世界中のあらゆる形態、あらゆる規模の組織が、今日の課題を解決し、明日の機会に備えるツールとしてソフトウェアを活用しています。アジャイル(俊敏性)というコンセプトへの注目度が高まる中、拡張性も同様に重要なソフトウェア開発設計の観点となります。
拡張性とは、過剰な時間や資金を費やすことなく、その会社がすでに活用しているソフトウェアを基礎として、事業を取り巻く変化に対応するためにシステムを更新できることを意味します。
この記事では、拡張性のあるソフトウェアの主なメリットと、組織の成功を目指すためにそれをどのように役立てることができるかについての概要を解説します。
拡張性とは
拡張性を考慮することは、継続的に成長し、元の目的と構成を超えて改善できるソフトウェア・プラットフォームの作成を目指すソフトウェア開発の設計原則です。言い換えると、拡張性はどのようにシステムを拡張できるかの尺度であり、求められる特定の結果を達成するために必要となる作業量を反映します。
拡張性があれば、既存の機能を拡張することによって、事業で発生した課題に対応できます。このように、拡張性は、適応性、変更可能性、俊敏性などの他のソフトウェア用語や、モジュール化、相互運用性などのコンセプトと関連付けられます。つまり、これらすべてのコンセプトでは、新しいニーズに対応するために、ソフトウェアを変更し、プロセスを調整できることを表現しています。
拡張性の高いシステムの特性は、新しい機能を追加するときに影響が最小限に抑えられる内部構造および関連付けられたフローです。外観や動作はソフトウェアの仕様や設計に応じて様々です。たとえば、ある拡張性のあるプラットフォームでは、ソース・コードを変更することなくコア機能を変更できます。
新しいビジネス・ソリューションを開発する場合は、拡張性に配慮するアプローチが適しています。避けられない変化に備えるためです。拡張性は、ソリューションをそのライフサイクルを通していかに簡単にサポートできるかという、保守性の概念と密接に関連しています。ソフトウェア・システムのライフサイクルは長くなることがあるため、拡張性を確保することは、より優れたパフォーマンスをサポートし、長期間にわたってコストを削減するための最善の方法の1つです。拡張性により、新しい課題を解決するために、迅速にソリューションを再設計および構成することが可能になります。
要点のまとめ
- 拡張性は、既存のプラットフォームやフレームワークに対する新機能の追加を大幅に簡略化する、ソフトウェア開発の設計方法論です。
- 拡張性を高めることで、会社が既存のソフトウェアとツールを使用して業務の課題の変化に対処する機会が増加します。
- 新しいソフトウェアを導入するときには、拡張性に配慮することが重要です。これにより、それらのシステムを保守および更新するために必要となるコストとその他のリソースが削減されるためです。
- ソフトウェア開発方針に拡張性を組み込むことにより、会社はその領域における洞察と傾向を活用するための備えを強化できます。
拡張性の説明
拡張性とは、発生した新たな課題に対応するために、既存のビジネス・ロジックやデータ・モデルを基礎とした構築が可能であることです。これはオープン・アーキテクチャを使用するテクノロジ・インフラスに密接に関連するコンセプトです。オープンで拡張性の高いシステムは、現在の課題と変化するニーズに対応するために、簡単に追加、変更および適応できます。
真の拡張性を備えたソフトウェア環境を導入して育成することには、多くの利点があります。俊敏性は迅速に考え、行動し、応答できることと表現される一方、拡張性は異なるソフトウェアを適応させることができることを指します。
拡張性の高いシステムでは、元のビジネス習慣への対応に縛られることなく、チームが将来の成長促進を支援するためにシステムを補強できます。このように、拡張性は新しいタスクを達成するために必要となる変更を導入するために求められる作業の尺度となります。この尺度は定性的および定量的に表現できます。
拡張性の重要性
非常に競争力の高い会社は、小さな仕掛けで多くのことを達成し、独自の複雑な困難に直面してもすぐに対処できます。新しい方法でデータを解釈するソフトウェアのおかげで、十分な応答性を実現できる会社が増えています。拡張性はその基盤となって、将来課題が発生したときに適応する能力を制約することなく、既存のソフトウェアを新しいニーズに応じて調整することによって、会社が最良の意思決定に必要な洞察を取得できるようにします。
現在、技術革新の加速により、拡張性の価値が特に高まっています。これは、既存の機能と操作性を損なうことなく、変化が発生する都度効果的に対応するための条件を予測して作成するというソフトウェア・エンジニアリングの原則です。
拡張性の高いシステムには、あらゆる種類のビジネス・モデルを使用する世界中の組織の成功を支援する潜在能力があります。ソフトウェア開発にかかるコストと時間はきわめて大きくなることがあるため、利便性と効率性の向上を促進することによってシステムに拡張性を持たせることがコスト削減の鍵となります。
