなく、クラウドベースのAI/ML機能を利用することになるでしょう。クラウドコンピューティング・ベンダーは次々と洗練されたサービスを開発しており、AI/ML導入は加速すると考えられます。

クラウドがデジタル化のプラットフォームに: ビジネスモデルを刷新するためのデジタル化プロジェクトの主要な環境として、クラウドが主流となりつつあります。クラウドコンピューティングを活用してサイロを打破し、チーム間のデータフローを改善し、プロセスを迅速化することで、企業は組織の足かせとなっていた構造的および管理上の障害の多くを取り除くことができます。また、顧客や市場の期待に応えるために、クラウドベースの開発環境を活用して新しいサービスを迅速に構築し、テストすることも可能です。

クラウドコンピューティングのケーススタディ

クラウドコンピューティングは、あらゆる業界で成長を遂げています。ERPやCRMなど、特定の業務ニーズに対応するためにクラウドコンピューティングを利用する組織がある一方で、業務全体をより効率的に、また拡張性のあるものにするために統合プラットフォームを採用する組織もあります。

たとえば、顧客ロイヤルティの向上を目指すファッションブランドや小売業者の例を考えてみましょう。財務、会計、注文管理、在庫管理システムを統合したクラウドERPプラットフォームは、データとサプライチェーンに関する包括的な視点を提供することで、企業がパーソナライズされたシンプルなカスタマー・エクスペリエンスを提供できるようにします。

一方、顧客データの収集が顧客獲得や正確な販売提案に不可欠なB2B販売部門では、クラウドベースのCRMシステムが注目を集めています。クラウドベースのCRMシステムは、顧客データを統合し、シンプルなダッシュボード形式で表示します。これにより、営業チームとそのマネージャーは、適切なインサイトを得てパイプラインの効率を最大限に高めることができます。

クラウドは非営利セクターにおいても、業務効率の向上と資金調達活動に役立っています。財務および予測をクラウド上でホスティングすることにより、慈善団体や公共部門の組織は、財務報告、月次決算プロセス、支払い承認に費やす時間を削減できます。その結果、より多くの時間とエネルギーを、人道的で地域社会に重点を置いたプロジェクトのための資金調達に充てることができます。

クラウドコンピューティングの歴史

クラウドコンピューティングの起源は1960年代にさかのぼりますが、この用語が使われ始めたのはわずか20年ほど前のことです。以前は「コンピューティング・アズ・ア・サービス」と呼ばれていましたが、企業が初めてメインフレームをコンピューティング・ビューローから時間単位でレンタルし始めたときに、このサービスが誕生しました。これは、パーソナル・コンピューティングが手頃な価格になる前のことでした。

やがて、コンピューティング・アズ・ア・サービスはPCに取って代わられました。これにより、企業がデジタル・インフラストラクチャによって生成されるすべてのデータを保存し始めたため、企業データセンターが登場しました。しかし企業は、業務効率化のため、コンピューティングパワーへのアクセス料金の支払を継続していました。グリッド・コンピューティング(複数の接続されたコンピューターを使用して特定のタスクを実行する)は、21世紀に入るまで人気がありました。

インターネットの登場とそれに続く急速なeコーマースの成長により、クラウドコンピューティングは現在の形を取り始めました。1990年代半ばのB2Bアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)の概念は、今日のビジネス向けSaaSプロバイダーの先駆けとなりました。その後間もなく、企業は膨大な量のデータを収集・管理するようになり、消費者は日常生活で複数の接続デバイスを使用するようになりました。

現在、クラウドコンピューティング市場は急速に成長しており、あらゆる規模の企業で採用されています。Gartnerは、2024年までに従来のIT支出の45%以上(新しいタブで開きます)がクラウドに移行すると予測しています。

NetSuiteとクラウドコンピューティング

クラウドコンピューティングの最大の利点は、ユーザーがハードウェアやソフトウェアの管理ではなく、ビジネスに集中できるようになることです。ITの構築、更新、監視の負担がクラウドベンダーに移行することで、企業は予算の範囲内でコンピューティングパワーを活用し、新規戦略に注力しながら初期コストと管理作業を削減することができます。NetSuiteのクラウドソリューションにより、企業はブラウザとインターネット接続だけでITを運用できるようになります。NetSuiteは、ERPeコマースシステムなどのアプリケーション、そしてそれらを稼働させるオペレーティング・システムを管理し、企業がクラウドへの投資を最大限に活用できるようにします。

