消費者中心のアプローチを導入することは、ビジネスを成功させる上で最も重要です。それにより、顧客満足度が向上し、ブランドに対するロイヤルティが高まることで、収益の増加につながります。さらに、ビジネスに満足した消費者が、最も強力なマーケティング形式のひとつであるオンライン上のポジティブなレビューといった、口コミでビジネスの宣伝をする可能性もあります。
これらすべてが、あらゆる組織において、優れたカスタマー・エクスペリエンスを慎重に作り上げ、それを常に改善していくことが優先事項であるべき理由を示しています。
カスタマー・エクスペリエンス(CX)とは
CXとも呼ばれるカスタマー・エクスペリエンスとは、顧客が企業とのやりとりについて抱く認識や意見を指します。顧客がブランドに対して抱くイメージは、顧客との最初のやりとりから販売後のサポートに至るまでの購買活動全体を通じて形作られ、収益を含む長期的な影響を企業に与えます。
カスタマー・エクスペリエンスの説明
ウェブサイトの初回閲覧であれ、製品やサービス購入後のカスタマーサービス担当者への問い合わせであれ、顧客がビジネスと接するあらゆるやり取りがカスタマー・エクスペリエンスに影響を及ぼします。顧客が購入活動を継続し、さらにはリピート顧客になるという理想的状況になるかは、このようなのやりとりにより決まります。
カスタマー・エクスペリエンスの重要性
有意義で心に残るカスタマー・エクスペリエンスを提供することは、ビジネスの成功と成長の持続にとって重要です。カスタマー・エクスペリエンスが有意義であるほど、顧客が購入に至り、ブランドに対するロイヤルティの高い顧客となり、さらにはブランドの支持者となる可能性が高まります。
顧客は通常、製品やサービスを選択する際に複数の選択肢を持ち、十分な情報に基づく意思決定を支える情報源も無数にあります。実際、潜在顧客は選択を行うまでは、直接従業員とやりとりを行う必要はない場合もあります。そのため、CXの最初から最後まですべての側面で有意義な印象を残し、見込み顧客を顧客に変換できるよう支援することが不可欠です。
良いカスタマー・エクスペリエンスとは
良いカスタマー・エクスペリエンスは、購入前、購入中、購入後にかかわらず、手間がかからず便利なものであるべきです。顧客の満足度を維持し、リピート販売を推進し、自社ブランドでのエクスペリエンスを他の顧客に共有するよう推奨するためにビジネスが取る行動は、すべてエクスペリエンスに影響を与える可能性があります。具体的な行動とシステムはビジネスや業界により異なりますが、より良いカスタマー・エクスペリエンスを構築するために組織が実行できるベストプラクティスがいくつかあります。
良いカスタマー・エクスペリエンスを構築するために、企業は購入活動の各段階で顧客からのフィードバックを頻繁に収集し、寄せられたフィードバックに耳を傾け、対応することに注力し、その情報を活用して顧客に対する理解を深める必要があります。最終的には、ビジネスが従業員に可能な限り最高のエクスペリエンスを提供する権限とリソースを与えて初めて、素晴らしいカスタマー・エクスペリエンスが実現します。
カスタマー・エクスペリエンスとカスタマーサービス
カスタマーサービスとカスタマー・エクスペリエンスは混同されることがあります。カスタマー・エクスペリエンスとは、消費者のビジネスに対する全体的な印象を指しますが、カスタマーサービスは顧客とブランドとのやりとりの一要素に過ぎません。一方で、カスタマーサービスはカスタマー・エクスペリエンスの中の特定のタッチポイントであり、顧客がビジネスに問い合わせ、サポートをリクエストすることから始まります。顧客は、申込書について質問するためにホットラインに電話をかけたり、ソーシャルメディアで返金を求めるメッセージを送ることがあります。
顧客がビジネスとやりとりできる方法
カスタマー・エクスペリエンスは、多くの異なるやりとりから生まれます。各種のタッチポイントはエクスペリエンスに影響を与え、それらのやりとりは業界とビジネス・モデルによって異なります。エクスペリエンスを向上する方法について、いくつかの例と提案を次のとおりご紹介します。
- 実店舗への来店:店頭での有意義なカスタマー・エクスペリエンスを確保するために、ドアで顧客を迎える、顧客が探しているアイテムを見つけることを支援する、迅速なレジ対応を提供するなど、シンプルで簡単なことを検討します。
- モバイル・アプリ: 顧客は、高速なロード時間、アプリがセキュアであるか、質問や問題があるときに誰かに連絡する方法があるかなどを調べる傾向があります。アプリには使いやすさも求められます。