拡張性の高いシステムの特性
適応性が低い、または莫大な人件費と資本を投じ、深い技術的知識を用いてのみ適応が可能なシステムと比較して、拡張性に配慮して設計されたソフトウェアは、回復性と利便性が大幅に高くなります。
拡張性の高いシステムで可能になること:
- ソフトウェア開発者が簡単に既存システムを変更できます。
- 開発者が既存のコード行内に新しい機能を追加できます。
- 発生した課題に対応するために既存システムを拡張できます。
- 複雑かつ微妙なビジネス・ニーズを処理できます。
- 再投資の必要なく変化に対応できます。
プラットフォームの拡張性のタイプ
拡張性は、ソフトウェアのタイプと用途に応じて様々な方法で適用できる一般的な用語です。課題のある競合的環境において成功するために会社が何を必要とするかを判断するとき、以下のタイプのプラットフォームの拡張性のすべてについて検討する価値があります。
データ・モデル
ソフトウェア・システムが情報を利用する方法を整理するとき、拡張性はきわめて重要になります。特に、データ・モデルの拡張性を高めることで、システム全体を再構築することなく、多数の異なるパラメータ、値、指標およびKPIに対応できます。特定の問題に対処するためのアルゴリズムを開発するのではなく、拡張性の高いシステムは、インタフェースを提供するプラットフォームとしての役割を果たします。ここではユーザーが独自のデータ・モデルやビジネス・ロジックを設計および管理して、新しい目的と目標に応じてシステムを再プログラムして展開することができます。
プロセス
ビジネス・プロセスの拡張性は、重大な課題へのアプローチを開発する場合に重要になります。相互運用性は新しいテクノロジを既存のシステムとの間でどの程度簡単に連携できるかを表すために使用される用語です。競争力の高い会社では、既存の機能を基礎として構築される新しいプロセスを設計できることと、システムのコア機能を調整する設計プロセスの中で硬直的にならないようにすることが必要です。
ユーザー・インタフェース(UI)
現在、会社は、ユーザーが自社の製品とサービスにどのように反応しているかについて、豊富なリアルタイムの情報にアクセスできます。より拡張性の高いユーザー・インタフェースを開発することで、コア機能を損なうことなくユーザーのニーズに応じて体験を調整できるようになります。このように、拡張性には、顧客体験を継続的に改善する文化の基礎を作り出す効果もあります。
統合
拡張性によってビジネス・プロセス、プラットフォームおよびシステムの統合が促進されることで、異なる事業部門、チームおよびプロジェクトのコラボレーションが大幅に簡易化されます。オープン標準に基づいて構築された統合によって効率性が高まり、事業の結果の改善が可能になります。特に、統合されたシステムが、事業全体を運営するための単一の統合されたソリューションの部分として機能する場合に、このことが当てはまります。
拡張性と再利用性
拡張性は再利用性と同じものであると考えられがちですが、重要な違いがあります。これらはいずれも既存の機能を使用して新しい使用方法に対応できることを表します。しかし、拡張性が適応性とシステムへの追加および調整の可能性を指すことに対し、再利用性は利便性を提供するものの、同じようにシステムを調整、変更および最適化して、発生した課題にその場で対応する能力はありません。既存のビジネス・ロジックを再利用することは、便利で非常に経済的である可能性がありますが、真に拡張性の高いシステムを展開することで、長期的に大幅に高い利便性が提供されます。
別の考え方をすると、毎回同じ方法で特定のタスクを実行すると、達成が簡単にはなりますが、最も効率的に行っていることにはならないかもしれません。拡張性を実現することにより、単に従来してきたことに従うのではなく、実現可能な最良のソリューションを設計することができます。
拡張性とセキュリティ
ソフトウェア開発チームが新しい製品およびサービスを展開する最善の方法を現実的に検討すれば、拡張性とセキュリティは両立可能な目標になります。拡張性によって基本的なセキュリティの不足が発生するという意見もありますが、必ずしもそうとは限りません。
拡張性とセキュリティは補完的な概念であり、戦略的なビジネス問題に取り組むために可能な最良のソフトウェア環境を設計するには、両方が重要になります。どちらを選ぶかということではありません。拡張性とセキュリティの両方を連携させる必要があり、現在のビジネス環境の課題に対処するために、その両方を組み込むようにシステムを設計する必要があります。
拡張性の分類
拡張性は、開発プロセスのどの特定の領域が変化するかに応じて、様々なソフトウェア内に設計されます。ソフトウェア開発チームではこれらの副産物をアーティファクトと呼びます。様々なタイプのアーティファクトの変更に対して、拡張性の評価と測定のための分類基準が作られています。
ホワイト・ボックス
