多くの企業でまだ手作業で行われている買掛金(AP)業務にも、自動化が導入されつつあります。Institute of Financial Operations & Leadershipによると、現在、完全に自動化されているAP部門はわずか9%にとどまりますが、この数値は数年以内に大幅に増加することが予想されています。実際、2025年までに自社のAP部門が完全に自動化されると予想する財務担当者は3分の2に上ります。
人工知能(AI)といった新しいテクノロジーにより、請求書処理や他の中核的な買掛金管理(AP)業務の自動化が実現しています。このようなテクノロジーにより、AP部門は重複作業や手作業を低減し、企業は時間やコストを節約できます。自動化への移行は、単なる社内の効率性の問題ではありません。リモート・ワーク、人材不足、供給不足の観点からも、仕入先への支払い処理に費やす時間を短縮できる自動化は、競争上重要になりつつあります。
買掛金処理(AP)自動化のトレンドとは
AP自動化で見られるトレンドは、AP部門が仕入先に対する請求書や支払いを迅速かつ効率に処理する方法を導入できるよう支援するための開発がほとんどです。より強力なAIと機械学習(ML)ソフトウェアや、クラウド・プラットフォームをはじめとするテクノロジーの進化は、AP業務の状況を大きく変えています。また、人材が不足し、サプライチェーンに過度の負担がかかっている中で、AP部門は、仕入先、サービス・ベンダー、契約社員などの外部パートナーから、期限内に支払いを行うよう圧力を受けています。期限内に支払いを行うことで、良好な関係を築くことができます。自動化はその助けになります。
要点のまとめ
- AP部門の自動化のペースは、今後数年で著しく加速するでしょう。
- 人工知能と機械学習は、非接触型の決済など、今後の数多くの技術改善を支えるテクノロジーとなります。
- テクノロジーはまた、AP部門が重複請求書や不正な請求書を簡単に特定できるよう支援する役割も担います。
- APの自動化は、仕入先との関係にひずみをもたらしていた一部の問題を軽減することもできます。
知っておくべきAP自動化トレンド10選
買掛金管理部門は、プロセスを厳しく運用し、より高度なテクノロジーを使用することで、支払いを行うだけでなく、不正の防止にも努めています。次に示す10のトレンドにより、買掛金管理部門が仕入先支払請求書の処理および支払いを行う方法が変わりつつあります。
1. 手動プロセスからの移行。
AP部門の業務の大部分が紙ベースで行われていたとき、つまり仕入先支払請求書が郵送で届き、印字された小切手で支払いが行われていた時代には、AP部門のほとんどのプロセスが手作業で行われていました。買掛金処理担当者は、発注書を入力したり、購入を開始した部門に製品またはサービスが適切に提供されたことを確認したり、CFOまたは財務管理者に小切手の署名を依頼したり、小切手を郵送したりする作業を担っている場合がありました。
これらの手動プロセスには多くの事務作業が伴うだけでなく、マネージャー室を訪問したり、わかりにくい請求書について仕入先や同僚と電話で問い合わせたり、小切手の署名を依頼したりと、買掛金に関連するやり取りにも物理的な行動が必要でした。企業はこのような紙ベースの手動プロセスの各ステップで、ミス、ドキュメントの紛失、支払い遅延が発生する可能性(現実)があることに気が付きました。これらの作業を実施するのは、時間がかかり、多大な労力を要するうえ、非常に非効率的でした。
現在、多くのAP部門がある程度の自動化を使用して請求書の処理を行っています。これには、画像やPDFをマシンが読み取り可能な形式に変換できる光学文字認識(OCR)テクノロジーや、レビューや承認のために組織内の適切な担当者に請求書をルーティングするなど、企業のポリシーを実行するのに役立つソフトウェアであるビジネス・ルール・エンジンなどが含まれます。ほとんどの場合、これらのプロセス全体が自動化されているわけではありません。Institute of Financial Operations & Leadership(IFOL)が財務担当者に対して実施した最近の調査では、回答者の大部分を占める54%のAP部門が「部分的に自動化」されており、完全に自動化されているAP部門は9%と比較的少ない割合であることがわかりました。
