どのような財務指標も、単独では意味をなしません。ある企業が前四半期に記録的な売上を達成したとして、それ自体は素晴らしい成果だったとしても、もし費用も過去最高に達していれば、その企業の利益は前四半期と変わらない可能性があります。そうした情報を得るため、社内の経営陣や、投資家および金融機関などの外部関係者は、企業の損益計算書(P/L)に注目します。貸借対照表やキャッシュフロー計算書と並ぶ3つの主要な財務諸表の1つである損益計算書(P/L)には、特定の会計期間における企業の収益、費用、純利益などの重要な財務情報が含まれます。実務的には、損益計算書(P/L)は企業の営業成績や業務効率を示すのに役立ち、将来の成功を予測するうえで有用な情報となります。
損益計算書とは
損益計算書(P/L)は、特定の会計期間(通常は月次、半期および年次)のすべての費用を収益から差し引いた後に残る利益の金額を追跡します。利益は純利益または「ネットプロフィット(net profit)」とも呼ばれ、損益計算書の最終行に記載されることから、「ボトムライン(bottom line)」という別名でも知られています。
営業収益と純利益の間には、ビジネス・パフォーマンスを説明できるだけでなく、強みのある分野や改善が必要な分野を特定できる他の重要な財務データが存在します。日本では上場企業に対して、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準である日本会計基準、国際会計基準(IFRS)、米国会計基準などに基づく財務諸表の開示が義務付けられていますが、非上場企業であっても、損益計算書などの財務データを継続的に把握・分析することで、経営改善や的確な意思決定に活用することができます。
主なポイント
- 損益計算書には、企業の営業収益、費用、利益、および損失が含まれており、特定の会計期間における純利益が算出されます。
- 経営陣は損益計算書(P/L)を分析し、収益の増加と費用の削減のいずれか、または両方によって収益性を高める方法を決定します。損益計算書(P/L)は、融資や投資を検討している金融機関や投資家にとっても有用なツールです。
- 損益計算書は、現金主義または発生主義のいずれかの会計方式を用いて作成されます。
損益計算書の説明
損益計算書は、会計期間における営業成績を示すものであり、収益、費用、そして収益性を反映します。収益が費用を上回る場合、その結果として「利益」が生じます。企業の利益が大きいほど、その成長や事業への再投資、資金調達、融資の獲得、株主への還元といった面での能力が高まります。費用が収益を上回る場合、それは「損失」と呼ばれます。
利益は、企業の営業収益からさまざまな費用や収益項目を加減することで算出されます。この「営業収益」は損益計算書の最上部に表示されることから、「トップライン(top line)」とも呼ばれます。収益から差し引かれる項目としては、売上原価、営業費用および営業外費用、そして税金が挙げられます。銀行口座からの利息収入などの営業外収益は、総額に加算されます。その結果として得られるのが、企業の利益または損失です。
日本の上場企業では、半期ごとに決算開示資料として損益計算書を提出することを義務付けられています。こうしたデータを継続的に追跡することで、経営者は改善が必要な領域を把握し、将来の財務パフォーマンスをより正確に予測できるようになります。たとえば、ある期間における原材料費の異常な増加が、損益計算書を作成して初めて明らかになることがあります。損益計算書(P/L)は、企業が利益を上げていることや、その利益がどこから生まれているのかを、投資家や金融機関などの外部関係者に示す手段ともなり、その企業が投資や融資に値するかどうかを判断するうえで役立ちます。
損益計算書(P/L)の仕組み
損益計算書は、企業の収益と費用を明らかにするものであり、詳細であればあるほど、収益から始まり最終的な純利益または純損失に至るまでの企業内部の動きを把握したいと考える社内外の関係者にとって有用なものとなります。損益計算書(P/L)にはいくつかの種類があり、提供される情報の詳細さのレベルはさまざまです。たとえば、シンプルな損益計算書(P/L)は、利益と損失の概要を把握するための基本的な財務データの要約を提供するのが一般的である一方、より詳細な損益計算書では、製品ラインごとの売上や費用の内訳など、より細かなデータが含まれることもあります。また注目すべき点として、損益計算書(P/L)には通常、前年同期間など過去の会計期間との比較データが含まれており、アナリストが利益や損失の推移を比較できるようになっています。
前述のとおり、損益計算書は、月次、半期、年次で作成される3つの主要な財務諸表のうちの1つです。これら3つの財務諸表を組み合わせることで、企業の財務状況を包括的に把握することができます。残りの2つの財務諸表は次のとおりです。