- ソーシャルメディア: ソーシャルメディア上でのやりとりには、顧客からのブランドへの賞賛や、顧客や見込み顧客からの問い合わせや フィードバックに迅速に答えることが含まれる場合があります。一部のビジネスではソーシャル・チャネルを通じてカスタマーサポートを提供していますが、ベストプラクティスでは、顧客をメール、チャット、電話などの他のサポートチャネルに誘導することが推奨されいます。
- Web/SMSチャット・サポート: 顧客は、オンラインやSMSチャットを利用する際に、迅速な応答時間と包括的な回答を求めています。質問には、必要なナレッジと経験を備えた適切な人材が回答するように徹底しましょう。
- サポート・フォーラム: 通常、ウェブサイト上のよくある質問(FAQ)セクションに含まれますが、製品やサービスを利用する第三者のブログやフォーラムの人のグループである場合もあります。
- マーケティング: マーケティング・ タッチポイントには、印刷メディア、Eメール・マーケティング、ソーシャルメディア広告、デジタル・ディスプレイ広告、その他のチャネルが含まれます。
- コネクテッド・デバイス: モノのインターネット(IoT)により、ビジネスではデバイス同士の連携、ポイントごとのサポートや再発注が可能になるため、それがカスタマー・エクスペリエンスにどう影響するかを評価することが重要です。接続は容易で、同時に顧客にコントロールを提供し、プライバシーを保護することが必要です。
カスタマー・エクスペリエンスの内容
カスタマー・エクスペリエンスという言葉は広義であり、さまざまなものを指す可能性があるため、ここでは、あらゆる業界のビジネスに関連するいくつかの要素に分けて考えてみましょう。
- 戦略と文化:経営陣は通常、カスタマー・エクスペリエンスの改善に向けた取り組みを指揮します。これらのリーダーは、アドバイスとリソースを提供することで、顧客のライフサイクル全体を通じてビジネスの焦点が常に顧客に置かれていることを確認する必要がります。これには、組織の文化が、カスタマー・エクスペリエンスを強化する戦略とプロセスを全員で協力して開発するものであることを徹底することが含まれます。
- 製品やサービス: 提供するすべての製品やサービスは、顧客の需要を満たし、理想を言えば期待を上回ことが必要とされます。可能な場合、これらの提供内容は、サポートを求める問合せがある前に、消費者の一般的なニーズを予測している必要ががあります。
- 人間同士のやりとり: これには、仕入先、パートナー、カスタマーサービス担当者が含まれる場合があり、それぞれが個人顧客に対して一貫したエクスペリエンスを提供する必要があります。つまり、ビジネス戦略を理解し、望ましいエクスペリエンスを提供するために役立つ利用可能なリソースについて知っておく必要があります。
- タッチポイント: 顧客が企業とやりとりできると考えられるあらゆる手段がタッチポイントと見なされます。これには、ウェブサイト、店舗(第三者の営業担当者を含む)、オンライン・チャット、テキストメッセージ、電子メール、ソーシャルメディア、電話などが含まれます。
- テクノロジー: 優れたカスタマー・エクスペリエンスの実現において、ビジネスがテクノロジーの役割を見落とすことはあってはなりません。顧客関係管理(CRM)ソフトウェアや、マーケティング・オートメーション、カスタマー・フィードバックなどのコミュニケーション・ツールを検討します。
6 カスタマー・エクスペリエンスの指標
カスタマー・エクスペリエンスを測定することは難しいように思えますが、ビジネスの状況を把握するために使用できる指標がいくつかあります。これらの指標の使用は、時間の経過とともにCXがどのように改善または悪化したかを追跡し、必要に応じて調整することを支援します。
- ネット・プロモーター・スコア: 顧客にシンプルな質問に回答させることで、カスタマー・ロイヤルティを測定できるスコアです。この質問では通常、顧客が製品やサービスを友人や同僚に薦める可能性を1から10の段階で評価します。
- マーケティング・キャンペーン・エンゲージメント:マーケティング・メールの開封率やクリック率などのシンプルな指標は重要であり、カスタマー・エクスペリエンスのどの部分をより詳しく調査する必要があるかについての情報を提供します。またコンバージョン率や平均販売サイクルの長さといったより広範な数値も貴重です。
- 顧客アンケート: アンケートでは、カスタマーサービスへの問い合わせや返品手続きなど、顧客が特定の行為を完了するまでの容易さを測定することができます。これらの情報は、「はい」または「いいえ」で回答できる質問や評価スケールを用いたシンプルで簡潔なアンケートを配信することで得られます。
