最新の統合事業計画(IBP)は、サプライチェーン最適化、財務プランニングと分析(FP&A)、および業務上のベストプラクティスを組み合わせたものであり、リスクを管理しながら、迅速性、節約、および今日の消費者が要求する応答性を実現するという全社的な文化によって促進されるものと考えることができます。

IBPは、あいまいで流行語を数多く含むプロセス手法として、何年も前から存在していました。通常は、肥大化したグローバル企業が、より明敏な競合他社によって「かつての」フォーチュン500リストに追いやられる前に、サイロ化した販売、供給、財務、業務リソースを統合する必要があることを認識し、高額なコンサルタントを雇って導入していました。

ここでは、利益を最大化し、成長に関連するリスクを最小限に抑えたい企業にとって、IBPは再検討するに値することを説明します。また、高額なコンサルタントは必要ありません。

統合事業計画とは

理屈の上では、IBPは、企業のビジネス目標を財務、サプライチェーン、製品開発、マーケティング、およびその他の業務部門と整合させるプロセスです。自動車メーカーと連携している部品サプライヤーが設計変更に対応するために絶えず設備を刷新する必要がある場合や、わずかの利益率で運営している食品メーカーが、不確実なサプライチェーンと気まぐれな顧客の嗜好の両方を管理する必要がある場合を考えてみましょう。

遅れが生じれば、競合他社がすぐにそのビジネスを奪うことでしょう。迅速であっても、ばらばら対応では、顧客を維持できるかもしれませんが、売上原価(COGS)が上昇し、収益性が低下する可能性があります。

例として、製造および倉庫業務向けのカスタム機械を取り扱う架空のメーカーPickerBotsを考えてみましょう。2017年に同社が創業したとき、レストラン向けの供給にニッチな市場を見出しましたが、2020年にビジネスが大幅に減速し、創業者は事業を再編することにしました。単にマーケティングを変えるのではなく、同社はビジネス戦略を刷新することにしました。トップダウンのシナリオ・プランニング活動を通じて、研究開発(R&D)、需要予測、収益性と収益の分析、サプライチェーン計画、マーケティング戦略、および販売戦略を再編成しました。

革新的な思考を大切にする企業文化は既に作られていましたが、創業者は、戦略的計画と日常業務を結び付けることに関して、改善の余地があることに気が付きました。そこで、実力のある新しいCOOを就任させ、財務目標と予算を重視しながら、業務を製品需要計画、販売、およびマーケティングと整合させました。

主なポイント

  • IBPを採用する企業では、購入、生産、在庫から販売とマーケティングや財務目標と予算への直接的なつながりがあります。
  • IBPの重要な利点は、資材を適切な価格で、適切なタイミングで、市場の需要を満たすのに適した数量で購入できることです。
  • IBPが適切に機能すると、部門間のコラボレーションが緊密になり、信頼が高まり、意思決定が改善されます。
  • IBPは、企業文化の大きな変化を必要とし、経営陣の揺るぎない注力なしに成功することはありません。

統合事業計画の説明

多くの組織は、IBPをサプライチェーン中心の活動であると勘違いしています。サプライチェーン計画を販売や業務から財務まで、他の部門に結び付けることは重要ですが、それは1つの要素にすぎません。

IBPは、ビジネス目標と財務目標を、全社の意思決定および実行と整合させます。

財務プランニングと分析(FP&A)との重複があります。 IBPの取り組みでは、全社からデータを収集するため、企業は予測分析を改善できます。そのため、購入部門が部品の不足を予測した場合、供給部門と業務部門は顧客への影響が出る前に調整することができます。

また、これは一回限りの活動でもありません。PickerBotsの新しいCOOは、少なくとも36か月は状況を注視するよう促します。各リーダーは、財務および業務に関する結果を継続的に確認、修正、報告しながら、その長期的な計画を監視し続ける必要があります。サプライチェーンにどのようなギャップが存在し、どうすればそれを解消できるか、シナリオ・プランニングを更新する必要があるか、適切な財務KPIを追跡しているかなどを検討する必要があります。

IBPの重要な要素は、財務と業務を統合することです。PickerBotsが従うことを計画している構成を次に示します。

infographic integrated business planning

統合事業計画が重要な理由

IBPに取り組む企業は、保有コストの削減、顧客サービスと需要履行へのより迅速な対応、新製品の市場投入までの期間の短縮、需要計画と履行の相関性の向上など、多くの実質的な利点を実現しています。