- 貸借対照表は、資産、負債、資本などを含む、企業の財務状況をある特定時点(通常は会計期間の期末)における累積的なスナップショットとして示すものです。
- キャッシュ・フロー計算書は、企業が資産を現金に換える能力、すなわち流動性を示すものです。ある一定期間における営業活動、投資活動、財務活動を通じて、企業に出入りした現金および現金同等物の金額を一覧で示します。
基本的な損益計算書(P/L)の計算式
損益計算書は、特定の会計期間における売上から得られた営業収益を起点とする、シンプルな計算式に基づいて作成されます。利息収入などの本業以外の(副次的な)事業活動からの営業外収益や、帳簿価額を上回る価格での設備の売却などの一時的な取引による利益は、特別収益に加算されます。事業活動に関連する営業費用や、訴訟による支払いなどの本業以外の活動に伴う特別損失は差し引かれます。その結果として得られるのが純利益であり、企業が利益を上げたかどうかを示す指標となります。
純利益を算出するための基本的な計算式は次のとおりです。
営業利益 = 営業収益 − 営業費用
経常利益=営業利益+ 営業外収益− 営業外損失
純利益 = 経常利益+特別収益 – 特別損失
たとえば、ある会計年度末において、企業が売上によって6,750万円の営業収益を上げ、完全に減価償却された資産の売却によって350万円の特別収益を得たとします。同じ年度に、その企業は4,000万円の営業費用(大部分は売上原価に関連)を計上し、さらに550万円の副次的な特別損失も発生したとします。損益計算書(P/L)の計算式を用いると、純利益は次のように算出されます。
純利益 = 営業収益 – 営業費用 + 特別利益 − 特別損失
(¥67,500,000 – ¥40,000,000 + ¥3,500,000 – ¥5,500,000)
純利益 = ¥25,500,000
損益計算書でわかること
損益計算書は、通常いくつかの項目(セクション)に分かれて構成されている。最上部のセクションには、売上高が記載され、その後に売上原価(費用項目)が続きます。この2つの差額は売上総利益と呼ばれ、企業が直接的な費用をすべて支払った後に残る金額を示しています。簡易的な損益計算書では、売上原価が1行でまとめて記載されることもありますが、より詳細なものでは、原材料費や労務費といった具体的な項目に分けて表示される場合もあります。
次のセクションには、営業費用がすべて記載されます。これらは商品の製造に直接関係はありませんが、事業運営に必要な費用です。これには、管理費、事務用品、広告、保険が含まれます。これらの営業費用は売上総利益から差し引かれ、営業利益が算出されます。営業利益は企業の本業における収益性を評価する指標です。原材料価格など、自社でコントロールできない要因に影響される売上原価に比べて、営業費用は経営者の裁量で調整しやすい傾向があります。
次に、その他の雑多な財務上の利益および損失が記載されます。特別利益には、企業に有利な訴訟の和解金や、帳簿価額を上回る価格での資産売却益などが含まれます。特別損失には、同様の内容であっても、企業側からの支払いという形で発生するものが含まれます。たとえば、訴訟の和解金の支払いや、帳簿価額を下回る価格での資産売却などが該当します。その結果得られるのが税引前利益(EBT)であり、そこから税金を差し引いたものが純利益となります。純利益は、所有者(株主)への分配に充てられるほか、負債の返済に使用されたり、社内に留保されて事業拡大のために活用されたりします。
損益計算書の構成要素
損益計算書の内容や詳細の程度は企業によって異なり、どのような分析を行うか、また提出先(たとえば投資家、金融機関、監査機関など)に求められる基準や情報に応じて、最も合理的な形で構成されます。たとえば、建設業における会計処理は、法律事務所とは異なる費用項目を持つ可能性が高く、それぞれの損益計算書(P/L)にもその違いが反映されます。ただし、企業の損益計算書に共通して見られる主な項目(勘定科目)には、次のようなものがあります。
- 営業収益:損益計算書の最上段には、商品やサービスの純売上高が記載されます。この金額には、返品、値引き、その他販売過程で行われた調整も反映されています。より詳細な損益計算書(P/L)では、営業収益(売上総額)と、そこから売上総利益(粗利)に至るまでの各種控除項目が示されることもあります。また、収益が製品別やサービス別、その他企業が定めた基準に沿って区分されている場合もあります。
