エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)は、もともと製造業で使われていた資材所要量計画(MRP)システムを起源としていますが、そこから大きく進化してきました。現在では、業種や規模を問わず、あらゆる企業がビジネスを運営するためにERPソフトウェアを活用しています。財務・会計、在庫管理、プロフェッショナル・サービス・オートメーションに至るまで、ERPは中核となる業務機能をつなぎ、重複作業や手作業をなくし、全社共通のデータ基盤(単一のデータソース)を提供することで、業務効率と部門間の連携を向上させます。
既存システムのアップグレードを検討されている方も、初めてERPソフトウェアの導入を考えている方も、この記事でご紹介する10のポイントを参考にすることで、製品選定プロセスがよりシンプルになり、導入成功の可能性を高めることができます。
適切なERPを選ぶには
自社に合ったERPを選定することは、決して軽視できない重要なステップです。これは、ビジネスを次の成長段階へと導くための大事なプロセスとなります。ERPの選定の際には、自社の業務内容やデータ、ビジネスプロセスを徹底的に見直す必要があります。ERPソリューションは幅広い機能を持つため、現在のビジネスオペレーションを支えると同時に、将来的な企業成長にも対応できるよう、慎重な検討と万全な準備が必要です。また、ERP選定プロセスの早い段階から、部門を超えて関係者を巻き込むことで、システム稼働後の成功に向けた社内の協力体制を得やすくなります。
主なポイント
- ERPソフトウェアは、主要な業務プロセスの効率化、部門間の連携強化、ビジネスデータの正確性と適時性の向上を通じて、企業に大きなメリットをもたらします。
- ERPの選定には、綿密な計画と、組織全体の関係者からの意見や関与が不可欠です。
- 中小企業はERPシステムを活用することで、業務効率を高め、サービス品質を向上させ、ビジネスの成長を実現しています。
ERP選定の基本
ERPシステムの本質は、財務・会計、営業・カスタマーサービス、受注処理、在庫管理、倉庫業務、製造、サービス提供など、数多くの重要な業務機能を一元的に管理する統合アプリケーションスイートである点にあります。ERP導入では、通常、財務・会計領域から着手するケースが多いものの、実際の導入プロジェクトでは、企業にとって最も課題の大きい業務領域から開始することもあります。ERPがこれほど重要視される理由は、その機能範囲の広さに加え、組織全体のデータを集約し、企業にとっての公式な記録システムとして機能する点にあります。そのため、自社のニーズに適したERPシステムを選ぶことが極めて重要になります。
ERPシステムの最大の価値は、企業がリソースを計画的に配分し、時間のかかる手作業のプロセスを自動化し、社内のコラボレーションやコミュニケーションを改善できる点にあります。また、ERPソフトウェアは、ビジネス全体で信頼できる単一のデータソースを提供することで、より的確な意思決定を可能にし、業務パフォーマンスの向上を支援します。
自社に適したERPを選ぶための10のヒント
目的に合ったERPシステムを選定するには、一定の時間と労力がかかります。そのため、事前に計画を立てることが重要です。以下に示す10のヒントは、ERP選定におけるすべてを網羅するものではありませんが、正しい方向へ進むための出発点となります。これらのヒントを参考にし、必要な時間をかけて十分に検討を行うことで、多くの企業は自社のニーズに最も適したERPシステムを選定できるようになります。
ヒント1: 自社に必要な機能や特長を明確にする
ERP導入を成功させるためには、ERPシステムに求める機能や特長を早い段階で明確にすることが極めて重要です。新たにERPを導入する場合は、全社的な業務の見直しとニーズの把握を行い、新しいERPで対応すべき業務プロセスやワークフロー、引き続き独立して運用する業務、そしてこれらの中でERPと連携する業務を整理する必要があります。既存のERPをアップグレードする場合でも、基本的な機能は引き続き利用できるケースが多いものの、初回導入時から業務要件がどのように変化したかを把握するため、改めて詳細な見直しが求められます。
いずれの場合も、要件の分析には「自社にとっての成功とは何か」という具体的な目標設定が不可欠です。どのような課題を解決したいのか、ERPを導入することでどの目標を達成したいのか、そして成功をどのように評価するのかを明確にしましょう。こうした評価を行う際には、外部の支援を活用すると効果的な場合もあります。多くの主要なERP製品には、こうした評価に豊富な経験を持つ専任コンサルタント、システムインテグレーター、付加価値再販業者(VAR)が存在します。分析が完了したら、候補となるプロバイダーと分析結果を共有し、適合性を判断します。多くのベンダーは特定の業界に特化しているため、初期選定の段階で候補から外れるケースも少なくありません。