PickerBotsは、シナリオ・プランニングと戦略会議を実施した後、新しい協働ロボット(コボット)市場への参入を決定しました。協働ロボットは、人間の労働者と安全に協力できるように設計されています。PickerBotsの経営幹部は、製造ラインや農作業で使用するための精密なモーター技術を備えた「ピック・アンド・プレイス」コボットの需要が増加すると考えています。

同社には戦略的な方針があり、COOは、財務計画や分析、サプライチェーンの最適化など、より実際的な分野に取り組む前に、3つの上位レベルのコンセプトに注力したいと考えています。これは、目標を設定しないと、PickerBotsの成功を定義できないからです。

整合と説明責任

次の3つの点に関して、すべての経営幹部の意見が一致する必要があります。自社の目標は何か。各経営幹部にとって成功とはどのようなものか。自分とチームはどのように貢献し、責任を果たすか。

同社の目標は、業界での目標、業務とサプライチェーンに関する目標、財務目標、マーケティングと販売に関する目標の4つの分野にグループ化されます。経営陣は、すべての目標が戦略と整合し、実行可能かつ達成可能であることを確認します。

例:

業界での目標: 市場で最も革新的なコボットを提供する

成功の形: 傷みやすい作物をつかむ能力が人間の労働者と同等か、それを超えることができる製品を開発する。

担当: R&Dチーム

財務目標: 収益源を多様化する

成功の形: 1つの市場や業界への依存を最小限に抑える。すべての新製品に組み込まれたセンサーで駆動するサービス・アームを追加して、メンテナンス契約から継続的な収益を生み出す。

担当: CEOと財務部門が主導し、部門横断的

その他の目標としては、「各手順のコストを管理し、仕様に適合したコボットを納期どおりに顧客に提供する」ことがあり、1年以内に、COGSを10%削減し、同社のネット・プロモータ・スコアを25%向上させることを期待しています。また、販売については「同社の農業用コボットの新規顧客を10社見つけ、各販売に保守契約を組み込む」ことが目標です。これは収益の多様化につながります。

重要な点: すべてのマネージャーは、自分の権限の範囲にある目標だけでなく、すべての目標に対して責任を負います。

十分な情報に基づく意思決定と対策

PickerBotsのサプライチェーン全体にわたって計画が分断されていて、エンジニアは資材を直接購入しており、一元的な計画やコスト管理はほとんど行われていませんでした。IBPプロセスの一環として、同社は販売・運用計画(S&OP)の原則を導入し、サプライチェーンとロジスティクスを改善します。

ここでの実行可能な目標には、各部門の活動状況を可視化することと、意思決定の効果を財務目標に結び付けることが含まれます。たとえば、コボットの運用ステータスに関するデータを自動的に収集して送信できるセンサーをR&D部門に組み込んでもらうことで、PickerBotsは、予防保全を能動的に実行できるようになり、デバイスがほとんどダウンしなくなります。これは、重要なセールス・ポイントとなり、メンテナンス収入につながる方法です。

組織全体では、各部門は部門固有のニーズにばかり注力するのではなく、すべての目標の観点で活動を検討する必要があります。つまり、企業は、マネージャーがより適切な意思決定をより迅速に行えるように、多数のデータを適切なタイミングで収集し、それを使用してレポートを発行する必要があります。そのためには、ERPへの投資やその他のソフトウェアへの投資が必要になる場合があります。

透明性と可視性

すべての部門の責任者が月次ビジネス・レビューに参加し、自社の目標達成の進捗を評価します。また、戦略計画もすべてのスタッフに公開されており、四半期ごとに全員参加の会議を行い、アイデアやインサイトを収集し、KPIについて検討します。

