成長は、現代の経済の自然な状態です。しかし時折、国や世界の経済は成長を止めて縮小し、その後、成長を取り戻します。経済の専門家は、時折訪れるこれらの期間を「景気後退」と呼び、経済成長の過程が中断される理由について多くの理論を提唱しています。
景気後退は、企業が倒産し失業が増えるため、多くの人に困難をもたらす可能性があります。しかし、それはビジネスや投資の新たな機会ともなります。
景気後退とは?
景気後退とは、売上や生産の減少、失業の増加および実質個人所得の減少を特徴とするマイナス経済成長の期間です。多くの場合、株式市場の暴落、債務不履行、差押え、倒産が伴います。通常、物価は景気後退期には低下して、デフレと呼ばれる状態になることがあります。企業と消費者の信頼感が低くなり、全体的に厳しい時代という感覚が漂います。
景気後退は、2四半期連続の経済成長の低下と定義され、通常は失業の大幅な増加、家計支出の水準の低下、企業支出の水準の低下を伴います。
実例をあげると、オーストラリア統計局(ABS) (opens in new tab)の記録では、2020年6月四半期にGDPは記録的な7%の減少であり(2四半期連続の下落)、失業率は2020年7月に7.5%でピークとなりました(20年以上で最高の失業率)。これらの統計は、オーストラリアが2020年の第2四半期に景気後退に入ったことを示しています。これは壊滅的な森林火災とCovid-19のパンデミックの結果です。
同様に、パンデミックはシンガポールで3四半期連続の縮小 (opens in new tab)を引き起こしました。これは、主要経済大国での景気減速、世界的な旅行制限、サプライ・チェーンの混乱、および2020年4月から6月の国内でのサーキット・ブレーカ対策の実施によるものです。幸いなことに、これらの景気後退は長続きせず、第4四半期までに両国で景気回復の兆しが見られました。
要点のまとめ
- 景気後退の定義は国によって異なりますが、景気後退の一般的な指標には、実質GDPの継続的なマイナス成長、失業の大幅な増加、家計支出の水準の低下、企業支出の水準の低下などがあります。
- 景気後退は、原油価格の高騰や金融危機などの経済への衝撃によって、または単に将来に関する恐れや不安によって引き起こされることがあります。また、景気後退から身を守るために人々がとる行動が更なる景気後退を引き起こすという、自己実現的予言である可能性もあります。
- 景気後退によって旧来の非効率的な企業が排除され、より効率的な新しい企業が成長する余地が生まれることがあります。
景気後退の説明
1700年代に産業革命が始まって以来、ほとんどの経済にとってプラスの経済成長が標準となってきました。しかし、時には経済が低成長またはマイナス成長の期間が数か月から数年続きます。ほとんどの場合、経済は最終的には以前の成長トレンドに回復しますが、深刻な景気後退によって経済が永続的に別の成長経路をたどることもあります。2008年から2009年にかけての世界金融危機は、そのような景気後退でした: 英国などは、経済は依然として、もし景気後退がなかったらと仮定した場合に考えられるよりも大幅に小さいままです。
経済学者は、これらの周期的な景気後退の変動について様々な説明を提示してきました。宇宙船が小惑星の雲の中を航行するように、経済は絶えず衝撃を受けているという主張もあります。景気後退を引き起こす可能性のある衝撃とは、原油や商品の価格の急激な変動、戦争、破壊的な新技術、自然災害、公衆衛生上の緊急事態などです。ほとんどの衝撃は小さく、宇宙船を航路からわずかに逸脱させるのみです。しかし時折、異常に大きい衝撃によって宇宙船がまったく異なる軌道上に押し出されることがあります。
別の経済学者は、周期的な悪化は過剰投資(または「誤投資」)の結果であると主張しています。この主張では、信用が拡大し、お金が「安い」ため、企業や家計は生産性の低い方法で支出を始めます。経済における債務とリスクが増大します。最終的に、信用バブルが崩壊し、家計が不必要な支出を削減するために過剰債務の非効率な企業が倒産する景気後退が発生します。これにより、より効率的な新しい企業が成長する道が開かれます。
