AIを活用した請求書処理は、買掛金部門が請求書管理全体のスピードと効率を向上させるのに役立ちます。これには、請求書の受領、内容の記録、承認、さらには支払処理や財務報告のための自動ワークフローの起動といった主要な作業の自動化が含まれます。
このガイドでは、企業がAIモデルを活用して請求書処理を自動化し、手作業をなくす方法について解説しています。また、AIを活用した請求書処理ソリューションに用いられる主なテクノロジーや、導入することによるメリットについても紹介しています。
AI請求書処理とは
AI請求書処理では、光学文字認識(OCR)によって請求書の文字情報を読み取り、そのデータを基に機械学習(ML)アルゴリズムが必要な情報を抽出します。データ抽出後、AI/機械学習モデルは請求書データの確認・検証作業を自動化し、共通のデータ項目にマッピングして財務システムへ入力します。さらに、AI請求書処理では、買掛金ポリシーに従って請求書を自動承認したり、人の確認が必要な場合に自動的に承認者へリマインダーを送るなど、インテリジェントなワークフローの自動化も実現できます。また、エラーや例外を自動で検知し、適切な担当者に通知して対応を促すことで、例外処理も効率化されます。
AIによる自動請求書処理がしっかりと機能すれば、処理にかかる時間を短縮し、人件費を削減できるだけでなく、事業の成長にともなって増える請求書の量にも買掛金担当者が柔軟に対応できるようになります。しかし、依然として請求書の48%は紙ベースであり、電子請求書についても形式が統一されていないのが現状です。
主なポイント
- 従来の自動化システムでは、形式が異なる非構造化された請求書を迅速に処理するのは難しいという課題があります。
- 機械学習や自然言語処理などのAI技術は、高度なパターン認識を使って請求書からデータを抽出し、会計システムでよく使われるデータ項目に情報を自動でマッピングします。
- AI請求書処理により、処理にかかる時間が大幅に短縮され、コスト削減にもつながります。
AI請求書処理の解説
AIが登場する以前、請求書処理の自動化を阻む最大の課題は請求書の形式が統一されていないことでした。現代においても、多くの企業はさまざまな形式の請求書に対応しなければなりません。たとえば、番号の付け方が違ったり、仕入先の住所や連絡先が別の場所に書かれていたり、注文書(PO)番号の記載方法が異なっていたり、明細ごとの費用の書き方にもバラつきがあります。さらに、請求書の提出方法も紙の書類、PDF、ワードやエクセルのファイル、メールなどさまざまです。大企業の中には、仕入先に対して請求書の書式を統一するよう義務付けたり、決められた電子請求書プラットフォームを使うように求めたりできる場合もありますが、中小企業ではそれはなかなか難しいのが現状です。また、現在のデジタル時代においても、全請求書のうち電子形式で受け取るのは約半数程度にとどまっています。
請求書情報や形式がバラバラのままだと自動化機能をうまく活用できないため、決まった形式で情報を整理する必要があります。AIがなければ、請求書から必要な非構造化データを正確に抽出し、会計システムやその他の企業プラットフォームに一貫して入力して、さらなる自動支払処理や分析に活用することは困難です。そのため、多くの経理部門では、請求書処理を正確に行うために多くの人手が必要でした。そこで登場するのがAIです。機械学習アルゴリズムや自然言語処理(NLP)の力によって、請求書がどんな形式やスタイルで届いても、AIが請求書番号、日付、金額、取引先の情報など、必要なデータを自動的かつ正確に抽出して記録できるようになります。
AIは、請求書処理におけるその他のプロセスでも大いに役立ちます。たとえば、AIは請求書のデータと既存の注文書(PO)や納品書などの記録を突き合わせて確認することで、データの正確性を検証する作業も自動化できます。同様に、AIは承認ワークフローの自動化もサポートします。請求書を適切な承認者に自動で送付し、取るべきアクションについての指示も提供します。承認プロセスを経た後は、AI請求書処理システムが請求書の条件や各取引先ごとのビジネスポリシーに従って、支払いをキューに追加します。
AIによる請求書処理では、問題のある請求書が検出された場合、例外処理専用の自動ワークフローが起動し、担当者に確認を促します。たとえばAIは、請求金額のミス(過払い・過少払い)を検知したり、不正の可能性がある請求パターンや行動を見つけたりすることが可能です。また、AIの処理によって例外が発生した場合、レビュー担当者はAIに対し、今後どのように同様の形式の請求書を処理すればよいかを学習させることができます。この自己学習機能はAIならではの強みです。こうした仕組みを活用すれば、将来的に買掛金部門は請求書処理にかかる時間やコストを大幅に減らすことができます。最新の調査では、業界最先端の企業では請求書処理にかかる時間を81%、コストを79%削減できているという結果が出ています。
AI請求書処理に使われる主なテクノロジー