IBPプロセスには、次に示す4つの成功指標があります。

  1. 企業目標について、すべての関係者から同意を得て、 自社が何を達成したいか、どのようにそこに到達するかについて誰もが同意して理解できるようにします。目標の追求に関して各部門に明確な責任があります。
  2. データに基づいてビジネス上の意思決定を行う。 ここでは、適切なKPIを選択することと同様に、財務機能を製品、需要、および供給機能に統合することが重要です。
  3. 意思決定を結果に結び付け、説明責任を改善する。 すべての部門が正確な数値と予測を提供する責任を負うため、収益が不十分である場合に、CFOと財務チームが全責任を負わされるリスクは低くなります。
  4. 部門横断的なコラボレーションを受け入れる企業文化に転換する。 IBPプロセスは、開放性の確保と信頼の醸成を奨励するため、従業員の関与を促し、従業員を後押しする効果があります。アクション・アイテムとして、R&Dチームと製造チームの各メンバーは、毎年1週間にわたって、営業担当者の顧客訪問に同行します。

S&OPとIBPの違い

「IBP」という用語は、管理コンサルタント会社Oliver Wightによって作れたもので、1980年代初頭にWightが開発した販売・運用計画(S&OP)プロセスの次の段階を表すものです。

IBPとS&OPの大きな違いは、後者がサプライチェーンとロジスティクスの専門家、特に需要と供給の調整と計画に関わる専門家の領域となっていることです。S&OPは、実行を重視しており、従来の予算編成プロセスを含んでいます。

一方、IBPは、より部門横断的で包括的なアプローチを採用し、すべての部門の関与を通じてビジネス目標を達成します。そのため、理論的には、サプライチェーン・マネジメントは先行的で最適化されたものになります。

IBPにはS&OPプロセスが含まれますが、IBPは企業文化の変化を伴うため、経営幹部の同意がなければ成功しません。

S&OPとIBPの大きな違いは、次のとおりです。

S&OP IBP
会議が多く、成果を出すこと重視 月次計画では、結果の最適化を重視し、シナリオ・プランニングをツールとして活用。その結果、組織の機動力が向上する
供給と成果を促進する短期計画 十分な情報に基づく意思決定を行うための長期的な視点
従来型の静的な予算編成手法 関連するさまざまなKPIを含む、包括的で「生きた」財務計画
需要と供給を重視 計画プロセスに全社が関与

統合事業計画・プロセスの6つのステップ

PickerBotsは、目標を設定したので、IBPの取り組みにおける次のステップに進むことができます。

  1. 何が自社の妨げになっているかを判断します。 成長や収益性が不十分でしょうか。製品ポートフォリオが複雑すぎるのでしょうか。業界での競争力を失ったのでしょうか。このメーカーの主要な問題は、1つのニッチな市場に重点を置きすぎていることでした。
  2. 従業員の関与を促し、教育します。 経営幹部が目標に同意したら、その熱意を各階級に浸透させる必要があります。すべての関係者が統合されたビジネス・プランニングに取り組まなければ、成功を逃してしまいます。COOは、正式な従業員エンゲージメント・プログラムには、従業員がビジネスの成功のために努力し続け、戦略目標を達成するために積極的に取り組むよう促す効果があることを認識しています。
  3. 専門チームを設置します。 IBPの成功は、しっかりとした調整、継続的なコミュニケーション、KPIに関する説明責任を通じて実現されます。これは、企業文化の変化であり、全社に広がるまで時間がかかります。物事を迅速に開始するために、PickerBotsは、それぞれの機能領域の中で参加意識の高い従業員を特定し、毎日20分間のスタンドアップ・コール担当に割り当てました。現在、製造に必要なRFIDリーダーの出荷が2週間遅れるとします。購入チームのメンバーが、その情報を速やかに共有するため、販売部門は顧客の期待を管理でき、財務部門は収益が遅延する理由を説明できます。問題が再発した場合、同社は新しい仕入先を探すことができます。こうして、予期しないトラブルを回避できます。
  4. プロジェクトや製品の優先度設定プロセスを確立します。 IBPには規律が必要です。自社の戦略目標を前進させるプロジェクトにのみリソースを割り当てます。製品についても同様です。これは、まだ販売されているが成長の可能性がないラインを終了させることを意味する可能性があります。リソースを必要とするマネージャーや、製品またはサービスを発表するアイデアを持っているマネージャーは、期待される利点とコストが目標と整合するかどうかを明らかにするために作られた費用対効果分析テンプレートを記入します。経営幹部は、このプロセスを使用して優先度を設定します。もはや、聖域は存在しません。
  5. 財務チームの影響力を拡大します。 財務チームは、製品計画会議、サプライチェーン最適化会議、販売戦略会議に参加する必要があります。具体的には、FP&A機能に精通した財務チーム・メンバーを選択します。FP&Aの担当者は、経営陣による主要な意思決定に必要な情報を提供し、組織全体の財務データを収集および分析して、目標が達成されているかどうか、達成されていない場合は、その理由は何か、どのように問題を解決すればよいかを示すレポートを作成します。多くの小規模企業と同様に、PickerBotsには専門のFP&Aスタッフがいないため、財務責任者は、ビジネスを理解し、データ収集と数値処理の能力を持っている会計チーム・メンバーを割り当てます。
  6. IBPをサポートするテクノロジーとツールを導入します。 予測プロセスが、財務部門によって課される四半期ごとまたは年次の活動とみなされ、部門にとっての利点がほとんどない場合、IBPは成功しません。特定の時点で静的な予算が発生する企業は、ローリング・フォーキャストを導入して、ビジネスが順調に進んでいることを確認する必要があります。また、財務チームは、各業務領域から提供される必要なデータに、簡単にアクセスできる必要があります。ローリング・フォーキャストとデータのより適切な使用の両方を実現するには、テクノロジーと透明性への取り組みが必要です。測定できないものは、管理できません。