景気後退の原因として心理的要因を強調する経済学者もいます。たとえば、英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、投資決定に影響を与える「アニマル・スピリット」について述べています。将来についての漠然とした不安により、企業は拡張計画を保留し、家計は必要でない支出を減らして貯蓄に回す可能性があります。この総需要の減少が景気後退を引き起こします。
マネタリストの経済学者は、景気後退は、安定した総需要と着実な経済成長率を維持するための資金供給の規制に対して、政府の政策立案者が失敗した結果であるとしています。逆に、リアル・ビジネス・サイクル(RBC)理論家は、金融政策または総需要が景気後退の原因として果たす役割を否定しています。この立場からは、景気後退は常にテクノロジまたは生産性への実際の衝撃の結果です。たとえば、COVID-19のパンデミックは、ビジネスの停止、安全対策、一時解雇、従業員の病気を特徴とし、生産性に大きなマイナスの衝撃を与えました。
景気後退の仕組み
原因が自然災害であるか、金融危機であるか、単に将来についての漠然とした先行き不透明感であるかに関係なく、景気後退が経済に与える影響は常に同じです。経済成長を推し進める生産と消費の「エンジン」が一時的に減速します。
消費の面では、家計は支出を減らし、貯蓄や債務の返済をを増やします。これにより、消費者製品およびサービスの需要が減少します。企業も、投資計画を保留し、ビジネス上の購入を削減します。これにより、企業間(B2B)の製品およびサービスの需要が減少します。
生産の面では、収益の減少に直面した企業は、まず価格を引き下げ、コストを削減します。これには、一部のスタッフの一時解雇、他のスタッフの勤務時間短縮、および時給の削減が伴う場合があります。価格を引き下げても顧客が十分に集まらず、販売で在庫を減らし、キャッシュ・フローを維持することができない場合、企業は生産を削減し、勤務時間と時給をさらに減らし、より多くのスタッフを一時解雇します。倒産する企業もあります。銀行や他の企業からの借入金がある場合、それらの銀行や企業も破綻する可能性があります。
失業の増加と賃金の低下により、実質個人所得は減少します。これは負のフィードバック・ループを引き起こします: 人々の所得が減少すると、支出が減り、企業は価格と生産をさらに削減せざるを得なくなり、さらに失業が増え、賃金が押し下げられます。
実例をあげると、2007年から2009年にかけての世界金融危機により、失業が増加し、それによって生産が減少しました。
景気後退の特性
景気後退には、消費、投資、生産、雇用、所得が同時に減少するという特徴があります。通常はインフレも景気後退期には低下しますが、実際には上昇することもあります。たとえば、原油価格の急騰が生産者コストおよび家計の光熱費の持続的な上昇に波及する場合などです。一部の 貿易収支などの経済指標が改善する可能性もあります。これは、輸出が上昇傾向のままである一方で、所得の減少により輸入需要が減少する可能性があるためです。深刻で長期にわたる景気後退は、経済不況となります。
政策立案者は、これらすべての特性をモニターして、景気後退の見込まれる軌道および期間を理解し、困難な時期に人々や企業を支援する最善の方法を決定するために役立てます。
景気後退の予測因子と指標
景気後退の予測は難しい場合があります。そのため、実際、経済界には「経済学者は過去5回の景気後退のうちの9回を予測した」という古いジョークがあります。たとえば、ほとんどの経済学者は、2008年の金融危機とそれに続く世界金融危機を予測していませんでした。景気後退の可能性を示す指標には、GDP成長率、消費者物価指数、消費者信頼感などがあります。
一部の景気後退では、株式市場の暴落が先行します。しかし、株式市場の暴落が必ずしも広範な経済混乱を引き起こすわけではないため、これは差し迫った景気後退の優れた指標にはなりません。それよりも、株式市場の変動性が高いとき、特に、それと同時に外貨換算レートが上昇し、日本円や米ドルなどの避難通貨の債券利回りが低下しているときは、投資家の間で将来に対する恐れが高まっている可能性があります。CNNのFear and Greed index (opens in new tab)は、恐れが投資家の心理をどの程度動かしているかを示しています。