AIによる請求書処理には、さまざまな技術が使われています。これにより、個々の請求書からデータを抽出して支払い処理に回すだけでなく、取り込まれたデータを使って将来を予測する分析(予測分析)を行うことも可能になります。ここでは、AIを活用した請求書処理でよく使われる代表的な3つのテクノロジーを紹介します。
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光学文字認識(OCR)
光学文字認識(OCR)は、スキャンした請求書やデジタルの請求書画像を機械が読み取れるテキストデータに変換する技術です。OCRエンジンは請求書の画像をスキャンし、文字や数字、記号を認識して、仕入先名や請求書番号、品目、金額、日付などの必要な情報を抽出します。こうして抽出されたデータは、さらにAIや機械学習モデルによって、精度の向上やデータの検証、会計ソフトやERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)システム内の適切な項目へのマッピングが行われます。これにより、人の手をほとんど介さない請求書処理の自動化が実現できます。
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機械学習(ML)
機械学習は、OCRで取り込んだ過去の請求書データから学習し、関連情報の識別精度を継続的に高める役割を担っています。機械学習アルゴリズムは、請求書ごとのさまざまな書式やレイアウトに合わせてパターンを見つけ出し、データの抽出・検証・分類を高精度で行えるようになります。たとえば、請求書内容の自動仕分や勘定科目の自動割り当てもその一例です。この自己学習機能により、システムは人手を介する機会を減らしつつ、多様な取引先やフォーマットに対応しながら請求書処理件数の増加にも柔軟に対応できるようになります。
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自然言語処理(NLP)
自然言語処理(NLP)は、通常OCRと組み合わせて使用され、抽出されたテキストが実際に何を意味するのかを正確に判別するのに役立ちます。NLPは、人間の言語や表現パターンを学習したAI・機械学習アルゴリズムにもとづいて、書類内のテキストの意味や関係性を解釈します。たとえば、NLPは、OCRで読み取った数字が日付なのか金額なのか、あるいは特定の単語が仕入先の名前なのか住所なのかなど、重要な情報を判断します。これにより、AIを使った請求書処理システムは、多様な形式や言語、記載スタイルの請求書にも柔軟に対応できるようになり、手作業の必要性を減らし、業務全体の効率化につながります。
AI請求書処理の仕組み
AIによる請求書処理は、高度なパターン認識と自然言語処理(NLP)を組み合わせて、請求書を機械が読み取れるデータに変換し、自動化されたワークフローと連携させることで、手作業によるデータ入力や会計チェックの負担を大幅に減らします。このプロセスは、次の6つのステップで進められます。
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請求書の取り込み
AIによる請求書処理の最初のステップは「請求書の取り込み」です。これは、紙で届いた請求書やPDFなどの画像形式の請求書にとって特に重要な作業です。このステップでは、通常、OCR技術を使って請求書の画像をスキャンし、機械が読み取れるテキストデータに変換します。また、手書きの請求書を扱う場合には、手書き文字をテキスト化できる「インテリジェント文字認識」と呼ばれる、より高度な取り込み技術が使われることもあります。請求書の取り込みは、構造化されていない請求書画像を、会計システムや基幹業務プラットフォームに取り込める構造化データに変換するための重要なステップです。
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データの抽出と解釈
請求書の取り込みが完了し、情報が機械で読み取れるテキストに変換されたら、次はNLPと機械学習のアルゴリズムを組み合わせて、会計や請求に必要なデータを抽出します。シンプルな機械学習アルゴリズムの場合、よく使われる請求書テンプレートを認識し、請求書番号や明細、合計金額、税金などの共通項目をテンプレートにもとづいて抽出できます。一方、テンプレートに当てはまらない請求書の場合でも、NLPや機械学習を活用したパターン認識によって、文章の前後関係やテキストの特徴から必要な情報を見つけ出して抽出します。
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データの検証と確認
AIを活用したツールによって、請求書から抽出したデータの正確性や契約条件、支払ポリシーへの準拠状況を効率的にチェックできます。AIツールは、抽出したデータをあらかじめ設定されたルールや既存のデータベースと突き合わせ、仕入先情報がマスターデータと一致しているか、重複した請求書がないか、日付の整合性や、各明細合計が請求全体の合計金額と合っているかなどを自動的に検証します。多くの企業では、AI技術を使い2点照合や3点照合(請求書と発注書、納品書の一致確認)を自動化することで、手作業の削減やチェックの一貫性向上を実現しています。さらに、機械学習によるパターン認識で、多数の請求書の中から不正や異常が疑われる取引を素早く検出することも可能です。