従来の予測とローリング・フォーキャスト

従来の予測 ローリング・フォーキャスト
過去のデータを使用して将来のビジネス指標を推定する、一定の期間(通常は1年)について計算された固定型の財務計画。 年間を通じて定期的に更新され、変化が反映される「生きた」財務計画。
カレンダーベース(年次、四半期) カレンダー予測にリアルタイムの調整を加えたイベントベース
固定目標(売上、利益、その他のKPI) 社内外のイベントに基づく目標の動的調整
リソースの割り当てに柔軟性がない 動的な目標に基づいて、リソースの再割り当てが発生する場合がある
手動、勘定科目ベースであり、多くの場合、会計サイクルに結び付けられる ビジネスの推進要因ベースで業務に結び付けられる

統合事業計画を成功させるための5つのヒント

COOはPickerBotsを成功に導くために次のような方法を計画しています。

  1. 混乱を解消し秩序をもたらす方法としてIBPを売り込む。 たとえば、大企業、特に合併と買収を数多く実施している企業には、何千ものSKUと製品コードが存在する場合があります。ある大手メーカーは、Oliver Wightと協力することにより、IBPを使用して、120,000個あった品目番号を約10,000個まで減らし、在庫を50%削減しながら、納期通りの全数納品を最大20%改善しました。小規模企業の場合、IBPを使用することで、SKUの90%を削減する必要がある状況に陥るのを防ぐことができます。
  2. 継続的な改善の考え方を導入する。 本番システムまたはサービス・システムのすべての部分(特に人)は相互につながり、情報をやりとりし、成果を生み出すために互いに依存しています。この慣行の起源は、「より良いものにするために変化する」ことを意味する日本語のカイゼンという用語にあります。日本発祥のこのビジネス哲学では、継続的に業務を改善し、組み立てラインの従業員からCEOまで、すべての従業員を巻き込むことを目指しています。これはまさに、IBPを強化する方法です。
  3. CIOから同意を得る。 PickerBotsのCIOは、製造IT分野の経験があり、IBPと共通点のある総合的品質管理(TQM)の概念に精通しています。これは、IBPの利点を伝え、ERP、経営管理ソリューション(EPM)、サプライチェーン・マネジメント(SCM)、リアルタイム対応の会計および財務ソフトウェアなど、IBPを機能させるのに有効なテクノロジーの予算を確保するうえで大いに役立ち、特に「一組のデータ」による価値提案を実現するために重要なことでした。
  4. リスク管理の原則を適用する。 規模の大小を問わず災害は発生します。IBPの精神には前向きで楽観的な傾向がありますが、部門責任者がシナリオ・プランニングやWhat-If分析を行い、1つの市場への過度の依存などの業務リスクをモデル化していることを確認してください。専門チームに、危機管理対策チームとしての2次機能を割り当てることを検討してください。
  5. 人事をおろそかにしない。 人件費は、企業における最大の運用費である可能性が高いため、人件費がIBPの取り組みに効果をもたらしていて、妨げとなっていないことを確認してください。人事担当者は、応募者の特性(データドリブンで透明性を好むチーム・プレーヤーであるなど)を特定し、IBPの成功に貢献する可能性があるかどうかを予測できます。