自動化の欠如は、明らかに企業に問題をもたらします。IFOLによると、AP処理の最重要課題として、回答者の22%が請求書例外の処理に費やす時間に起因する遅延を挙げており、21%が手作業による大量のデータ入力から抜け出せずにいる状況を挙げています。
しかし、変化が訪れることも予想されています。IFOLの回答者の3分の2が、2025年までに自社のAPプロセスが完全に自動化されると予想しています。
2. リモート・ワークにより強まる買掛金処理プロセスの自動化に対する圧力。
多くの企業にとって、新型コロナウイルスのパンデミックは大規模なリモート・ワークへの移行をもたらし、多くの従業員がこれが標準として残ることを期待しています。また、企業は充足が難しい仕事や特定のプロジェクトを遂行するために、外部請負業者や代行業者をますます活用しています。職場で見られるどちらのトレンドも、AP部門の業務の量と複雑さを増大させる可能性があります。時代遅れの手動プロセスに依存している(また受領した請求書ごとに複数の関与者を伴う)AP部門は、これらの新しいワーク・モデルへの移行に対応するのに苦労することが考えられます。一方、作業者が行う必要のある面倒な手作業を低減したテクノロジー対応のプロセスを通じて労力や監視の少ない方法で支払いを行う企業は、外部の人材を獲得するための競争に有利となる可能性があります。
3. AIを中心としたAPプロセスの改善。
もし企業が今でもその月の優秀な従業員を称える賞として賞金を授与していたとしたら、今後数年は忠実な従業員によって高い利益がもたらされることが約束されていたでしょう。
AIは買掛金処理システムの中核となりつつあり、データ入力、請求書ルーティング、請求書と発注書の照合といった手動の反復作業の必要性を減らしています。別のスマート・テクノロジーであるMLは、特にOCRテクノロジーと組み合わせることで、簡単にドキュメントを分類して検索し、必要なデータを抽出できます。
ソフトウェアも、非接触型の決済を通じてAPプロセスの支援に使用できます。これらの仕組みを理解するために、1年に1,000件の請求書を処理する従業員100人を擁する出版社というニッチについて考えてみましょう。AP部門がOCRとMLを使用してデジタル請求書から関連データを抽出しており、承認の大部分が自動化されたシステムを保有していれば、
スタッフに各請求書を手動で処理してもらうことなく、パブリッシャーは支払いの送金を行うことができます。特に金額の大きい一部の請求書は、依然として企業の会計担当やAP担当が慎重に確認する必要がある場合があり、支払いストリームも定期的に監査する必要があります。それでも、ほとんどの請求書が自動プロセスで実行され、非接触型の決済によってAP部門は時間とコストを節約できるため、企業は最終的に仕入先支払請求書の処理と支払いを簡単に行えるようになります。
4. ERPシステムとAPシステムの統合。
多くの企業が、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムを使用して、会計を含む基幹業務を行っています。APシステムが企業のERPと完全に統合されていない場合、データを二重に入力する必要があります。多くの企業がこの非効率性をなくすため、AP自動化のベストプラクティスとしてERPと会計ソフトウェアを統合しています。また、多くの企業で、統合によって他の買掛管理プロセスが改善されることもわかっています。
調達-支払は、企業がAPの自動化や、APシステムとERPシステムの統合から得られるメリットのよい例です。仮想の焼き菓子メーカーであるBrackish Bay Bakeriesは、複数のメーカーから原料を購入して、ニューイングランドの高級スーパーマーケットに商品を供給し、自社ブランドの店舗も運営しています。Brackish Bayは、仕入先の小麦粉、砂糖、バターなどを利用しているため、仕入先の悪い面をとがめる余裕はありません。同社は原料を迅速に受け取り、受け取った請求書が関連する発注書および入荷ドキュメントと一致していることを確認し、契約条件に従って仕入先への支払いを適時に行う必要があります。同焼き菓子メーカーのAPと、主要な会計システム(多くの場合、ERP)を完全に統合できれば、同社は簡単にこれらすべての履行義務を果たしながら、仕入先と揺るぎない関係を構築することができます。
5. 即時レポーティングによる買掛金の価値の増大。