- 売上原価:商品を製造したり、サービスを提供したりするために必要なすべての直接費用が含まれます。原材料の仕入れ、保管費、製造に使用される部品、労務費などが、売上原価に含まれる代表的な項目です。使用する会計手法によっては、製造設備の減価償却費も売上原価に含まれる場合があります。
- 売上総利益:売上総利益(粗利とも呼ばれます)は、収益から売上原価を差し引くことで算出され、企業の本業における収益性を示します。売上総利益がなければ、企業は営業費用や税金などの支出を賄うための資金を確保することができません。
- 営業費用:製品やサービスの生産には直接関与しない、事業運営のための費用です。販売費および一般管理費(SG&A)などの営業費用には、本社の光熱費、賃貸料、給与、マーケティング費用、配送費が含まれます。
- 営業利益:売上総利益からすべての営業費用を差し引いて算出されます。営業利益は、企業の中核的な営業活動から得られる収益を示す、重要な収益性指標です。
- 特別収益・損失:企業の中核的な活動以外で発生する雑多な費用や一時的な損失や、利息の支払い、古くなって減価償却された資産の売却、訴訟の和解金などが含まれます。これらはすべて、収益やキャッシュフローに影響を与えます。
- 税引前利益(EBT):税引前利益(EBT)は、営業利益にすべての特別収益を加え、特別損失を差し引いた後に算出されます。税引前利益(EBT)は、類似した企業同士の業績を比較する際に有用な指標です。
- 純利益:純利益は損益計算書の最終行に記載され、税金を差し引いた後に算出されます。この「すべてを詰め込んだ」計算は、投資家や融資担当者が企業の財務健全性を評価する際、最初に注目するポイントであることがよくあります。
- 1株当たり利益(EPS):上場企業の場合、EPSは純利益を発行済株式数で割って算出されます。投資家はこの数値を参考にして、その企業に投資するかどうかを判断します。
損益計算書の種類
損益計算書は通常、一般的な形式のいずれかに従って作成されます。一般的な損益計算書(P/L)の種類は以下のとおりです。
- 報告式:企業の決算発表などで普段よく目にする形式のことで、上から下に表示されているのが特徴です。段階的に利益の表示をし、本業による儲けなのか、それとも本業以外の儲けなのかなどが把握できます。
- 勘定式:損益計算書の勘定式は左右に分けられ、左側に費用、右側に収益が表示されるのが特徴です。勘定式は勘定科目ごとに表示しており、損益の内容が分かるようになっているため、損益計算書の詳細を把握できます。
損益計算書の主な違いは形式だけではなく、作成に用いられた手法を分析することで明らかになります。それが現金主義と発生主義の違いであり、利益の「計上の仕方」と「タイミング」に大きな影響を与える可能性があります。GAAPに準拠した財務諸表では、使用された会計手法は、損益計算書の脚注に開示されます。
現金主義
現金主義では、売上が発生した時期や請求書を受け取った時期にかかわらず、現金が顧客から受け取られた時点、または事業者から支払われた時点で収益や費用を認識します。この方法は2つのうちでより簡便であり、主に中小の非上場企業によって使用されますが、GAAPには準拠していません。
発生主義
上場企業はGAAPにより発生主義の使用が義務付けられており、たとえ顧客が掛け売りで購入し、支払いが後日であっても、収益は発生した時点で計上されます。収益認識と呼ばれるこの概念は、支払いのタイミングによる影響を排除することで、企業が実際に中核となる業務(商品やサービスの販売)を行っている時期を正確に捉えることができ、より実態に即した経営状況を把握できます。同様に、費用は発生した期間に認識され、売上原価は対応する収益と同じ期間に認識されます。これを対応原則と呼びます。たとえば、第2四半期に発生した広告費は、実際に支払われた時期に関係なく第2四半期に認識されます。
損益計算書の例
以下は、架空の企業「Mike’s Music Shop Inc.」の同一会計期間における2種類の損益計算書の例です。最初は報告式損益計算書、次に勘定式損益計算書となっています。
報告式損益計算書
Mike's Music Shop Inc
報告式損益計算書
2021年12月31日終了年度
| 収益および利益 | |
| 売上高 | ¥75,000,000 |
| 設備売却益 | ¥700,000 |
| 受取利息 | ¥5,000,000 |
| 収益および利益の合計 | ¥80,700,000 |
| 費用 | |
| 広告 | ¥2,000,000 |
| 売上原価 | ¥35,000,000 |
| 減価償却 | ¥100,000 |
| 法人所得税 | ¥7,120,000 |
| 保険 | ¥200,000 |
| 支払利息 | ¥3,000,000 |
| 賃貸料 | ¥8,600,000 |
| 水道光熱費 | ¥50,000 |
