システムの導入前の課題
八王子クリニックにとって、クラウド型のCRMの導入は、NetSuiteがはじめてではありませんでした。2008年、人間ドックの予約管理の一元化のために、他社のクラウドCRMを導入し活用されていました。しかし、このCRMは、予約情報の一元化という点で一定の成果はあったものの、患者様の増加やサービスの拡充にともない、カスタマイズ性、拡張性の低さや、蓄積されたデータを有効活用できない点が問題視されるようになりました。井上事務長は次のように語ります。

医療法人社団 斗南堂
井上 敬介 事務長
「前回、導入したクラウドCRMは一定の成果はありましたが、コールセンター業務パッケージで、あくまでも記録用であるという側面が強く、蓄積されたデータをマーケティングに有効活用できないという課題がありました。記録用ということで、データに対しては二次元的な補完の仕方になるため、ツリー構造になっていない、クロス集計できない、クロス集計が弱い、というのが目立つようになりました。実際、患者様が増えるにつれて、そういうものが求められるようになってきたのです。また、カスタマイズしなければならないことが多すぎたことも課題でした。」
また、既存のCRMが稼働しているコールセンターの業務を効率化し、オペレーターの負荷を少しでも減らすということも重要でした。1日あたりのコール数は、それほど多くはありませんが、1件あたりの通話時間10分~15分と長く、現場でも、より使いやすいものが求められていました。
「一般的な商品を買うこととの違いですが、コールセンターに電話される患者様の多くは、直接声が聞きたい、質問したい、病院の様子を知りたい、オペレーターとの会話を期待されて電話されるケースが多く、1対1の対応をとりやすいシステムが必要でした。申し込みをされた後でも、どんな検査なのか、検査の流れはどうなのか、オプションはどこまでやるべきか、など多くの質問を頂戴します。そのため、現場でも、より使いやすいものが必要となっていました。」
さらに、CRMの入れ替えを検討するきっかけとしては、このような課題に合わせて、既存CRMのサービス利用料の価格改定のインパクトが大きかったといいます。同じサービスであるにも関わらず、様々な課題を抱えながらも価格だけは1.5倍ということであれば、今後の拡張も含めて、新しいCRMシステムを検討すべきであるという判断となりました。
NetSuiteの選定
八王子クリニックは、すでにクラウドを利用していたこともあり、最初からクラウドを前提として新しいCRMシステムの検討をはじめました。井上事務長は次のように語ります。
「基本的には、クラウド型で探していました。ある程度カスタマイズ容認できて、コスト的にそこそこで抑えられるものを重点化して探しました。やはり、我々には、我々なりの使いやすさがあるので、それにどこまで近づけていけるのかが不安でした。」
検討の初期段階では、複数のクラウドCRMが候補となりましたが、既存のクラウドCRMが抱えていた問題点から選択肢は限定され、拡張性や将来性の高さが評価されたNetSuiteが、八王子クリニックの次期CRMとして選ばれました。
「NetSuiteに対しては、将来的な期待を抱くことができたので、導入を決めました。以前のクラウドCRMも、同じように将来的な期待を込めて導入しました。もちろん、ある程度のレベルまでは到達することができましたが、次のステップに進むことができませんでした。結局、『機能としてはあるんだけどね』で終わるものが多くありました。使う側からすると、機能があったから、使いやすく使えるというのは別問題です。NetSuiteには、データの分析や統合も含めて『将来的にもっともっと使いやすく使えるようになる』という期待を抱くことができました。」
また、井上事務長はクラウドを利用することのメリットについて次のように語ります。
「NetSuiteを導入して、医療機器の周辺を取り巻くものをネットワーク化し、すべてが一元化された最終的な理想型のコスト感は、他のベンダーから提示される価格と、桁が違いました。医療機器はかなり高価であり、ちょっと相談するだけでも、それなりの価格になります。しかし、クラウドであれば、我々のような中小の大きな体力の無いクリニックでも、すぐに使えることができ、しかも必要に応じて拡張できるので、大きく事業展開できるチャンスを手に入れることができます。」
NetSuite導入後の活用と効果
NetSuiteは、既存のCRMの守備範囲であったコールセンター業務を中心に導入され、2011年5月より稼働しています。
まずは、「全身ドック」を受診された方に対して、医療情報詩やキャンペーンの御案内の発送、受診後のフォローアップとして1年間のメールによるご相談の受付、さらに経過観察の必要がある方へ定期的な検査のご案内、必要な情報提供などのサポートを充実させています。井上事務長は語ります。
「我々は、もっとリピーターさんに対してもサービスを手厚くしたいと思っていました。そのためにも、クリニックに来てくれた理由だけではなく、来てくれなかった理由も大事です。もちろん、すべてを知ることはできません。直接、お話を伺えませんので。だから、蓄積されたデータをもとに、統計的に類推していくことが重要になります。類推して仮説を立て、具体的に行動する。そのサイクル、PDCAサイクルを繰り返すことで、見えてくることがあると思っています。」
またNetSuiteのダッシュボードや情報共有について井上事務長は次のように語ります。
「私は、経営的な視点から見た数字を追いかけるためにダッシュボードを使っています。NetSuiteによって、予約の見込みはどれくらいかを、月別、コース別、属性で、すぐに見ることができるようになりました。また、現場でも、予約を受けてから、レポートを出すまで、一連の作業がすべて記録および共有されるため、以前よりも情報が伝わりやすくなったように感じています。情報共有においては、特にNetSuiteの日報の機能が便利だと感じています。」

井上事務長のダッシュボード
今後、NetSuiteに期待すること
井上事務長はNetSuiteを活用した将来的な理想型について次のように語ります。
「クリニックにあるすべての情報がひとつの顧客IDに紐づいて管理できるのが理想です。顧客IDはひとつだけど、そのなかで診療群ごとに、情報を別々に見られるようになるといいですね。しかしながら、クリニックには、まだまだ、たくさんのシステムが動いています。最終的にはそれらの情報を、患者様の情報に紐付けて統合することが理想です。患者様とのタッチポイントは、オンライン、オフラインの両方がありますので、それらも、ひとつに統合したいですね。必要な情報がすべて患者様を中心に、統合されたときに、NetSuiteの最終的な魅力が理解できるようになると思っています。とは言え、そこまで到達するためには、クリアすべき課題がまだまだ多く残っています。ネットスイート社には、今後も継続したサポートや情報提供を期待しています。」
また、医療とITについても次のように語ります。
「もともと医療分野でのIT利用は早い段階から進んでいましたが、法的な制約もあり、特殊な状況が続いていました。システム同士を繋げられないことが多くありました。また、外部にデータを持つこともできませんでした。しかし、今ちょうど、これが劇的に変ろうとしています。数ヶ月前、GEがクラウド型の画像サーバの提供を発表しました。日本医師会はORCAという電子カルテのシステムを配布しています。医療分野でのIT利用においても、システムの統合、規格の統一やクラウド化が進んでいます。特に、クラウド化の流れは、中小のクリニックにとって大きなメリットがあると思っています。自分たちで高価な機械を持たなくても充実したサービス提供できるようなるので、大きなチャンスになると思っています。」








