グリーン IT の問題点
前回のコラムでは、グリーン IT 化がもたらすコストメリットを検討したが、今回のコラムではグリーン IT が経営そのものに与えるインパクトを検討してみたい。
そもそも、グリーン IT の課題として、グリーン IT に取り組んだとしても、企業の外側からは分かりづらい (というか、企業自らが告知しない限りほとんど分からない) という点がある。しかも、ある一定規模以上の企業となれば、経営企画や IT 部門以外の社員すら自社のグリーン IT 化の取り組みについて全く知らない、ということにもなりかねない。
これは、グリーン IT 化の成果が目に見えづらい、という特性からくるものである。具体的に CO2 がどれだけ削減されたのかの効果そのものが目に見えないものなので、これはある部分で致し方ないことなのであるが、それで諦めてしまっては身も蓋もない。ここはグリーン IT 化の成果をどのように具体的に目に見えるようにするか、つまり如何に「見える化」するか、が重要であると言える。
グリーン IT 化を見える化するには?
グリーン IT 化を見える化するためのツールや方策は、どのようなものがあるであろうか?
分かりやすい例では、「我々はこういう取り組みをしています」という告知 (広告) をすることであるが、これは費用もかかるし、興味のある人にしか関心をもってもらいづらい、という課題がある。特に、Web などのチャネルで告知する場合は、その企業にもともと興味を持っている読者か環境に対して感度の高いセグメント以外への訴求は難しいであろう。
グリーン IT 化を見える化する際に重要なのは、もっと広い層に対してライトに告知することである。興味のある層に対して「こんなに一生懸命に取り組んでいます」と声高に伝えるよりも、環境やグリーン IT に大きな興味のない層も含めて「ああ、この会社は環境のことを気にしているんだな」という程度の認識をまずもってもらう、というのが重要であろう。
広い層に対するグリーン IT の見える化のための方策として、いくつかのサービスがすでに提供されている。その一つが、環境ビジネスコンサルティングを手掛けているラウル社 (http://ra-ul.com) からサービス提供されている GSL(Green Site Lisence) である。これは、自社の Web サイトを運用するサーバーから排出されている CO2 に相当する量の CO2 を排出権取引で購入された排出権やサーバーの消費電力量相当のグリーン電力の購入、或いは CO2 排出量相当の植林事業をラウル社がサイト設置者に代わりに購入することで自社 Web サイトによる CO2 の排出をオフセットする、というものである。GSL により CO2 がオフセットされると、そのことを証明する証明書が発行されるので、それを自社サイトのトップページなどに貼り付けることにより、そのサイトが CO2 オフセットされていることが簡単に分かる、という仕組みである。この GSL のサービスは、現在 850 社が利用し、1450 サイトに導入されている。

※ ラウル社の GSL サービスについて詳しくは URL をご参照ください → http://www.gsl-co2.com/
GSL の他に、もう少し本格的なものとしては、環境会計報告がある。環境会計は、2000 年に環境省が『環境会計システムの導入のためのガイドライン (2000 年版)』がまとめられ、それ後作成手順などが順次明確化されてきている。環境会計とは、簡単に言うと、企業が行った様々な環境活動を環境保全コスト、環境保全効果、環境保全対策に伴う経済効果の 3 つの視点から会計的に (貨幣単位に換算して) まとめたものである。

環境会計報告書は企業が環境に対してどの程度コストを負担し、その結果どの程度の経済効果を生むことが出来たのか、という点を非常にわかりやすく伝えるものである。いわば、環境版の損益計算書と言えるかもしれない。
ただし、環境会計報告書を作成するにはそれなりの手間がかかることは事実である。環境会計を作成するには、企業の支出を管理する場合に、その支出が環境会計の視点から見た際にどのコストに当たるのか、などを仕訳レベルで識別できるようにしておかなければならない。例えば、会計システムに仕訳入力をする際に環境に関する付帯情報が登録できるようになっていれば、それらを取り纏めるだけなので環境会計の作成が非常に楽になる。そうした機能はまだ一般的とは言えないが、対応する機能を持つ会計システムを導入すれば環境会計の作成負荷は非常に軽くなる。