経済がいつ景気後退に陥ったかを正確に特定することも、難しい場合があります。多くの場合、実質GDP成長が2四半期連続でマイナスになると、経済は景気後退期にあると考えられます。しかし、実際には、経済が景気後退期にあるかどうかを決定するものは、もっと複雑です。中央銀行は、経済が景気後退期にあるかどうかを判断するために、実質GDPとそれに関連する尺度である国内総所得(GDI)、実質個人所得(失業給付などの政府移転を差し引いたもの)、非農業部門雇用者数、個人消費支出(PCE)インフレなど、様々な経済指標を使用します。必ずしもこれらの尺度すべてが景気後退で低下するわけではありませんが、ほとんどの中央銀行が景気後退を宣言するには、それらのいくつかでターニング・ポイントが必要です。
景気後退と不況
景気後退はかなり一般的であり、通常は長続きしません。しかし、時には、はるかに深刻で長期にわたる悪化、つまり不況が発生します。
景気後退と不況の違いは、必ずしも簡単に定義できるわけではありませんが、深刻な景気後退を不況と誤解しがちです。添付の表は、経済活動が落ち込んでいる期間が景気後退か不況かを判断する際に、経済学者が留意するいくつかの主な違いを示しています。
景気後退と不況: 主な違い
景気後退 | 不況 |
---|---|
数か月または数年続く | 数年または数十年続く |
マイナスの実質GDP | 大幅にマイナスの実質GDP (マイナス10%以上)、通常は数年間 |
ディスインフレまたは緩やかなデフレだが、時には高インフレ | 深刻で長期にわたるデフレ |
一部での債務不履行および企業の倒産 | 広範囲かつ損害を与える債務不履行および企業の倒産 |
高い失業率(10%以上になることもある) | 非常に高い持続的な失業率(30%以上になることもある) |
政府が意図的に導入しないかぎり、経済に重大な構造変化はない | 不況それ自体の結果によって起こる経済の大きな構造変化 |
経済は最終的に以前の成長軌道に戻る | 経済は不況前よりも低い成長軌道にとどまる |
景気後退のタイプ
景気後退には様々な形状と大きさがあります。V字型、U字型、W字型、L字型、J字型またはK字型があります。深いもの、浅いもの、長いもの、短いものがあります。
- V字型の景気後退は、経済的損失が最も少なくなります。この景気後退は非常に深い場合がありますが、長続きせず、経済は以前の成長経路に一直線に戻ります。2003年のシンガポールのSARSによる景気後退は、V字型の景気後退の一例です。
- U字型の景気後退では、経済が回復する前に停滞の期間がありますが、その後、以前の成長経路に戻ります。2008年から2013年にかけてのニュージーランドの景気後退は、U字型の景気後退でした。
- W字型の景気後退は、「二番底」の景気後退とも呼ばれます。経済は一時的に回復した後、再び景気後退に陥ります。2番目の底は1番目とは異なる形状である可能性があります: たとえば、1番目はV字型の景気後退ですが、2番目はJ字型である場合があります。香港は、アジア通貨危機から回復する際に、1998年から2003年にかけて複数の底がある景気後退を経験しました。
- L字型の景気後退は、最も害を及ぼすタイプの景気後退であり、非常に深刻になる可能性があります。その特徴は、事業投資の持続的な低迷、失業の定着および経済成長の鈍化です。チャートは、経済は以前の成長軌道に戻らず、それよりも低い経路にとどまっていることを示します。不動産バブルの崩壊に続く1990年から1991年にかけての日本の景気後退は、L字型の景気後退でした: それ以来、日本は持続的な低成長とデフレに苦しんでいます。
- J字型の景気後退では、最初の経済の減退が激しく、回復が遅く、そのため長い時間がかかりますが、最終的には経済は景気後退前の成長トレンドに戻ります。2008年のグレート・リセッションは、米国のJ字型の景気後退と考えることができます。
- K字型の景気後退では、経済の一部は急速に回復しますが、残りの部分は回復に長い時間がかかります。その結果、富と所得の不平等が拡大します。フィリピンの2020年の景気後退からの回復は、K字型になると予想されます。貧富の差や、経済の様々なその他の分野間の差などの指標が現れているためです。
景気後退の心理的側面