- 顧客離れ/減少率:顧客維持率を追跡することで、顧客が有意義なブランド・エクスペリエンスを得ているかを明らかにすることができます。顧客離れ率は、一定期間に製品やサービスの利用を停止した顧客の割合を算出するもので、この数値が上がるほど、カスタマー・エクスペリエンスに何らかの問題がある可能性が高くなります。
- カスタマーサポート・チケットの傾向:解決までの期間(TTR)のような指標は、顧客が問い合わせをしてからカスタマーサービス担当者が問題を解決するまでの平均時間を測定します。これは営業時間または営業日で測定でき、この数値が上昇してしまわないように注意する必要があります。リーダーは、チケットの原因にも注目する必要があります。ほとんどの顧客が1つないしは2つの同じ問題について問い合わせをしてはいないでしょうか。
- 顧客満足度スコア: CSATとも呼ばれ、これは企業の製品やサービスに対する顧客満足度を算出します。これは通常、5段階または7段階のスケールで回答するアンケートを通じて測定され、ビジネスに対する顧客のエクスペリエンスの特定の側面や全体的な考えに焦点を当てます。
カスタマー・エクスペリエンスを向上させる6つの方法
カスタマーサービスの改善は、カスタマー・ジャーニー・マップを作成し、購入者ペルソナを明確に理解することから始まります。また、顧客が有意義なエクスペリエンスを満喫し、コミュニティを構築し、効果的なフィードバック・ループに参加し、役立つ教育的なコンテンツを作成できるよう、顧客とのつながりを確立するための尽力も含まれます。
これらの戦術に関するさらに詳細な説明は次のとおりです。
- フィードバック・ループ:顧客から直接フィードバックを受けることは、他者とブランドとのやりとりを理解する最善の方法です。また、何がうまくいっていて、どこで顧客が離脱しているのかを確認するチャンスにもなります。顧客がフィードバックを提供する機会をできるだけ多く設けましょう。フィードバックを確認し、その内容に基づいて実際に変更を推奨するよう最善を尽くすことを念頭に置きます。
- 一貫したブランド・エンゲージメント: すべてのコミュニケーションが、チャネルを問わず一貫していることは、有意義なエクスペリエンスを促進する上で重要ですたとえば、顧客がまずチャットでリクエストを解決し、その後電話をかけてきた場合、カスタマーサービスの担当者は、顧客がすでに尋ねた内容とビジネスが行った対応を認識している必要があります。
- パーソナライゼーション:カスタマー・エクスペリエンスを個人の好みに合わせてパーソナライズできれば、それだけエンゲージメントの高い、継続的な顧客となる可能性が高まります。これには、製品の推奨、希望する連絡方法の記憶、興味のあるアイテムのマーケティング・メールの送信などが含まれます。
- セルフサービスの実現:自ら調査や問題解決を行うことを好む顧客は、ますます増えており、その85%はオンラインで何かを購入する前に調査を済ませています。そのような顧客は、しっかりとしたヘルプ(またはFAQ)セクション、有益な記事、および/またはサイト上で正しい方向を指し示すチャットボットを有するビジネスを高く評価します。
- データの分析:長期にわたって収集したアンケートやその他の種類のデータを保存しましょう。これらは、顧客をよりよく理解することを支援する情報源であり、履歴データを保持することで、貴重な前月比や前年比の比較を行うことができます。
- ロアクティブな対応:顧客のニーズを予測することは、後から素早く対応するよりもはるかに有益です。そうすることで、ビジネスが市場で差別化され、問題が深刻化するのを支援することができるため、否定的なエクスペリエンスを他者と共有する購入者の数を減らすことができます。
カスタマー・エクスペリエンス管理とは
カスタマーエクスペリエンス管理(CEM)とは、顧客の期待に応じた、または期待を上回る顧客とのやりとりをサポートするためのシステムやプロセスを設計することです。カスタマー・エクスペリエンスを推進する要素に注目し、各タッチポイントを改善するためのアプローチを特定し、実施します。包括的なアプローチは、それぞれの要素がカスタマー・ジャーニーの他の側面にどう影響するかを考慮するため、最も効果的です。
業界のリーダーは、ビジネス全体の成功に対する重要性を認識しているため、カスタマー・エクスペリエンス管理に多くの時間を費やしています。カスタマー・エクスペリエンスを向上させることは、顧客を増やすだけでなく、顧客の満足度を高めることにもつながります。
CEMとCRM