統合事業計画の利点

調査によると、IBP導入の主なメリットは、収益の増加、予測精度の向上、完全注文達成率の改善です。

さらに次の3つの主要な利点があります。

リアルタイムのインサイト: たとえば、企業がローリング・フォーキャストを導入すると、財務部門は支出やキャッシュ・フローに関する問い合わせに迅速かつ正確に回答できるようになります。全体的にKPIの正確性が向上することが期待できます。

当事者意識: IBPを全社的に採用している企業では、説明責任の裏返しとして、すべての従業員がすべての目標の達成に対する責任を負います。したがって、意思決定を行う権限が分散され、結果に対する責任に結び付けられていることを確認すべきです。なぜなら、説明責任が成功への貢献につながらないと、士気を大きく低下させるからです。企業は、報酬を目標の達成や目標を超える成果に結び付けることで、当事者意識の文化をさらに育成することができます。

顧客満足度の向上: 納期通りの全数納品が多いほど、顧客は満足しますが、IBPによりネット・プロモータ・スコアを向上させる方法は、それだけではありません。計画が適切であるほど、顧客の要望をより的確に把握でき、企業文化がしっかりしているほど、顧客の共感が高まり、それに伴う利点につながります。

統合事業計画を導入する際の課題

企業がどこからIBPを始めるかは、企業の成熟度によって異なります。競争重視の企業文化を持ち、プロセスが高度にサイロ化された企業では、相当の努力が必要です。このような企業は、従来のトップダウンによる管理構造、将来を見据えた予測を生成するのが難しい静的な年間予算編成、および現在の顧客ニーズと一致しない時代遅れのビジネス計画に依存している傾向があります。

これらはどれも構造上の厄介な課題ですが、経営幹部が組織の下位レベルを信頼せず、意思決定の権限を与えることを嫌う場合はさらに悪い状況です。独裁的で指揮統制型のスタイルを持つ企業は、IPBの利点を実現することを望むなら、自発的に権限を分散しなければなりません。

成熟し統合されたプロセスや平等主義の企業文化を持つ企業でさえ、「ボトムアップ」ではなく「トップダウン」型のKPI報告や予算編成によって失敗することがよくあります。IBPでは、財務部門が前年の売上に基づいて予算を編成することや、トップダウン式に部門予算を提示することを企業に推奨していません。むしろ、企業はボトムアップのプロセスに慣れる必要があります。ボトムアップのプロセスでは、最初に各部門が達成を希望する計画を立案して、そのコストを計算し、財務チームがその結果を受け取り、合計予算を計算します。

少なくとも多少の柔軟性のある予算編成プロセスを使用したことがない企業は、この移行を困難に感じる可能性があります。変革を加速させる方法の1つとして、最新のゼロベース予算編成(ZBB)が考えられます。

2021年のゼロベース予算編成の手順

  1. ZBBの戦略的ビジョンを作成します。コスト目標、関連性の高いKPI、企業目標を特定します。
  2. 事業部門を評価して、ZBB候補(「意思決定部門」とも呼ばれる、または独自の予算で独立して運営される自社の組織)を選択します。
  3. 選択した予算を最初から(つまり、ゼロから)検討します。
  4. 各意思決定ユニットは、目標、資金調達ニーズ、企業目標に照らした正当性、技術的実行可能性、代替行動方針の観点から各活動を分析した「意思決定パッケージ」を提供します。
  5. 提案された各項目を評価して、それが自社にもたらす価値と、コスト全体が理にかなっているかどうかを確認します。その支出が自社に何をもたらすかを検討します。
  6. 企業目標に基づいてコストに優先度を設定します。大きな価値を生み出さない領域の経費を削減します。
  7. 生産性が高く、自社の成長推進要因に整合する領域に資金を割り当てます。

統合事業計画の要素

統合事業計画は、定期的に実施されます。この例では、最も一般的な毎月実施を使用します。

これらのステップは、IBPコンサルタントにとって標準的なものであり、ほとんどの業界に適応でき、市場調査と戦略的計画、R&Dと製造、需要予測と予測分析、収益性分析、サプライチェーン最適化、マーケティングと販売戦略で構成される、PickerBots COOによる適切なサイクルに組み込むことができます。