業種や提供する商品・サービスに関わらず、ほとんどの企業が複数の「モジュール」と呼ばれるコンポーネントで構成された基本的なERP機能を利用します。各モジュールは、複数の業務プロセスを支援できる機能セットで構成されており、実際の用途に合わせてカスタマイズすることが可能です。財務・会計向けのERPモジュールは必ず含まれており、多くのERPベンダーはさらに調達、製造、在庫管理、注文管理、倉庫管理、サプライチェーン管理、プロジェクト管理(プロフェッショナルサービス向け)、顧客関係管理(CRM)、人事管理(HR)などのモジュールを提供しています。さらに、eコマースやマーケティング・オートメーションなど、追加のモジュールを提供するベンダーもあります。要件分析によって、初期導入時に必要なモジュールが決まります。その後、ビジネスの成長やニーズの変化に合わせて、他のモジュールを追加することも可能です。
ヒント2: 経営層およびチームの支持を確保する
ERPの導入は組織全体に影響を及ぼすため、経営層の理解とリーダーシップを得ることが成功のカギとなります。まず、事前に整理した業務要件のレビューを活用し、ERP導入によって得られる価値を経営層に示して、導入への支持を獲得しましょう。プロジェクトを推進するエグゼクティブ・スポンサーを選任することも有効です。CEOやCOO、CFOなどの経営幹部が適任です。
組織変革には困難が伴うため、ERP導入は一種のチェンジマネジメントとも言えます。そのため、エグゼクティブ・スポンサーの重要な役割は、プロジェクトに対する社内の理解・協力を得ることです。エグゼクティブ・スポンサーは、プロジェクトの重要な推進役として、ERP導入のメリットを組織全体に伝え、成功に責任を持ちます。また、障害となる課題を解消したり、意思決定を迅速化したり、時には複数の優先課題の中で難しい判断を下す役割も担います。
ヒント3: 正式なRFP(提案依頼書)を作成する
ERPは組織の中核を担う重要なプロジェクトであるため、時間をかけて正式な文書を作成することが重要です。正式なRFPを作成するプロセスでは、ERPシステムに何を求めているのかを、より深いレベルで整理し、その要件を明確かつ簡潔に文書化します。また、正式なRFPにより、すべてのベンダーにプロジェクトの範囲を正しく伝えることができるため、提案を公平に比較しやすくなります。
ヒント4: 利用中の他のソフトウェアと連携できるかを確認する
特定の業務プロセスについて既存のアプリケーションを引き続き使用する予定がある場合、それらと容易に連携できるERPソリューションを選ぶことが重要です。多くの主要なERPシステムには、ECサイト、POSシステム、オンライン・マーケットプレイス、ベンダー管理、プロジェクト管理、外部プロバイダーやパートナー・エコシステムなど、一般的な業務アプリケーションとの認定済み連携機能があらかじめ用意されています。こうした標準搭載の連携機能があれば、業務プロセスを大きく変更せずにERPを導入することが可能になります。また、アプリケーションをERPソリューションと連携させることで、システム間での手作業によるデータ再入力を不要にすることもできます。
新しいERPとアプリケーションを迅速かつ容易に接続するためには、RESTやSOAP APIなど、業界標準のインターフェースを採用しているERPシステムを選ぶことが重要です。業界標準のコネクタは高いセキュリティを備え、開発者にも広く理解されているため、新システムの導入をスムーズに進めることができます。
さらに、CSVファイルのインポートおよびエクスポートに対応しているかも確認すべきポイントです。MicrosoftのODBC SQLベースのAPIや、JDBC SQL APIをサポートしていれば、新しいERPがSQLデータベースとネイティブに連携できるようになります。
ヒント5: ERPシステムが自社の業務に適合しているかどうかを検討する
「業務適合性」とは、簡単に言えば、ERPシステムが自社のビジネス課題をどれだけ解決できるか、という観点です。選択するERPが自社にフィットしているかを確認するためには、既存の業務プロセスとERPがどのように連携するかをきちんと理解する必要があります。現状の業務に合うかどうかだけでなく、将来の事業展開も見越して考えることがポイントです。たとえば、海外展開など、将来のビジネスシナリオを想定することで、検討中のERPソリューションが短期的にも長期的にも自社に適しているかを判断できるようになります。
また、標準型のERPで十分なのか、それともカスタマイズしやすいERPが必要なのかを見極めることも大切です。標準型のシステムでは、あらかじめ定義された多くのプロセスに自社の業務を合わせる必要がありますが、カスタマイズしやすいシステムであれば、自社の業務の進め方に合わせてシステムを適応させることができます。
この「業務適合性」を判断するためには、ERP導入によって影響を受ける部門や現場の関係者全員から意見を集めることが欠かせません。これにより、可能な限り少ないカスタマイズで多様な要件を満たせるソリューションを選択することができます。また、競合他社がどのようなシステムを利用しているかを調べることも有効です。ERPソリューションの中には、特定の業界で最適に機能するよう設計されているものもあります。こうしたシステムを把握することで、候補となるベンダーを絞り込み、選定プロセスを効率化できます。
以下のような問いに答えることで、自社に本当に必要な機能や条件を明確にできます。
- 現在使っているシステムは、どこが課題となっているか?