CRM、つまり顧客関係管理は、顧客とのやりとりを記録した後に、ビジネスがその顧客について知っていることを調べますが、CEMは顧客とのやりとりのすべてのポイントを調べます。それぞれ、対象分野、目的、読者層、タイミングなどが異なります。
CEM | CRM | |
---|---|---|
目的 | 顧客がビジネスについて真実だと信じていることを記録 | ビジネスが顧客について理解していることを記録 |
タイミング | すべてのタッチポイント | 顧客とのやりとり後 |
監視方法 | 顧客調査、対象を絞った調査、アンケート調査 | 市場調査、自動追跡システム、ウェブサイトののクリックスルー、販売およびカスタマー・サービス・データ |
情報の利用方法 | CXを向上させるプロセスとシステムを作成するリーダーによる利用 | 主に営業、サービス、マーケティング・スタッフによる利用 |
関連事項 | 期待とエクスペリエンスの観点からタッチポイントを改善するための情報の明確化 | アップセル、クロスセル、マーケティング、カスタマーサービス機会の向上 |
カスタマ・ジャーニーのマッピング
カスタマー・ジャーニーのマッピングは、見込み顧客や現在の顧客の立場に立つことができるため、組織にとって非常に貴重な活動となる場合があります。購入サイクルの各段階について、その目的と感情、その人物がどのような行動を取るか、その人物にとって利用可能なツールやリソース(タッチポイントもこの一部です)を調べます。ビジネスでは、ターゲットとする顧客の購入者ペルソナごとに、各ステージでの課題や求めているものが異なる可能性があるため、これを行うことがあります。
各ステップを詳細に分解することで、見込み客のコンバージョンを妨げている潜在的な問題を見つけ出しやすくなることがあります。また、問題の具体的な発生源がわかるため、障壁を取り除く的を絞ったソリューションを策定することができます。
カスタマー・ジャーニーの無料テンプレート
カスタマー・ジャーニー・マップ(新しいタブで開きます)をダウンロードして、新しいアイデアを作成し、ビジネスのカスタマー・エクスペリエンスを向上させるためのステップを特定します。これは、CXを向上させるアイディアをもたらす可能性のあるフェーズとタッチポイントを用いて、カスタマー・ジャーニーの大まかな概要を把握するうえで素晴らしい第一歩となります。
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会計ソフトウェア
ERPがカスタマー・エクスペリエンスを向上させる方法
エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムは、企業が生産性を向上させ、在庫管理を強化することで、製品とサービスをより迅速に顧客に提供し、より良いエクスペリエンスにつなげることを支援します。ERPシステムは、企業全体の一元的なデータ・ソースとして、さまざまな傾向を明らかにし、解約率や解決までの期間などのカスタマー・エクスペリエンスに関連するKPIを追跡することもできます。これにより、ビジネス・リーダーが、購入者のエクスペリエンスに否定的または有意義な影響を与える可能性のあるものを確認し、必要に応じてそれに対処できるように支援します。ERPシステムは、企業が顧客から収集した調査データやその他の重要な情報を検索および閲覧することを容易にできます。
スタンドアロン・システムとして販売されること多い、CRMは、販売、サービス、マーケティングのデータを個人顧客に至るまで追跡できる一般的なERPモジュールでもあります。ERPシステムと同じプラットフォーム上に構築されたCRMシステムを有する企業は、2つのシステム間で統合を行い、維持するという課題を回避することができます。つまり、営業担当者とカスタマーサービス担当者は、注文書や未払い請求書などの財務データにリアルタイムにアクセスできます。同様に、経理や経営者もセールス・データにアクセスし、戦略的意思決定を支援しやすくなります。顧客に関する包括的なデータにより、ビジネスは見込み顧客がカスタマー・ジャーニーを経過する過程でリードと販売機会を追跡し、すべてのステップにわたり不十分なカスタマー・エクスペリエンスを特定することができます。また、CRMソフトウェアは、企業がカスタマー・ジャーニーのギャップを埋めるための戦略的変更の効果を測定することも支援します。
収益を向上するためにどのような戦略や戦術を用いるにせよ、顧客の関心とフィードバックは徹底して真摯に受け止めましょう。そうすることで、顧客から再度利用されるだけでなく、友人や家族、同僚に口コミを広めるような、顧客に満足感をもたらす方法で業務を改善できます。