  1. プロダクト・マネジメント・レビュー。 これには、製品ポートフォリオ・マネジメントのすべての要素が含まれます。部門横断的なチームが毎月ミーティングを行い、すべての製品関連プロジェクトの全体的なステータスを確認します。プロジェクトが順調に進んでいるか、新しいリスクと機会を特定したか、最も価値の高い製品やサービスを優先しているかを確認します。目標は、製品ポートフォリオをビジネス目標に整合させ、必要な原材料と製造現場の生産能力を確実に確保することです。製品マネージャーは必要に応じて変更を行い、更新されたマスター計画を、変更の実施に必要なリソースとともに公開します。
  2. 需要計画にそれを反映します。 これは部門横断的なプロセスであり、企業が過剰在庫を最小限に抑え、サプライチェーンの混乱を回避しながら、製品に対する顧客需要を満たすのに役立ちます。需要計画により、収益性と顧客満足度を高めることができ、効率を向上できます。このチームは、販売、マーケティング、財務のメンバーを集めて、適切な市場を適切な方法でターゲットにしているかどうかを確認します。最適化された需要計画を作成します。関連性の高いKPIには、販売予測の正確性、在庫回転率、充足率、注文履行のリードタイムが含まれます。
  3. 次は、供給計画チームの出番です。 これらのサプライチェーン専門家は、予測される需要を満たすコスト効果の高い、最適な方法を見つけます。重要なのは、複雑なサプライチェーンを可視化することです。正式なサプライチェーン可視化(SCV)プロジェクトは、在庫不足や注文履行の問題などの弱点を見つけて、それらが大きな問題になる前に修正するのに役立ちます。売上原価(COGS)の低減が目標です。
  4. 統合調整チームは、 最初の製品計画、需要および供給計画をまとめ、24か月または36か月の予測に基づいて、それらを1つの包括的なビジネス計画に統合します。反復的な更新では、チームは重要な変更点を強調します。個々のチームでは実行できない決定については、経営幹部のレビューに向けて準備を行います。
  5. 経営陣は、 対立を解決し、更新された計画を全社にロールアウトします。

統合事業計画のコンポーネント

統合事業計画のコンポーネントには、計画、実行、モニターおよび調整の3つのカテゴリがあります。

各カテゴリに分類される具体的な活動は、コンサルタント会社やテクノロジー・サプライヤーによって異なります。サプライチェーン計画とより適切に整合している活動もあれば、S&OPや財務計画を中心として、他の機能領域とのつながりがある活動もあります。その他は業界固有の活動です。

例として、Oracleの製造業向けソリューションであるIBPX(Integrated Business Planning and Execution)を見てみましょう。主要なコンポーネントは次のとおりです。

  • トップダウンとボトムアップの推進要因ベースの計画と予測
  • M&Aおよび戦略的取り組みのリスク・モデリング
  • 戦略的計画および業務計画のための完全な財務諸表構造
  • 予測的および処方的な分析と計画
  • 事前シードされたS&OPプロセス
  • ほぼリアルタイムでの需要と供給のバランス確保
  • リアルタイムのバックログ管理
  • 実績に基づいた予測および修正処理の自動化
  • AI対応の運用計画(販売地域やノルマなど)
  • 自動化された意思決定と統合された、IoTおよびセンサーのデータフロー

バックログ管理やIoTおよびセンサー・データのサポート強化などの項目は、PickerBotsのようなメーカーにとって重要です。小売業者の場合は、高度な在庫管理に、より関心があるかもしれません。重要なことは、スイートとして購入したか、インテグレーターまたは社内チームが構成したかに関係なく、どのソリューションも、権限のあるすべての関係者がアクセスできる単一の最新データセットに基づいて、長期、中期、短期の計画を立案する機能をサポートしていることです。

また、「What-If」シナリオを簡単にモデル化する機能、堅牢な予算編成や原価計算の機能、およびAIや予測分析などの高度なテクノロジーへのロードマップがあることを確認してください。