| 賃金 | ¥13,500,000 |
| 費用合計 | ¥70,020,000 |
| 純利益 | ¥10,680,000 |
勘定式損益計算書
Mike's Music Shop Inc
勘定式損益計算書
2021年12月31日終了年度
| 売上高 | ¥75,000,000 |
| 売上原価 | ¥35,000,000 |
| 総利益 | ¥40,000,000 |
| 営業費用 | |
| 広告 | ¥2,000,000 |
| 減価償却 | ¥100,000 |
| 保険 | ¥200,000 |
| 賃貸料 | ¥8,600,000 |
| 水道光熱費 | ¥500,000 |
| 賃金 | ¥13,500,000 |
| 合計営業費 | ¥24,900,000 |
| 営業利益(損失) | ¥15,100,000 |
| 営業外収益 | |
| 設備売却益 | ¥700,000 |
| 支払利息 | (¥3,000,000) |
| 受取利息 | ¥5,000,000 |
| 営業外収益合計 | ¥2,700,000 |
| 税引前利益 | ¥17,800,000 |
| 所得税 | (¥7,120,000) |
| 純利益 | ¥10,680,000 |
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損益計算書は、すべての企業が定期的に作成・更新すべき主要な財務諸表の1つであり、上場企業には半期および年次での提出が義務付けられています。損益計算書(P/L)は、ある特定の会計期間において、企業が利益を上げたかどうかを判断するために、総収益および利益から費用と損失を差し引いた結果に焦点を当てています。もし利益が出ていれば、企業はその残った利益を株主への配当、負債の返済、そして事業成長のための再投資に充てることができます。これはまた、投資家や金融機関などの第三者にとっても、企業の財務健全性を示す好ましいサインとなります。損益計算書は、社内においては、企業が事業を行う過程で発生したさまざまな費用や経費を考慮した収益性に関するインサイトを、経営者や意思決定者に提供します。こうしたデータを継続的に活用することで、経営者は収益拡大やコスト削減といった改善の余地を特定でき、将来の業績をより正確に予測できるようになります。
損益計算書に関するよくある質問
損益計算書とはどのようなものですか?
損益計算書(P/L)には、企業の収益、売上原価、営業費用、利息、税金、純利益、その他の利益および損失に関する情報が含まれています。営業収益は「トップライン」と呼ばれ、純利益は「ボトムライン」と呼ばれます。
損益計算書を自分で作成することはできますか?
自分で作成することは可能ですが、実際にそうすべきかどうかは、ビジネスの財務状況の複雑さによります。最初は手作業で損益計算書(P/L)を作成していたごく小規模な企業でさえ、やがてその作業をソフトウェアに任せるようになります。その理由としては、より高い正確性、迅速性、タイムリーな処理が得られることが挙げられます。
損益計算書の例にはどのようなものがありますか?
損益計算書(P/L)には、報告式、勘定式といった形式がありますが、いずれも純利益を導き出すことを目的としています。報告式損益計算書は段階的に利益の表示をし、本業による儲けなのか、それとも本業以外の儲けなのかなどが分かる形式です。勘定式損益計算書は勘定科目ごとに表示しており、損益の内容が分かるようになっているため、損益計算書の詳細を把握できる形式です。
損益計算書と貸借対照表の違いは何ですか?
損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)は、企業が毎月、半期ごと、そして年次で作成する2つの主要な財務諸表です。貸借対照表とは、ある特定の時点における企業の資産、負債、そして純資産を一覧で示したものです。損益計算書とは、会計期間中の収益、利益、費用、およびその他の損益を一覧で示したものです。
すべての企業が損益計算書を作成しなければならないのですか?
企業は一般に公正妥当と認められた会計原則(GAAP等)に準拠した損益計算書の作成と定時株式総会や所轄税務署への決算書類の提出を義務付けられています。
損益計算書が重要なのはなぜですか?
損益計算書は、企業が事業を行う過程で発生したさまざまな費用や経費を考慮した収益性に関するインサイトを、経営者や意思決定者に提供します。こうしたデータを継続的に活用することで、経営者は収益拡大やコスト削減といった改善の余地を特定でき、将来の業績をより正確に予測できるようになります。投資家や金融機関などの外部関係者も、企業が投資や融資を行うのに値するかどうかを判断するために損益計算書を確認します。
Rebeca Bichachi