ホワイト・ボックス拡張性とは、公開され、入手できるソース・コードを変更することによって直接変更または拡張できるソフトウェア・システムのことを指します。すべての拡張性のタイプの中で最も柔軟性と適応性が高いと考えられています。
ブラック・ボックス
ブラック・ボックス拡張性では、システムの導入に関する詳細を使用せず、既存のインタフェースに特定の変更を加えることのみができます。このタイプのアプローチはホワイト・ボックス・ソリューションよりも大幅に制限されていると考えられています。
グレー・ボックス
グレー・ボックス拡張性はホワイト・ボックスとブラック・ボックス拡張性の中間です。ソフトウェア開発チームにシステムの特殊化インタフェースを提供して、拡張のための抽象化と、開発方法に関する仕様を共有できます。
拡張性の高いアプリケーションの例
拡張性の高い設計手法はあらゆるタイプのビジネス・ソフトウェアで採用できます。ソフトウェアのタイプに関係なく、一般的に、既存の機能を基礎として大幅に簡単に構築できるというメリットがあります。
Webブラウザは世界中で最も広く使用されているソフトウェア・プラットフォームです。世界的に最も一般的なインターネットWebブラウザは、明確に拡張性に配慮して設計され、他の開発者が既存のフレームワークを基礎として新しい製品やサービスを提供できるようになっています。この中にはポップアップ広告をブロックする、PDFファイルを開く、割引クーポンを見つけるといったブラウザのアドオンなどがあります。
拡張性という設計の観点は、多くの異なるプログラミング言語およびソフトウェア開発フレームワークの設計に導入されています。
- Camlp4
- Felix
- Nemerle
- Seed7
- Red (プログラミング言語)
- REBOL
- Ruby (プログラミング言語) (メタプログラミング)
- IMP (プログラミング言語)
- OpenC++
- XL (プログラミング言語)
- XML (プログラミング言語)
- Forth (プログラミング言語)
- Scheme (プログラミング言語)
- LISP (プログラミング言語)
- Lua
- Racket (プログラミング言語)
NetSuiteのクラウドベースのERPソリューションは、拡張性の高いビジネス・ソフトウェアの例です。Software-as-a-Service (SaaS)ソリューションであるNetSuiteは、開発者と管理者が独自のニーズを正確に満たすようにERPを調整するための数多くのツールとテクノロジを備え、すべてのお客様はSuiteCloudプラットフォームからこれらを追加料金なしで使用できます。SuiteCloudを使用すると、アプリケーションとカスタマイゼーションを構成、カスタマイズ、構築、テストおよびリリースできる以外に、NetSuiteとそのパートナの事前作成済のSuiteAppsを介して拡張機能を追加できます。拡張性に対するこのアプローチにより、NetSuiteのお客様は、事業の成長に伴って発生する新しい課題に、優れたコスト効率で適応できます。
拡張性とは、状況の変化への適応と発生した問題の解決に役立つように、システムの機能を拡張できるようにするソフトウェア開発のアプローチです。システムおよび業務プロセスの拡張性を強化する取組みは、グローバル企業が俊敏性と回復性を高めるために役立ちます。
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拡張性に関するFAQ
拡張性はどのように機能しますか。
拡張性は、考慮する特定のプラットフォームやシステムに応じて、様々な方法で機能します。要約すると、拡張性の高いシステムは適応性が高く、コア機能を損なうことや時間的金銭的に大規模に投資する必要なく、新しい課題を解決するための変更を加えることができます。
拡張性の高いアプリケーションは、どのような事業/業種にメリットがありますか。
どのような業界のどのような会社でも、より拡張性の高いアプリケーションを提供および使用することを優先事項とするようお薦めします。データに大きく依存し、非常に競合が多く、かつ課題も多い変化の早い市場環境で運営される事業では、拡張性の高いソリューションを使用することで最大の利点が得られる傾向があります。そのようなソフトウェアを使用するすべての会社は、新しいシステムの設計、導入および展開に拡張性を統合できます。
自社のビジネス・ソリューションに拡張性を統合するにはどうすればよいですか。
多くの事業が、継続的な改善や、チームが事業部門を横断して効率的にコラボレーションする能力を促進しない、固定的で孤立したビジネス・プロセスの制約を受けています。このような場合に拡張性が役立ちます。
拡張性を活用する方法は様々ですが、インテリジェントで効率的なソフトウェア環境の構築は、変化を予測し、既存の機能を損なうことなく応答性と適応性を備えたソリューションを実現することを目指して作業することから始まります。