- 現行システムの強みや良い点は何か?
- 新しいERPでどれだけ手作業やアナログ業務を自動化できそうか?
- レポーティングや可視性の向上が必要な領域はどこか?
- 自社やパートナー企業のどのシステムと、新ERPを連携させる必要があるか?
これらの問いに答えることで、新しいERPに求められる要件をリスト化できます。「業務適合性」はERP成功の最重要ポイントの一つなので、まずこれらの質問に答え、要件を明確にしてから本格的なERPの比較・評価を始めましょう。
ヒント6: 候補となるERPベンダーの評判を評価する
将来のビジネスパートナーとして信頼でき、優れた製品やサービス、充実したサポートを提供してくれるベンダーかどうかを確認することは非常に重要です。ベンダーの評判を確かめるのは少し時間がかかる場合もありますが、比較的簡単に行うことができます。最初に、そのベンダーが自社の業界でどれだけの経験や実績があるかを調べましょう。業界ごとのアプローチや、経験豊富な専門チーム、または実績のある導入パートナーがいるかどうかも重要なポイントです。
GartnerやForresterなどの業界アナリスト企業は、毎年または半年ごとにERPベンダーのランキングや市場調査を発表しています。これらのレポートでは候補ベンダーの強みや弱みが分かります。さらに、IT業界の専門メディアでは、最新のベンダー情報やニュースを入手できます。ベンダーが上場企業の場合は、財務実績に関するアナリストレポートや、経済・ビジネス系のメディア記事を参考にして、短期・長期の見通しも確認しましょう。
最新のレビューを確認するには、G2、Capterra、Gartner Peer Insights、Software Adviceなどの企業向けソフトウェア評価サイトを活用すると良いでしょう。これらのサイトでは、顧客評価やコメントが多数掲載されています。また、LinkedInのユーザーグループなどで実際のユーザーに質問するのも有効な方法です。
候補となるERPが2~3社まで絞り込めたら、客観的な情報を得るためにベンダーのユーザー会に参加してみるのがおすすめです。参加が可能かどうか、ベンダーに確認してみましょう。ユーザー会では、そのベンダーの製品やサービスに精通したさまざまな顧客と出会える可能性が高く、新製品の発表やデモの合間に、率直な意見を聞けることも少なくありません。同時に、サポート体制について確認する良い機会でもあります。たとえば、専任チームやアカウントマネージャーがいるのか、サポートスタッフの平均的な勤続年数や経験の深さはどの程度か、導入事例として紹介できる顧客がいるかなどを確認しましょう。
ベンダーのWebサイトも、その会社の運営方針や価値観を知る目安になります。自社と同じ業界の導入事例が多く掲載されているか、よくある課題や疑問への回答を自分で探せるナレッジページが充実しているかなどをチェックしましょう。こうした情報が多い場合、顧客の成功に力を入れているベンダーと言えるでしょう。ただし、特にテクノロジーベンダーの場合、Webサイトの使い勝手が良くないからといって、必ずしも企業としての質が低いとは限りません。製品開発などを重視し、マーケティングを相対的に優先していないだけというケースもあります。
最後に、候補ベンダー名をGoogleで検索し、評判やクレーム、ネガティブなニュースなども併せて確認しておきましょう。
ヒント7: コストと関連する費用を検討する
ERPソフトウェアのコストは、ベンダー、必要となるモジュールの数、クラウド型かオンプレミス型か、外部業者が導入を担当するかどうか、さらにユーザーライセンスの数や種類など、さまざまな要因によって大きく異なります。
重要なのは、すべての利用者がフルライセンスを必要とするわけではないという点です。ERPベンダーは利用範囲に応じた価格プランを提供しているため、従業員一人ひとりの役割に合わせて、必要なデータや機能へのアクセスを限定することが推奨されます。これは経営層にも当てはまります。たとえば、経費申請や勤怠入力だけを行う従業員の利用料は、請求業務を担当する従業員よりも安くすみます。
ERPシステムの導入形態によっては、初期費用が大きくなる場合があります。これには、ライセンス費用、年間保守費用、コンピューターハードウェア(オンプレミス導入の場合)、データ変換や移行のコスト、カスタム開発、テスト、トレーニング、ベンダーやコンサルタントによる導入支援などが含まれます。継続的なコストを評価する際には、必要なユーザー数やサブスクリプション数、継続的なサポート、将来的に想定される追加機能やカスタマイズ、事業を展開している国の数なども考慮する必要があります。