景気後退は、消費者や企業の信頼感の低下などの心理的要因によって引き起こされる場合もあれば、景気後退の影響から身を守るための人々の行動が景気後退を引き起こすという自己実現的予言である場合もあります。
また、景気後退はその影響を受けた人々に心理的な悪影響を及ぼします。調査によると、景気後退の特徴である社会的特性(失業、所得の減少、債務困難など)は、メンタル・ヘルスの問題、薬物乱用、自傷および自殺の割合の増加と大きく関連しています。景気後退が長く、深くなるほど、メンタル・ヘルスへの影響は根深くなります。たとえば、2008年から2014年にかけてのギリシャの景気後退では、うつ病の割合が3.3%から12.3%に上昇し、自殺は40%増加しました。
消費者信頼感
消費者信頼感の低下は、景気後退の主な要因です。人々は、将来に関する先行き不透明感や不安があると、仕事を失う可能性や所得または財産を失う可能性から身を守るために、通常は支出を減らして貯蓄を増やします。1997年から1998年のアジア通貨危機の間、フィリピンの家計貯蓄は1996年の22%から1998年には30%に大幅に増加しました。
行動経済学
行動経済学では、人々の行動は合理的な意思決定では完全には説明できないと考えます。経済学者のロバート・シラー氏とリチャード・セイラー氏はどちらも、投資家は理性や知性と同様に感情や偏見に基づいて意思決定を行うということを示しました。さらに、個人が合理的に行動しているときでさえ、集団的にはその行動が不安定で害を及ぼす可能性があり、これは「群集の狂気」と呼ばれることもあります。たとえば、金融市場の好景気と不景気は、投資家が購入または売却の際に「群れに従う」ことによって引き起こされる場合があります。購入時は「見逃すことへの恐れ」(FOMO)のため、売却時は損失への恐れのためです。これは、混雑した映画館で誰かが「火事だ」と叫ぶのと同様の効果があります。実際に火事があるかもしれないし、ないかもしれませんが、誰もがあると信じるため出口に向かって走ります。人々は殺到して押しつぶされます。
2008年の世界金融危機は、リーマン・ブラザーズ社の倒産後、銀行や金融市場の投資家が窓口に殺到したことで引き起こされました。しかし、これは金融市場のパニックが引き金となった最初の大規模な景気後退からはほど遠いものでした。大恐慌も同様に、ウォール街大暴落として知られるようになった事態でパニックとなった投資家による大量売りによって引き起こされました。その暴落で多くの財産を失った英国の経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、「市場はあなたが支払能力を維持できるよりも長く不合理を維持できる」と残念そうに結論付けました。
バランスシート不況
日本のエコノミストであるリチャード・クー氏は、1990年の不動産バブル崩壊後、日本の経済が回復しなかった理由を説明するために「バランスシート不況」という用語を作り出しました。多額の債務を抱える銀行、企業および家計は、将来への投資や消費者支出の増加よりも、債務を返済してバランスシートを縮小することを選択しました。そのため、生産と消費のエンジンは、日本政府がそれを復活させるためにかなりの努力を払ったにもかかわらず、長期にわたって停滞状態のままでした。クー氏は、民間部門全体が債務の削減に専念している場合、経済成長の唯一の原動力は政府支出であると述べています。
債務の返済は経済的見地からは貯蓄に相当するので(自己資本が増加するため)、クー氏のバランスシート不況は、ケインズの倹約のパラドックスの1つのバージョンと考えることができます。倹約のパラドックスは、すべての人が貯蓄していると、現在の生産を支える消費が不十分になり、必然的に経済活動が落ち込むということを表します。
クー氏は、2008年のグレート・リセッションが、西側諸国の多くでバランスシート不況を引き起こしたと述べています。家計、企業、銀行および政府がすべて同時に債務をデレバレッジし、長期にわたる非常に低い経済成長、低迷する事業投資および高い失業率を引き起こしました。
景気後退への政府の対応
政府は通常、支出を増やし、減税することによって景気後退に対応します。これは、やや不本意なことです。景気後退期には、失業と不完全雇用の増大によって福祉支出が増え、所得の減少によって税収が減るためです。これらの不本意な支出の増加と減税は、「自動安定装置」として知られています。景気後退によって起こる実質個人所得の減少を抑えることで、消費者支出を維持して経済をより迅速に回復させることができるからです。