統合事業計画の例

Oliver Wightの顧客が120,000個のSKUを約10,000個まで減らした例は既に述べました。その会社であるUponor Groupは、一連の買収の結果として生じた、膨大な在庫、非常に複雑なポートフォリオ、サイロ化された部門や遠く離れた拠点間のコミュニケーションの欠如を踏まえ、IBPに注目しました。このフィンランドの企業では、飲料水供給用の製品に加え、放射暖冷房装置を販売しており、30か国に3,900人の従業員が勤務しています。Uponorでは、子会社全体の財務情報を一元的に把握するのに苦労しており、部門ごとに在庫管理に関する独自の慣行がありました。休日などの小さなイベントがある場合、一部の現場では「万が一に備えた」在庫を蓄積しており、倉庫では二重在庫が常態化していました。異なる国にある子会社は、同じ品目に対して異なるSKUを設定しており、R&Dは局在化し、全社的なコラボレーションがありませんでした。

Uponorは、まずサプライチェーンに焦点を当て、S&OPプロセスを導入し、翌年にIBPに取り組みました。その結果、純売上高の11億ドルの増加、納期通りの全数納品の30%改善、在庫の50%削減、可視性の向上を実現しました。

また、米国を拠点とするテクノロジー・プロバイダーのJuniper Networks(新しいタブで開きます)も、IBPによるデジタル・サプライチェーンの導入に重点を置いたIBPプロジェクトを実施しました。このプロジェクトでは、ビジネス・プランニング・プロセスを通じて、サプライチェーン、製品および顧客のポートフォリオ、顧客需要および戦略的計画全体にS&OPを拡張します。

プロジェクトに着手して以来、Juniperはリードタイム達成率の55%上昇と在庫コストの15%削減を実現し、IBCプロジェクトで良好なROIを達成できるようになりました。

統合事業計画の歴史

Oliver Wightは1980年代に、需要量と供給量のバランス確保を希望するクライアントのための手法としてS&OPを開発しました。その後の数年間で、このプロセスは進化し、財務、在庫、新製品の導入を統合しました。

このコンサルタント会社は、1990年代後半にS&OPという名称を、1つの最適化された計画に基づいて企業のすべての部門を統合するプロセスを表す統合事業計画に変更しました。その後、「エンタープライズ統合事業計画」(EIBP)という新しい用語が登場しました。EIBPには、シナリオ・プランニングと拡張されたサプライチェーン・コラボレーションが含まれており、大企業はEIBPを活用して、AI、ビッグデータ、高度な分析などの新しいテクノロジーをどのように導入するかを検討します。

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統合事業計画の活用

IBPは計画と業務の透明性を高めるため、「ジャスト・イン・タイム」製造に移行する企業に最適です。また、企業はデータを蓄積すれば、IBPを活用して予測できるようになります。これは顧客満足度の向上につながります。

たとえば、PickerBotsでは、通常、Q3にマザーボードのサプライチェーン容量に制約が生じることに気が付きました。このインサイトにより、販売部門とマーケティング部門は協力して、Q2またはQ4にシステムを受け取るよう顧客に促すことができ、製造部門は製品を事前に構築でき、サプライチェーン責任者は問題の部品の代替調達先を検討することができます。

IBPの将来を考えると、IBPは次のような点で企業を支援すると期待できます。

  • より強い確信を持って、長期にわたる戦略計画、モデリング、M&A活動に取り組むことができます。
  • リアルタイムのセンサー情報や機械学習(ML)によるパターン認識などの高度なテクノロジーを使用して、ビジネスに影響が出る前に予期しないイベントを検出して、関係者に通知できます。

企業が自動化の活用を進めるにつれて、人間の介入なしに、分析に基づいて処理するように高度なIBPシステムを設定できます。パン屋のチェーン店を考えてみましょう。長期の天気予報システムに接続されたシステムは、熱帯暴風雨を検出すると、バニラ・ブレッドの価格を上げ、自動的に追加注文を行うことでしょう。

ERPなどのクラウドベースのテクノロジーは、これらさまざまな進歩を支えています。たとえば、PickerBotsは毎月必ず販売目標を設定します。しかし、多くの場合、これらの計画は、経営陣による確認や変更承認が必要なため遅れが生じていました。つまり、知らないうちに業務の円滑さが損なわれていました。NetSuite Planning and Budgetingなどのツールを使用すると、計画プロセスが自動化され、企業の財務データおよび業務データが一元化されるため、財務チームは最新情報を迅速に提供できます。

次のステップは何でしょうか。ビジネス・パートナーや仕入先、さらには顧客へとIBPを拡大することです。しかし、企業にとって、自社の企業文化とテクノロジーを整えることが先決です。