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承認および例外対応
AIによる請求書処理は、請求書承認の流れや例外処理も自動化します。機械学習アルゴリズムは、請求書や承認基準に含まれる情報から、承認担当者を特定します。たとえば、各部門のポリシーや、仕入先ごとの契約内容に基づいて適切な承認者を判断します。AIは、承認が必要な場合はリアルタイムで承認者にアラートを送り、シンプルなデジタル承認手段を提供するとともに、検証基準を満たしている請求書については自動承認することで、シームレスな承認ワークフローを実現します。また、AIは検証プロセスでエラーが検出された請求書を例外として自動的にフラグ付けし、問題のある請求書を適切な担当者に回すことで、速やかな確認・修正を促します。
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会計システムへの統合
AIによる請求書処理は、抽出した請求書データを会計システムの該当項目に自動的にマッピングし、検証・確認済みのデータを一貫して自動入力します。この自動化により、買掛金業務のワークフローが効率化され、手入力によるミスが減少し、企業全体の請求書処理状況や支払予定をリアルタイムで把握できるようになります。また、AI請求書処理を会計システムと連携させることで、請求書データを他の財務データと同期でき、将来の支出予測やリアルタイムのデータをもとにした財務計画をより簡単に行えるようになります。
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AIによる継続的な学習
AI請求書処理システムは、一般的な請求書フォーマットや自然言語モデルで事前に学習された状態で提供されますが、処理を重ねる中で継続的に学習するよう設計されているため、使い続けるほど精度と効果が高まっていきます。たとえば、データ検証中に抽出ミスが見つかり、例外処理フローで適切な修正が行われた場合、AIはその経験から「どんなデータをどのように処理すればよいか」を学習し、今後同様のデータに正しく対応できるようになります。また、企業が新しい請求書フォーマットを利用する際も、AIはそのパターンを学習して、柔軟に対応できるようになります。
AIによる請求書処理のメリット
AIを活用した請求書処理には、買掛金部門にとって多くの利点があります。最先端のテクノロジーを活用することで、請求書処理サイクルを大幅に短縮し、手作業によるデータ入力にかかる労力やコストを削減でき、従来の方法では発生しやすかったミスも減らせます。以下に、AI請求書処理の主なメリットを紹介します。
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請求書処理のスピードアップ: 最近の調査によると、買掛金部門が直面している最大の課題の一つは、請求書の処理や承認にかかる時間の長さです。AIによる自動化された請求書処理を導入している先進的な買掛金部門では、請求書処理にかかる時間を平均3.4日まで短縮できており、従来のやり方(平均17.9日)に比べて大きな差が出ています。
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人件費の削減: 現在、請求書1件を処理するための平均人件費は10.18米ドルとされています。AIを活用した請求書処理では、請求書からのデータ抽出や財務システムへの入力といった手作業を大幅に削減することで、平均処理コストを最大79%削減できます。
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データ抽出時のミスの減少: 手入力によるタイプミスや入力漏れなどは、請求書処理におけるエラーや例外処理の増加につながります。AIによる自動データ抽出を活用すれば、こうしたエラーや例外の発生率を半分以上削減できます。
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社内外の規制順守をサポート: AIによる請求書処理では、データの検証や照合が自動化されるため、仕入先が社内の買掛金ポリシーを順守しているかを確認しやすくなります。さらに、請求書データが一貫した形で自動入力されることで、財務システムとの連携が容易になり、外部規制への対応やコンプライアンス確保にも役立ちます。
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増加する請求書量への対応: 請求書情報を人が確認し、入力する方法では、業務量が増えると対応しきれなくなります。事業の成長に伴い、買掛金部門が処理すべき請求書の件数が増えても、AIによる請求書処理を活用すれば、人員を追加することなく、また処理時間を遅らせることなく、業務量に対応できます。