中央銀行は通常、景気後退期には金利を引き下げて借入れを促進します。ただし、たとえば原油価格の突然の急激な上昇によって引き起こされた景気後退でインフレ率が高い場合、中央銀行は金利を引き上げてインフレを抑制する可能性があります。
また、政府は中央銀行が設定した金融政策の変更とは別に、投資のための借入れを促進するために、信用コストを削減し、税制上の優遇措置をとることもよくあります。たとえば、2000年にオーストラリア政府は、初めての住宅購入者への補助金を導入しました。これは、住宅購入コストの削減に役立ち、それにより投資のための借入れが促進されました。
何千人もの人々を雇用する非常に大きい企業の倒産を許容することには政治的および社会的コストが伴うため、政府が雇用とコミュニティを守るために企業を救済または国有化する可能性があります。
また、政府が既存の支援スキームに加えて家計や企業に追加資金の提供や、新しいスキームを考案する場合もあります。2020年のオーストラリアの求職者手当は、COVID-19のパンデミックの間、企業の取引と人々の雇用を維持するために設計された隔週の賃金補助金でした。
長期にわたる深い景気後退や不況では、力強い回復をもたらすために、政府は経済に対して大規模な構造改革も実施します。シンガポールの1988年のフレックス賃金政策は、その一例です。
景気後退の結果
景気後退は、経済全体に広く悪影響を及ぼし、通常は雇用、所得、事業投資、貿易、生活水準、健康および福祉に影響を与えます。また、通常は政府の債務と赤字が増加します。しかし、景気後退は通常はインフレを低下させ、さらに実際の不履行を通じて、または単に人々や企業が債務を返済することを選択したために、民間部門の債務を削減することもよくあります。また、景気後退は、新しい企業、十分な資金とリスク選好を持つ投資家、変化する経済状況に容易に適応できる機敏な企業に機会をもたらします。
失業
失業率は通常、景気後退期には高くなりますが、不況時ほど高くはありません。深刻な景気後退では、通常に戻るまでに長時間かかる場合があります。たとえば、世界金融危機の後、世界の失業者数は200万人以上に急増し、2014年に雇用されていた人々は、危機前の雇用の伸び率が続いていた場合よりも6,100万人少なかったと推定されました。
最近の景気後退のいくつかは、失業と同様に不完全雇用によって特徴付けられています。人々は失業手当で生活するのではなくパートタイムの仕事に就き、雇用者はスタッフを一時解雇するかわりに勤務時間を短縮したためです。そのため、回復の進行状況をモニターしている経済学者は、現在は常勤雇用率にも注目しています。
中心ではない集団が離職することによって労働参加率が低下することがあります。たとえば、COVID-19のパンデミックの間、多くの香港の女性が離職しました。 (opens in new tab)子供や高齢者または病気の家族の世話をするためです。労働市場に参加していない人数は失業統計に含まれないため、労働参加率が低下することで、景気後退の深刻さから想定されるよりも失業率が低く見える可能性があります。
企業
景気後退では、企業は生産を減らし、投資決定を延期します。通常、景気後退からの回復のペースは、企業がどれだけ早く投資を再開できるかにかかっています。一部の企業、特にテクノロジまたは生産性への衝撃によって大きな影響を受けている企業や多額の債務を抱えている企業は、倒産します。
多くの経済学者は、景気後退時の企業の倒産は必要かつ望ましいと主張しています。それは、非効率的または非生産的な企業が排除され、新しい企業が活躍する余地が生まれるからです。一部の経済学者は、「ゾンビ」企業(中央銀行の低金利の助けを借りて破綻せずに存続しているが、実質利益を生み出すことも将来のために投資することもできない企業)の存在が、2008年の金融危機からの回復ペースの遅さの要因であると考えています。
社会的影響
景気後退期には、失業と貧困が増加します。長期にわたる景気後退や不況では、これによって健康問題が増加し、寿命が短くなる可能性があります。短期間の景気後退でも、最悪の影響を受けた人々は財産の深刻な減少に苦しむ可能性があり、生涯においてそれを取り戻せない可能性があります。
