ベッコフオートメーション株式会社
ドイツ、フェアル
5億1000万ユーロ(+17%)
(2014年売上高)
1980年
2800名(2015年04月現在)
34社
神奈川県横浜市中区桜木町1-1-8
日石横浜ビル18F
代表取締役社長 川野俊充
PC ベースのオープンな自動制御システムを提供する専業メーカー。 産業用PC、各種フィールドバス対応I/O、ドライブテクノロジ、自動制御ソフトウェアで豊富な製品ラインナップを誇ります。
“インダストリー4.0とNetSuiteの方向性は合致するのではないでしょうか。将来的に、当社とNetSuiteが協力し合うインダストリー4.0の未来を期待しています。” ベッコフオートメーション株式会社 代表取締役社長 川野 俊充 氏
ベッコフオートメーション株式会社は、産業用PCや各種フィールドバス対応I/Oに自動制御ソフトウェアなど、PCベースのオープンなFA制御システムを開発・販売しています。ドイツに本社があり、ドイツ政府が主導するモノづくりの戦略的プロジェクト「インダストリー4.0」に参画しています。日本法人の代表取締役社長の川野俊充氏は、国内で数多くの「インダストリー4.0」に関する講演や執筆活動を行っています。同社では、日本法人が設立された2011年からNetSuiteを採用し、経営の可視化に取り組み、迅速な意思決定のためのツールとして積極的に活用してきました。中でも、営業活動の可視化は、同社の業績に大きく貢献しています。
ベッコフオートメーション 株式会社
代表取締役社長 川野 俊充 氏
ベッコフオートメーション株式会社の川野氏は、日本法人の立ち上げとNetSuiteを採用するまでの背景について、次のように振り返ります。
「当社は2011年に日本法人として設立されました。そのときは、まだ社員数は3名でしたが、将来的に事業を拡大し従業員数も増やしていく計画があったので、はじめからクラウドのERP/財務会計システムの導入を検討していました。また、日本法人の業務はドイツ本国の製品を販売することが中心になるので、会計システムの導入と並行して営業支援システムの導入も検討していました。そのため、当初は別々のクラウドを探していたのです」
そんな川野氏が、NetSuiteを知ったのは、調査会社のレポートがきっかけだった。
「米国のコンサルタント会社が、定期的に公表しているクラウドサービスの市場分析レポートを見たことが、NetSuiteを知るきっかけでした。当時は、営業支援系のクラウドサービスを探していたのですが、クラウドに関する調査レポートの中で、業界のリーダー的なポジションに位置しているNetSuiteという社名を見て、とても興味が湧いて自分なりにリサーチしたのです」
NetSuiteに興味を抱いた川野氏は、自社が必要とする機能やサービスが揃っているかを調べると同時に、営業支援に関連する業務もNetSuiteで対応できないか検討しました。
「複数のクラウドサービスを現場のスタッフが使い分けるのは、どうしても手間になってしまいます。また、営業支援と財務会計のクラウドが分かれていると、データの連携などでも手間やコストがかかる心配がありました。そこで、当初の計画を見直して、NetSuiteで当社が求める業務システムをすべて構築できるかどうかを再検討したのです」
ベッコフオートメーション株式会社がNetSuiteに求めた業務システムは、ERP/財務会計を中心として、日々の売り上げ状況のリアルタイムでの確認や、営業担当者の商談の進捗状況に、見積もりの件数や金額など、日本でのセールス活動の可視化でした。
「NetSuiteには、ERPとCRMの機能が用意されています。そのCRMの中には、営業支援(SFA)をはじめとして、カスタマーサービス管理やマーケティング自動化などの機能も含まれていました。そこで、それらを活用すれば財務的な視点から経営に必要な数字やセールス関連のリソースを可視化できると考えたのです。また、可視化のために必要な機能はすべてNetSuiteの中に揃っていたので、複雑なインテグレーションなどを外部に依頼することなく、自社で対応できるのではないかとも考えました」と川野氏は選定の経緯について説明します。
過去に外資系の企業で、セールスやコンサルティングを担当してきた経験のある川野氏にとって、ビジネスに関連する数値の定量的な分析は、必須のテーマとなっていました。そのため、日本法人の立ち上げ当初から、業務システムの導入と同時に、見える化の仕組みを構築しておかないと、後で苦労するとわかっていたのです。
「本国のドイツでは、オンプレミスのERPを導入していましたが、日本で同じシステムを使うのは難しいと感じていました。オンプレミスのシステムを運用管理できるだけの人材やリソースが不足していたことと、事業の発展に伴う柔軟な拡張に対応できるのは、クラウドしかないと思っていたからです」と川野氏は補足します。
さらに、ITに精通している経営者だからこそ、異なるクラウドサービス間でのデータ連携には、インテグレーションが必要になり、それがボトルネックになる危険性も危惧していました。そうした総合的な判断から、ひとつのクラウドサービスの中に単一のデータベースが構築され、財務を中心に他の業務が密接に結びついたNetSuiteが、同社の基幹システムにとっては最適だと判断されました。
「経営の全体最適をやりたい、と思ったときに、NetSuiteの考え方や仕組みが、まさに当社の望む形にフィットすると思ったのです」と川野氏は経営的な意思決定の理由を説明します。
2011年の日本法人設立にあわせてNetSuiteを導入し、経営の可視化に取り組んできたベッコフオートメーション株式会社では、導入から約4年が経過して、その成果を次のように評価しています。