コストが高いからといって必ずしもシステムが優れているとは限りません。たとえば、高価格帯のERPに、自社に不要な機能まで備わっていても、それを使わなければ投資価値は下がってしまいます。だからこそ、初期の段階でしっかりとニーズ分析を行うことが重要です。
ERPの投資対効果(ROI)を正確に把握するためには、5年から7年程度の期間で費用対効果を評価するのが有効です。
ヒント8: データを整理する
ERP導入における最大の課題の一つが、新しいシステムにどのデータを移行するかを決定することです。たとえば、組織が保有するすべての過去データを移行する必要は、ほとんどの場合ありません。必要性が明確でないデータは移さない、と割り切ることも大切です。無駄なデータ移行を防ぐため、多くの企業では「この日付以降のデータだけを移行する」といったルールを設けています。
クリーンなデータを移行することは非常に重要です。顧客は組織内の複数の部門とやり取りを行うため、同一データの重複が発生しているケースは珍しくありません。また、データは部門や利用しているアプリケーションごとに異なる形式で保存されていることが多く、たとえば発注番号、日付、氏名、住所などの形式が統一されていない場合があります。さらに、誤った情報や、すでに不要となった顧客データが含まれている可能性もあります。
クリーンなデータ移行を実現するためには、組織内に存在するすべてのデータを洗い出し、分類し、どの形式で保存されているかを把握するための綿密な分析が必要です。その目的は、できる限り重複データを排除しつつ、移行対象となるデータを新しいERPシステムの形式に変換することにあります。
データ移行は複雑な作業になるため、多くの企業では「データ移行チーム」を結成し、どのデータを移行するか、どのように変換・移行するか、必要なフォーマットやテンプレートは何なのかを決めています。移行しないデータをどのように扱うかについても、あらかじめ決めておく必要があります。チームには、各事業部門においてデータがどのように利用され、生成されるかを理解しているメンバーを加えると効果的です。
また、現在のデータプライバシーを取り巻く状況の複雑さを踏まえると、規制遵守全体に責任を持ち、できれば意思決定権限を有する担当者をチームに含めることが望ましいといえます。
ヒント9: 導入プロセスを具体的に計画する
ERPソフトウェアは、ビジネスのさまざまな領域に関わる幅広い機能を備えているため、導入プロセスについて慎重に検討することが重要です。ベンダーごとに提供内容は異なり、既存の業務プロセスに柔軟に適応できる高いカスタマイズ性を持つものもあれば、新しいシステムに合わせて業務の進め方を変更する必要があるものもあります。導入初期の段階で、予想される課題やリスクを洗い出しておくことで、導入後に思わぬ問題が発生するのを防ぎ、組織全体で新システムをスムーズに活用できるようになります。
今の時点で分かる質問には早めに答えを出しておきましょう。たとえば、「従業員に再トレーニングが必要か」「実際の導入プロジェクトを誰がリードするか」「チェンジマネジメントをどのように進めるか」、といった点を明確にします。導入の難易度や会社規模によって、プロジェクト期間は数か月から1年以上になることもありますが、適切なプロジェクト管理を行うことで、計画した重要なマイルストーンを見逃さずに進めることができます。
詳細なプロジェクト計画を作成することで、ERP導入をよりスムーズに進めることができます。多くのERP導入計画は6つのフェーズで構成されており、まず「現状把握と計画策定」からスタートします。ERPシステムを選定した後は、以下の流れで進みます。
- 設計: 現在の業務プロセスを分析し、必要なカスタマイズを検討した上で、データ移行方法を決定します。
- 構成: ソフトウェアのセットアップ、トレーニング資料の準備、データのインポートを行います。
- 段階的なテスト: テストを実施し、システムを微調整します。
- 稼働開始: ERPシステムの本稼働を開始します。
- 継続的なサポート: ユーザーがシステムを最大限に活用できるよう支援し、発生する課題に対応する窓口を提供します。