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仕入先へのタイムリーな支払いを実現: 期限内の支払いは、良好なサプライヤー関係管理に欠かせません。AIによる請求書処理は、処理時間や承認プロセスを迅速化するとともに、請求書データを一貫して財務・会計システムに入力します。これにより、契約条件に沿ったかたちで、ベンダーへの支払いを確実かつタイムリーに行うことができます。
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支出傾向や仕入先のパフォーマンス分析を可能に: 請求書データを自動的に取得・抽出し、財務システムに流し込むことで、リアルタイムで財務分析に利用できる情報量が増加します。これにより、支出傾向やサプライヤーのパフォーマンスに関する価値あるインサイトをリアルタイムで得ることができ、今後の経営戦略にも役立てることができます。
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不正の早期発見・防止: AIによる請求書処理がもたらすコスト上の大きなメリットのひとつは、不正の兆候となる異常な請求書パターンを高い精度で検出できる点です。AIの検証機能や行動分析によって、買掛金不正やトラブルに発展する可能性のある請求書を自動的に特定し、コストの発生を未然に防ぎます。
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請求書の不一致を自動で解決: AI請求書処理システムは、請求書と発注書の金額のズレ、明細合計の集計ミス、仕入先情報の不足といった不一致を自動で検知し、該当する担当者へ速やかに通知・振り分けます。これにより、問題の早期解決とスムーズな処理が可能になります。
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使うほどに精度が向上: AIによる請求書処理の大きな特長は、自己学習機能により使えば使うほどシステムが賢くなっていく点です。自動的なエラー分析やモデルの更新により、時間の経過とともに精度が高まり、例外処理の発生率も着実に減少していきます。
AIとNetSuiteでより効率的な請求書処理を実現
NetSuite Bill Captureを搭載したNetSuiteの請求書管理ソフトウェアを使えば、買掛金部門はもう手作業で請求書を入力する必要がなくなります。AIおよび機械学習を活用した請求書の自動取り込みとデータ抽出機能を備えており、請求書から仕入先名、PO番号、注文品目、数量、価格などの必要な情報をスキャンしてデジタルテキストに変換し、NetSuite会計ソフトの請求レコードに自動入力します。また、この取り込み機能には、請求書と発注書、受領書を自動で2点・3点照合する機能も組み込まれています。確認後、請求書は会社の承認ルールや承認階層に沿ったワークフローに従い、担当者に回されレビューと承認が行われます。承認ワークフローでは自動でリマインダーが送信され、承認者はモバイル対応アプリで簡単に請求書を承認できます。
現在、買掛金部門が直面する大きな課題の多くは、請求書を処理しシステムに回す際の手作業の多さにあります。AIを活用した請求書処理は、こうした問題の多くを解決するのに役立ちます。AIによる自動化により、請求書の承認にかかる時間が短縮され、会計システムへの入力時に発生する例外やエラーの数も減少し、処理コストも大幅に削減できます。特に、企業の成長に伴い請求書の件数が増加する場合、その効果はさらに顕著になります。
AI請求書処理に関するよくある質問
請求書処理ではどのようにAIを活用できますか?
請求書処理では、さまざまなAIテクノロジーを活用できます。たとえば、光学文字認識(OCR)で請求書からデータを抽出し、機械学習によって抽出情報を検証・分類することで、会計システムへのスムーズな入力が可能になります。また、自然言語処理(NLP)機能により、請求書に記載された説明文や備考などの非構造化テキストも理解・処理できるため、請求書処理ワークフローのさらなる自動化や精度向上が可能となります。
請求書処理は自動化できますか?
はい、AIや機械学習、自然言語処理などの技術を活用することで、請求書処理を自動化することができます。これらの技術により、仕入先がどのような形式で請求書を提出しても、自動処理が可能です。
請求業務ではどのようなAIを使用しますか?
AIは、請求業務や買掛金処理において、請求書処理の自動化、請求データの検証、承認フローの迅速化、さらには経費の可視化や分析などを実現するために利用されています。
自動請求書処理ワークフローはどのように構築できますか?
企業は、AIテクノロジーを活用することで自動請求書処理ワークフローを構築できます。AIは請求書のテキストを自動的に読み取り、必要なデータを抽出し、そのデータを会計システムに入力して、承認や例外処理などのワークフローを自動で進める仕組みを作ることができます。