景気後退は、高齢者、労働市場に参入したばかりの若者、障害者など、職を見つけることが難しい人々にとって特に困難です。景気後退からの回復が一様ではなく、経済の一部が他の部分よりも早く回復する場合、「取り残された」人々は、長期にわたる失業と貧困に苦しむ可能性があります。景気後退の長期にわたる社会的影響は「傷跡」と呼ばれます。
景気後退のメリット
景気後退によって旧来の非効率的な企業が排除されるため、テクノロジに精通した無駄のないスタートアップや成長中の企業にとっては好機となる可能性があります。また、苦戦している企業は、十分な資金を持つホワイト・ナイト(救済者)を歓迎する可能性があるため、戦略的買収の好機でもあります。倒産した企業を安値で買い取ることもできます。
景気後退のビジネス上のメリットが最も明らかになったのは、おそらく2001年のドットコム企業の破綻でしょう。多くのテクノロジ企業が倒産しましたが、Amazon社、Google社、Apple社など、生き残った企業は今日の巨大テクノロジ企業になりました。
しかし、2020年の景気後退でさえ、ビジネスの勝者がいます。ロックダウンとソーシャル・ディスタンスにより、人々はイベントに行くかわりにストリーミング・サービスを利用し、海外に行くかわりに国内で休暇を過ごし、対面ではなくビデオで仕事上のミーティングや会議を開催し、スーパーマーケットやショッピング・モールへ出かけるかわりにオンラインで買い物をすることを強いられました。これらの新しい働き方と生活様式に適応できた企業は恩恵を受け、適応できなかった企業は敗れました。
景気後退期でも事業戦略と成長を推進
景気後退は、事業を見直して合理化し、コストを削減し、効率性を高める絶好の機会です。収益性の低い製品やサービスを削減し、将来に向けて最も有望なものに投資を集中させることができます。景気後退の中では、パートナーが倒産する可能性があることや、料金を再交渉する好機であることから、サプライ・チェーンを見直すことも必要になります。
さらに、企業を新しい成長機会に容易に方向転換できるかどうかを検討する価値もあります。たとえば、COVID-19のパンデミックでは、ライブ・イベント用の音響および照明技術を提供していた会社が、オンライン・イベントや会議用のビデオ・ストリーミング・サービスの提供に切り替えることに成功しました。オーストラリアのジン製造業者Earp Distillery社 (opens in new tab)は、手の消毒剤の製造に切り替えました。そして、何百ものレストランが人々の家庭に高品質の食事を配達し始めました。
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景気後退は困難な時期ですが、機会でもあります。その機会を捉えることで、リスク選好を持つ機敏な企業および投資家は、景気後退を乗り切るのみでなく、そこから利益を得ることができます。新しい事業分野は、事業所有者の利益を生み、景気後退で職を失った人々に雇用を与え、何よりも将来への自信をもたらします。
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景気後退のFAQ
景気後退は何によって発生する可能性がありますか?
多くの景気後退は、自然災害、戦争、破壊的な技術変化、原油や商品の価格の突然の上昇などの予測不可能な衝撃によって引き起こされます。また、株式市場の暴落や銀行の破綻によっても引き起こされることがあります。あるいは、単に恐れや先行き不透明感といった漠然とした雰囲気から生じることもあります。
景気後退はどれくらい続きますか?
景気後退は数か月から数年続くことがあります。
景気後退は予測できますか?
景気後退を予測することは簡単ではありませんが、それに成功した経済学者もいます。たとえば、オーストラリアの経済学者スティーブ・キーン氏は、2008年の金融危機と景気後退を、それが起こる数年前に予測しました。
景気後退の警告となる兆候は何ですか?
差し迫った景気後退の兆候には、債券のイールド・カーブの逆転、株式市場の変動性の上昇、銀行貸出の減速、インフレの低下、実質GDPの低下、失業率の上昇、小売売上高の急激な落ち込み、企業と消費者の信頼感の低下などがあります。