現実的な期待値を設定することも、ERP導入を成功させるうえで重要なポイントです。プロジェクト期間、範囲、コストなどについて過度な期待を持たせた結果、実際の成果が伴わない場合、関係者や取締役会から不要な不信感や反発を招くおそれがあります。
さらに重要な検討事項として、ERPシステムをオンプレミスで導入するのか、クラウドで導入するのかという点があります。クラウドベースのERPソリューションは、社内システムのような大規模な初期投資を必要としないため、コスト面で有利になる場合があります。現在では、多くの企業がクラウドベースのソリューションを採用しています。
ヒント10: 継続的なサポートに必要な要件を評価する
導入後にどの程度のサポートが必要になるかは、さまざまな要因によって異なります。たとえば、事業を展開しているタイムゾーンの数、新しいERPシステムを管理できる認定を受けた社内IT管理者がいるかどうか、また高度なカスタマイズがどの程度必要かといった点が挙げられます。
オンプレミス型ERPを導入する場合、長年にわたり重要な判断基準となってきたのが、組織としてどのレベルのシステム可用性を求めるかという点です。これを把握するため、ERPシステムが数時間でも停止した場合に、生産性の低下、売上への影響、企業の評判への影響といった観点から、ビジネスに生じる潜在的なコストを見積もる必要がありました。その結果が、必要とされるサポートレベルを判断する材料となっていました。しかし、クラウドベースのERPソフトウェアの場合、クラウドサービスプロバイダーが一般的にすべての顧客に対して非常に高い可用性を保証しているため、稼働率はサポートコストの算出において主要な検討事項ではなくなっています。
多くのベンダーは、ブロンズ、シルバー、ゴールドといった段階的なサポートレベルを持つカスタムサポートパッケージを提供しています。基本的なサポートパッケージでは、ブログ、記事、ガイド、eBook、ビデオチュートリアルなどのサポートリソースを集約したナレッジセンターへのアクセスが一般的に含まれます。プレミアムサポートパッケージでは、営業時間内の電話サポートや、技術担当者への優先アクセスが追加されることが多く、このレベルでは、24時間365日のサポートは通常、重大な問題に限定されます。
さらに高度なカスタマーサポートサービスは、よりプロアクティブな対応を特徴とし、ERPシステムを常に最適な状態で稼働させることを目的としています。
多くの企業で利用されているERPの主な機能
ほとんどのERPソリューションには、業務運営に柔軟性と拡張性をもたらす多数のモジュールが用意されていますが、多くの企業で導入されている主要機能は以下の通りです。
- 財務・会計:買掛金や売掛金の管理、総勘定元帳の管理を行います。また、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの財務諸表の作成に加え、請求書、支払受領書、税務関連書類の自動生成(新しいタブで開きます)にも対応します。
- 顧客関係管理(CRM):顧客の活動履歴を追跡し、営業リードを管理しながら、見込み顧客を顧客へと転換します。
- 人事管理:従業員情報を一元管理し、従業員向けセルフサービス機能を提供します。
- 注文管理:受注から出荷・納品に至るまでの注文プロセスを追跡します。
- 在庫管理:SKUレベルで在庫を管理します。
- 生産管理:製造工程や生産計画、サプライチェーン全体の管理をサポートします。
- 調達:商品やサービスの調達を行います。
サービス業では、プロジェクトの進捗管理、経費管理、チームコラボレーションを目的として、プロフェッショナル・サービス・オートメーションのモジュールを併用するケースも多く見られます。
間違ったERPを選択した場合の影響
ERPシステムの選定を誤ると、企業は本来期待していた業務プロセスの効率化を実現できない可能性が高くなります。さらに悪いケースでは、既存の業務プロセスを本来想定されていないシステムに無理やり当てはめようとすることで、運用上の問題が発生することもあります。その結果として、多くの時間や労力をかけてビジネス改革を目指したはずが、期待した効果が得られないという事態を招く可能性があります。