こうして作成した環境会計報告書を自社サイトやプレスリリースとして公表することにより、広い層に自社の環境に対する取り組みを知ってもらうことができるようになる。
ちなみに、環境会計に似たものとして、環境報告書もあるが、環境報告書はどちらかというと定性的な内容が中心となるため、企業全体が取り組んでいる環境活動の全容を伝えづらく、また企業が環境に対してどの程度積極的に取り組んでいるのかという点について定量的に伝わりづらい、という課題がある。企業の環境に対する取り組みの全体像をわかりやすく俯瞰的に伝える、という点から言えば環境会計の方が向いていると言えるだろう。
さらに、グリーン IT の導入に際しての取り組みとして (少々、宣伝めいていて恐縮ではあるが)、Terry's&Company はグリーン IT の導入に関するプロジェクトを実施し運用するに当たって、当該プロジェクトとシステム運用から排出される CO2 の排出量に相当する CO2 排出権をプロジェクト単位で購入し、企業の業務基盤構築と運用に関する CO2 排出をオフセットする「業務プロセスのグリーン化」をサービスメニューとして提供している。こうした業務基盤を導入することで、自社の業務が環境を意識した上で実施されている、ということが告知できるようになり、より積極的に自社の環境への取り組みをアピールできるようになるだろう。
グリーン IT と企業価値の今後の関係
任意団体のグリーン経営研究会では、様々な企業のグリーン IT 化のケースを収集しており、将来的にはケーススタディとして広く告知してゆく予定であるという。グリーン IT 化によるグリーン経営の先進事例が今後具体的に示されるようになれば、他の企業が取り組む際の参考になり、より取り組みやすくなってゆくものと期待される。
また、同じくグリーン経営研究会の調査によると、「同じ製品やサービスがあった場合、環境を意識している企業と環境を意識していない企業のどちらから購入するか?」という質問に対し、「環境を意識している企業から購入する」と答えた人の割合が 8 割以上に上った。また、「同じ製品やサービスがあった場合に環境を意識している企業の製品の方が環境を意識していない企業よりも価格が高かった場合、どちらから購入するか?」という質問に対しては、3 割程度の人が「価格は高くても環境を意識している企業から購入する」と回答している。
社会や市場の環境意識は確実に高まってきている。環境に対する社会や市場の価値観に的確に応えてゆくための方策は、最終的には企業価値を高めることになるだろう。Terry's&Company 社について

04 年設立。IT を活用した経営基盤構築や新規事業支援、資金調達支援など企業が抱える経営課題に直接的に応える課題解決型のコンサルティングに特化したコンサルティングファーム。継続的なクライアントとの関係を重視し、経営課題の早期発見と予防措置を重視した方法論である「Value Management Methodology」を構築している。最近では、環境・ CSR 分野のコンサルティングにもサービス領域を拡大し、企業価値向上に寄与する環境対応のコンサルティングなども手掛けている。
| 会社住所 : | 〒104-0051 東京都中央区佃 2-2-10 イーストタワーズ 37 階 |
| HP : | www.terry-s.com |
著者について

- 佐々木 宏 (Terry's&Company 代表取締役)
- 株式会社富士総合研究所、中央 Coopers&Lybrand Consulting 株式会社、Accenture にて多数のコンサルティングプロジェクトに従事。その後、ミロク情報サービスにて会計サービス事業の立ち上げを行う。2004 年、Terry's&Company 設立。会計及び IT 領域を中心として、経営の現場に真に役に立つコンサルティングを多数実施している。近年では、環境と IT、CSR の有機的な連携による企業価値向上についての研究も進めている。早稲田大学生産情報システム研究科博士課程後期中退。