クラウドコンピューティングにより、成長企業はすべてを自社で管理・保管するのにかかるコストと時間を削減しながら、迅速な構築、拡張、イノベーションを推し進めることができます。ITインフラストラクチャとサービスをクラウドプロバイダーからレンタルすることで、企業は資本支出を大幅に削減し、生産性の向上、市場投入までの時間の短縮、セキュリティの強化というメリットを得ることができます。クラウドへの移行には、クラウドの種類や導入モデルなど、しっかりとした計画と意思決定が必要です。また、すべての企業が同じスピードでクラウドに移行できるわけではありません。

しかし、クラウドサービスの幅が広がるにつれて、今後もより多くの企業がクラウドに移行すると予想されます。

No.1クラウドERP
ソフトウェア

お問い合わせ(新しいタブで開きます)

クラウドコンピューティングに関するよくある質問

Q: クラウドコンピューティングとは何か、例を挙げて説明してください。

A: クラウドコンピューティングとは、インターネット接続を介して、コンピューティング、ストレージ、または業務アプリケーションをオンデマンドで提供することです。クラウドコンピューティングは、あらゆる業界のあらゆる組織が、あらゆる部門で利用しています。たとえば、財務チームは、ビジネス・パフォーマンスを追跡・監視するためにERPクラウドシステムを利用しています。人事チームは、給与やパフォーマンス・レビューなど、従業員エクスペリエンス全体を管理するためにクラウド・プラットフォームを活用しています。マーケティング部門は、顧客との関係を深め、よりパーソナライズされたコミュニケーションを提供するために、クラウド上で顧客関係管理(CRM)および分析ソフトウェアを利用しています。

Q: 3つのクラウド導入モデルについて教えてください。

A: 企業は、クラウド・アプリケーションをパブリック・クラウド、プライベート・クラウド、またはその両方に導入できます。パブリック・クラウドはより拡張性に優れていますが、ユーザーはテクノロジー・インフラストラクチャを他の顧客と共有する必要があります。プライベート・クラウドは通常、企業のデータを社内ファイアウォールの内側に保管します。すべてのリソースは1つの企業専用です。これにより、より高い管理性が実現しますが、パブリック・クラウドの機能と同等の能力を発揮するには、相当な処理能力が必要となります。

パブリック・クラウドとプライベート・クラウドの両方のサービスを組み合わせたものがハイブリッド・クラウドで、異なるビジネス・ニーズに合わせて両方の長所を活用できます。

Q: クラウドコンピューティングの4つの形態について教えてください。

A: クラウドコンピューティングの最も一般的な形態は、SaaS(Software-as-a-Service)、PaaS(Platform-as-a-Service)、IaaS(Infrastructure-as-a-Service)、サーバーレスクラウドの4つです。SaaSでは、ユーザーは特定のビジネスソフトウェアへのアクセスに対して料金を支払いますが、その基盤となるインフラストラクチャにはアクセスできません。PaaSでは、ユーザーは独自のサービスを構築または導入するための開発プラットフォームにアクセスします。IaaSは、オンプレミスのITインフラストラクチャに代わるものです。ユーザーは、クラウド内のサーバー、ストレージ、ITインフラストラクチャをレンタルします。最後に、サーバーレスはPaaSの一形態であり、ユーザーはレンタルしているクラウドプラットフォームの基盤にあるITインフラストラクチャを確認できません。

Q: クラウドコンピューティングとは何ですか?また、どのように機能するのですか?

A: クラウドコンピューティングは、インターネットを介して強力なコンピューティングやストレージ機能を利用できるようにします。アパートの賃借人が家賃を支払っても、そのアパートを所有していないのと同じように、企業は必要なクラウドにアクセスするために料金を(通常はサブスクリプション・ベースで)支払います。

企業の成長を加速させる、財務、業務、コマースを統合したNetSuite独自のソリューションについてご紹介します。

Q: クラウド・コンピューティングとオンプレミスの違いは何ですか?

A: 従来のオンプレミス型ITシステムとは異なり、クラウドはどこにでも存在します。

企業は、ソリューションを提供するベンダーやサーバーの設置場所に関係なく、さまざまなデバイスを使用して、どこからでもクラウドベースのアプリケーションやデータにアクセスできます。

ソフトウェアとサービスはベンダーによって配信され、サービスとして企業に提供されます。また、オンプレミス・システムと同等、またはそれ以上の機能を提供しながら、ライセンス料の前払いやハードウェアの保守の必要性といったデメリットがほとんどありません。

クラウドは、点在するチームメンバーを管理する場合に特に便利です。

例えば、エネルギー会社のフィールドエンジニアは常に移動していますが、停電を解決するために送電網データにリアルタイムでアクセスする必要があります。また、サプライチェーン事業では、管理者はスマートフォンから供給、需給、在庫を一元的に確認できる必要があります。

クラウドコンピューティングは、物理的および運用上の障壁を取り除き、より統合された効率的な方法を企業に提供します。