では、「間違ったERPを選ぶ」とはどういうことなのでしょうか?それは、本来の業務プロセスが今よりも円滑に、迅速になり、しかも自動化されるというメリットが得られないERPを導入してしまうことです。このような結果が生じるのは、多くの場合、ソフトウェアがベンダーの説明どおりに機能しない、あるいは提供される機能が企業のビジネス目標の要件と実際には合致していない場合です。
だからこそ、この記事で紹介した10のヒントは、「ERP導入の明確なビジネス目標を定め、目標を具体的かつ体系的に書面で整理し、どのような状態を『成功』と見なすかを定義し、それをどう評価するか」を明確にすることを目的としています。こうした詳細な検討を経ておけば、自社のビジネスに本当に必要な機能や特長を備えたERPを、納得して選ぶことができるようになります。
適切なERPを選ぶなら、NetSuiteを選択
NetSuiteのエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムは、現在の業務パフォーマンスを向上させると同時に、将来の成長を見据える企業にとって理想的なソリューションです。NetSuiteはクラウドネイティブなソリューションとしてゼロから設計されており、変化するビジネス環境に柔軟に対応し、事業の進化に合わせて継続的に支援できる拡張性と柔軟性を備えています。リアルタイムデータや役割ごとに最適化されたダッシュボードにより、経営層から現場担当者まで、迅速かつ的確な意思決定が可能になります。
これらの特長により、コスト削減、業務プロセスの効率化、そして運用の俊敏性向上が実現し、企業はリスクを低減しながら新たな機会を最大限に活用できるようになります。その結果、企業の競争力は大きく高まります。
ERPは多くの業務領域に影響を与えるため、自社に最適なシステムを選ぶプロセスは決して容易ではありません。しかし、正しく選択した企業は、現在のビジネスニーズを満たすだけでなく、将来の成長においても摩擦の少ない運用を支えるシステムを手に入れることができます。本記事でご紹介した10のヒントを活用すれば、企業は単に適切なERPを選定できるだけでなく、自社の組織が実際にどのように機能しているのかを、より深く理解することができます。その過程で、目を背けたくなるような現実に直面することもあるかもしれません。しかし同時に、成長と成功に向けた変革を実現するために必要な、貴重なインサイトを得ることができるでしょう。
ERP選定に関するよくある質問
ERPを選ぶ際の基準は何ですか?
ERPシステムにおける最も重要な判断基準は「柔軟性」です。現在の組織ニーズに適合するだけでなく、将来のビジネス成長を阻害せず、共に拡張できることが求められます。もう一つの重要な基準は「使いやすさ」、つまりさまざまな業務をどれだけ簡単に実行できるかという点です。さらに、ビジネス分析機能、役割別ダッシュボード、カスタムレポート、他社アプリケーションとの連携、簡単な設定、そして充実したトレーニングとサポートも欠かせません。
ERPはどのようなタイプの企業に最も適していますか?
ERPを最初に導入したのは製造業であり、現在も主要な利用企業の一つです。これに続いて、小売業、卸売業、サービス業、ヘルスケア、運輸、通信業界などが挙げられます。初期のERPは大企業向けに設計されていましたが、現在ではスタートアップや中小企業でもERPを活用し、その恩恵を受けています。
ERPシステムはどのように評価すればよいですか?
ERPソリューションの評価には、ビジネスニーズの複雑さに応じて、数週間から数か月かかることがあります。さまざまな部門の関係者全員が参加し、貴社の現状と将来的な要件を丁寧に確認しましょう。その上で、候補となるERPベンダーを、それらの要件に照らして評価します。
中小企業にもERPは必要ですか?
ERPはもともと大企業向けでしたが、現在ではクラウドベースのERPソリューションが登場し、あらゆる規模の企業で導入可能になっています。
ERPの導入によって恩恵を受けられる業界はどこですか?
ほとんどすべての業界において、ERPシステムの導入によるメリットが期待できます。
新しいERPを選ぶ際に何を重視すべきですか?
現在のニーズだけでなく、将来の要件にも対応できる柔軟性を備えたERPを選ぶことが重要です。実績があり評判が良いことに加え、サードパーティのコンサルタントや導入パートナー、付加価値再販業者(VAR)が充実しているかも重視しましょう。
理想的なERPとは?
複数の業務課題を解消し、会社の成長に合わせて拡張できるシステムが「理想的なERP」と言えるでしょう。