グリーン IT という概念
「グリーン IT」という言葉は、社会の環境意識の高まりに伴って約 3 年前から使われ出した概念であり、現在では「グリーン IT」という言葉は主に 2 つの意味で使われている。
1 つは、「IT の環境負荷軽減」で、地球環境に配慮した IT 製品や IT 基盤を利用することで IT 利用に伴う環境負荷を低減することだ。これはエネルギー効率の良い家電製品を一般の家庭で利用する、という取り組みに似ている。2 つめは、「IT による環境負荷低減」で、IT を活用して SCM を導入し在庫の圧縮や生産効率を上げることで結果的に地球環境にやさしい生産活動を実現する場合や、テレビ会議システムの活用により社員の移動そのものを減らすなどのケースがこれにあたる。また、前者の「IT の環境負荷の軽減」のうち、個別企業 (場合によっては個人) 単位での IT の効率化と、IT 利用者を全体として捉えて利用効率を上げるという 2 つの取り組みを考えることができる。そのうち、特に今回のコラムでは、IT 利用全体の効率化について考えてみたい。
IT 利用時の環境負荷
最初に、IT 利用時にどのような環境負荷がかかっているだろうか? 最初に思いつくのがハード運用時の環境負荷が挙げられる。具体的には、サーバーや PC、ネットワーク機器など様々な IT 関連機器が消費する電力やサーバーからの発熱などで、所謂メーカー系の提唱するグリーン IT はここにフォーカスを当てたものだ。またハード関連で言うとサーバー発熱をさますためのサーバールームの空調に関する負荷や細かいところではサーバールームの照明などもサーバー運用に関わる環境負荷に当たるだろう。
ハード運用以外だと社内のサーバーやネットワーク保守の要員に関わる環境負荷 (これは他の社員のための環境負荷コストと同じものがかかる) やメーカーからの保守技術者を派遣してもらえばその技術者の移動に関わる環境負荷もかかってくる。
また、ハードを入れ替える際の除却に関わる環境負荷も大きな問題となっている。
そもそも、自社で必要な IT 資産を自社保有するとうことは、想定される最大負荷に対して対応できるキャパシティを個別に保持しておく、ということになる。特に停止することが許されないような例えばコールセンター受付システムなどの場合、瞬間の稼働率がたとえ 1% 程度であったとしても最大負荷に合せて IT 基盤を整備しておく必要がある。そして、こうした設備は、自社の IT 技術者の数やサーバールームの大きさなどにも跳ねてくる事になる。さらに、事業所や支社で拠点を分けて IT 基盤を運用している場合には各事務所毎にサーバーなどが分散してしまい、全体としてさらに多くのバッファを持たなければならなくなる。
共用化推進による環境負荷低減
さて、こうした IT 基盤に関して SaaS や ASP 又はクラウドコンピューティングなどの共用化されたサービスを利用する場合はどうなるであろうか。SaaS や ASP などの利用を推進した場合、基本的にはその時々に合せて必要な分だけの IT 基盤を利用することになるので、自社で IT 基盤を整備するケースと比較して少なくとも最大利用時に備えたバッファ分は環境負荷の観点から負荷が軽減さることができる事になる。また、ハード保守などの点からは集中化された運用センターなどで技術者が運用することになるので、経済規模のメリットが働き運用効率が向上し、その結果環境負荷が抑制させることも期待される。さらに、IDC やサービスを提供する SaaS や ASP ベンダーからの立場からしても、運用負荷を抑えることが IDC や SaaS・ASP ベンダーにとってサービス提供に関わる運用負荷 (= コスト) を抑えることが自社の利益を向上させる取り組みとなるので、経済合理性追求の観点からも結果的に環境負荷を抑制する方向に力点が向くことになるだろう。
これまで共用化の範囲として業務システムの分野やグループウェアなどの機能提供が中心であったが、最近ではメールやファイルサーバー機能などより基盤に近い機能も提供されるようになっている。こうした最新のサービスも利用したとすると、会計システムや営業管理などの業務システムだけでなく、メールサーバーやファイルサーバー、さらには内線電話なども自社で所有する必要がなくなるため、ネットワーク環境さえ整えれば内線電話の交換機も含め自社で全くハード資産を所有せずとも業務基盤を運用することが可能になるのである。これは、いままでの常識から考えるとすごいことだ。

最近では、SaaS や ASP ベンダー、IDC などが自社のサーバー運用に伴って排出される二酸化炭素をベンダー自身の負担でオフセットする取り組みなども始まってきており、環境貢献を付加価値として提供するベンダーが増えると共に、共用化のサービスを利用することによって今後ますます環境に貢献しやすくなっていくことが予想される。
グリーン IT 化の推進と IT 運用コスト
一般的な分野において環境対応を進める場合、環境対応製品への買い換えや他の製品よりも割高なリサイクル製品の購入など環境対応に関わる取り組みが追加費用として必要となりコスト負担が増加する場合が多い。しかし、IT 分野に於いては、SaaS サービスを利用するなどの共用化を進めることで、IT に関わる環境負荷を軽減させることが出来ると共に IT の運用コスト負担も削減することができるのである。
具体的には、共用化のサービスの利用によりハード資産を持つ必要がなくなるため、サーバーなどの電力光熱費を含む運用費用や保守費用、自社の技術者の人件費などが一切不要になる。また、直接的な費用削減とは観点が異なるが付帯的な効果と言えることとして、ハード運用を自社で行う必要がなくなるため、システムトラブル時の対応なども基本的には不要となり運用に関わる負荷がさらに低減されることになる (システムの稼働率は SLA として各ベンダーから保証させるのが一般的である) 。
このように、IT の分野では、一般にグリーン化を推進すると対応コストが嵩んでくるのとは逆に、共用化のサービスを利用することでグリーン化とコスト削減を両立させることができる特異な分野と言えなくもない領域である。これを CIO の立場で言うと、自社のグリーン化を進めることでコスト削減も併せて実現できる、ということになり、なんとも一石二鳥なことになるのである。
次回は、グリーン IT を利用して企業価値やブランド価値の向上に関する取り組みの可能性を検討してみたい。
Terry's&Company 社について

04 年設立。IT を活用した経営基盤構築や新規事業支援、資金調達支援など企業が抱える経営課題に直接的に応える課題解決型のコンサルティングに特化したコンサルティングファーム。継続的なクライアントとの関係を重視し、経営課題の早期発見と予防措置を重視した方法論である「Value Management Methodology」を構築している。最近では、環境・ CSR 分野のコンサルティングにもサービス領域を拡大し、企業価値向上に寄与する環境対応のコンサルティングなども手掛けている。
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著者について

- 佐々木 宏 (Terry's&Company 代表取締役)
- 株式会社富士総合研究所、中央 Coopers&Lybrand Consulting 株式会社、Accenture にて多数のコンサルティングプロジェクトに従事。その後、ミロク情報サービスにて会計サービス事業の立ち上げを行う。2004 年、Terry's&Company 設立。会計及び IT 領域を中心として、経営の現場に真に役に立つコンサルティングを多数実施している。近年では、環境と IT、CSR の有機的な連携による企業価値向上についての研究も進めている。早稲田大学生産情報システム研究科博士課程後期中退。