会計部門の買掛金レコードには、ビジネス全般に役立つ可能性がある膨大な情報が含まれています。手動による分析結果に対し、買掛金データに基づき、自動化プロセスを通じて生成された分析結果は、他の部門が注意を要する領域を特定するのに役立ちます。たとえば、これらの分析結果は、会計部門が今後のキャッシュ・フローの課題を予測したり、調達部門が価格上昇を検出して長期契約に切り替えたり、景気減速中に出張および接待の経費ポリシーに影響を与える変更点を明確化したりするのに役立ちます。
6. AIによる買掛金管理セキュリティの管理。
APは支払いの支出を担う主なビジネス部門であるため、サイバー攻撃や他の不正行為がよく試みられる部門です。買掛金データベースには、企業の仕入先や契約社員に関する、保護する必要のある機密支払い情報もたくさん含まれています。
サプライアに成りすますサイバー犯罪者たち、AP部門が気付かないことを願って重複請求書を送付してきたり、提供されていないサービスに対する料金を請求してきたりする実際の仕入先、自身の銀行口座を使って不正な請求計画を企てる社内スタッフなど、危険は多方面から迫っています。IFOLによると、企業がAP部門のプロセスを自動化する理由として、買掛金処理のスピードアップに加えて、制御の改善と不正リスクの軽減を上位2つの理由として挙げているのも頷けます。
AIは請求書で見られる不正なパターンを探し、ドキュメントを確認するようフラグ設定を行います。AP部門が使用し始めているもう1つの最新の制御テクノロジーであるバーチャル・クレジット・カードは、数秒で自動的に生成され、セキュアなトランザクション向けに最適化されます。
7. クラウド・テクノロジーによるAP処理の効率の向上。
既に多くの企業がクラウド・テクノロジーを採用しています。通常、サービス・プロバイダーがハードウェアの管理と、システム状態の監視を担うため、多くの企業で社内のITスペシャリストが少なくて済み、コスト削減につながっています。また、ほとんどのクラウドベースのシステムでは、ほぼどこからでもアクセスできるモバイル・インタフェースやダッシュボードも提供されているため、リモート環境を含め、AP機能を使用するユーザーの利便性が高まり、生産性が向上します。
8. 自動支払いによるサプライチェーンの関係強化。
かつでは主に調達と製造の担当者の話題であった難解な領域であるサプライチェーンが、近年ではトップニュースとして扱われています。母親がトイレットペーパーを買えない、資材が海港で足止めになっているため、請負業者が台所の工事を完了できない、お金を払うことをいとわない場合でも狙っている自転車を買えない、といったニュースです。
過去数年間にわたるサプライチェーンの混乱は、消費者を動揺させるだけでなく、B2B分野にも影響を与えてきました。企業が重要な商品や資材を入手できないと、自社の売上が減少します。
サプライチェーンが抱える継続的な課題は、企業内の圧力を生み出しています。IFOLが調査回答者にプロセスの遅延の結果として直面した核心的な問題について尋ねた際、21%が仕入先との関係が損なわれることに懸念を示しました。これは、APチームのストレスを挙げた30%に続いて、2番目に多い回答となりました。
エコノミストは、世界のサプライチェーンの問題が、少なくとも数か月間、場合によっては2年間続くと予測しています。それまでは、多くの場合、購買力が最も高い企業が、製品を量産する製造工場や、製品を配送する貨物船やトラック隊を獲得する、最も優位な位置を確保するでしょう。
中小企業は競争に苦労することが考えられます。しかし、期日内に支払うという評判を獲得できれば、別の方法で差を縮められる可能性があります。仕入先支払請求書を確実に支払うことで、企業は仕入先の注目を集めるだけでなく、仕入先から早期支払い期間に伴う割引を提供してもらえる可能性もあります。このような機会は、AP部門が自動支払いを検討し、それを可能にするスマート・テクノロジーを活用する追加の理由になる場合があります。
9. モバイル決済による利便性の向上。
一部の仕入先は、VenmoやGoogle Payなどのアプリ経由で支払いを受け取ることを希望する場合があります。さまざまな支払いメカニズムを活用することも、AP部門が迅速で信頼性の高い支払い者としての評判を固めるための1つの方法です。
10. キャッシュ・フロー管理ツールの使用の自動化につながるインフレ。
2022年初頭、米国のインフレはパンデミック直前の4倍高いレベルまで上昇しました。ベルギー、デンマーク、フィンランド、イタリア、スペインなど他の欧米諸国でも、2020年以降に発生した急激なインフレは悪化の一途をたどっています。