「わたしのログイン画面では、最初に開くとダッシュボードが表示されます。この画面から、会社の業績は今どのような状況になっているのかを、常に見られるようになっています。現在の売り上げの状況や、財務関連の数値はもちろんですが、誰が今どこに訪問して、どのような商談を進めているのかも、すべて確認できるようになっています。もちろん、モバイルからでもチェックできるので、外出先でもスマートフォンを使って、数字を見ています。今では、経営に関連した数値が可視化されているのが当たり前になっていて、NetSuiteを導入する前の世界には、戻れないと思います」と川野氏は話します。
ERPとCRMを連携して利用している同社では、ダッシュボードで財務関連の数値をグラフなどで表示しているだけではなく、営業活動に関連したデータも収集し可視化する取り組みを行ってきました。
「例えば、各自のカレンダーに登録されるイベントの内容をチェックして、客先への訪問回数を集計しています。その客先も、既存の顧客か否かを判断して、訪問が新規の案件かどうかもわかるようにしています。この訪問回数の可視化によって、客先ごとの見積もりの提出や受注状況なども、正確に把握できるようになりました」と川野氏はセールス活動の可視化について説明します。
営業担当がどのくらい新規の顧客を訪問し、どれだけの見積書を提出して、実際の発注に結びついたのか、その一連のセールス活動が可視化されたことによって、同社では営業成績とマーケティング予算との相関関係にも注目できるようになりました。
「NetSuiteによる営業活動の可視化が可能になった2012年から、マーケティング関連の数値と組み合わせたパイプライン分析を行ってきました。具体的には、展示会や広告などのマーケティング予算を年間にどのくらい投入し、それに対して得られたセールスリードの数と営業実績をチャートにして、成果を分析したのです。その結果、とても興味深い数値が得られました」と川野氏はマーケティング関連の成果にも触れます。
同社のパイプライン分析では、広告宣伝に投入したコストと総受注額を比較するにあたり、セールスリードの数や訪問回数や見積もりの件数と金額なども集計し、マーケティング予算が売上に寄与しているかを吟味しています。
「分析の結果から、広告予算が必ずしも売上に直結しないことが証明できました。取り扱う製品の特質から、数多くの広告を出すよりも、より的確に顧客へアプローチできるマーケティング活動が効果的だとわかったのです。それを実践した2014年は、広告予算を半減させたにもかかわらず、訪問や見積もりの件数は増加し、受注額も何倍にも拡大させることができました」と川野氏はマーケティング活動を可視化する効果について話します。
こうした広告予算と受注額の分析によるマーケティング活動の可視化だけではなく、在庫の確認や顧客別一覧などでも、NetSuiteを活用しています。
「営業担当にとっては、在庫の状況をいつでもどこからでも確認できるのは、とても役に立っています。また、導入当初は対応していなかった顧客別一覧などは、バージョンアップによって実現されたので、便利に活用しています。クラウドだと、他のお客様のために開発された新しい機能も自動的なアップデートで使えるようになるため、とても便利だと実感しています」と川野氏は評価します。
「NetSuiteのおかげで、デイリーの受注と見積もりと失注、そして入金などのキャッシュフローが、いつでもどこからでもパっと見られるようになり、日本で販売を展開して約3年で、当社は大きく成長できたと実感しています。今後は、もっと可視化できる範囲を広げて、さらなる経営の最適化を図っていきます。また、一方でまだ可視化や数値化できていない業務の分野や経理的な仕組みもあるので、その点の改善にも取り組んでいきます」と川野氏は今後に向けた抱負を語ります。
同社では、現在の営業活動を受注額などと連携させて、各担当者の評価のつなげたいと考えています。そのためには、直接販売とパートナー経由の販売による数字の区分を反映させる取り組みが求められています。
一方で、日本におけるインダストリー4.0の第一人者である川野氏は、国内における構想も描いています。
「インダストリー4.0では、ドイツ政府が産官学の総力を結集しモノづくりの高度化を目指す戦略的プロジェクトです。第4次産業革命とも呼ばれています。このプロジェクトには、ドイツの主要企業を含む産官学の企業や団体が参加して、新しいモノづくりの形を模索しています。この取り組みを一言で例えるならば『スマート工場の実現』になります」と川野氏は説明します。
現在の製造現場では、製造の工程がばらばらに最適化されているため、上位系のERPシステムによって管理されているオーダー情報などが、工場の現場にある製造装置と連動することが困難になっています。そのため、モノづくりの現場では、設計や開発や生産などに関連したデータを蓄積し分析し、自律的に動作するようなインテリジェントな生産システムへの変革が求められています。その未来について、川野氏は次のような展望を語ります。
「インダストリー4.0は、センサーネットワークなどによる現実世界(Physical System)と、サイバー空間の高いコンピューティング能力(Cyber System)を密接に連携させ、コンピューティングパワーで現実世界をより良く運用することを目指しています。このようなサイバーとフィジカルをつないでいこうという未来の姿は、NetSuiteが目指している方向性と合致するのではないかと思います。もしも将来的に、当社とNetSuiteが協力し合えるような関係になれば、我々の顧客に対して『NetSuiteを導入すれば、当社の製品による制御システムも直結しますよ』というような提案ができる未来を期待しています」
2015年8月取材