AP部門は組織のキャッシュ・アウトフローの大部分を管理しているため、インフレに関連するコストの高騰を相殺する企業の取り組みに貢献できる可能性があります。また、価格が上昇していない製品を他の仕入先が提供していても、迅速に支払うことのできる企業は、将来の購入につながる早期支払いの評判を獲得できる可能性があります。このような微妙な調整を行うには、高度な分析が必要です。キャッシュ・フロー管理ツールを導入することで、企業のコストを削減できます。特に困難な時代においては、1円でも多く節約することが重要です。
NetSuiteの自動化の活用
AP機能を自動化する企業は、まず、自動化によって最もメリットが得られるAPプロセスを特定する必要があります。また、テクノロジーのニーズを評価し、自動化されたAPシステムが、日常業務に使用するERPなどの他のコア・システムと統合されていることを確認することを検討すべきでしょう。
NetSuite買掛金は、仕入先請求書の承認や支払いなど、多くのAP機能を自動化できます。また、請求書を仕入先発注書と自動的に照合することで、データ精度を向上させることもできます。広範なNetSuite ERPシステム内でNetSuite買掛金を使用すると、情報を二重に入力する必要がなくなり、組織内の他の部門が価値のある可能性のあるAPデータや分析インサイトを活用できるようになります。
ほとんどの財務担当者は、2025年までにAP業務が完全に自動化されると予想しています。自動請求書記録や非接触型の決済など、結果として生じる変更により、企業のAP部門は効率を高め、企業自体もさらに競争力を高めることができます。基盤となるテクノロジーの中には、AP部門を不正から保護できるものもあり、従来の手間のかかる物理的なチェックが不要になります。
No.1クラウド
会計ソフトウェア
AP自動化トレンドに関するよくある質問
買掛金は自動化されますか?
AP業務はかつて大部分が手作業でしたが、多くの企業で、少なくとも部分的に自動化されるつつあります。自動化のペースは加速しています。Institute of Financial Operations and Leadershipの調査では、財務担当者の3分の2が、2025年までに自社のAP部門が完全に自動化されると予想しています。
買掛金の未来は?
光学文字認識(OCR)とビジネス・ルール・エンジンにより、AP部門はスタッフが行う必要のある手作業の量を大幅に削減できます。機械的な作業が減少することで、APチームは異常の調査など、より価値の高い作業に集中できます。
買掛金自動化のメリットは何ですか?
自動化によって請求書の処理に必要なコストや時間が大幅に低減されるため、社内の効率が大きなメリットとなります。また、自動化により、ミスや支払い遅延のリスクが軽減されるため、企業は仕入先との関係を強化しながら、不正の可能性から身を守ることができます。
買掛金が直面する課題は何ですか?
AP部門が直面する最大の問題は、ミスと、ドキュメントの紛失や誤入力です。処理する作業量が多く、手動プロセスに依存しているためです。また、部門のマネージャーは、外部から受信する偽の請求書など、さまざまな形で降りかかってくる不正を防止する必要があります。
NetSuiteはOCRに対応していますか?
はい、現時点(2024年4月時点)で北米のお客様のみを対象に対応しています。NetSuiteの支払請求書取込み機能では、画像やPDF形式で受け取った請求書をドラッグ・アンド・ドロップでインポートできます。NetSuiteのシステムでは、自動OCRスキャンを実行して、重要な情報を識別してレコードを作成できるため、手作業によるデータ入力の必要性が最小限に抑えられます。
買掛金日数が長いとはどういう意味ですか?
買掛債権回転期間(DPO)は、企業が請負業者や仕入先に支払うのに必要な平均時間の指標です。DPO率が高いということは、企業が請求書や債権者に支払うまでに時間がかかることを意味します。
APのデジタル化はどのように状況を変革させていますか?
APのデジタル化は、紙を必要とする多くのプロセスを変えること意味し、これには実際のペンを使用して行う昔ながらの「手書き署名」が含まれます。これは、AP部門内の手作業の反復的な作業を減らすという、大きなAP自動化トレンドの一部です。